戦姫絶唱シンフォギアEVOL   作:夢見969

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前回までの戦姫絶唱シンフォギアG!

「ソロモンの鍵を奪われ直後、私のライブ会場が襲撃にあった! 案の定エボルトが出てきたのだがもっと驚くのは立花と同じガングニールを纏った少女が現れた事!」
「加えて2人の新たなシンフォギアを連れて来てさぁ、大変! なんだかヒーロー戦隊出てくる偽物みたいだな?」
「偽物なんて酷い。」
「デデデデース!」

「「「「どうなる第13話!?」」」」


それぞれの日常

石動惣一の朝は早い。

 

喫茶店『nascita』のマスターとして仕込みがあるからだ。

安くて美味いと評判のナシタモーニングセットは道行く会社員やリディアンの生徒達に大好評で毎朝飛ぶように売れる。 相も変わらず珈琲の味はとても飲めたものではないのだが。

 

「ふぁ……ふぅ……寝過ぎたな」

 

時刻は6時半。 とてもじゃないが早いとは言えないし朝練や出勤する人々もちらほら出て来始めている時刻でもある。 今更準備をしても間に合わないか、と若干諦めムードの石動が観たものはエプロン姿にマスクの娘が飯と珈琲の準備を終えた姿だった。

 

「おぉ、いい香りだな。 珈琲淹れるの上手くなったんじゃないか」

「あのな、とっくの前に父さんより珈琲淹れるのは上手いし何だったら店を経営してるのほぼこっちなんだけど?」

「そう言いなさんな…ほら、客が来る前に戻った戻った」

 

冷蔵庫…型のドアを開けシッシッと下へ追いやると早々にお客さんがやって来た。 誰も彼もが笑顔でモーニングセットを買っていき、その姿を見ると自然と頬が緩む…のだが俺が淹れた時に比べて凄まじく珈琲が好評なのが解せない。

何が悪いんだ、機材も豆も高級な物を使っているし何だったらナイトローグやローグと同じ淹れ方をしているのに何故同じ味にならない?

 

ブツブツと戦兎の様に呟きながら一度アイツの体を乗っ取った時の天才的な頭脳で珈琲の謎でも解いてみようかと思った時、冷蔵庫が内側から開いた。 幸い客は居なかったので慌てることもなかったのだが出てきたのはローグの嬢ちゃん。

 

「…お腹空いた」

「ほい、トーストとスクランブルエッグにベーコン…それと珈琲」

「…珈琲は要らない」

「俺が淹れたのじゃない」

「貰う」

 

このガキ…こっそり俺の珈琲と入れ替えといてやろうか。

毒づきながら飯をくれてやろうと冷蔵庫へ運んだ時、客が来た。 立花響と小日向未来が

 

「ちょ、ごは…」

「いいから引っ込め…!! Guten Morgen.立花、小日向」

 

大慌てでローグの嬢ちゃんを押し込み冷静を装う。 奴らにだけは見られるわけには居ないんだよなぁローグの場合…

 

「おはようございますマスター! 今話し声聞こえましたけど……あれ、人が居ない」

「気の所為じゃないか? 俺は冷蔵庫の中のもの整理してただけだしな。独り言でも言ってたか…やだやだ歳をとったら独り言が多くなっちまって…で、何にするんだお客様?」

「モーニングセット4つテイクアウトでっ! 」

「あいよ、朝練か何か……あぁ、あの人の所で修行…待てよ? だとしたら小日向が居るのは可笑しいし4つ?」

「はいっ、今日は翼さんやクリスちゃん達とお出かけするんですっ! それでここの御飯美味しいから2人にも食べてもらおうと思いましてっ」

「響が是非、って二人に言っていたので私達で買って持っていこうってなったんです」

「くぅ…嬉しいこと言ってくれるなぁ立花っ!! よし、2つのお代はいらない…代わりに2人の感想を教えに来てくれよ」

「そんな、ちゃんとお支払いします…」

 

2人がアタフタして困っている姿をニヤニヤと見ていると予想外の横槍が入った。 スタイルがよく丹精な顔立ちのモデルの様な男が2つ分の料金を割って出してきやがった。

 

「代わりに払おう。ボクがね」

「え、えっと……」

「遅れてしまうんじゃないか? 早く行かないとさ」

「あ、ありがとうございます!! その今度会えた時には私達がお返しさせていただくので!」

 

小日向と立花は包みを持って頻りに頭を下げながら店を後にした。 さて、厄介な客が来たなぁ…などと思いながらもカウンター席に腰を掛け珈琲を啜る男に向き直ることにした。

 

「シンフォギアの装者か。アレが」

「何のようだ。 別に俺が店をやってることには何の問題もないだろう? オマエさんの出番はまだ先の筈だ…それともドクターやキャロルを出し抜いて動くってんなら話は別だが…」

「まさか? 興味本位で来てみただけさ…コチラの計画はまだ準備段階もいいところアレの所在も探っている途中なんだよ」

 

ハットを目深に被り厭らしい笑みを浮かべやがって…あーあ、人で無しの相手はヤダヤダ。オレがまだマトモに思えてくるよ。

変人を店の隅に追いやり営業を続けるが昼に差し掛かった頃には客入りもとんと無くなっていた。 モーニングの人気はあるもののランチ時には皆別の店へ行ってしまうのもここ数年で分かってたことだが。

 

「さて帰るとしよう。そうだ、キミに頼まれていたものを回収してきた…なに面白いものが見れるのなら手間賃はいらないさ」

「へぇ、随分と仕事が早いじゃないか」

「聖遺物の成分を抜いてくるだけなら片手間だよ」

 

ミッドナイトブルーに星の様な白点が散りばめられた新たなボトルはただのフルボトルでは無く、エボルドライバー用のエボルフルボトルだ。

ま、俺用ではないんだがな。

 

「それじゃあ、ボクは彼女達と合流するとしよう」

 

店を出ていく優男にゲンナリとしながらも手に取ったボトルを遊ばせているとふと、気がついた。

あの男、お代払っていかなかったな…!

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

マリア・カデンツァヴナ・イヴの昼は質素なものだ。

 

元々FISから離脱し逃亡犯として追われていた初期はろくな資金も無くインスタントラーメンを良く食べていた。

最近は忌々しいことこの上ないがエボルト率いるファウストに資金提供をしてもらっている為、食料の調達も滞りなく行えるのだが贅沢が出来るわけでも無し。 それに自分が食べるぐらいなら年下の2人にいいモノを与えてやりたくもあった。

 

「はぁ…考えても仕方ないわね」

 

何日続けてのインスタントラーメンだろうか…マムの毒も即死や激痛を伴うものでは無く食事程度ならば取れるのだが幾分栄養分が足りない。

毒で衰弱し栄養失調で死ぬなんて事は一番避けたい結末だ。

粥を作りマムの所へ持って行くと珍しく調も切歌と居らずにマム一人が寝ていた。

 

「マム、お粥だけれど…持ってきたわ」

「…マリア。 私に構うことはありません…ドクターの指示通り動きなさい。 調と切歌の2人のことを任せます」

「ドクターの…って、マムの毒は私達が必ず何とかしてみせるわ。 だから諦めないでちょうだい」

 

弱った身体を起こし粥を口に運ぶ姿は以前のマムの様な覇気はなく歳をとったお婆さんみたく弱々しい印象を受ける。

あの日、突然現れたエボルトの手によって毒を打ち込まれてから日に日に衰えていくマムを見ていられず彼に従う事になってしまったのもそもそもは私が弱過ぎた所為だ。

 

「エボルトは…何を企んでいるか分かりません。 しかし、彼が進む道にアナタ達が踏み入ってしまえばそれは己の身と護るべき人々の命さえ刈り取ってしまう修羅の道となるでしょう…」

「だったら、私達はどうすれば…!」

「最早、最善の手は全てエボルトの手によって潰されました…。 だとしたら、残されたのは最悪の一手。 犠牲を払ってでもエボルトを消滅させ…フロンティアを浮上させるしかありません」

「無理よ…正規のシンフォギア装者達でも手こずっていたエボルトを私達のような時限式のインチキ装者がどうにかするなんて……」

「マリア…! 甘さは捨てなさい…奴を消さなければフロンティアで人々を救ったとしても……結末は世界の破滅です…ゴホッゴホッ…!!」

 

血を吐きながらもマリアのカラダを強く押すマムの手は痩せ細っていた。

 

「分かったわ。 私達なりに最善を尽くす…それでもダメだったらエボルト共々、私がケリをつける」

 

あの2人に任せる訳にはいかない。

今は従順に従って隙を見せたその時、奴を仕留める…

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「…とでも思っているんだろうな。 全く、オレも甘く見られたものだ…っと!」

 

エボルトの夜は遅い。

 

スチームブレードのバルブを捻り一振りすれば空中に氷刃が生み出され迫り来る2人組に牙を剥く。

大気を凍らせながら飛来する刃を自慢の鎌と丸鋸で砕くが爆散と同時に眼前で広まるミストに視界は奪われエボルトを見失う。

 

「見通しが甘い、二手三手先を読まなければインチキシンフォギアのオマエさん達なんざ、たちまち奴らにシメられるぞ」

 

正面に居たはずのエボルトの背後から強襲。 身に纒わり付く水気が嫌な予感を抱かせる。

 

「それと相性だな…っ」

 

ブレードから放たれた雷撃がその身に降り注ぎ絶叫してしまう。

強制解除されたシンフォギアがかなりのダメージを肩代わりしてくれたがそれでも痛いものは痛い。

 

「ぐっ…はぁ、はぁ!! 許さない…デス!!」

「ほう? 許さなければどうする、オレを倒さなければナスターシャの毒は消えないが倒せばオマエさん達を隠し立てする組織は居なくなりたちまちFISの連中に嗅ぎつけられ計画すらも立ち行かなくなるぞ」

「…私達は、人質なんて取られなくても…指示通り動く。」

 

フラつきながらも立ち上がる暁と月読を見ると目頭が熱くなってしまう。 健気な少女達だ…だからこそ、遊びたくもなるってものだ。

 

「例え動いたとしてもオマエさん達は手を抜くだろう。 出来るだけ他人を殺さずに大義を成そうと奔走するだろう。 だが、大義の為には犠牲も必要なんだ…オレだって人を意味もなく殺す行為は嫌いなんだよ」

「人を救う為に人を殺せと…そう言いたいんデスね」

 

何度目になるか、Linkerを握りしめ首筋に押し当てる二人の目は親の敵…いや、全人類の敵を見る様な瞳を向けてくる。

ここで2人を使い潰すつもりは毛頭ないが現段階で正規のシンフォギアよりも強くなってもらわなければ面白味もないので止めることはない。

 

 

「Zeios igalima raizen tron」

「Various shul shagana tron」

 

 

緑と桃の両刃は叩けば叩くほど鋭さを増していく。 どの装者よりも最も鋭くオレを楽しませるかもしれない…!

 

「やる気は充分…よし、続きといこーじゃないか!」

「どさくさに紛れて死んでしまっても文句は無しデス!! 調、行くデスよ!」

「うん、私と切ちゃんならやれる…。」

 

活きがいい2人の攻撃は徐々に良くなってきているがオレに届くほどではない。

身を引くくし上段に迫っていたイガリマの刃は宙を空振り隙だらけになる。すかさず低空からの蹴り上げを腹へ叩き込み空へと打ち上げると蹴りの反動で硬直したオレに向かって大量の鋸を飛ばしてくる。 が、予測通りの攻撃だった。 予め装填していたダイヤモンドボトルでシールドを張り全て弾き返すと地を滑り月読に一気に接近するとスチームガンを胸元へ押し当てた。

 

月読調が纏うシュルシャガナは面制圧に加えて中距離戦に置いては局面に合わせて丸鋸を様々な形に変化させるシンフォギアだ。が、現在のシンフォギアの装備に加えて彼女の戦闘スタイルから近距離戦に持ち込まれてしまえば手立てが一気に減る難点も持ち合わせている。

 

武装の切替が間に合わず懐へと潜られた月読は防ぐ事も出来ずに零距離射撃を喰らって転がる。

 

交代するように先程空へと打ち上げられた暁がアンカーを地面へ撃ち込みギロチン状に展開したイガリマを高速で放ってくるが避けれないものでは無……

 

「おっと、考えたな…!!」

 

背後へと飛び下がろうとしたのだが視界に映ったのは大型の丸鋸。

オレの後ろを取るためにわざと攻撃を喰らったのか…やるねェ!

 

前門のギロチン、後門の丸鋸

 

どうしたものかと考えたがどうやら訓練は切り上げのようだ。

横から飛び込んできた紫の戦士がギロチンを豪脚で噛み砕き暁を抱き抱えて目の前に降り立つ。

 

「時間だよエボルト。 この子らを虐めるのも大概にしときな」

「おっと…もうそんな時間か。残念だったなもう少しでオレに傷をつけられたぞ」

「くっ! 紫のが邪魔しなければこっちが勝ってたところデス!! よくも邪魔してくれたデスね!」

 

ローグにお姫様抱っこされている暁は実に滑稽だが幾分こちらにも時間が無いので放って置くとしよう。 さてさて、次なる一手はドクターウェルのネフィリムに託すとするか…

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「…行ったか。 私としてもエボルトは信用ならないし貴女達にあのまま倒してもらっても良かった。だけど、守ってもらわなければならない約束をしているの」

「約束、デス?」

「それは、エボルトに人質を取られている私達よりも大切な約束?」

 

シンフォギアを解いた2人にローグは静かに頷く。

 

「本物じゃない、こちらを知らなくても会えるなら何だってやるつもり」

「……ローグってもしかして女の人だったりするんデス?」

「……さぁてね」

 

ただ、と付け加え二人に背を向けながらローグは語る。

 

 

 

エボルトは底知れない邪悪だと。




「ついに最終回を迎えた桐生戦兎を待ち受けるのは万丈と2人、全ての騒動を思い出して収録するという苦行だった!」
「おい、戦兎。 誰に向かって話してるんだ?」
「そりゃ違う世界線で俺達を応援してくれたみんなに決まってるでしょ。 俺達2人の戦いはまだ続く、みんなこれからもよろしく」
「戦兎、あっちで変なバケモン暴れてるぞ!」
「やれやれいきなりか…さぁ、実験を再開しよう!」
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