「学祭準備に勤しむ装者達! しかし暗躍するエボルトはそんな物もぶち壊す」
「まだ何もやってないんだがなぁ?」
「どーせ、お前の事だからろくな事しないだろ」
「Exactly! ま、俺の計画はまだまだ序章だ。その一端をお披露目しよう」
学校祭開催時刻からしばらく経った頃
偵察という名目で遊びに来た私と切ちゃんは様々な店で焼きそばやら綿あめやらを買い漁り頬いっぱいに放りこみ、学園祭を満喫していた。
「おいひいれふね、しらべ!」
「切ちゃん、食べてから喋ろうね。 でも、こんなにお金をくれたエボルトには驚き」
「あんな奴の財布なんてカラにしてやればイイデス!」
今の私達は年相応と言うべきか、傍から見れば戦いに身を置いているなど考えもしないことだろう。 そんな一時を満喫しながらも校内で装者達を探す。目的は奴らの聖遺物を奪取しネフィリムに栄養として与える為だ。 周囲を見渡せば同年代の少女達が何も考えず楽しそうに過ごしているのが嫌でも目に入ってしまう。 私からも切ちゃんからも縁遠い平和な世界。
でも混沌はそんな平和を嘲笑いながら叩き潰す。
騒ぎが起こり始めた。爆発? ここから少し離れた所だろうか。 ノイズが出たのならばあのシンフォギア達がとっくに行っているはず。だとすれば…
リディアン内ではない事が唯一の救いだ、と内心ホッとしてる自分が居た事に驚きながらも私は切ちゃんと共に学園から飛び出していた。
煙の上がっている方向はルナアタック事変の現場、旧リディアンがあった場所と分かったのは暫くしてからだった。
そして、目の前で暴れているそれはノイズ何かでは無くドクターがフロンティアの起動に必要だと言ったネフィリムという化物。
おかしい、ここに居るはずがないアレが暴れているなんて!!
ネフィリムはただ、その場で暴れているだけだ。 瓦礫を砕き、吼え、また砕く…まるで子供が積み木を壊して遊ぶように暴れて泣きわめいている。
苦しんでいる?
そう感じた時、ネフィリムの視線がこちらへと向いた…不味い
「切ちゃん!!」
「背に腹はなんとやら…デス!!」
「Various shul shagana tron」
「Zeios igalima raizen tron」
光が身を包み、二人揃ってシンフォギアを展開する。 まさかネフィリムと自分達が対峙するとは思ってもいなくアレを倒してしまってもいいものかと思案する。 先程からマリアとドクターに通信を試みているものの、何らかの要因があるのか連絡が一切付かないのもきな臭い。
まるで怪獣のような出で立ちをしたネフィリムの動きは期待を裏切る俊敏さで30mはあった距離を一瞬で詰め剛腕を横薙ぎに振るってくる。
身体を反らして紙一重で交わし、そのまま両足のギアをフル稼働させて自分のスタンスである中距離を保とうとするが甘かった。 ネフィリムの腕はしなり鞭のように振るい出すと地面ごと捲られ宙に無防備にも身体を浮かせてしまう。
「調…ッ!!」
ブースターを噴かせ追撃がくる前に受け止めてくれた切ちゃんと共にネフィリムへと向き直ると次はピタリと動きを止めた。やっぱり様子がおかしい。
「…ウソ」
怪獣然としていたネフィリムの肉が蠢き、その背に羽を生やし腕や足に棘やら角やらが現れ始め、まるで虫の変体を見ている気分だ。
「うへぇ、気味が悪いデス…」
「気を付けて切ちゃん…たぶん来る。」
完全な変態が終わるとグリンっ、と首を回し大きな口を開けば牙を見せ、舞い上がってきたネフィリムに対して私達は丸鋸、大鎌で挟撃を仕掛けるために分散する。
ネフィリムは切ちゃんを執拗に追い掛け回し腕や首を伸ばして切ちゃんを捕らえようとするが全て上手く鎌で去なしていくが突如、ネフィリムが絶叫に近い咆哮を上げる。
「がァ!? こ、れは…っ」
「頭が…割れそ、う…!!」
私と切ちゃんが紡いでいた歌が止まってしまう。 いや、コイツは叫びで無理やり歌を止めたのだ。 シンフォギアとの戦いと理解してシステムの要である歌を。
がくんと速度を落とした切ちゃんの脚を掴み振り回すネフィリムに対して私は刃を高速回転させ迫り、勢いに身を任せて腕に丸鋸を突き立てた。
【非常Σ式・禁月輪】
ギャリギャリと肉を削ぎ落とす音を奏でる禁月輪は徐々に速度を落としていき完全に停止する。その肉は伸縮自在に見えた時とは違い剛質なネフィリムの身体に刃が食い込み離れるに離れられなくなってしまった。
「調、後ろデス!!!」
切ちゃんの絶叫に え? と、首を回し背後に視線を移すと首が伸び大きな顎を開いているネフィリムが見えた。
喰われる。
少ない攻防で彼我の実力差が心底わかった。 もうダメだと諦めかけた時、天から響く歌声と共に降り注いできた槍がネフィリムを吹き飛ばし、剣と矢が吹き飛んだネフィリムを乱れ撃った。
攻撃に怯んだ手の拘束が解かれ放り出された切ちゃんを抱きとめた私達が見たのは忌々しくも何処か眩しい彼女達。
「2人共大丈夫!?」
「どうして…」
「このバカは敵であろうと助けちまうんだよ観念しな…それよりなんだコイツ? ノイズじゃ無さそうだ」
「気を緩めるな雪音。 あの2人を振り回したのだ…我々3人で掛かったとしても五分がいい所だろう」
呆然と、敵である彼女達の姿を見つめる。
何故、どうして。と考えは止まらない。
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「何故ネフィリムが暴れている!!?」
怒声を上げるドクターはモニターを叩きマリアにすぐ現場へ向かう様、指示を飛ばすがその姿は理性的なモノではなくパニック状態だ。
「私の台詞よ…! 調と切歌が襲われるなんて…ネフィリムの制御が出来ると言ったのはドクター貴方よ!」
「はっ、オマエらがどうなろうと知ったこっちゃないんですよ。 ネフィリムはフロンティアの要、あれだけは失うわけにはいきませン!!」
いやはや、ここまで取り乱すと笑えてくるな?
「まぁまぁ、落ち着けドクター。 モニターを良く見てみろよ? ネフィリムは押されるどころかシンフォギア2人を圧倒しているんだぞ? 予想外のパワーを発揮しているじゃないか」
「えぇ、出来損ない共なんぞに押されるわけがありません…ですが、ここまでプランから外れた事をしてしまえば目的から遠ざかるというもの」
「仕方ない、オレが回収してきてやるよ。調と切歌の嬢ちゃん達も連れてな。 これ以上こちらの戦力が消耗するのは避けたい」
「くっ…貴方にお願いするのは癪だけれどお願いするわ…あの2人を」
カ・ディンギル跡地上空付近まで迫れば後は降下するだけだ。 軽くマリアに手を振るとハッチを解放した俺は待機していたミソラ、ローグと共に飛び降りる。 なぁに、下には新しい玩具があるんだ…多少オレが楽しませてもらっても構わんだろ?
眼下に広がる光景は特機部二のシンフォギア共が三位一体となりネフィリムを若干押している戦況。暁切歌と月読調の両名はどうやらオレが渡してやったボトルを使ってないらしいが…まぁ、渡して直ぐに使いこなせるなんざ思ってもいないし雪音クリスと風鳴翼に比べれば些か、実力が足りないというのが現実というものだろう。
そうそう翼、クリスに関してはこの前の特機部二による会議の時点でそれぞれにコピーしたラビット、タンクボトルを渡しておいた。名目は戦略の拡張。
真の狙いは立花響の進化といったところだ。
現状のハザードレベルじゃ俺やミソラは疎か、ローグ、キャロル達にすら及ばない。だとすれば、5人のシンフォギア装者の育成が最優先だ。 マリアに至ってはどの装者よりもレベルが上の為に暫く放置とする。
「2人とも仕事はきっちりこなしてくれよォ?」
「…一番働かないのは貴様だろうエボルト」
「父さんが働かないのは今に始まった事じゃないさ…それより本当にいいのか? ネフィリムを殺って」
「あぁ、構わんよ。 必要なのは奴の心臓とシェンショウジンの力だけだ」
両名頷くと無言になり接敵する。
轟音と爆煙に一時、視界不良になるがネフィリムの立ち位置は分かっている。
自分で魔改造して投下して…自分で討伐していたら世話ねぇな。
煙が晴れると響、翼、クリスの3名は俺の姿を見て動きを止める。 ネフィリムの相手はミソラ達に頼み俺がやるのは3人の相手ってな?
「貴様の仕業かエボルト!」
「毎度毎度訳の分からねーバケモン寄越しやがって一つ覚えかよっ」
「おいおい、文句も大概にしてくれよ。オレらも仲間の調と切歌が襲われたから助けに来たんだ。 大事な仲間を助けるのは当たり前だろ?」
ブレードを構え、スチームガンのトリガーを引きながら突っ込む。 翼と響は個別で対応すりゃ敵でもないんだがタッグを組まれると戦力は倍増する。 飛び道具系は翼が斬り弾き、その隙に響の突貫。 それだけでも並大抵の敵なら容易く撃破できるだろう。
「だが、甘いんだよォ!!」
バルブを捻り電撃を纏ったスチームが響の動きを一瞬遅らせる。 それだけで十二分過ぎた。
ブレードを走らせると奴の腹に横一文字の斬撃を喰らわせるが流石はシンフォギアだ。 内臓をぶちまけること無く表面上傷がつく程度…まぁ、本体にある程度の衝撃はいっているだろうがな。
吐血しながらも両足のアンカーを地面に差し込み吹き飛ぶ事を耐えた響の拳がオレの胸へ伸びパイルバンカーの要領で重い一撃を叩き込んでくる… 中々効くようになってきたなァ…!!
少々、殺すつもりでいくとしようか。 そうスイッチを切り替えると腕から伸ばした触手で響の首を絞め上げ始め、自らがやられた様に胸へと一撃喰らわせるために腕を振りかぶる。
「…っやってくれるな、翼ァ?」
【影縫い】
風鳴翼が持つ技の中で最も異色な技だ。
身体の動きが封じられたと同時に触手を切り飛ばし響を救出すると即座に距離を取った。 これを意味するのはたった一つ。
「持ってけ…全部だぁ!!!」
【MEGA DETH QUARTET】
先に切り込んできた2人はギアの展開するまでの囮か…なるほど?
固定砲台と化したクリスから放たれた4つの大型ミサイル、24発の小型ミサイル、4門3連ガトリングの一斉掃射は背後で戦っているネフィリムとミソラ、ローグをも巻き込む程の広域殲滅戦術。
轟音、爆音、閃光。
視覚、聴覚を封じる攻撃は辺りを吹き飛ばし並大抵のノイズやスマッシュなら跡形も残らないほどの威力を見せた。
「いいぞ…いい成長だ。 やっぱり敵も強くなってもらわなきゃ面白くないってもんだよなぁ…クリス」
ブラッドスタークの外装がひび割れ、煙を上げながら壊れ、徐々にオレの『今』の姿が露わになると3人は手本のような驚愕の顔をしてやがった。
「なっ…ん…フィーネ…だと?」
中から現れたのはフィーネの姿のオレ…くくくっ、お遊びのつもりで真似たが予想以上に面白い反応してくれるじゃないか。
「…人の皮を被ることがそんなに楽しいかエボルト」
「なんだよ、思いの他さっぱりしてやがるな…だったらこの姿は、どうだ?」
スチームが顔を覆う。
お次に見せるのは緋色の髪を伸ばした女の姿。
「…き、さまァァァァァァァ!!!!!!」
天羽奏の姿は怒髪天を衝く…って所か…っ!!
響、クリスの制止も聞かずに剣を構え突っ込んでくる。 流石の俺も生身じゃアームドギアを防ぐ手立てもないので『ビルドドライバー』を装着しすかさずボトルをスロットに挿し込む。
F1!
キョウリュウ!
ベストマッチ!Are you ready?
「変…身…っ」
音速の帝王!F1ザウルス!
イエーイ!
戦兎があちらの世界で1度も見せた事が無いフォームチェンジ。
F1ハーフボディに内蔵された『タイプスピードタイヤ』をフル回転させ一時的な高速移動を行い、翼の背後へと回り込むと、お次はザウルスハーフボディの『ガブリブレイバー』がスーツのパワーアシストを限界まで引き上げシンフォギアすら砕く一撃を放つ。 背に突き刺さった拳は翼の身体をくの字に反らせ地面へと投げ捨てた。
なるほど、F1の加速を乗せたザウルスのパワー中々使い勝手が良いフォームじゃないか。
「それは…石動のおっさんの!?」
「あぁ、ついさっき奪い取ってきたんだよ。前々から鬱陶しくてなぁ…ま、これで奴も俺たちと戦う手立てを失ったわけだ」
地に転がる翼をザウルスレッグで踏み付けながら愉快に笑う。 これでビルドに変身していた石動惣一は無害な喫茶店のマスターへと成り下がった。 事情聴取やらボトルの研究やらでより特機部二へ出入りが楽になる… くく、さてとステージ2の準備も順調。 どうしてくれるかね
「ビルドに変身してしまったエボルトに追い詰められる特機部二のシンフォギア達!」
「そして、ナイトローグ、ローグのコンビにいつの間にか撃破されそうになっているネフィリム!」
「え、ネフィリムが殺られるんデスか!?」
次回 戦姫絶唱シンフォギア G EVOL! お楽しみに