ツヴァイウィングの大型ライブ会場は一種の狂気と呼べる程に盛り上がり、尚も歌が続いていた。 なんともまぁ、凄いものだというのが俺の感想だ。 何て言ったってこういう手のイベント事に来るのは初めてだったからな? 中々に圧倒されてしまった。
しかし観てるだけでは俺が楽しくない。俺ならもっともっと盛り上げる。 あの時はゲームメイカーなんて言ったがこれからの俺はストーリーテラーとして生きていきたいもんだ。
「SHOW TIME と行こうじゃないか」
ボトルを取り出しトランスチームガンにセット。 引き金を引く
Noise…!
機械的な音声と共に打ち出された弾丸は花火じみた炸裂をすると無数のノイズが空中に誕生させウン万人といる観客の頭上へと降り注ぎ始めた。
阿鼻叫喚、己が助かる為に怒鳴り散らし同じ種であるハズの人間同士が押し退けあって逃げる様は実に滑稽で人間の本質を表したいい眺めだった。
大体3000人ほど死んだだろうか?
光景には変化無く飽きてきた当たりでやっとこさ主役のご登場だった。
「Croitzal ronzell Gungnir zizzl」
「Imyuteus amenohabakiri tron」
「お出ましかァ!!!」
待ちに待った戦士の登場に俺の声は嬉しさ故に上ずってしまう。
歌いながら戦場を舞う少女…天羽奏の姿は実に可憐でそして獣の様な凄まじい気迫でノイズ達を撃破していく。 おいおいこのペースだとこっちがノイズを生み出す速度が追い付かないな?
一方、風鳴翼の方は若干なれど手こずっている様だった。 だったら狙いは決まりだ…
ノイズを風鳴翼の方へとばら撒き二人を引き離す。
至る所に積もる炭の山を踏み散らして歩いて行き、ノイズボトルを一旦取り外しコブラを差し込む。
Cobra...!
「蒸血」
Mist Match!
Co...Cobra! Cobra...!
FIRE!
電子音、それに蒸気が発生すると血の色のボディにコブラを模したバイザーが現れる。 続いてライフルモードにしたスチームガンにロケットボトルを差し込んで天羽奏に目掛けて一撃を撃ち込む。
「なっ…!!?」
何かを感じ取ったのか咄嗟に飛び上がると群がっていたノイズ達が爆裂に巻き込まれ消滅していく。 こんな程度で伸びてもらっちゃァ困るからな上々な反応だ。
「Bonjour 天羽奏。 いやさシンフォギア装者とでも呼ぶか? まァ、どっちでもいいだろ。 どっちもお前の事を指し示すんだからな」
「人型の…ノイズ!? お前がこのノイズ達を率いてるのかっ!!!」
突如現れた人型の異形にぎょっと目を向くもすぐさま槍を構え腰を落とす奏は戦士としてのセンスはそこそこあるようだ。それにノイズに対して異様な執着心を感じられる。
天羽奏の内心は穏やかでは無い。今まで戦ってきた相手は知能があるか分からないノイズだった。しかし、今こうして目の前に現れたのは手がハサミであったりムチである中途半端な人型ではなく完全な人型。 それに加え流暢な言葉を喋るのだ。 ノイズないしはシンフォギアの様な特殊な装甲を纏った人間か…。
「おいおい、酷いことを言うもんだ。俺はノイズなんかじゃない…だからと言って人間って訳でもないがな。まぁ、後者に至っては Sì と言えるな? 俺の名はブラッドスタークだ。覚えておけよ?」
「自分が何をしているのか…分かっているのか? 人がたくさん死んでいるんだぞ」
この騒ぎは自ら起こしたと認めたスタークはおちゃらけた動きをし煽るようなセリフを吐き、朝の挨拶のようにサラリとこう言った。
「勿論、俺の暇つぶしだ」
スタークのセリフがよほど癇に障ったのかビリビリと殺意が伝わってくる、いいねェ。実にいい。
調べ上げたデータにはシンフォギアは歌を歌えば性能が上がるなんて誰得な機能があるらしいが今や彼女は歌を歌うことすら忘れ、槍を片手に振り回しながら飛び込んでくるが動きは仮面ライダーの連中に比べれば未だ幼さも残る未熟なものだ。
この年齢でここまで動けるのならば将来は有望そうだが…
突き、払いと流れる様な連撃をのらりくらりと躱しながらガラ空きの土手っ腹にボディブローを叩き込む…のだが、硬いなシンフォギア…ってのは
逆に痛めた手をプラプラと揺らしながらスタークは笑う。
(ハザードレベル2.5…いきなりビンゴときた)
「おい、もう終わりか?」
「ハッ、言ってろ。今にアンタを縛り上げてノイズについて吐いてもらうから覚悟しな」
より苛烈になった攻めを徐々にくらい始めるがスタークは嬉しそうに笑い声を上げ始めるとスチームブレードで槍を弾きそのまま上段から斜めに斬りつける。シンフォギアは火花を散らすが天羽奏自身の肌までは傷付けることが敵わない。
なるほど、この程度じゃぁ通らないか。
「奏…ッ!!」
「ちっ、もうノイズが尽きかけてるのか? 仕方ないまとめて相手をしてやる…よっ!」
飛び込んできた剣の戦士と体勢を立て直した槍の戦士を正面に相手取る形となった。
なに、多対一は慣れてるさ。まともに相手をしなければいいんだよ。 そんな軽口を叩きながら新たにボトルをスチームガンに取り付ける。
Dragon...!
龍を模したエネルギーの弾丸が銃口から飛び出し2人の戦士に襲いかかる。 世界を守る為に使った力が、次は世界を守ろうとする少女に襲いかかるなんて世の中分からないもんだろう? なぁ、万丈ォ…!!
暴れるドラゴンに四苦八苦しながらも凌ぎ倒そうとするがノイズとはまた違った手強さで中々上手くダメージが与えられずにいた。 すっかり手持ち無沙汰になってしまったスタークは思い付いたとばかりに未だ逃げ惑う多くの人が残る観客席に向かってスチームガンを構え引き金を立て続けに引いていく。 あちこちから火の手が上がりノイズに襲われた人間とは違って負傷し悲鳴をあげていく人々を見てせせら笑う。
「やめろ…やめろぉぉぉぉ!!!」
「叫んでなんとかなるのかねぇ?」
絶叫しながら振るった槍は先程まで苦戦を強いられていたドラゴンを一撃で爆散させ勢いのままにスタークと観客席の間に身を踊りこませ銃撃を弾き観客たちが逃げる時間稼ぎを始める。
感情の爆発によってハザードレベルが上がったか、はたまたあの、シンフォギアとかいうシステムのおかげか?
どちらにせよ面白い。
Gatling...!
差し替えたフルボトルの効果で銃撃の速度は格段に跳ね上がり徐々に天羽奏のアームドギアを欠けさせ、割れ、砕け散らせていく。 そして、その破片が守るべき人間の胸元に突き刺さり少女の身体は力なく崩れさった。
「やれやれ、この世界の人間は随分と甘いらしいな。 その子を助けたいんだろ? さっさとヤレよ。待っててやる」
「……何のつもりだ」
「俺は邪魔なくお前と殺り合いたいんだ。 早くしないと俺がそいつを殺すぞ」
全身ボロボロになりながら倒れた少女を助け起こし何やら話しかけている…殺り合いたい…ね。相変わらずサラッと嘘をつくもんだ俺も
立ち上がった天羽奏の瞳には覚悟があった。 あれは戦兎がなにかやらかす時、万丈がやらかした時に見た瞳と同じ。奥の手でも出すつもりか。
Gatradis babel ziggurat edenal
Emustolronzen fine el baral zizzl―
「…歌…いや……これは…!!!!?」
莫大なエネルギーが天羽奏を起点として収束し広範囲に及んでそれを放出しようとしている。こんなモノを喰らってはノイズは疎かハザードレベルが下がっている俺まで消滅しかねない。
俺の動きを察知したのか、俺に飛びつき正面から鯖折りをしてくる。
ホントに勘のよく利くガキは……
「へへ、逃がさないぜ。アタシと心中といこうじゃないか……コフッ…」
吐血をしながらも俺を離さず不敵な笑みを見せてくる。
「勘のいいガキは…ホントに扱い易い」
空のボトル2本を抱き着いてきた少女の首筋に押し付けると莫大なエネルギーは霧散し代わりに2本の新しいボトルの出来上がりだ。
「シンフォギアが……解けた…? まだ時間は…っ!?」
「奏逃げろぉ!!」
「はっ…?!」
突然の出来事、死を覚悟して放つつもりの攻撃が解かれた挙句シンフォギアシステムすら機能を失い生身へと戻った事に理解が追いつかずフリーズを起こした。
スタークにとっては生身の人間の鯖折りなんてただのハグに等しい。乱雑に頭を掴み持ち上げると柔肌に腕部から姿を見せた触手が突き刺さる。
「ゲームオーバーだ。 流石にあの歌…か? アレをモロに喰らえば俺の身は危うかったな。 ハザードレベルが下がっているとはいえ俺を相手によく戦ったと褒めてやるよ」
持ち上げた体を足元に落として嘲笑う。
注入された毒により天羽奏の身体は動かず、声を上げることすら許されぬほどの激痛に襲われ文字通り血反吐を吐きながらもがき苦しんでいた。
「奏…よくも、奏を…!!!」
こちらも怒りによって戦闘力が跳ね上がったかやっとこさドラゴンを撃破し剣を構えるが………少し遅かったな。
「風鳴翼だったか? その怒りを忘れるんじゃないぞ」
「どういう事だ…!!!」
「時間切れってこった」
ドームの四方八方から爆炎と轟音が鳴り響くと天高くあった筈の屋根が下へ下へと近づいてくる。
「貴様何を!!」
「なーに、ドームの柱にちまちまと爆弾を取り付けてこの時間に爆破するよう仕掛けただけだ。 目的も済ませたしな…次会うときはお前さんが楽しませてくれよ? Ciao」
瓦礫の雨が二人を遮り、互いにどうなったかは分からない。 あの嬢ちゃんなら無傷とは行かないが死ぬ事はないだろ。
「さっさと撤退しますか」
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特異災害対策機動部 第二課
報告書
今回の事件による被害は以下の通り。
死者、行方不明者の総数が、12874人
今回の事件は人為的に引き起こされたノイズの襲撃、及び歌とオーディエンスにより高まったフォニックゲインによって引き寄せられたノイズが多く発生したと思われる。
風鳴翼からの報告によればブラッドスタークと名乗る謎の人物がシンフォギア装者と接敵。
また、第3号聖遺物『ガングニール』の装者である天羽奏は突如としてシンフォギアの力を奪われ、敵対人物からの猛毒を打ち込まれた後に倒壊した建物に潰され圧死したことが確認された。