「ピンチの私の前に現れたのはなんとなんと奏さんと桐生さんだった!」
『いやー、まさか後輩と一緒に戦えるなんてね』
『不思議なこともあるもんだ』
「あ、あとでご飯でも食べに行きませんか!? 奏さんのお話聴きたいです!」
『お、いいねぇ!』
『いやいやいや、良くないでしょ…どうなる第20話!』
奏さんが槍を振るい、周囲のノイズを退けながらネフィリムとぶつかり合う。
あの日のように背中で私を庇いながら。
2年過ぎたと言うのに何も変わっていない。
いや、変わったはずだ。
だって私は…私の中には…奏さんの。
みんなの想いが詰まった……
「シンフォギアぁぁぁぁぁ!!!!」
煙を上げ、砕け、機能不全に落ちかけていたシンフォギアが発光し
『さっすがぁ!』
「奏さん、力…貸してください!」
拳を構え、ネフィリムへ向かって二人同時に駆け出す。
怖い、怖いけど!!
「へいきへっちゃら!」
奏さんが突き入れた槍の柄を思いっ切り殴ると深々とガングニールがネフィリムの腹へと刺さっていく。
絶叫し、カラダを赤熱させ周囲を焼き払い始めるが響と奏は気にする様子もなく怒涛の攻めでネフィリムを押し込んでいった。
自然と歌声に力が入り、奏はハモらせるように響に合わせる。 即興のコンビとは思えないコンビネーションでネフィリムの攻撃を捌き、確実にダメージを与えていく。
ネフィリムに突き立ったガングニールを即座に引き抜くと背後から迫っていたノイズ達を穂先から発生させた竜巻で吹き飛ばす姿は正にスキのない歴戦の戦士だろう。
『おーおっ、凄いお嬢さんたちだこと。 俺も負けてらんないなっ』
感嘆を上げるビルドもレバーを回し必殺の一撃を放つ構えをとると自らが相手していた二体目のネフィリムごと周囲のノイズ達をボルテックフィニッシュで蹴散らした。
『ふぃ…呆気なかったな………っておいおいおい』
目に映った光景は異常、悍ましいものだ。
爆散したネフィリムの肉片を響達の活躍によって瀕死気味のもう一体が貪り、そのカラダは元のサイズよりも遥かに大きくなり始める。
『あっちゃー遊び過ぎたか?』
「えぇ!? 奏さん遊んでたんですか!?」
『モノの喩えだよ。馬鹿正直だなぁ響は…』
ネフィリム…いや、ネフィリムノヴァが腕を振るうと辺り一帯の瓦礫は消し飛びノイズ達もまた消滅していく。 やはり、元の世界に戻るにはコイツを放ってはおけないだろう。
だが、たった3人で出来るだろうか? 絶唱でも何処まで削れるか分からない相手に…
『まぁまぁ、暗い顔しなさんなって。 てぇんさいな俺の計算によると? キミが奴を倒せる確率は100%だから』
「本当ですか!?」
『あぁ、信じなさいよ』
ビルドがそう言い響の方を叩くのだが内心は(こういう時、万丈のバカ直感が羨ましいもんだ…)などと思っているのだが響は知る由もない。
『しゃーねぇ…こうなりゃ響、あたしを使いなっ! それともう一つもちゃんと使うんだよ』
「え、どういう…」
『こーいうこった!』
奏は笑顔で響の手を取ると彼女の身体は光に包まれ緋色のボトルへと姿を変えた。 やっぱり、本物の奏さんじゃなくて…ボトルが見せた幻想?
いや、きっとアレは本物の奏さんの想いだ。
もう一つも…、きっと応えてくれる。
黒いガングニールボトル。 マリアさんのガングニールの成分が収められた1本……
両腕にボトルを差し込み腕のパーツを押し込む。
神槍・ガングニール!
撃槍・ガングニール!
烈槍・ガングニール!
シンフォギアのシステム音とは別の機械音が空間に響き渡りボトルの成分がカラダを包み込んでいく。
『Croitzal ronzell Gungnir zizzl』
『Balwisyall Nescell Gungnir tron』
『Granzizel bilfen Gungnir zizzl』
三つの聖詠が重なり合いガングニールのシンフォギアは輝きをより激しく放ち周囲一帯を白く染め上げた。
『Gungnir!! / Gungnir!! / Gungnir!!』
『スーパーベストマッチ!!!』
『神撃の烈槍!!! ガングニール・ガングニール・ガングニール!!!』
『チョースゲェイ!!!』
本来の白を基調とした装甲は白と黒を織り交ぜたツートンカラーとなり脚部や所々のパーツは燃え盛る様な緋色に、そしてその身から爆発的なフォニックゲインが生み出されバビロニアの宝物庫自体の空間を歪めていく。
溢れ出る歌に自然と笑みが零れる。
『「これなら
響き奏でられる歌はもう止められない。
━━━━━━━━━━━━━━
「死んでも俺の責任じゃあないからな」
背後から迫り来る巨大な鎌を手で受け止め、強引にその使い手である暁切歌を引き寄せ、空いた手でレバーを数度回す。
星座早見盤を模したフィールドが足元に展開し、生み出したエネルギーが右脚に収束していく。
「切ちゃん!!」
『エボルテックフィニッシュ!!!』
締め上げ、一度軽く放り投げた暁切歌に向かって必殺の蹴り技を放つ。が、俺と暁切歌の間には薄紅のバリア、それに幾重にも折り重なった電ノコが蹴りを受け止める。
「切ちゃん、逃げてっ!!」
「無駄だ…っ」
蹴りを妨げたバリアや電ノコをモロモロ砕いていき勢いが衰えること無く月読調の腹へ突き刺さり吹き飛ばす。
『Ciao』
無慈悲な音声と共にシュルシャガナのシンフォギアは爆発に飲まれていった。
可哀想に…ネビュラガスを限界まで注入された状態でシンフォギアが解除されちまったら死ぬしかない。
「一人脱落…か。 あと4人で持ちこたえてみせろよ?」
「エボルト………エボルトォォォォォォ!!!!」
歌うことも忘れ切歌はイガリマを振り上げ飛び込んでくる。これだから直情的なやつは…
「何故、何故……調を…!?」
「おいおい、オレは元はお前を殺ろうとしてたんだ。 それに割って入ってきたのはアイツでヤられたのも奴の責任だろうに」
のらりくらりと連撃を躱しながら背後から迫るアガートラムの一撃を片手で押え込む。 気が付かないと思ったか。
「貴様ァァァァ!!!」
「シンフォギアが歌を忘れちゃダメだろうが…何でこうなった? あぁ、オレの所為か……フハハハハッ」
「雪音、月読を移動させるぞ!」
「こっちはエボルトで手一杯だよ先輩!」
「無駄だ、もうじき月読調の身体はネビュラガスによって消滅する」
消滅する筈なのだ。 だが何故、未だに奴の肉体は砂浜に転がったままなんだ…?
何かを見落としている気がする。
「余所見するなデス!!」
「おっと…っ」
体を反らして紙一重でイガリマを避け、カウンターを叩き込む。シンフォギアの解除とまではいかないが暫くは立ち上がれないだろう。 コイツも殺ってしまえば…マリアはどうなるだろうな。
しかし、まぁ…連携は板に付いてきてやがる。 ある程度装者と距離を置こうとすればイチイバルの弾幕が、接近戦は確実に2名以上で挟撃…戦法としては戦兎達よりも面倒臭い。これでハザードレベルが高けりゃオレとて楽には勝てないだろう。だが、今のヤツらは決定的な力不足だ… ここからどうやってこいつらを強化していくか……
そうだ、エルフナインを利用するか!
剣を構え、左右からの同時攻撃を放つアガートラムと天羽々斬を片手ずつで相手をしゆっくりと観察する。
純粋なパワーでは立花響のガングニールに劣るもののやはり場数を踏んでいるお陰か単純に相手をするなら天羽々斬の方がやりにくい。
対してアガートラムは硬さがある。新たなシンフォギアだがかつて、マリアの妹であるセレナが使っていたからか適合係数も相当高く十全な性能を発揮出来ているからだろう。 ローグ以上に硬い…最初の一撃で離脱しなかったのもそれが要因か。
攻防を繰り返していくうちに動きが緩慢になり始める。
「オラ、へばってきたか?」
「くっ、コイツ…疲れ知らずかっ」
「…避けろマリアっ!」
マリアと風鳴が飛び上がった。 なんだ…?
疑問と同時に襲い掛かってきたのは無数の衝撃。ここにきてエボルトに初めての直接ダメージが入る。その攻撃の正体は……
「月読調…だとォ!?」
「みんなはやらせない…っ。」
バカな。ヤツは確実に死ぬダメージを与えたはず…っ
「フィーネがエボルトを倒せって言ってた。」
「フィーネ…フィーネだと? そういう事か…ちっ、面倒な女だよお前は」
ベルナージュの様に一部が月読調の中に居たってことか…なるほど。それで奴が消滅を全て肩代わりした………見落としていた事としては些細な事だ。
ん?
「…これはっ」
「歌……?」
この声は…立花響かっ! ハハッ、やはりネフィリムを撃破しここへ戻ってくる…っ!!
「さっさと戻って来やがれバカっ!」
歌声の波紋は広がっていく。
雪音クリスが歌い、暁切歌に月読調も加わりマリアもそれに乗る。
「立花…誰と歌っているんだ?」
風鳴翼は聞こえるもう一つの旋律に、主旋律とはまた別の…『逆光のフリューゲル』に眉をひそめながらまた歌い上げる。
━━━━━━━━━━━━━━
「アウフヴァッヘン波形確認! ガングニールです!!」
「響くんか! 良くぞと言うべきか…大人として不甲斐なさを憤るか……」
一人異次元へ放り込まれた彼女は自力で戻ってこようとしている。だと言うのに大人の我々が何の力にもなれないとは……っ
「これは……!? いや…」
「どうした藤尭!!」
「計器の故障じゃないっ。 司令、ガングニールの反応が!」
「ロストしたのか!?」
「いえっ、一つは響ちゃんの。恐らくもう一つはボトル化したマリア・カデンツァヴナ・イヴのものと推測出来るのですが…それとは別に2つ、全く同じ波形のガングニールが存在します!!」
「4つのガングニール…だと…!?」
響くんとマリアくん…可能性として奏から抜き取られたらしいガングニールがあるが……
━━━━━━━━━━━━━━
「La……♪」
空を見上げ歌う少女は切ない旋律を奏でる。 歌声に力強さはない。
「早く帰ってきなよ」
呟きながら彼女は
「立花響ィ!! なぜキミが人間の身でシンフォギアを介したただけでボトル2本の不可に耐えられるか。 何故、失った腕が生えたのか。 何故、多くの人間を引き寄せるのくわァ!!!」
「それ以上言うな!!!」
「その答えはただ一つ……」
「ヤメロぉぉぉ!!!」
「立花響ィ!! 君が世界で2番目にネビュラガスを注入された娘だからだァァァァ!!! ヴェハハハハハハーアーハハハハハハハハ!!!」
「……え?」