「エボルドライバーの復活によってより強力になってしまったエボルト。 奴を撃破するには新たな力が必要になる」
「だけどそんな都合よく行くのかね先輩…」
「この本によればもうそろそろ物語に異変が起き始めると記されている。 安心したまえ、私が盛大に祝いの言葉を述べるのだから」
「いやだから誰だよアンタは!」
「「「どうなる第22話!」」」
ドクターウェルが主犯とされたフロンティア事変から3ヶ月。
今までの事件が嘘のように起きなくなりノイズやスマッシュも姿すら見せることなくただただ平和な時間が過ぎていった。
フィーネのルナアタックにより機能不全に陥っていたバラルの呪詛もナスターシャ教授による捨て身の修復によって今一度、呪詛としての機能を取り戻しており、彼女の遺体を回収する為に向かったチームのシャトルを救助した特異災害対策機動部二課は正式に国連の直轄にて超常災害対策機動部タスクフォースとして再編成される事となった。
構成員としては特異災害対策機動部二課のメンバーにフロンティア事変にて敵対していた3人の装者が加わりS.O.N.Gとして人命救助の活動を行っている。
しかし、それでもその平和を心から楽しめない。 エボルトが仮初の平和と言ったからにはきっとなにか仕掛けてくるのは明白だろう。
「響、大丈夫?」
「うん、ちょっと考え事してただけだからっ! それより未来、近いうちにまたマスターのお店行こうよ!」
「そうだね、最近行ってなかったし」
身構えながらも未来と共に休日を精一杯楽しむ、それがいまの自分に出来ることと信じて日々を過ごす。 そして未来の身に何かが起きないように私は…
不意にS.O.N.Gから支給された通信端末が音を鳴らす。 緊急時しか鳴らない筈の端末がだ。
「ごめん、未来!」
「大丈夫だよ。早く行ってきて? 気を付けてね響!」
「うん!!」
送り出してくれた彼女に元気に返事を返し通信を繋げる。
「はい、響です!」
『響くん、休日にすまない。 実は我々に接触してきた人物が居るのだが装者全員を招集し対面させたい。 翼とマリアくんも急遽帰還してもらう手筈となっている。 響くんが居る付近に友里くんを向かわせた』
「了解です!」
接触してきた人物…いったい誰だろう?
全員を集めないといけない程の相手…? エボルトの関係者…なのだろうか。
友里さんと合流し彼女の運転で司令部へと向かう。 むむむ…と眉を顰めて考え事をしていたらクスクスと笑われてしまった。
「もう、笑うなんて酷いですよぉ…」
「ふふ、ごめんなさいっ。 響ちゃんと初めて会った時からそんなに長い時間が経ったわけじゃないのに随分と頼もしくなったなぁ…って思ったの」
「頼もしくだなんて…っ。 私はいつもダメダメで、みんなに助けてもらえてるからですよっ」
「そうかもしれないけど響ちゃんは響ちゃんが思っている以上に皆を引っ張って助けているわ。 だから、一人で考えるのはやめにしてみんなで考えましょ?」
「そうですね…わかりました!」
「今回の来客は司令部にとっても全く予想だにしていなかった事なの。でも、今回の件でエボルトやあの時現れた新たな敵について全貌が見えてきたの。 また厳しい戦いになるかもしれない…」
「っ、ということはエボルトの…?」
「えぇ、元関係者…らしいわ。とてもそうは見えないのだけれどね」
第3ステージが今、始まる。
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「えっと、エルフナイン…です」
そう名乗ったのはとてもエボルトに協力してたとは思えない程の外見をした人物。
本人曰く、自分はエボルトの協力者というよりその協力者であるキャロルが錬金術の奥義を以って創り出したホムンクルスらしく、キャロルが己の記憶を転写・複製する為の身体を作り出す過程で創りだされたのだが廃棄となったホムンクルスだということだ。
ここまでの時点で既に響と切歌は目を回して話の半分も理解出来ていないようなのは明白だったが一々止まるわけにいかないのでエルフナインに続きを促す。
キャロルとその配下である自動人形にシンフォギアが渡り合う為にエルフナインはチフォージュ・シャトーからドヴェルグ=ダインの遺産、ダインスレイフの欠片を持ち出し計画を阻止してほしいと言ってきた。
果たして何処まで信じていいのだろうか? 彼女を信じてシンフォギアのシステムに異常をきたしたらどうする?
「信じてもらうしか…ボクには何も出来ません……」
「…と、言われてもだなぁ」
クリスが頭を掻きながらどうしたものかと周りに目配せをする。 キャロルの計画は恐ろしいものだろうし、ダインスレイフの欠片によってシンフォギアの強化が可能ならばエボルトに喰らい付けるかもしれないが…
「エルフナイン君。キミの情報は有難いが…」
風鳴弦十郎も額に手を当て考え込みながら口を開いたところで藤尭朔也が慌てた様子で部屋へと飛び込んできた。その様子は一目で大事と分かるほどの慌て方だ。
「どうした藤尭!」
「我々に協力していた石動惣一は…偽物です!!」
「「「「「「は?」」」」」」
石動惣一。石動惣一といえばシンフォギアにボトルシステムを櫻井了子と共に組み込み、仮面ライダービルドとして協力してくれた喫茶店のマスターだ。前のフロンティア事変でビルドドライバーをミソラという女性に奪われてからは入院していた筈の人物…その人が偽物?
響が相も変わらず頭上に?を浮かべていると藤尭は会議室のモニターを付け映像を映し出す。
『本日、火星探査へと赴いていた宇宙飛行士の石動惣一氏が地球へと帰還しました。 石動氏は心身ともに健康状態であり今後行われるセレモニーに火星から持ち帰った箱。パンドラボックスを披露するようです』
「なっ…!?」
絶句だった。名前も、モニターに映し出された顔も響や翼、クリスがよく知っている男性の顔だったのだから。
「どういう事だ?! 石動氏がこちらに協力する際には徹底的に調べあげた筈だろう…!」
「はい…しかし、今日になって本物の石動惣一のデータが表立って現れ始めました…そして以前調べ上げた石動惣一のデータが逆に消滅しています」
「つまり、偽物が本物のデータを隠匿していたと? ならば何故このタイミングで明かした…?」
「あ、あの!」
訳が分からないとばかりに混乱する中、エルフナインが声を上げ映像の石動惣一を指差し口を開いた。
「この人、エボルトさん…ですよね?」
「エボ……ルト………だと…?」
「ビンゴォ! いいタイミングでの答え合わせだったなS.O.N.G諸君? そう俺がお前さん達を引っ掻き回していたブラッドスタークであり、真の名はエボルトって訳だ」
狙い済ましたかのようなタイミングで会議室の入口現れたのは石動惣一。否、エボルトだった。
「何で…」
「何で? 俺が化けやすく且つ、痕跡を消しやすい奴だったから…いや狙いは他にも沢山あるがな。本物が戻ってくるまでにボトルもだいぶ増えた。お前たちの協力あってこそだ」
「私や…私や未来がお店に通ってた時のマスターも……アナタだったの…?」
「あれは趣味のようなものだからな。 別にちゃんとした店を営業していたんだぞ? 真っ当な商売をして黒字を出してたし朝の弁当メニューは売れ行き上々だったんだ」
肩を竦めながら手に持った缶コーヒーを煽る姿はこちらを嘲笑っているようにすら映る。
「んん、出来合いってのも美味いがやっぱり淹れ立てが一番だな。 さてとだ、本題を言えばお前さん達にエルフナインを遣わせたのは俺なんだよ」
「テメェ、やっぱり何か企んでやがんのか!?」
「エボルトらしいデス!」
「勘違いするなよ? お前さん達は今、2つの選択肢しかないんだ…エルフナインの提案を受け入れシンフォギアを強化しキャロルの野望を阻止するか……ろくに歯が立たずに奴らに殺されるかだ」
「それでアナタに何の得があるのかしら?」
「損得で言えば、お前さん達が強くなれば俺は楽しめる。 それにキャロルの計画自体にさして興味は無いから俺に損は無い」
「…信じられない。」
「だろうな」
ゆっくりと部屋の中へと入りテーブルに腰を据えたエボルトは鼻で笑いながら大量のフルボトルをテーブルへと並べた。数にしてざっと50と少し。中には玩具のようなスイッチや銀縁のメダルも混じっている。
「フルボトル52本。 俺が集めるべき本数は60本なんだが…コイツらをお前さん達に預けようじゃないか」
「…なんのつもりだ?」
「そう怖い顔をするな風鳴翼。 担保ってやつだよ。 エルフナインの強化計画が失敗してもこれだけのボトルがありゃ自動人形の一体ぐらいは倒せるだろうからな?」
「それでお前を信じると思うかエボルト?」
クリスの睨みに肩を竦めながら尚もエボルトは言葉を続ける。
「エルフナイン、お前の計画が順当にいけばどれ位のハザードレベルをコイツらは得られる?」
「え、えっと…先日のエボルトさんのフェーズ1に1人で対抗出来るほどかと」
「ほう……だそうだが?」
フェーズ1に対抗出来る。 それは先の事件の最後に3つのガングニールの力を重ね合わせ漸く届いた域であり、その反動も凄まじく響の身体は依然として聖遺物の欠片が身体を蝕み3日程寝込んでしまったレベルだ。
それをシンフォギアの改修で得ることが出来るとなれば大きな戦力アップだが…
「……このボトルの中に奏のものが無いようだが」
「アレは特別品に仕上げたもんでな。お前さん達には扱えない」
「貴様、よくもまあヌケヌケと…」
ギリッ…と歯軋りを立てながら睨み付けるも装者達は何も出来ないでいた。 聖詠を口にするよりも早くエボルトはこちらの命を意図も容易く狩りとる事が出来る。それをしないのもエボルトが今より更に楽しむためだ。この戦いを行いをゲームの称したエボルトが…
「私は…」
響が口を開きエルフナインを見つめる。
「私はエルフナインちゃんを信じますッ!」
「へぇ、そりゃどうしてだ? お前さんの目の前にはフィーネやドクターウェルと共に暗躍した悪い奴がいて、罠に嵌めてるのかもしれないんだぜ?」
缶コーヒーを呷りながらエボルトは石動惣一の姿で、まるで今でも協力者かのように聞いてくる。
「確かにマスターは…エボルトは私たちを騙そうとしてるかもしれない。けど、だからって困っているエルフナインちゃんを放っておけないから」
「……………」
ポカンとした表情を見せながら固まるエボルトをしっかりと見据える立花響につい笑ってしまう。
「フハハ…ハッハッハっ!!」
「おい、コイツの言葉の何がおかしいんだよ」
「いや…なに。風鳴翼や雪音クリス…それにマリア達とは違って、風鳴翼に憧れることしか出来なかった普通の女子高生だった立花が誰よりも正義のヒーローをしていてついな。 オマエさんは俺がよく知っている奴に似ている」
「いやいやいや、なんでエボルトに正義のヒーローの知り合いなんかいるんデスか」
「そりゃあ、俺はそいつに一度倒されたからな」
「倒された…ですって?」
「あぁ、もっと言えば俺が今よりも更に力を取り戻した全盛期の状態でだな」
倒されたはずのエボルトが何故?という感想よりも先に、『倒された』それが彼女達にとって何よりも重要だった。 未だ歯が立たないエボルトも無敵ではないと改めて分かったのだから。
「っと、そろそろ店を開く時間だな。 んじゃ俺をとっ捕まえたいんならnascitaにでも来るんだな。 Ciao」
我が物顔で会議室から出ていく姿を見送るしか出来ない自分に苛立ちながらも風鳴弦十郎は司令として装者達に指示を飛ばした。
「現時点を持ってシンフォギアの改修を行う。 しかし敵の出方もわからん以上、3度に分けて改修をしてもらう。エルフナインくんには負担をかけると思うが我々に協力してくれ」
「「「「はい!!」」」」
誰かを救うために少女達は戦う。
「次回予告界の平和を守るマジカルミラクル魔法少女セレナは新たな仲間のナルシストとバカと共に旅に出た。……何故私は普通に台本を読んでるんだ」
「おい、フィーネ筋肉をつけろよ!」
「俺はナルシストじゃなくて天才物理学者って呼んで欲しいんだけれど」
「えぇい、煩い! なんで貴様らはそうも自由なんだ…」
「友達出来て良かったねフィーネちゃん」
「勘弁してくれ…」