「仮面ライダービルドの正体…それは喫茶店のマスター石動惣一だった! 喫茶店の片手間世間を守る正義のヒーロー! くぅ、痺れるだろ?」
「やっている事はクズの極みだけどな」
「そんな事言うなよナイトローグ。 オマエさんだって氷室幻徳がやってたナイトローグに比べたら強過ぎるぞ?」
「幻徳…? 誰だそりゃ」
「気にすんな、オレの戯言さ。 さぁて、いよいよ1期の終盤…せいぜいカ・ディンギルを活用させてもらおうか。フハハハハハハっ!!!!」
「あー…どうなる第9話?」
スマッシュの出現から数日経った。
雪音、立花の容態は落ち着き今では日常生活に戻れるまでになったが…大事をとってノイズ、スマッシュの対応は私とビルドで行う予定になっているのだがここ数日、どちらを取っても出現率が異様に低い。
いや、そもそも先日までの両者の出現率が異常なまでに多かったのだが…ここに来て急激に低下したのを見るに何らかの意図があるのだろう。 フィーネである櫻井了子女史も姿をくらまし、ブラッドスタークにナイトローグすら姿形を見せていない今の状況は非常に不味いのかもしれない。
「何か企みがあるのか…それとも別の…」
フィーネが口にしていたというカ・ディンギルは巨大な塔状の建造物という調べが付いた、緒川さんからの連絡はそこで途絶えた。 発信元を辿ることも出来ず捜索は難航…しかし、彼がもたらしてくれた情報から東京スカイタワーに先手を打って展望台上部にて私がスタンバイしている。
日も暮れ始め鴉が鳴く空をただ見つめ時が過ぎるのを待つ…この一ヶ月、様々な事が変わった。 奏が残した置き土産は…立花響という良い少女によって人々の為に使われている。 彼女を守る為に戦場に立たせない、それは友を失った私のエゴだったのかもしれない。
雪音クリスは…まだよく分からない。だが、彼女もまた加害者であり被害者なのだろう。
ザワッ…と風が吹く。
「来たか…っ」
「フィーネでは無いがな」
振り向きざまの一刀は首筋への一線。
容赦など必要ない、殺意の一撃は籠手によって妨げられるがガチガチと金属音を鳴らし徐々に押し込む。
「ハザードレベルが…上がっている…何をした天羽々斬…っ!」
「はて、何の事やら。 私は覚悟を、背を任せることが出来る者を得ただけだ…っ。 貴様には…ナイトローグには居るのか。背を任せることが出来る仲間が!」
押し込まれた剣はナイトローグの装甲をヒビ入れる。 受け止めていた手を即座に引き初めて傷をつけられた手の甲をゆっくりと撫でると腰を落としブレードを構え両肩のパイプから蒸気を噴き上げた。
つまり、ここからが勝負の始まりという訳か…
「こい、ナイトローグ!!」
「後悔するなよ、天羽々斬…」
加速、ナイトローグの一歩はこちらの最高速度を遥かに超えている。
蒸気が彼の姿を包み消すがその邪気を隠しきれるわけではなく、その瞬足も決して捉えきれぬ速度ではない。 斜め払いの斬撃を受け止め幾度か剣を交え、ナイトローグが距離を置くと再び姿がブレる。 前後左右から襲いかかってくる剣撃を冷静に捌き攻撃の機会を探っていると見えてきたものがあった。
奴の動きの不自然さ、何処か身体の一部を庇っている様な無理をした動き… 左の脇腹か…?
確かめる為に奴が攻め込んできたタイミングで横薙ぎに剣が走るとそれを受け止め、今一度距離を置く。 間違いない、立花との戦闘で深手こそは負わなかったもののダメージは確実に入っていた。
ならばと、踏み込み上下段、剣と脚部ブレードの乱舞でナイトローグの注意を割く。 これだけの手数でも奴はブレード1本で去なし尚も反撃をしようとしてくるところを見ると実力では未だ届かぬ相手と痛感させられる。
幾度かの斬撃を加えたその時、ガラ空きになった左の脇腹に膝を叩き入れると奴は呻き声を上げやっと動きを一瞬止めた。見逃しはしない…見せた隙に回し蹴りを繰り出しナイトローグをスカイタワーから吹き飛ばした。
普通の敵ならばタワーから落ちるところであろうが敵はコウモリ、羽根を広げ空へ舞い上がる。 空は奴のテリトリー、だが戦場の選り好みを相手ではない…!
嘗て、奴の仲間に片翼をもがれたこの身…なれば、次は私が奴の両翼をもぎ取ろう…!!!
「…無茶をする…!!」
「無茶は承知の上…!! 私の後輩はこの程度では臆することない。なれば先輩たる私が無理無茶をしない理由にはならぬのだ…!!!」
「しかし、貴様は飛べない。 こちらが躱せば後は…落ちるだけだ!」
翼の一太刀を避け、重力に引かれ落ちていく彼女に向かってスチームガンが火を噴く。 落ちながらも銃弾を切り払い攻撃の隙間を縫って短刀の投擲。
空中であるこの場では影もなく、お得意の『影縫い』は出来まいと高を括るナイトローグは弾くこと無く、それを回避してみせたのだが彼女の口元が不敵な笑みを見せた。
ギュンッ!! とその脚に重さを感じ取った。 ワイヤーが絡まり、そしてそのワイヤーの元は風鳴翼のアーム部分。
そして動きが止まったナイトローグの広げた羽根に多くの剣が突き刺さりその高度を一気に落としていく。
『千ノ落涙』
「貴様も共に堕ちようではないかコウモリ…!!!」
「風鳴……翼ァァァァァァ!!!!」
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〜同時刻〜
爆裂、土砂
リディアン音楽院の地下深く。 特異災害対策本部の主要通路は燃え盛り、至る所の隔壁が降りきっていた。 その中を黄金の鎧を纏ったフィーネは悠々と歩き最深部に存在する聖遺物を手にする為、次々に隔壁を破壊していく。
設計を行った櫻井了子自身が強襲を仕掛けているのだから対策本部側としても止められる筈が無い。
最深部、完全聖遺物デュランダルが納められている一部屋。 特殊なカードが必要なのだが…そこには既に一人の人影があった。
「何者だ貴様…!!! 何故、この部屋に居る…っ」
「いやはや、何故も何も俺はここに預けたものを引き取りに来ただけさ、フィーネ。 あぁ、珈琲の一杯でも飲んで行くか?」
「……貴様、そうかソレが貴様の正体がブラッドスタークッ!!!」
男は大仰に手を広げると高らかに笑い指を突きつけビンゴっ。 それだけ告げてその腕の中にあるものを見せつけてきた。
二年前、フィーネに手渡した完全聖遺物の一つ。それを今、ブラッドスタークが回収しに来た…まさか、私が攻め込むタイミングを計って…
「何処まで私の計画を狂わせるつもりだブラッドスタークゥ!! 貴様が余計な事を重ねた…クリスを失ったのも貴様の策略だったようだなぁ!」
「おいおい、まさか本当にクリスちゃんに情が湧いてたって言うのかいフィーネェ? 確かにいい歳こいた女がそんな趣味の悪い金ピカ鎧を纏ってるよりかクリスちゃんが身に付けていた時の方が見応えはあったけどよ」
戯ける男…スタークはヘラヘラしながらその手に持った完全聖遺物を宙へ放り投げると突然現れた一人の少女がそれをキャッチし踊る。
カランコロン♪ カランコロン♪
軽妙な音を鳴らしながら手に入れた完全聖遺物を持ち上げ眺めそれはそれは腹黒い、何か癇に障るような口調で話しかける。
「ほほー、こぉれが完全聖遺物。 エボルトさんが求めていたやつなんですねー☆」
「…フザケた奴だ。 ソレがオマエの仲間かスターク。 いや、エボルトと言ったか?」
「あぁ、そうだ。 俺の本当の名前、ブラッドスターク何かじゃ無い。 エボルトってんだ。冥土の土産として覚えておきなフィーネ」
「ではではーガリィはお先に帰って最後の一人を回収しに行ってきますねぇ☆ あ、そうそう晩御飯はエルフナインが作って待ってるからちゃーんと帰ってくるんですよぉ☆」
魔法陣に包まれ消えた少女にエボルトは頭を掻き苦笑しながらボトルと銃を構えた。
「了解、ガリィちゃん。 俺もサッサと帰りますかァ…!」
Cobra...!
「蒸血」
Mist Match!
Co...Cobra! Cobra...!
FIRE!
血の色をした全身装甲緑色のバイザー、細部に施された蒸気管の印象を持つ彩飾。 フィーネが良く知るブラッドスタークの姿が蒸気の中から現れた。
「さァ、第1ステージは御終いだ。 オマエさんもよく役目を全うしてくれたよフィーネ」
「私を舐めるなぁ…!!」
桃色の鞭を振りかぶり床、天井を抉りエボルトに襲いかかるが銃撃で弾き床を這うような滑りをして躱していく。
刃を模した鞭は叩きつければ地面に突き刺さり、引き戻せば地面を抉り取り、振り回せば空気を裂く。
利便性においてはそこそこと評価をしつつも決して一撃たりとも当たらないエボルトはスチームガンの引き金を何度も引くのだが真の力を引き出したネフシュタンの鎧が意図も簡単に銃弾を弾いてしまう。
エボルトとしてはフィーネをここで始末してもいいのだが何せブラッドスタークのままでは突破力が足りない。加えて自身が倒してしまえばシンフォギア共の経験値にもならないのでサッサとトンズラを決めるのが一番と判断した。
さてどう逃げようか、そう考えた矢先にエボルトの目に映った光景は完全聖遺物デュランダルを振りかぶったフィーネの姿。
「…おっと、こりゃァ不味い」
轟音と共に壁が溶け、通路が灼熱の世界へ変わり果てた。 一振りから放たれた光の帯は何とも凄まじい威力だろうか…
流石のエボルトもこれには冷汗を流し身構える。
「私は成せばならない…カ・ディンギルを起動させ、バラルの呪詛から人類を解き放つ!!!」
「バラルの呪詛…なんだそりゃ?」
「人類の意思疎通を妨げ、相互理解を阻む呪い。 私はあの方へ想いを告げる為…私は月を破壊する…!!!」
怒気を孕み、殺意を向けてくるフィーネに対してエボルトは笑った。
スチームガンもブレードも放り捨てて腹を抱え床に転げ大笑いした。
「何が可笑しい…!!!」
「いやいやいやいや…くくくっ、フハハハハハハっ!!!? まさか、オマエさんの…目的が…くはははは!!!」
苛立ちが募り、転がるエボルトに鞭を打つがそれを片手で受け止められやっと治まった笑いの主は立ち上がる。
「まさか、フィーネの原動力が『愛』だとはなァ? オレには分からない感情だ。 よしっ、やっぱりオマエさんを倒すのはシンフォギア共に任せてオレは見物と洒落込むか」
「私がこの場から貴様を逃がすと思うか?」
「お前が逃がさなくてもこちらさんがオレを逃がしてくれるさ」
エボルトの背後に拳を構え両者を睨み付けているのはこの基地の司令である人類最強、風鳴弦十郎その人。 ここでフィーネ、ブラッドスタークを仕留めればこの事件は…一連の騒動は治まると踏んで自ら出陣してきた、といった所だろうか。
「了子くん…やはりキミは」
「ふん、その名で呼ぶな。 私はフィーネでありそれ以外ではない!」
「おーぉ、乳繰り合うんなら他所でやれ…いや邪魔者のオレが帰るとするか。 Ciao」
蒸気に巻かれ姿を消すブラッドスタークに弦十郎は舌打ちをするが今最も相手すべきはこのフィーネだ。と、意識を切り替え相対する。
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スカイタワーの地上部。 市民達の避難は終わっており誰もいない広場に隕石の如く二つの影が落下した。
土埃を巻き上げながらゆらりと立ち上がったのは風鳴翼。いくらシンフォギアを身に纏っているとはいえあの高さから落下したのだから無傷とは言えず痛む身体に鞭を打ち、共に落ちたナイトローグを視野に入れようと周囲を見渡す。
バチバチと火花を上げながら倒れ込んでいるナイトローグ。その手に握られたスチームガンが破裂し壊れた。
全身装甲が解除され遂に正体が露わになる…かと思われたが其の出で立ちはライダースーツを着、顔はフルフェイスのヘルメットに覆われており何一つ手掛りの得ることが出来ない姿だった。
「ちっ…壊れたか」
「投降するのなら生命の保証は致しましょう。 手を上げ膝を付きなさい」
アームドギアをナイトローグの首筋に添え警告を放つ翼だが、ナイトローグは違った。 ヘルメットのバイザーの奥に赤く輝く瞳を見せながら、あろう事かアームドギアをその手で握り圧砕してみせた。
「なっ…!?」
驚愕の声を上げた瞬間、下腹部に衝撃が走る。 膝を付いた状態からの掌底が身体の芯を捉え翼を大きく吹き飛ばした。
「変身を解いたことは褒めてやる。 だがな、強くなる為に変身してたんじゃぁない…強過ぎるから抑えてたのさ。 こうなっちまったからにはお前を瞬殺出来るが…そんなことしたら父さんに怒られるからな。時間稼ぎも済んだし帰らせてもらう」
変身が解けたナイトローグは普段の重々しい口調とはまた違い、フランクな口調で物騒な事を吐いてくる。 それに奴は『父さん』と言った。 それを指し示すのはブラッドスタークか…はたまた更なる黒幕か…
小瓶を割り、中身が地面に飛び散ると陣の様な模様が奴を包み込んでその場から魔法のように消えた。
シンフォギアを解き、何とか息を整えようと身体を壁に預けながら空を見上げれば夕日は既になくなり真ん丸の月が空に大きく輝いている。
静寂が訪れた空間に本部からの通信だけが響いた。
フィーネの狙いは、月の破壊だ。と
「あぁ…フィーネ…何故そんなに嚙ませ犬っぽく…」
「なんだクリス。 やっぱり奴が気になるか?」
「ば、バカ! 本編じゃあんなに敵然としてたのにここじゃもう殺られそうな感じなんだぞ!?」
「そりゃそうだ、これはオレ、エボルトの物語だしなぁ?」
「それでいいのか戦姫絶唱シンフォギアEVOL!?」