「なんだこりゃ?エビって奴か?」
「いや蟹でしょ」
「なんだよ・・・」
食事に向かったオルガ達が最初に見たのは蟹という物だった。
この赤くて足が6本あってハサミみたいな手が付いているコイツは本当に食えるのか正直思いもしない。
昔ラフタさんにイサリビがエビみたいだと言われたことがあったが、よくよく見ればイサリビには似ても似つかなかった。
「オルガ、なんかこれ硬いんだけど本当に食べられるの?」
「ああミカ、それはね・・・
「食えるに決まってるだろ、見てろよミカ。こいつの食べっぷりを」
オルガは風の言葉を遮り行動で示した。
正直蟹の食い方なんてよく分かんねえ。けどミカが期待の眼差しで俺を見てる。
あの目に移る俺はいつだって最高に粋がって、カッコいいオルガ・イツカじゃなきゃいけねぇんだ。
ガリィ!ボリィ!・・・
だからよぉ・・・止まるんじゃねぇぞ
「ちょちょっと!?」
まともに身を取り出さず殻ごと食べたオルガはあまりの不味さに無言で部屋を立ち去った後、盛大に吐いた。
「すみませんでした」
食事中に嫌なもん見せそうになったオルガは団員達に謝罪するが、特に気にも止めた様子もなく食事を続けていた。
「オルガ、大丈夫?」
「問題ねーよ、それにやっと分かったんだ。コイツは殻を剥いて食うもんだって事を」
「当たり前じゃん。こんな硬いの口に入れるのはオルガだけだよ」
そう言ってミカは教えられてもいないはずなのに器用に殻を壊し、身を食べていく。
食べ方が分からないミカは自分で考えて食べる場所を本能的に感じ取ったようだ。
「ミカお前・・・」
「変わった味だな・・・チョコレートの方が美味しい」
ちゃんと食べたがあまり口に召さなかったのかミカは蟹を食べるのをやめ、懐に持っていたチョコレートを食べようとする
「ダメですよミカ。出された御食事はちゃんと食べないと」
「そうよ、せっかくのご馳走なんだからもっと味わって食べないと」
「だって魚みたいな匂いして苦手だし」
「確かにお前魚苦手だったしな。でもよ、これは俺達が進み続けて手に入れた飯なんだぜ?だからよぉ残すんじゃねぇぞ」
「・・・分かった。オルガ言うなら食べるよ」
渋々とミカはチョコレートと共に蟹の身を頬張る。ミカの表情の変化は分かりづらいが少しだけ笑顔になった様に見えた。
その頃マクギリスは・・・
「マクギリス様、私の入れたミルクティー如何でしたか?」
「マッキー、私の入れた紅茶の方が美味しいでしょ?」
「甲乙つけがたいな、だが・・・アルミリア、君の入れてくれた紅茶の方が私の好みだ」
マクギリスはアルミリア、夕海子と共に優雅な一時を楽しんでいた。
そしてマクギリスは時を待つ。
彼の計画の進行は既に第1段階を終えようとしていた
「いい味だ、全ての従業員達にもこの茶渡して来てくれたか?」
「うんマッキー。みんな喜んでたよ」
「私のミルクティーの方がもっと喜ばれてましたわ」
「私の方が凄かった!」
「いいえ、私の方が貴方の3倍は喜ばれてましたわ!」
お互いに譲れない思いが交錯していく。しかしこの状況はマクギリスにとって本意ではない。
「フ、二人ともそこまで言うのであればお互いの茶を飲みあうといい。それでハッキリするだろう」
マクギリスの提案は分かりやすいものだった。互いの事をもっと知るために互いにの茶を飲む。
平和的な勝負が今幕を開け、そしてすぐに終わる
彼女達が感想を言い終える前に彼女達は眠りに落ちた。
「・・・これがモンターク商会新開発の睡眠薬の力か、我ながら恐ろしいものだな」
マクギリスはアルミリアと夕海子の入れた茶に睡眠薬を仕込ませ、旅館の従業員達と彼女達を眠らせることに成功した。
これこそがマクギリスがこれから行う計画の前段階の終わりである。
次の計画が本番であり彼はこの時の為にあらゆる準備をしてきた。
マクギリスは事前に睡眠薬を無効にする薬を飲んでいたため効果が現れなかった。
「モンタークの売り上げの半分も使ってしまうとは想定以上だったが、俺の求める新世界、エデンを見る為には必要な金だった。
・・・石動、全ての同志達に連絡を、ついに立ち上がるべき時が来たと」
マクギリスは計画を実行に移す為石動を含むギャラルホルンの同志達を集結させる。その場所は旅館近くの山の麓付近だった。
「大人にはなりきれないものだな。これ程にまで心が躍るとは・・・」
マクギリスは不敵な笑みを浮かべながら石動達の元へと向かおうとする。しかしあの男が邪魔をしに来た。
「マクギリス!皆を眠らせてお前は何をしようとしているんだ!?」
「ガエリオ・・・」
マクギリスの前に立ちはだかったのは親友であったガエリオだ。
「答えろ!マクギリス!」
「答える必要はない・・・が、お前にだけは教えてやろう。
私はかつてアグニカ・カイエルですら成し遂げられなかった理想を成し遂げようとしている」
「マクギリス・・・?意味が分からない。理想?お前は何を・・・」
「アグニカはかつて見ようとしていた。
天使達が入浴して作り出すエデンを。
アグニカはその光景を一目見ようと様々な手を行った。
しかし結果は失敗に終わった。その原因は行為を良しとしない者達の妨害にあった。
私は彼と同じ道を歩まない為に事前にこちらから仕掛けた。
その結果が今の光景だ。
旅行に相応しい劇的なイベントだろ」
要約(風呂覗きに行くから邪魔するな)
「マクギリス・・・お前はアルミリアや弥勒がいながら、そんな事を・・・
たとえ親友でもそんな行動は許される筈がないんだ!」
ガエリオは拳を握りしめマクギリスの顔を目掛けて殴りにかかる。しかしマクギリスはその攻撃を読みいなした後足を引っ掛け倒れこむ様に転ばせる。
「邪魔だガエリオ」
「っくぅ! お前は妹や弥勒の好意を利用してぇ!マクギリスゥ!」
ガエリオは激怒する
親友の企みを
妹を見捨てて他の女の所に行こうとしたことを
許せなかった
ガエリオの怒りに任せた攻撃をマクギリスは軽くかわし反撃を加えていく。
それでも負けじとガエリオは立ち上がり何度だって食らいついていく。
「弥勒はお前に恋い焦がれているんだぞ!妹も今のお前なら安心して任せられると・・・」
「彼女達については安心するといい。彼女達の幸せは保証しよう」
「う、嘘だ!嘘だぁ!マクギリスゥゥゥ!!!ガハァ・・・」
激昂するガエリオをマクギリスは叩きのめし、鳩尾に拳を入れ込む。
その衝撃でガエリオはその場から崩れて気を失った。
「ガエリオ、しばらく眠っているといい。その間に全ては終わる」
その頃オルガは・・・
深い眠りに入っていた。
食後に弥勒から渡されたミルクティーを一人飲んでいたためである
「ぐっすり眠ってるわね」
「先生ってば一番遊んでたからね」
彼女達は飲み物に盛られていることなど知らず、疲労と腹が膨れた事が原因だと思っていた。
「さて、私達はお風呂に行きましょ。あ、ミカも一緒に入る?・・・なーんて冗談・・・
「いーよー」
「えぇ?ミ、ミカ?冗談だからね、本気にしないでね、ね?」
「そう?俺は別にみんなと一緒でも構わないけど」
「私が困るの!」
風は仏頂面なミカの慌てふためく顔を見たくてからかったが、逆に風がおちょくられた。
結局別々に風呂に入ることになったが後に彼女達はこの選択が間違いであったことに思い知るだろう。
エデンに!エデンに全てを捧げたのだ!悔いなどない!