オルガイツカは勇者である   作:村田殿(ハーメルン版)

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先の先の先のストーリーはバンバン思いつくのに次の話を書く時どうにも悩み続ける癖が自分にはあるようです
自分のやる気さえ出てくれればエタルことはないでしょう
だって最後の戦いまで構想あらかたできてるんだから
一つネタバレを書くなら
「國を守りし正義の魂!
国防戦隊!シュゴレンジャー!」
ってネタは考えついてます

さて今回のあらすじは友奈ちゃんにやってもらいます

モビルアーアーっていう鳥みたいな機械をマクギリスさんはバーって行ってバババーンって感じで倒したの。
それはとっても勇ましくて私もあんな風にみんなの為に戦える様になりたいな

でもその後私と花凛ちゃんの二人で何処からか来たバーテックスも倒した。
あれは一体何だったんだろう?
ふたご座なのに三人目なんて不思議だよね?
もしかしたらバーテックスにも難しい家庭の事情とかあるのかな?

そんな私の疑問がすぐに飛び去ってしまう様な出来事が今回のおはなし
そこで語られる真実は私達の知りたいことでもあり残酷なものだった
でもこんな事で挫けちゃダメだ
だって私は勇者なんだから



真実

「会いたかったよーわっしー」

 

瀬戸大橋の近くの小さな社にて友奈達と同年代と思わしき少女が声をかけてきた。

どこかのんびりとした雰囲気の少女だ。しかし彼女の姿は普通のものではなかった

頭に包帯を巻きつけ口と左眼だけを露出し、服装は患者衣でベットを椅子のように腰掛けていた。

 

オルガは彼女を見て声も出なかった。患者衣の服の下にあるであろう足の部分が無かったからだ。

 

「アンタその体・・・」

 

「わっしー?って誰の事?鷲?鳥?」

 

オルガと友奈が彼女に疑問の声をかけるがそれをあえて無視したのか彼女は言いたいことを話し出した。

 

「あなたが戦っているのを感じてずっと呼んでたんだよ。わっしー」

 

彼女が言うわっしーと呼ばれる人物に三人に心当たりはなかった。が、彼女の目線は東郷へと向いていた

 

「東郷さんの知り合い?」

 

「・・・いいえ初対面だわ」

 

「・・・はぁー。あははは」

 

彼女はどこか残念そうな顔をして溜息をつきながらも説明しだす

 

「わっしーって言うのはね、私の大切なお友達の名前なんだ。いつもその子のことを考えていてね、つい口に出ちゃうんだよ。ごめんね」

 

「あの、私達を呼んだんですか?その後ろの祠で?」

 

友奈は彼女の背中にある祠に目をかける。その祠は学校の屋上にも同じものがあり大抵戦闘が終わるとこの祠の近くに戻される仕組みだった。

 

「うんそうだよ。バーテックスとの戦いが終わった後ならこの祠を使って呼べると思ってね」

 

「バーテックスを知ってるのか、お嬢さん?」

 

「うん、二年前にもバーテックスの襲来があってね。

一応貴方の先輩ってことになるのかな。

私は乃木園子って言うんだよ」

 

「讃州中学、結城友奈です」

 

「同じく、東郷美森です」

 

「俺は・・・

 

「鉄華団団長オルガ・イツカさんだよね?」

 

「俺を知ってるのか?」

 

「春信さんから色々聞いているよ。貴方がみんなを率いて、時には守ってくれてたんだよね」

 

「ああそうだ、団員を守んのは俺の仕事だからな。・・・それより2年前にもバーテックスの奴は来たのか?

奴がお嬢さんをそんな目に?」

 

「うん。私も勇者として戦ってたんだ。二人のお友達と一緒に、えいえいおーってね。今は、こんなになっちゃったけどね・・・」

 

オルガ達はどこか腑に落ちなかった。自分達が戦っているなか精霊が大抵の攻撃は防いでくれていた為自分が彼女の様になるとは思えなかったからだ。その疑問を深く追求する為友奈は更に聞く

 

「バーテックスが先輩をこんなヒドイ目に合わせたんですか?精霊は?」

 

「ああ、うーんとね、敵じゃないよ。私、これでもそこそこ強かったんだから。

勿論精霊はちゃんといたよ

今は離れてるけどね」

 

「なら何でそんな身体に?」

 

「えっと・・・そうだそうだ。友奈ちゃんとわ・・・美森ちゃんは満開、したんだよね?」

 

「しました。わーって強くなってばーんとバーテックスを倒しました」

 

「そっか、じゃあその後咲き誇った花はどうなると思う?」

 

「そんなの決まってるだろ?鉄の華でもなければ散って・・・まさか!?」

 

オルガは自分で言って嫌な予感を感じた。そしてその予感は的中する。

 

「そうだよ、花は散る。満開の後には散華という隠してた機能があるんだよ。

満開の後、体のどこかが不自由になったはずだよ」

 

「っ!?」

 

「え?それって・・・」

 

園子から出た発言は三人にとって衝撃的なものだった。咲いた花が元には戻らないように散華で失われたものは元には戻らない。その真実は彼女の身体が物語っていた。

 

「それが散華。神の力を振るった代償。華一つ咲けば、一つ散る。華二つ咲けば、二つ散る。

その代わり、決して勇者は死ぬことはないんだよ」

 

「死なない?どういうことだ?」

 

「精霊のお陰だよ。それは貴方が一番よく分かってるんじゃない?」

 

「は?」

 

オルガには精霊などいない。だというのに銃弾を浴びようがビームを浴びようが何をされても一息おけば何事も無かったかのように立ち上がる。

それが当たり前だと思っていた。そう、誰も間違いだと気づかなかった。

 

「貴方もまた勇者なんだ。ううん少し違うかな?こういう時なんて言うのかな?よく分かんないや。あはは〜」

 

園子はなにか考え事をして乾いた笑いをする。オルガに特別な何かを感じてはいるがうまく言葉には言い表せないようだ。

オルガもまた彼女に言われた言葉を自分の中でよく考え込んでいた。

 

「・・・私はねいっぱいいっぱい戦って今みたいになっちゃったんだ。

元からぼーっとするのが特技で良かったかなって。全然動けないのはきついからね」

 

「い、痛むんですか?」

 

友奈は自分が彼女のようになっていたかもしれないという恐怖に手を震えながら尋ねる。

 

「痛みはないよ。敵にやられたものじゃないから。満開して、戦い続けてこうなっちゃっただけ。

  敵はちゃんと撃退したよ」

 

「なんだよそれ!?じゃあアンタは世界を守る為にそんな身体になったって言うのかよ!」

 

「うん。そうしないとみんな死んじゃうから」

 

彼女の発言は平静に聞こえたが大きな哀しみと少しの怒りに満ち溢れたものだった。

 

「どうして・・・どうして私達が・・・」

 

「いつの時代だって、神様に見初められて供物となったのは・・・無垢な少女だから。

穢れなき身だからこそ、大いなる力を宿せる。

その力の代償として、身体の一部を神樹様に供物として捧げていく。それが勇者システムの真実」

 

「供物・・・それじゃあ俺たちは生贄みたいなもんじゃねぇか」

 

「生贄か、そうだね。ヒドイ話だよね」

 

「それじゃあ私達がバーテックスを倒せてなかったら・・・」

 

東郷は彼女のようになっていたかもしれない、という恐怖に顔を伏せる。そんな東郷を見て友奈は震えた東郷の手に自分の手を重ねる。

 

「でも、バーテックス全部倒したんだから大丈夫だよ、東郷さん」

 

「友奈ちゃん・・・」

 

「ああ、もう戦う必要はねぇ、ねぇんだ」

 

「・・・そうだといいね」

 

オルガは自分がもっとしっかりしてれば彼女達に満開をさせることはなかった。

その事実にオルガは強い自責の念を刻む。

全員が哀しみに暮れ、辺りに心地良い風が吹く。その風すら今のオルガ達には痛いものだった。

そんなオルガ達の静寂を破り、仮面を被った大赦の職員達と万丈が現れた。

彼は特に悪びれた顔もせず堂々とオルガ達に話しかけた。

 

「よっ!

どうしたどうした?せっかくモビルアーマー撃破して祝勝会でもやろうかっての思ったのなんだそのお通夜みたいな顔は?

そんなんじゃせっかくアグニカらしいところを見せたマッキーが報われないぞ〜?

それにさ、全部が全部悪い事じゃなかっただろ?

精霊のお陰で死なずに今日までずっと生きていけてるんだからそれでいいんじゃないか?」

 

「・・・お前はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

友奈と東郷が意気消沈している中、オルガは激昂し力の限り万丈へ殴りにかかる。万丈は特に躱すこともなく無抵抗で殴られる。その様子はまるでサンドバックのようだった。

 

「テメェも!テメェらもふざけんな!

何が勇者だ!何が王様だ!

俺たちは足蹴にされていいように扱われていただけじゃねぇか!」

 

「そうだよ。人類を守る為にぐぅっ、仕方なかった。だってがはぁ、散華を知ってたら満開なんて使わなごほぉ・・・

だから隠してた」

 

殴られながらも万丈は弁明をしだす。しかしどんなに綺麗事を並べてもどんな理屈を駆使しても今のオルガに聞く耳は持たない。

立つ力も残らず万丈はその場に倒れこむ。

 

「ハァハァ、・・・まぁ大赦もさ悪意を持って騙してた訳じゃないから。

少なくとも俺や春ちゃん、村ちゃんは騙していて悪いなぁと思ってたし、バーテックスと戦う勇者の勇ましさにウルッと感動して春ちゃんはウッカリ真実を話しそうになったこともあったなぁ」

 

「何で、何でこんな大事なことを隠してた!」

 

「そりゃ簡単だ。それは・・・

 

「それは残酷な真実を隠すためです」

 

声の主は今まで万丈を助けもせずただ見ているだけだった大赦の連中の中からだった。一人飛び出してオルガの問いに答えた。

 

「っ、その声アンタは・・・」

 

オルガの声とほぼ同時にかの者は仮面は外す。

その顔はオルガも見知った顔だった。

 

「花凛の兄貴・・・」

 

「オルガさん、これが今の大赦です。大赦の最優先目的は人類の生存圏を守る事なんです。

その為なら非情な選択も辞さない。

散華の事を伝えれば貴方達は戦う事を躊躇うでしょう?

そうなれば広がる戦火はもっと大きなものになっていました。

だから誰かがやらなければならなかった。・・・ならないんです」

 

「・・・それがアンタ達の考えだって言うのか?

アンタらは家族にすら真実を伝えられないほどの組織なのか?」

 

「・・・私・・・俺だって!伝えようと何度も何度も思いましたよ!

けどこんな残酷な真実を伝えて今更何になるって言うんです!

俺は妹にすら嘘をついた最低な、最低な!

ハァ、ハァハァ、ガバァ・・・」

 

春信はその場で過呼吸を起こし泣き崩れる。今まで溜まっていた悲しみを全て吐き捨てるかの様な光景だった。

友奈は春信の近くへ行き、少しでも早く泣き止むように寄り添った。

そんな春信を見ても仮面を被った大赦の連中は涙一つ流そうとしない。

泣いているのならば水滴の一つや二つ仮面の間から出てきてもおかしくないが、そんなものは誰一人いなかった。

大赦はただ頭を下げ許しを乞うことしかしなかった。

オルガはまるで人形を相手にしているような感覚だった。

誰かが極端に悪いわけではない。大赦にだって葛藤や後悔はある。

オルガはぶつけようのない怒りを感じ地面を殴りつける。

 

「悲しませてごめんね。大赦の人たちも、このシステムを隠すのは一つの思いやりでもあると思うんだよ。

・・・でも私はそういうの、ちゃんと・・・言って欲しかったから・・・」

 

園子は今までの淡々とした声口から悲しく震えた声で大赦に訴える。それと同時に園子の着物に涙が落ちた。

 

「わかってたら、友達と、もっともっとたくさん遊んで・・・・。だから、伝えておきたくて・・・」

 

東郷は彼女の元へ車椅子を動かして涙を拭う。少しでも悲しい思いを一緒に受け止めてあげたいと思ったからだ。

園子は東郷が近くに来た時、彼女の髪につけている青色のリボンを見つめる。

そのリボンを見て園子は少しだけ笑った様に見えた。

 

「そのリボン似合ってるね」

 

「このリボンは・・・とても大事なもの。それだけはちゃんと覚えてる。でもなんで大事なのか思い出せなくて・・・」

 

「ふふ、いいよ。それが大事なものだってちゃんと分かってればね」

 

「・・・どうにもならなかったのか?これ以外に方法が無かったのかよ・・・」

 

「バーテックスをやっつけるには神樹様の力を使える勇者と阿頼耶識っていう危険な手術を受けて悪魔と契約した勇者だけ。

でも阿頼耶識は今の時代、非人道的なものだとしてその技術は忘れられちゃった。

だからガンダムという天使を狩る悪魔がいなくなったら私達だけなんだよ、戦えるのは」

 

阿頼耶識、それは脊髄にピアスと呼ばれるインプラント機器を埋め込み、その部分でナノマシンを介して操縦席側の端子と接続することで、パイロットの神経と機体のシステムを直結させる

ガンダムの性能を最大限に引き出しバーテックスと対抗するには阿頼耶識という手段が最良である。

だがその為の人体改造はリスクが非常に高く失敗すれば日常生活もまともに行えない廃人状態になってしまう。

三百年近い平和な時間と共に阿頼耶識システムは不必要なシステムとして廃れていった。

 

「そろそろ日が落ちるね。今日は色んなことがあって私も疲れちゃったよ」

 

園子は落ち着きを取り戻した春信の目を見て、淡々とした口調で大赦全てを警告するかのように話す。

 

「春信さん、帰してあげて彼女達の街へ。それとこれ以上みんなを悲しませたら私怒っちゃうからね?」

 

「はい!肝に命じておきます!」

 

 

春信が運転する車の中にてオルガは助手席に座り友奈と東郷は後ろの席へと座っていた。

重苦しい雰囲気で会話はない。

 

友奈は下を向いて俯いている東郷を少しでも励まそうと肩に手を回して抱き締める。そうしていないと友奈自身も辛さで俯いてしそうだった。

 

「友奈ちゃん?」

 

「大丈夫だよ、私がずっと一緒にいるから。何とかする方法を

きっと見つけて見せるから」

 

「友奈ちゃん、うっ、うう・・・うわぁぁぁぁ!!」

 

東郷はその場で泣き崩れる。涙を流さなければ心が壊れるかもしれない。今まで溜め込んでいた悲しみは涙と共に少しづつだが消えていった。

オルガはただ二人を見守ることしか出来なかった。団長として何かしてやれないかと必死で考えたがいい案が何も浮かばなかった。

団長として何もしてやれない悔しさからオルガは拳を強く握りしめる。

 

「・・・友奈さん、先程はありがとうございました。貴方が神樹様に勇者として選ばれたのか、少し分かった気がします。

・・・明日勇者部の皆さんにちゃんとこの事は話します」

 

「・・・分かった」

 

 

 

 

 

 




次回予告 反撃の狼煙
「俺さ、七人まで分身できるんだ」
「秋は肉うどんっしょ」
「私は大赦の人間です。そこに個人の感情は持ち得ません」
「会いたかったよ〜勇者の子達」
「三十年も前の勇者か」
「いい言葉だな、感動的だな
「俺はもう二百年も大赦の闇として生きている」
「おばあちゃんが言っていた。子供は宝物、この世で最も罪深いのは、その宝物を傷つける者だ」

あと万丈士には気をつけろ
奴の正体はバーテックスだ

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