オルガイツカは勇者である   作:村田殿(ハーメルン版)

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よくこの小説を読みに来てくれた
残念だがうどん三銃士なんて者は本編には登場しない
騙して悪いが仕事なんでな
この小説の続きを読んでもらう

今回は万丈君回ですは
次は今回の時間軸と同時間の勇者部部室内の話をコメディに書こうと思います



欲望がお前の果てのゴールになる

「・・・少年?そんなに無言で見つめられると作業しにくいんだが?」

 

「俺はオルガに言われたんだ。アンタを見張ってろって」

 

モンターク地下室にて万丈とミカは対峙していた。

ミカのその瞳は彼の指の先の針を見つめていた。神のうどん作りをするわけでもなく糸は進んでいきやがて30センチほどの人型のぬいぐるみの姿になる

そこから服と髪をイメージした布を付け足していく。

出来上がったぬいぐるみは彼が蓮と呼ぶ少女のぬいぐるみだ。セミロングの黒髪に白いベレー帽をかぶり、アマリリスの花をつけている。

服装は黒いワンピースを基調とし胸元は白のモコモコとした生地を詰め込んでいる。

ぬいぐるみでデフォルメされているがどこか凛々しさを感じる一品だ。

 

「うんうん、我ながらいい出来だ」

 

「誰それ?」

 

「これか?これは蓮ちゃんのぬいぐるみだ。俺の・・・大切な人のね」

 

「へぇ」

 

ミカは特に興味もなさそうに相槌を打つ。そこから沈黙が始まろうとした時おかしな質問をミカに問いかけた。

 

 

「なあ少年、もしもの話だけど春ちゃんが敵になってしまったら君は討てるか?

 

「何それ?そんなのありえないでしょ?」

 

「ありえないよな、でもそうなった時やれるのか?」

 

「おれはどんな理由があってもやりたくはないな。でも、オルガが本気の目で俺に言ってきたら俺はそれを全力でやる」

 

「・・・そうか、なら安心だな。少年なら明後日の戦いに俺を討てるな」

 

「うん・・・え?」

 

「え?じゃないよ。少年の見立て通り俺は黒い鳥だ」

 

『ブラックサレナァ!』

 

あっさりと正体をバラした万丈はブラックサレナが描かれた勇者システムをミカに見せつける

しかしミカはいつものように銃を向けなかった

 

「どうした少年?何故銃を向けない?」

 

「・・・アンタを撃っても何も変わらない、それくらい俺にも分かる。

アンタは明後日にアンタの立てた計画で倒さないと意味がないんでしょ?」

 

「イグザクトリー!よく分かってるじゃないか少年。

明後日俺は大赦の黒い部分を世間に公表し町を荒らそうとする。それを止めるのは大赦の正義を示し、国防をなす君達だ

大赦の現体制は崩れて勇者達の地位は急上昇するだろう?

 

ここまでは俺の夢、その計画の中で俺の体を皆んなに明け渡す為の銃を作ったんだか、まさか断れるとは想定外だったよ」

 

「当たり前じゃん」

 

ミカの辛辣な一言に万丈は苦笑した

 

「当たり前か、俺はそんな事も分からなくなったのかな。

俺は勇者の同級生や家族、先輩後輩と大赦関係者等、変な情報を知ってしまったのを何人も始末してきた。

下手な真実なら知らない方が良いのにさ

 

事故死に見せかけたり、誘拐して記憶を抹消したりバーテックスの存在を知られないよう汚い手をよくやってきた。

こんな俺に消える以外の価値があると思うか?」

 

「あるでしょ?アンタが作る飯は美味しいし、神のうどんってのを作るんでしょ?」

 

「・・・ありがとう最高の褒め言葉だ。少年、礼に三つほど良いことを教えてやろう

まずは散華の戻し方だ」

 

「やっぱりあるの?皆んなが元どおりになる方法が」

 

「ああ、あるよ。簡単な事だ、神樹様から奪えば良い」

 

「へぇ、具体的にどうすればいいの?」

 

ミカの素朴な疑問に万丈は深い溜息をつく

 

「少年、そんな事をしてみろ。死ぬぞ?神樹様から奪うということは神樹様の怒りを買うこと。

そいつはもう結界内では生きてはいけない

得体の知れない結界外で生きるか、神樹様に殺されるか、二択しかないんだよ

だから少年、間違ってもそんな事はするな」

 

「じゃあ結局方法は無いの?」

 

「死ぬ気でやれば大抵の事は出来ない事はない。そう、死ぬ気でやればね」

 

「そうだね」

 

ミカのその対応に万丈はどこか自分に似たものを感じた。まるで一度死んだかのような発言だったからだ。

その重苦しい空気をはらう様にテンション上げた声で次の話題へと移行する

 

「ではでは二つ目と参ろう。少年、千景殿という建物を知っているか?」

 

「何それ?」

 

「別名ゴールドタワー、大赦が管理している霊的国防装置の一種だ。展望台から千々の景色を見られるゆえに千景殿と、上里っていう大赦名家のおばあちゃんが名付けたらしい。

でだ、そのタワーには天使と呼ばれる存在がいるらしい」

 

「天使?それってモビルアーマーなの?」

 

「ノンノンノン、神樹から信託を受け取る巫女の少女こそが天使と呼ばれる存在だ

マクギリス殿が絶賛するほどの天使っぷりらしい」

 

「ふぅん」

 

「興味なさそうだな?ならとっておきの情報を教えてやろう。

あの塔の動力源には黄金の輝きを放つガンダムのツインエイハブリアクターが使われているって噂だ」

 

「黄金のガンダム?なんだか凄く目立ちそうだね」

 

「目立つだけじゃない、あの機体には乗る者の魂を天国へ連れ去ってしまうなんていう世にも奇妙な噂まで立ってる。だから厄祭戦でも使われた形跡もなんでそんな物を作ったのか、分かっちゃいないんだ」

 

「ようは使えない機体って事?じゃあ意味ないじゃん」

 

「そうさ意味なんかない。だけどもしその機体を扱えたとしたらそいつはバエルをも超える力を手にする事ができるだろう

中々夢のある話だろ?」

 

「・・・そうだね、でも俺はいらないかな。バルバトスは俺の一部みたいなもんだから」

 

「そうか、なら俺が乗るのチャレンジしようかな〜・・・なーんてね」

 

本気の目もせず軽く笑う程度の冗談だった。もしそんな人物がいるのであればその者は自らの死すらも超越した存在だろう

そして三つ目の話題に入ろうとした時ミカに一本の電話が入った、風からだ。

 

「あっもしもしミカ!?明日予定ある?ないわよね!一緒にデート行きましょ!それじゃ早く戻ってきてね」

 

有無を言わせぬ風の早口にミカは珍しく唖然とした顔でいた

 

「ど、どうした少年」

 

「いや、なんか風がデートしようって」

 

「デートかぁ〜いいよなぁ少年、一つアドバイスをしてやろう。好きな人を抱きしめる時あんまり力入れすぎるなよ、ハグは愛情表現の一つだが強すぎる力は相手を傷つけるだけだ

よく覚えておけよ?」

 

「それもアンタがよく言ってるおばあちゃんの言葉ってやつ?」

 

「いや、俺の言葉だ。相手を大事に思う心意気があるのならその優しさが本当に相手の為になっているのか、よく考えろよ?俺はそれが出来なくて彼女達を傷つけたから・・・」

 

どこか遠い目をし昔を思い浮かべるその瞳には映るものは悲しみとやりきれない思いであった

彼自身の善意ある行動は弥勒家を没落の道へ追い込んだ。変えようのない事実による忌まわしき過去の記憶のイメージが彼には見えていた。

 

「・・・蓮ちゃん・・・俺は・・・

 

過去を振り返ってそのまま妄想の世界に入り込もうとした、その時彼の携帯がジャズを鳴らす、それは彼の電話呼び出し音だ

 

「トドさんか?俺だ。・・・そうか、ついに集まったかうどん三銃士が。ああ、連れてきてくれ」

 

電話を切ると軽く溜息をつきミカに脅すように声をかける

 

「少年、ここはもうじき料理の戦場と化す、早く彼女の元へ行きなさい。いいや行くんだ早く!」

 

必死な掛け声にミカは渋々階段を登り始めようとした時去り際にもう一言ミカに呟いた

 

「少年、分かってると思うが俺の正体は彼女達には秘密な。それは俺なりの優しさだ」

 

 

ミカは軽く頷きその場を後にした

 

 

 

 

 

「どこで道を間違えたんだろうな?俺はただ蓮ちゃんや友奈、静ちゃんと一緒に漫才しあって笑ったり友奈のこと悪戯心で煽ったり、蓮ちゃんの成長を見守り続けて楽しくも普通に生き続けたかった・・・俺のような間違いはするなよ少年」

 

思い返しを終えて現実へと帰った万丈はふとモニターに映されたモンタークの駐車場を見た。そこには荒々しくドリフト駐車する春信の車があった

明らかに平常心を保てていない運転に息を呑んだ。

 

「まさか・・・ねぇ」

 

真実を知りたい気持ちは強い、だが真実ほど残酷なものなどこの世界にはほぼ存在しなかった

モンターク入口にて万丈と春信は相対する

春信の顔は後悔とやりきれなさが滲み出ていた

 

「いたのか?」

 

春信はゆっくりと首を縦に振る。口に出すことが恐ろしかった。認めたくなかった。それでも現実は変わらない

村田が壁の外への調査に向かい、バーテックスに倒されたという現実は

 

「分かった、本部へは俺が報告しに行く。少し休んでろ

ハァ〜全くバーテックスはいつもいつも俺の邪魔ばかりしてホント困っちゃうな〜」

 

口振りはかなり軽くまるで絵空事のように話す。しかしその心境にある怒りは今まで喚き散らしていた発散していたものを遥かに凌駕するものだった

バイクに跨り彼は一呼吸置いた後勢いよく走らせる。その目的地は大赦・・・ではなく彼の出身地である高知県だ

 

 

 

 

「フフフ、随分と焦っているようだな我が宿主よ」

 

「うるさいよ。誰のせいでこうなったと思ってんだ?真夜さんよぉ」

 

万丈は自分の中にいる元バーテックスである真夜の存在を知りながら知らない振りをしていた

 

「バーテックスが人類に対して攻勢を仕掛けたのは愚かな人間が天の神の怒りを買う行為をしたため、つまり全部人間のせいだ」

 

「ああそうかよ!それでも俺は、はいそうですかと納得できるほど大人じゃねぇんだ。バーテックスが存在してたら俺は死ねない。

まだ生き地獄を味合わせるならバーテックスを殱滅する

その為の力を得る為なら・・・ぐうぅああ・・・

 

彼の大赦に向ける反逆の感情が阿頼耶識を通して彼の体を蝕む痛みとなる。

大通りを避け林道へとバイクを動かし誰もいない獣道へと足を踏み込んだ

あのままでは救急車でも呼ばれかねない

 

「ぐ・・・あぁ・・・あ」

 

バイクからゆっくり降りる気力も起きずバイクごと倒れ込む。体を蝕むその痛みは脊髄を中心に電気ショックのような痛みをで身体を縛り付ける

その痛みを取り除く為に彼が行なった行動は・・・

 

「玉藻、阿頼耶識を破壊しろ」

 

「主人よ正気か!?」

 

「ほう、命をかけるか?」

 

「俺は、俺は死なない。目的をなす為に人の身が余るなら捨ててでも生きて目的を果たしてやろうじゃないの」

 

覚悟は既に出来ていた。自分の身がどうなろうとも目的は果たす。彼は200年という長い年月で精神は表向きはマトモでも実際は壊れていた

神樹様を襲おうとする愚考をする程に

玉藻は自らの尾を束ねドリルの様に阿頼耶識と彼の体を貫いた

血は出ないが彼の全身が散華し光に包まれる。そして彼はもがく間もなく消え去った

 

 




神樹様「この男って醜くなかったか?」
?「そうか?奴には勇者達の変わりに戦おうとする覚悟がある」
神樹「それが醜いと言っているのだ。あんな醜い奴が活躍する話は正直嫌いだ」
?「嫌いか?少なくとも醜いって意見は自分も思う。
でもそれでいいんだ。コイツにはもっと醜い反面教師になってもらわないと。
あと初期のプロットだと彼は次のバーテックス戦で死んで幸せになりそうなので生かしておきます。

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