オルガイツカは勇者である   作:村田殿(ハーメルン版)

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前回までのあらすじ


バーテックスがまだ存在していると知った板状は神に近づくため力を手にする為に大赦に反逆しようと阿頼耶識を破壊したが失敗に終わり消滅した

しかしその行動は彼の阿頼耶識手術の基礎設計をしたイオリアの計画通りであった
イオリアは神世紀百年頃、二世紀も前からバーテックスが再び侵攻を再開することを予測して彼の阿頼耶識の有機サイコデバイスに自分の最高傑作の戦闘データを密かに忍ばせていたのであった
彼にこのデータを忍ばせていたのは彼をまともに扱えるほどの人物ならば世界を変革するだけの力を持つ者だと信じていたからである
このデータの存在にいち早く気づいたマクギリスは部下の石動に彼を見張られ続け、遂に彼が消えた事でそのデータを手にしたのであった


尤も彼はあの程度で完全に消えてはくれなかった
数時間後、玉藻前と真夜、さらに七人御先の協力で彼は霊体、つまりは精霊としてこの世に再び生を受けた
その生まれ変わりで彼は七人御先となりこの精霊がかつて厄祭戦で勇者とともに戦った事、そしてその勇者が自分のおばあちゃんの父親違いの姉という事を知った
何故彼女が歴史に名を残していないのかを詳しく調べる為彼は高知県の寂れた村へと足を運んだのであった

一方その頃勇者部には可愛いお嬢様が来訪するのであった


遊 勇 園 者

春信の説明が終わった頃窓は夕日に完全に染まっていた。

眩しいくらいの日が窓から降り注ぐ。

 

「では次は君達にアグニカの凄さを教え・・・

 

「マッキー!」

 

マクギリスが次は私だと当然の顔で黒板側に向かおうとした時、突如部室のドアが開き一人の女の子がマクギリスめがけて飛びついてきた

マクギリスは彼女を受け止め抱き上げた。

 

「もうマッキーったらいきなりいなくなるから心配したのよ」

 

「それはすまなかったねアルミリア」

 

「誰?」

 

「妹・・・っぽい感じじゃないわね」

 

「誰なんだよその子は?」

 

友奈、風、オルガと聞き出すとアルミリアは元気に答える

 

「初めまして私の名前はアルミリア・ボードウィン。マッキーの妻です!」

 

その一言に一同はある者は聞き間違い、ある者は意味を分かろうとせず知らないフリをする。

その中で風は恐る恐る

 

「あ、あの〜アルミリアちゃん?妻ってあの妻?物の端とかじゃなくて?」

 

「はい!私は正真正銘マッキーの妻です!」

 

「そうだ私は紛れもなくアルミリアの夫だよ」

 

二人して笑顔で勇者部全員に答える。

その笑顔にこれ以上踏み込むのは野暮だと思った。

 

「なぁ花凛の兄貴、これって・・・

 

「犯罪ですよ、特例がなければ」

 

「そっかぁ、でも驚いたぜアイツ嫁さんがいたのかよ・・・別に悔しくもなんともねぇけど」

 

オルガは口のトーンとは裏腹に内心かなり悔しがって春信は苦笑いをした

 

 

 

 

「ねぇマッキー、さっきの話の続きだけど明日は一緒に遊園地に行ってくれるよね?」

 

「ああ、それは楽しみだ」

 

「もうチケットもちゃんと取ったのよ」

 

アルミリアはポケットからペアチケットを二枚取り出す。しかし、このチケットは一枚で二人分様のものであり余分に購入していた

 

「コレは・・・トドめ買い物もまともにこなせんとは愚かにも程がある」

 

そのチケットを無駄にするのはよくない。そう思ったオルガは機転をきかせチケットを買い風へと渡した。

 

「ホラよ。ミカとでも一緒に行ったらどうだ?」

 

「え、でも・・」

 

「いいってことよ、コイツは団長としての俺の祝いの品だ。ミカをよろしくな」

 

「え!?いや、そのまだそういうのは早いっていうか・・・物事には順序というのが・・・

 

風は何か重い責任と勘違いしたらしく珍しくしおらしい反応を見せる

 

「よかったですね風先輩!」

 

「恋人同士の遊園地へ赴く、まるで逢引ですね。私もいずれ友・・ゃんと・・・

 

今!東郷が一人妄想の世界へと旅立った。

マクギリスとアルミリアもその場を去り明日の準備を楽しみにしているようだった

それと同時刻春信の携帯が鳴った

 

「はいもしもし、・・・え?村田さんが・・・」

 

春信は顔を青ざめ携帯から耳を離して切る

 

「どうしたの兄貴、顔色相当悪いけど?」

 

「えっと・・・

 

伝えられた内容はバーテックスはまだ存在している、そしてそれを知った村田は自分の最後を悟った連絡をしていた。

その事実を伝えまいと春信は嘘をついてしまう

 

「村田さんが銀行強盗して行方不明になりました」

 

その報告に一同は驚愕する

信じられないはずもない

だって嘘なのだから

それでも春信は嘘を貫きそうとする

 

「しかし問題ではないでしょう。大赦には裏切り者に厳しい処罰を降す為の特設部隊がいます。

皆さんが心配する事は、何もありません!」

 

春信は平静を保とうと嘘を重ねる。特設部隊なんてものは昔担当の家があったが今は存在していない

その役目は彼一人だけに引き継がれた。

 

「そうか?正直実感湧かねぇな。アイツはそこまで悪い奴とは思ってなかったんだが」

 

「私も半信半疑ですよ。でもよく考えてください、彼は忍者です。私達に内緒で何かを企んでいたとしてもおかしくはないですよ」

 

「妙に説得力あるわね、まぁもし見つけたら私が引っ捕らえやるんだから」

 

「はは、もしもの時は頼りにしてるよ花凛」

 

春信は苦笑いをした後村田捜索の手伝いをしに行くとその場を去り車へと足を運んだ

 

 

 

「・・・・・・」

 

ダンっとハンドルを強く叩く音が春信の乗る車を揺らす。

まだ戦いは続くという事実

それを伝える勇気が無かった自分

同僚を無くしてしまった出来事

それらが積み重なり春信は自責の念に強く囚われる

バーテックスがまだいるという情報を持っているのは自分だけ、それを本当に大赦本部に持っていっていいものかと悩み続ける

その時、春信の頭にある言葉が出てきた

 

「悩んだら、相談・・・」

 

勇者部五箇条の一つであり人として大切なことの一つである。相談相手としてまずは黒い鳥こと万丈士の元へと車を走らせた

 

 

一方その頃部室にて・・・

 

風はもらった遊園地のチケットと睨めっこしていた。う〜う〜と呻き声を上げながらなやんでいたからだ。

 

「ふ、風先輩?どうしたんですか?」

 

「友奈、聞いてよ。ミカってばどういう誘い方すればいいの!?」

 

風はデート等に誘われた事はあっても部活が忙しいやら家事があるやらで大抵断ってきた

と、いうのは建前で中学生の男子というのはいわば欲望の塊で我儘で子供っぽいという理由で断ってきた。

 

しかしミカはどうだろうか?自分と同年代と疑うくらい達観しているようでどこか世間知らずのように抜けていて大人っぽさと子供っぽさが入り混じっている。

故にそんなミカをどうやってデートに誘い、かつ自分の女子力をアピールしつつミカと楽しむことができるのかという答えを見つけるには風の女子力はまるで足りていない

 

「う〜ん、そうだ付き合いの長い先生なら・・・

 

「俺か?・・・

 

 

 

オルガは目を閉じ自分がミカを遊園地に誘う姿を想像する

 

「ミカー!俺と遊園地に行ってくれるかー!?」

 

「・・・やだ」

 

「ミカお前・・・」

 

妄想の世界のミカに辛辣な態度を取られたオルガは頭を抱えた。

 

 

 

「悪りぃ風、俺じゃ参考になりそうにねぇ。けど一つ言える事はある

風が本気ならミカはそれに応えてくれる」

 

「私が本気なら?」

 

「ああ、これだけはハッキリアドバイスできる」

 

「成る程・・・よーし女は度胸ついでに愛嬌!勢いでやってやるわ!」

 

「あっもしもしミカ!?明日予定ある?ないわよね!一緒にデート行きましょ!それじゃ早く戻ってきてね」

 

風は有無を言わさない。言わせれば張り詰めた神経が簡単に途切れる。言いたい事だけいって電話を切った風は軽く溜息をついた

 

「あ〜緊張した〜。大丈夫よね」

 

「良いんじゃねぇの?なぁ樹」

 

オルガの問いに樹は首を縦に振る。それに対し花凛は厳しい評価をする

 

「いいの、そんな悠長に遊びになんか行って?明後日のこともあるし今頃銀行強盗犯がのさばっているんだけど?」

 

「いいじゃない決戦前にリフレッシュして気持ちを整えるのも」

 

「そこは賛成、ならわたしは強盗犯捕まえてリフレッシュしに行ってくるわ」

 

花凛はそう言うと部室を後にした。それと入れ替わる様にミカが帰ってきた。

 

「おう、ミカ。・・・どうだった?」

 

「どうって?」

 

「あの男とバーテックスもどきについてだ」

 

「大丈夫なんじゃない?少なくともあの人は俺達の為動いているみたい。それに・・・

 

ミカは散華で失われた物を取り戻す方法も言おうとしたがやめた。出来ないことを言っても仕方ない上、そんな方法で取り戻して風達が喜ぶとは思えなかったからだ

 

「何でもないよ。それより風ちょっと聞きたいんだけど」

 

「何何!?明日のことよね?大丈夫あたしがちゃーんとエスコートしてあげるから」

 

「デートって何?」

 

ミカの何気ない質問に風のハイテンションは一気にクールダウンした。

 

「ミ、ミカ?・・・と、とにかく明日は私と一緒に遊園地に遊びに行くの!ちゃんと説明してあげるから家に来て」

 

風はミカの手を引き連れ出す。手を取った時風の顔は若干赤らんだ様子だった。それを心配そうに見かねた樹も姉の後を追った。

 

今部室に残ったのはオルガ、友奈、東郷の三人だ

今は勇者部表向きの活動も文化祭の準備で受けておらず三人ではそのための準備もトントンと進めるには難しい。

外も太陽が沈みかけオルガが出した答えは帰宅だった

 

「さてと、帰るか」

 

「お〜い東郷さん?」

 

友奈は妄想の世界に入っていた東郷を連れ戻すため目の前で手を横に振る。ハッとすぐさま意識を取り戻した東郷は友奈の顔を認識した後赤面する

 

「あ・・・友奈ちゃん」

 

「東郷さん?顔赤いけど大丈夫?熱でもあるの?」

 

そう言って友奈は東郷のおでこと自分のおでこをくっつける。その行動がどんな結末を呼び起こすかも予想せずにだ

案の定東郷は興奮の余り失神した

 

「わわ!?と、東郷さん?」

 

「はぁ〜友奈、お前もちょっと席を外しとけ。このままじゃまた失神しちまうからよ」

 

そう言われた友奈はあまり納得しない顔で部室を出た。その後・・・

 

 

 

 

「よう調子はどうだ東郷?」

 

「あ・・・あれ?友奈ちゃんは?」

 

「部室の外にいるからよ安心しとけよ。

・・・東郷、お前に聞きたいことがある」

 

オルガは真剣な眼差しで東郷を見つめる。これから聞くことはこれからの東郷の行動を決める物だった

 

「今週部活休んでいたけどよ一体何をしていたんだ?」

 

「え、それは色々・・・

 

「色々と自分が死ねる方法を探していたってことかよ」

 

オルガの問いに東郷は驚きを隠すことなく動揺し、それを部屋の外から聞いていた友奈は勢いよくドアを開けた

 

「東郷さん!?今の話って一体どういうこと!?」

 

「友奈ちゃん・・・その・・・

 

「いい東郷、俺が話すからよ。・・・

試したのは切腹、首吊り、飛び降り、一酸化炭素中毒、服毒、焼身ってとこか?

しかもそれを全部精霊によって止められたって事じゃねえのか?」

 

東郷は静かに頷く。何故それを知っているのか?

まるで見透かされた様なオルガの態度に東郷は唾を飲む

 

「・・・友奈ちゃん・・・その、黙っててごめんな・・・

 

「ううん!謝るのは私のほうだよ。東郷さんが危ない事してるのに気付いてあげられなくてごめんね」

 

友奈は内心怒っていた。親友の危機に何も気づいてあげられなかった自分自身に対する怒りがあったが、それ以上に東郷の事を大切にしたい思いが強く友奈は東郷をギュッと抱きしめた

流石に今度は安心感を得るためなのか失神はせず呼吸はむしろ落ち着いた

 

「けど俺がわかんのはそんくらいだ。なんでそんな危ないことした!」

 

「・・・確かめたかったんです。大赦の人達が言うことが本当かどうか。

勇者はけっして死ねない、それはバーテックスの攻撃から身を守りたいという私の意思で精霊が動いていると思っていました。

しかし実際は精霊は勇者のお役目を助けるものなんかじゃなく勇者をお役目に縛り付けるものだったんです」

 

「つまりそれはあの乃木というかお嬢さんの言うことは全部本当の事だったって言うのか?

・・・俺はそうは思えねぇ。だって一時的とはいえアイツのよく分からねぇ銃でお前の足は治ったじゃねぇか?」

 

「アレは・・・

 

東郷は言葉に詰まる。自分の友達と言ってくれた乃木の言う言葉を信じたいが信じられない事も起こってしまっている。

 

「東郷さん悩んだら相談、だよ?明日園ちゃんに会いに行こう?」

 

「友奈ちゃん・・・うん、そうね」

 

「先生も一緒に行きませんか?」

 

「いや俺は行けねぇ、先約があるからよ。けど何か新しい事実が分かったら相談忘れんじゃねぇぞ」

 

「はい。・・・でもどうして私のしていた事が分かったですか?」

 

「俺が団長だからだ。団員がおかしなことやってるのに気づいてやれるのは団長としての俺の責務だからよ」

 

「そう、ですか。もし覗いていたりなんかしていたら・・・吊るしますよ?」

 

「し、してねぇよ」

 

東郷は笑顔でオルガに聞いてくる。その笑顔はオルガをビビらせるには十分すぎるものだ。その後三人は解散し明日友奈と東郷は大赦へ、オルガはミカの背を追うのであった

 

 

 

一方その頃異世界から門を開きこの世界へとやってきた青年がいた

 

「ここが神世紀の世界か、姉さんの報告どおりだいぶ時空が歪んでいる。ま、そんな事は俺には関係ないか。

村田さん、あの人はあの人だけは許せない」

 

「・・・時乃、自分の仕事を忘れないでくださいね」

 

「分かってるよ姉さん。時空の歪みの原因調べて後音信不通になった村田さん探すのが仕事でしょ?優先順位は俺が決める」

 

電話を通して時乃という青年と姉は会話をし姉は溜息をついた後

 

「分かってると思いますが私達は「企業」です。

対価に見合うだけの成果を挙げること

、これは当然の義務だと私は考えます」

 

「分かってるってば、会社の名に泥を塗る様な真似はしませんよ」

 

「ならいいのですが・・・まずはエイゼン商会へと向かってください。去年新しくできた事務所があるのですぐ分かるでしょう」

 

「了解・・・行ってきます」

 




前回までのあらすじ2

「うどん三銃士を連れてきたよ」

「うどん三銃士!?」

麺の専門家 「吉田麺十郎」

あの初代勇者「乃木若葉」も認めた伝説のうどん職人「吉田麺蔵」の子孫
その技術は世代と共に受け継がれ、進化をして繰り返し変わっていく
信じていたうどんのコシに今日も囚わながらも迷い、時に後悔をしてそれでも進んでいく
生き続ける過去の職人の魂は麺十郎に使命を与え錆びない様に馳せる力となっている


食材の専門家 「白鳥悠」

まるで養殖のように野菜を育てる農家
彼の作った食材は最高傑作と呼ばれ若くて「NOZAMA」という農業組合のリーダーでもある


汁の専門家 「及川惣一」

普段は大して売れない喫茶店のマスターだが、その裏の顔は天才科学者であり科学的に美味しいスープを作る やはり天才か
最近は科学では解明しようがない人の感情というものに興味を持ち「だから人間は面白い」とか言ってる 多分
ついでにこの世界の北海道が滅んだのは及川って言うやつの仕業なんだ



追記
最後に出てきた青年は本筋に関わる事はないモブなので忘れていいです
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