オルガイツカは勇者である   作:村田殿(ハーメルン版)

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今回は丁寧に東郷さんの心を折りにいきました

本当はもっとひどい描写描こうと思いましたがやりすぎたと思ったのでマイルドにしました



今回までのあらすじとは関係ないもの

十三世紀クライマックス、緑の海の国帝国(帝国150万の兵を統率する大元)はアインハンダー混沌の災禍に堕ちた世界の征服をアルティマニア、立ちふさがるマクロコスモスのサンクチュアリスを蹂躙していた。
東のワールドエンド、日本に侵攻す、宿命を前にオプティマされたゼニー軍の大帝国武装商船団を率いるのは、冷酷にしてチョコボの不思議なデータディスクなグルガン族智将、コトゥン・ド・ハーン。ハーンは、侵攻の足掛かりとして対馬に上陸するほど、愛してる──。
これを防ぐべく集結した対馬の武士闇ギルドは、初めて睥睨する元軍の兵略によって初戦で壊滅。コクーンはたちまち『再配置』の究極履行「インフェルノ」に不可視世界の混沌に飲み込まれる、すなわち我と同等の実力を持つ。
だが、かろうじて生き延びた一人の武士がいた。
境井 仁(…つまり俺達さかい …さあて、じんコレ…ガ…答エ…ナノカ?)。
仁は、サクァ・イン独時の時間が流れる閉鎖的空間通称”HOUSE”の終曲《フィナーレ》の新人類として、たとえ侍の浄罪の路に反した戦い方に《神手》を染めるイデアに…君はもうクラウドになっても対馬の民を守ろうと決意する。冥府零式改・通称“ラグナロク”…無限に存在する並行世界から蘇ったグルガン族魔王「アビスキャラクター(…これが帝国の……くろうど…噂には聞いていたが、これ程とはな……)ね?」
として、あらゆる手段を使ってニブルヘイムを他国の凶賊の手!…大丈夫、必ず戻るから取り戻すのだ。
始めようかセフィロス!
──男たちは己の悲運より、友のために涙を流した──

それからおよそ千年、人類はまたイデアへと手を伸ばし禁忌を冒してでも奪われし故郷対馬を奪還するため四国より出国するのであった
無限に存在するであろう勇者達の存在、ラグナロクを完遂する
ただそれだけを目指して(ふ、強くなったな)
帝国史上の予言書にはそう描かれていた


花火のように命燃やすエグゾダス

「結城友奈!ただいま到着しましたー!」

 

「おう、やっと復帰したか!おかえり」

 

あれから一週間経ち、病院もちゃんと退院できた友奈は早速部室へと来た。しかし部室で待っていたのはオルが一人だった。

 

「あれ他のみんなは?」

 

「勇者部の仕事だよ、考えてみれば俺達表向きの仕事サボってたからよ。バーテックスとももう戦うことはねぇだろうし俺もこういう書類仕事にいい加減慣れねぇとな」

 

そう言ってオルガは書類仕事を進めていく。友奈は手持ち無沙汰な気持ちになったのか何か手伝えるかと書類を一目見たが、ちんぷんかんぷんといった顔で目を離す。

 

「病み上がりなんだから無理すんな。ほら東郷が作ってくれたぼた餅があるぜ」

 

「いただきます!」

 

友奈は頬張りつくようにぼた餅に手をつける。昨日まで病院食で食欲もやや不満気味なのも相まってその勢いは止まることを知らない。なので当然

 

 

「むぐ、むぐぐ・・・

 

「何やってんだ友奈ぁぁ!!?」

 

オルガは急いでコップに水を注ぎ友奈に渡した。あと数秒遅れていたら命の危機に瀕していたかもしれない。

 

「ハァハァハァ、大丈夫か友奈?」

 

「ゴクン、・・・もう大丈夫!」

 

「あれ、そういやこうゆう命の危機の時精霊が助けてくれるんじゃねぇのか?」

 

「そういえば・・・牛鬼!」

 

友奈が牛鬼を呼ぶと口に何かを頬張り呼び出てきた。その何かとは・・・

 

「たひゅ・け・・・

 

「わぁぁ!?牛鬼!それは食べちゃダメー!!」

 

小さくなって食べ頃になった酒呑童子を頭からガッツリ噛み付いていた。必死に抵抗するも二等身の体では抵抗虚しく友奈が引っ張ると変にもげそうだった

 

「ったく、離しやがれ!」

 

オルガが牛鬼の口元を強引に開くと酒呑童子は干からびた人参のように倒れた。そして口の開いた牛鬼が再び口を閉じると

 

「ウェアアア!!離せぇ!離しやがれ!」

 

オルガの手を噛んできた。食いちぎるような痛みではなく甘噛みする程度の力だったためか何とか振り解き噛まれた手をフーフーとした。

 

「痛てぇ・・・」

 

牛鬼は満足したのか消えた。オルガはまだ痛みが引かずに左手を氷水の中へとつけた、お陰で片手しか使えずこれでは書類仕事もままならない。

 

「ハァ〜お互い災難だったな。なんか盛り上がる話題でもねぇかな?」

 

とオルガがぼやくと廊下から足音が聞こえてきた。その足音のリズムでオルガは誰が来たか分かっていた。

 

「おかえりミカ」

 

「うん、ただいま」

 

ミカは両手に大きなビニール袋をもって部室へと入った。その中身は一月後に控える文化祭の衣装だ。文化祭の演目は勇者とバーテックスの戦いをデフォルメに再現した劇である。

ミカが取り出したのは友奈用の紅蓮の騎士をイメージした衣装である

友奈は早速手に取り自分の前に合わせてみた。

 

「どうかな?似合う似合う?」

 

「いいんじゃねぇの?」

 

「うん、すごくカッコいい、バルバトスみたいだ」

 

「あはは、褒められてるのかな?早速合わせてみるね」

 

と友奈は着替える為に部室から二人を出した。

 

 

 

「ハァ〜・・・やっぱり友奈にも言うべきじゃねぇよな?」

 

オルガは再びバーテックスが進行の準備をしていた事を言えずにいた。それを誰にも知らせず一人炎の中抗い続ける万丈に協力することオルガ達にはできなかった。

厄災戦の約定により人類は神樹の結界内にのみ生存を許されていることを春信より聞いた。故にオルガやミカが出れば約定を破ることになり今まで以上に進行する口実を作ってしまうため手助けもできない状況だ

 

「これじゃあやってる事大赦と同じじゃねぇか」

 

オルガは行き場のない怒りを部員達には見せないようしていた。春信はこんな思いをずっと続けながら接していたと思うと彼の重圧も少しはわかる気がしてきていた。

 

「後悔してる?」

 

「いや・・・ずっとこのまま何もなければいいんだけどな」

 

「そうだね。オルガ?ここが俺達のいるべき場所なんだよね」

 

「ああ!俺達はこの居場所を守っていく。何があろうとな」

 

「だね」

 

「二人とも何話してるの?」

 

「ウェアアア!!?

 

「ウェアアア!!?」

 

「・・・なんだよ友奈か。ビックリさせやがって」

 

「びっくりしたのはこっちですよ。それで二人で何話してたの?」

 

「ああ、えっと・・・

 

「文化祭のこと、うまくいくと良いっねって」

 

「あ、ああ、そうだ。俺達はこの文化祭を確実に成功させる。その為に話をしてたんだ」

 

「へぇ〜流石勇者部の団長さんだね。私達に内緒で自分も役に出るくらい張り切ってますしね」

 

「は?」

 

「え?あの大きなバーテックス役の服先生のじゃないの?」

 

オルガが袋を確認するとそこには四人分の衣装が入っていた。友奈の勇者袋に風のバーテックス役、東郷の勇者を導く巫女役兼ナレーターは予定通りだが、オルガは本来裏方として回るつもりでいた。

そんな時オルガに服が用意されているなど誰も想定していなかった。服をよく調べてみるとポケットに小さな紙が入っていた。

 

『鉄華団団長様、劇に是非是非役立ててとことん盛り上げると良いっす

その為のプレゼントを用意したっす

謎の忍者Mより』

 

と書かれていた。

 

「謎の忍者M?誰だこいつ?」

 

「忍者!?忍者に知り合いがいるの!?」

 

「正直ピンときませんね。ミカお前は?」

 

「知らないよ、そもそも忍者って何?」

 

「そのレベルだったんだ・・・」

 

友奈が呆れた顔でいるとガラガラと部室のドアが開く。他の四人も勇者部の活動から戻りオルガ用の衣装をまじまじと見た。

 

「おお?何その大きいの?鯉のぼり?」

 

「いえ風先輩アレは獅子舞でしょう?」

 

「どっちにしろ不気味な顔ね、結局何よそれ?」

 

「正直オレも分からねぇ。けどいいんじゃねぇか?こいつで劇に出れば注目の的になれる。そうすれば勇者部は文化祭の人気物になれる。

地位も名誉も全部手に入れられるんだ。こいつはこれ以上ないくらいの上がりじゃねぇのか?」

 

「確かにそうね、よーしみんな文化祭に向けて張り切っていくわよー!」

 

「「おー!!」」

 

 

 

翌日、オルガは春信に呼ばれて大赦に出向き東郷は足のリハビリの為病院へと向かっていた。他五人はお昼で腹が減り何となくモンタークにたどり着いていた。

 

「あれここ締めたはずじゃあ?」

 

「見るからに開いてるわね、戻ってきたとは思えないけど」

 

「どっちにしろお腹減ったしさっさと入りましょ」

 

モンターク店に入るとそこに万丈の姿も影もない。いるのはいくらかの客と店員のアルミリアにトド、更にタカキの三人がいた。

 

「三日月さん、いらっしゃいませ」

 

「タカキ?ここまだやってるんだ」

 

「はい吉田のおやっさんが継いでくれたんです」

 

「吉田?まさかあの吉田家!?」

 

風先輩は興奮したようにタカキに詰め寄る。それに対しミカは落ち着けと言わんばかりに間に入った

 

「風落ち着いて・・・

 

「これが落ち着いていられるわけないでしょ!吉田家といえば讃岐うどんの申し家!

かの家が作り出すうどんの喉越しは愉悦を極め大地を丸ごし食したような恍惚感が得られるという逸話もあるあの吉田家を知らないの!?」

 

「え?おやっさんそんなすごい人だったんですか?」

 

「知らなかったの!?」

 

風は驚愕の顔を見せる。しかしその顔はさらに驚愕感を強ませる。

 

「知らんくても無理やない。儂は吉田家でもおちこぼれじゃからの」

 

出てきたのは六十代と見える爺さんだ。いかにもうどん作りに命かけてるような白いエプロンは彼の強面な顔と相まって威厳強気顔だった。しかしその顔とは裏腹に彼は弱音を吐いていた。

 

「え?天下の吉田家がそんな弱音・・・

 

「食えば分かる。注文は五人前でええな」

 

そう言い切ると吉田は厨房へと戻りうどんを作り上げていく。その道50年ともなればまさに一流。無駄のないその動きは一種の芸術とも呼べる代物だった。

 

「坊主!7番テーブルに」

 

坊主と呼ばれ、タカキは3往復して鉢を運び終える。何の変哲もない普通のうどん、だが一口すすれば感動の一途を辿る。

 

「んん〜!美味しい!先週食べたのより美味しいわ!」

 

風の食べる速度はいつもの1.5倍となりほっぺも落ちる。そのままのスピードを維持して当然のようにおかわりを頼んだ

 

「・・・もう少し味わって食いな」

 

吉田は彼女の食べっぷりに呆れながらも内心少しだけ嬉しかった。だがそれを表に出さずにいた

今度はちゃんと奥歯でしっかりと噛んで食べる。

噛むことでより深い味わいが口の中に広がり食欲を満たしていく。

二杯目を半分くらい食べた所で風はある質問をなけがける

 

「一つ相談なんだけどいい?なんか最近の先生の様子変じゃない」

 

「そうかな、いつも通りでしょ?」

 

「ミカが言うの?どう見たって変でしょ」

 

「そうよ昨日だって前に比べて元気無かったし、とくに変なのは裏切り者の万丈について気にするなとか言ってきたしうん。とにかく変!」

 

ミカは風と夏凜の押しに黙る。春信がバーテックスについては語らないよう強く言われているため返答に困った。それを助けてくれたのは意外な人物だった。

 

「万丈?オタクらが一週間神のうどんを食べたお客さんか?」

 

「え?そうだけど知ってるのあいつのこと?」

 

新しく店長となった吉田は何かを知っているような口調で話に混ざる。

 

「ああ知っておる。この店の前の店長でうどんの腕を極めたから次は別の料理を極めると叫んで四国外に出た奴じゃ。

儂よりも劣るくせに極めたなどと言うとはとんだ大馬鹿者じゃろ?」

 

予想外の答えを出されて夏凜は困惑しつつもその意見に肯定する。その会話に興味を引いたのかマクギリスがモンターク地下から飛び出してきた

 

「ほう、私が聞いていた理由とだいぶ違うな」

 

「あ、チョコの人だ。なんでここに?」

 

「私はここのオーナーだ。いてもおかしくはないだろう?

私が聞いた話では奴は私を出し抜いて第二のアグニカになろうとしていると聞いたな。困った奴だ」

 

「それってつまりアグニカのような英雄になろうとしてるってこと?」

 

「フッ、勉強不足だな三好夏凜。アグニカは英雄になろうとしてなったわけではない。厄祭戦を終わらせるという純粋な願いで彼は命をかけて戦い後に英雄と呼ばれる存在となったのだ。

それに比べて奴はどうだ?アグニカのような英雄を目指していながら世界に反旗を翻してなお英雄になろうとは・・・愚かにも程がある

 

だからこそ人はアグニカのような清廉たる英雄を目指すのだよ。君達はその為に戦ってきたのであろう?」

 

「別に、俺はただオルガに言われてやれる事を全力でやっただけだから」

マクギリスが彼女達に問いかけるが夏凜以外はうどんに夢中であまり聞いておらず夏凜もジト目で呆れたようにマクギリスを見ており、ミカはどうでもいいといった表情だ。

マクギリスは少々不満気な顔をして捨て台詞を吐いた

 

「君達にもいずれ見せてやろう。私こそが真にアグニカの後継者であるということを」

 

マクギリスはスタスタと地下へと戻ろうとしたその時だった。ミカが何かとてつもないものが近く気配を感じ取り店の外へと出る。風達もミカの異変についていくと異様な光景が目に見えてしまった。

 

「空が・・・割れる?」

 

ミカの見た方向は北、つまり海のある方角である。その頭上の空がまるでガラスの様に割れて砕ける。そこから見える空模様は赤いものだった

それと同時にスマホから特別警報発令と画面に表示され、高音な警告音が辺りに響く。これから天変地異でも起きるかの様なその音と共に辺り一面に花びらが舞い樹海化が始まった。

 

「そんな・・・バーテックスは全部倒した。倒したはずなのに?」

 

「落ち着いて友奈、まずは現状確認。想定外の状況でも落ち着いて・・・え?なに・・・これ?」

 

夏凜の変身してナルコの地図機能を確認した。そこには上の画面を赤い点が覆い尽くしていた。

 

「見てあれ!」

 

友奈が指を指した方角は赤い点が覆い尽くしていた方角、そこには友奈達がバーテックスと呼ぶ者の細胞である星屑、白い体に大きな口を持つ敵が

無地蔵に樹海へと入ってきていた。

 

「っく・・・この状況は完全に想定外だ」

 

マクギリスが舌打ちをする。自分の考えが及ばない何かがこの結果を示したのだ。

 

「そうだ、東郷さんは!?」

 

友奈は冷や汗で画面を指でスライドする。赤い点、ならぬ赤い面の中に彼女はいた。

そうバーテックスの群れの中に勇者「東郷美森」は呆然とバーテックスの群れを見ていた。

その手には神樹の結界の一部を破壊した狙撃銃が力なく握られていた

 

 

 

 

 

数十分前・・・

 

病院の奥底の地下に勇者「乃木園子」は祀られるように病室内にいた。東郷は鳥居を潜り園子へとおぼつかない足を運ぶ

 

「来てくれたんだねわっしー。あ、今は東郷さんか」

 

「わっしーでもいいわ。記憶は飛んじゃってるけどその約2年間私は鷲尾という苗字だったのだから」

 

「っ、よく分かったね」

 

「適正検査で勇者の資格を持っていると判断された私は、大赦の中でも力を持つ鷲尾家に養女として入ることになりそこでお役目についた」

 

「鷲尾家は立派な家柄だからね。高い適正値を出したあなたを娘に欲しかったんだよ」

 

「今思えばただの生贄じゃない。大赦はずっとこんなことを続けて・・・

 

「生贄・・・酷い言い方だけど間違ってはいないかもね。2年前の戦いで私はこんな風になっちゃったしわっしーも記憶が飛んじゃってまともに戦える状態じゃなかった。

だから大赦は身内だけでやっていけなくなって

勇者の素質を持つ人を全国で調べたんだよ」

 

「戦いの後事故で記憶喪失と嘘までついて、引っ越しの場所が友奈ちゃんの家の隣だったのも仕組まれたもの・・・」

 

「彼女、検査で勇者の適正値が一番高かったんだって。大赦側も彼女が神樹様に選ばれるってわかってたんだろうね」

 

「っ・・・仕方ない事だって分かってる。分かってるつもりだけど友奈ちゃん達をこんな事に付き合わせるなんて・・・

 

「親は娘が神樹様に選ばれたのだから喜ばしいことだって納得したんだろうね。それは大赦もね。

・・・でもあの人はこれ以上わっしー達を苦しめる姿を見ていられなくて大赦と神樹様を裏切って生贄に出たんだよ」

 

「どういうこと?いったい黒い鳥・・・万丈さんは何をしてるか知ってるの?」

 

「落ち着いて聞いてね」

 

園子は東郷に全てを話す。バーテックスが未だ壁の外に存在している事実を、その侵攻を止める為に戦い続けている事を

 

「その事実を分かっていながら大赦は私に改めて彼の討伐をお願いしてきたんだ。」

 

「乃木さんがここにいるって事は・・・

 

「うん、断っちゃった。私久々に怒っちゃった。何も痛い思いをしてない貴方達に何が分かるのって、痛みを負っていない人はそれを負っている私達の苦しみを理解できないよって。

彼も苦渋の決断だったんだろうね」

 

東郷は黙りこくる。思いが正しくともやった行為は大罪そのもの。どうしていいか分からなくてなってしまった。

 

「悩んでるみたいだね、春信さんもそんな顔してたよ。わっしー、そんな時は自分の心に従うのがいいと思うんよ。

どんな決断をしても私はわっしーの味方だからね」

 

「そのっち・・・ありがとう」

 

「わっしー?記憶が・・・

 

「そう呼んでいた様な覚えが微かにあるの。そのっち、私は行ってくる。自分自身の目で真実を確かめに」

 

「そっか・・・気をつけてね」

 

 

 

そうして別れた東郷は神樹が作りし世界の壁際に来ていた。壁の向こうは海と山が広がった綺麗な景色だがその光景は彼女の一歩と共に一瞬に崩れ去る。

燃える世界、全てを焼き尽くす地獄の業火ともいえる世界が一面に広がっていた。

バーテックスが無数に世界を覆い尽くし口だけの幼体バーテックスは少しづつ星座で呼ばれる完成形へと集まろうとする。

完成形を生み出さない黒い鳥は七人で抵抗を続けていた

 

一人が指揮官役として後方に立ち、五人は前方で神度剣を振るい戦っていた。残る一人はというと指揮官役が持つ圧裂銃の弾倉と見える部分に触れると体が砂のようなり神力の弾丸と化した

 

「ゴラゲゼギヂランゴゲンザミミャブババジュグソブビンレ、ゴゴセスバ。ギブジバングビダザベザ」

(お前で15876人目、恐るな。死ぬ時間が来ただけだ)

 

発射された弾丸は前方にいる五人の所へ到達し、まるで花火の様に炸裂した。五人もろともバーテックスを撃破するその光景は敵味方の区別のない残虐なものだった。

それが自分殺しであるにも関わらず態度一つ変えず、前線を押し上げる為に蘇る六人が死地へと向かった。

 

 

「バゼビンゲングボンジョグバダギョビギス?ビリパギスデビダギョゼロゾシバガギ」

(何故人間がこの様な場所にいる?君はいるべき場所へ戻りなさい)

 

残った一人は背中ごしにややノイズがかかった謎の言語で警告する。すでにまともな会話ができなくなるまで狂っていた。

東郷に対して敵意はないものの、その右手にはバーテックスの特徴である白い部分が移っていた。

 

残った一人も前線へ飛び右手を上へ掲げるとその手が50メートルはある爪へと変貌し空を切り裂く。右から左に、そして左から右に薙ぎ払う

それはまさにバーテックスを殺すバーテックスと言えるものだった。

そしてその腕が元の大きさに戻ろうとしたその時だった。

上空から蠍座の3メートルはある大針が腕の付け根を突き刺し、腕を飛ばす。更に射手座と蟹座がそれぞれの武器である針と反射板で彼の身体を全身から貫いた。

コレが15877人目の死だった。彼にとってはなんて事ない死。その死を囮にし6人が逆包囲し殲滅戦へ入る。

 

その光景を見ていた東郷は頭を抱えて息を荒くする。消したはずの記憶が蘇えった。

あの死に方はかつて共に戦った友達の死に方とほぼ同じだったからだ。

その場にへたれこみ左手で胸を押さえる

 

「うっぅぅぅ・・・銀・・・」

 

東郷はこれ以上ここにはいられないと思いバランスを崩しながらも神樹の結界内へと戻った。

泣き崩れる東郷の元に玉藻は不意に現れた。

 

「見てしまったようじゃな。奴の変わり果てた姿を」

 

玉藻は慰めることはせず現実に起こっていることの再確認をするよう説明を始めた。

 

「奴は元々人とバーテックスの入り混じった存在、化物が人間のフリをしていただけなのじゃよ。

そしてバーテックスの力を使えば当然そちら側にどんどん染まりいずれは戦う為だけの悪鬼へと成り果てるじゃろうな」

 

「・・・そうなったら次はわたし達の番?」

 

「む?・・・ふむそうなるじゃろうな。さてお主はどうやって奴らと戦う?」

 

「私は・・・

 

「戦いというものには主に五つの方法がおる

攻めるか守るか、出来なければ逃げるか、降る…それも許されなければ死あるのみじゃ」

 

死、という言葉に東郷は息を飲む。自分は死ぬことすら許されない身、そして残った選択肢すら選ぶ余地もない

攻めるか守ることを選べばいずれ園っちのよう何回も体をボロボロにして祀られるようになる

逃げれば友奈ちゃんやみんなはきっと自分の分まで頑張ってしまう

そんなこと私は耐えられない

 

だったら私達がこれ以上苦しまずに済む方法は・・・答えは一つしかない

 

 

東郷は決意を決め神樹の結界に銃弾で大穴を開けた。それは全てを終わらせる一発、死にかけの世界を死なす呪いのように彼女はバーテックスを茫然と見ていた

 

「ごめん銀、園っち。でも私はもうこれ以上失いたくないの。皆んなをもう苦しめない、こんな世界は私が終わらせる!」

 

東郷は更にもう一発神樹の結界に銃弾を撃ち込んだ。

 

「(やはり人類はその道を選ぶか。まぁ、だからこそ人間というものは面白い。さてさてここから花を結う未来に辿り着けるかは人のみぞ知る・・・か)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




吉田さんと謎の忍者Mの出番はこれ以降の予定は今のところありません
謎の忍者M一体何者なんだ


ストックが切れたので次回の投稿は一から書くことになります
次回投稿予定はハーンからツシマを守れたら
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