コードギアス R2 Blinded by love   作:ヒナトマト

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第二話『魔神と魔女と銀王と』

神根島。

式根島の近くにある小さな無人島。

 

「まさか俺の意思でまたここに来るとはな」

 

「苦い記憶か?枢木スザクに自分の正体がバレて、負けたことが」

 

C.C.がゼロに聞くがゼロは何も答えない。

仮面の下の素顔は今、どんな顔をしているのだろうか。

 

「だが、その格好はなんだ?お前は私に言っただろう。ルルーシュが友に会いに行くと。アイツはゼロの正体を知らないだろう」

 

ルルーシュの出で立ちはかつてエリア11に混乱をもたらし、そしてつい先程合衆国日本の建国を宣言したあのゼロの格好だった。

友に会いに行くにしてはいささか礼を逸する。

 

「あぁ、なるほど。ゼロの正体を明かし、黒の騎士団に引き込むつもりか」

 

C.C.は納得したかのような声を出す。

しかし、その顔は一切笑っておらず、先を急ぐゼロの背中を無表情で見つめている。

 

「軽蔑するよ、間違いだったか?私の選択は」

 

瞳を地面に落とし、ゼロとは対象的に足を止めてしまうC.C.。

軽蔑の対象はなにもゼロだけではない。

会いたいという気持ちと、銀髪の彼にもっと優しい終わり方があったのではないかという未練と、ルルーシュならという期待にすがって、彼の願いを破ろうとしているC.C.自身に対しても。

いつからだったのだろうか。

本来、銀髪の彼とC.C.は親しい仲ではなかった。

だが、王の力を持つ不安定な彼と学園で日常を、黒の騎士団で非日常を過ごすうちに、あまりにも優しすぎる彼に同情からくる特別な感情を抱き始めた。

そして、彼が最後に選んだ孤独を見送るしかできなかった判断を悔やんだ事もあった。

 

「C.C.。勘違いするな。これはアイツへの俺の配慮だ」

 

C.C.の足音が聞こえなくなったことに気づいたゼロが立ち止まり振り向く。

 

「ルルーシュ・ランペルージがアイツの前に出るには情報が足りなさすぎる。アイツの力、ギアスを知りC.C.がそばにいるゼロの方が都合がいいだけだ。それにお前のせいではない。シャルルのギアスを消す際に、アイツのギアスまで消えてしまったことは想定外の結果だ」

 

「ふん、それは私の落ち度だと言いたいのか」

 

C.C.の目はゼロを見ていない。

責任の一端が自分にあることは理解している。

だが、ゼロが仮面の奥で微笑む。

 

「いや、感謝している」

 

C.C.の目がゼロを捉える。

ゼロはそれだけを言うと友が眠る先へと歩を進める。

今のこの自分の選択は決して間違っていないと主張するかのように力強く。

歩みを止めるC.C.に対してその背中は前へ進む力を与えた。

 

「……会うだけだぞ」

 

「あぁ、会いたいな」

 

「私はそんな事は言っていない」

 

いつの間にかゼロの隣に並んだC.C.がムスっとした顔で答える。

そして、言葉も少なくなり歩く二人は目的の場所へとたどり着いた。

 

「ここにいるのか」

 

「あぁ」

 

かつてゼロが枢木スザクと対峙した場所から少しだけ奥に進んだ場所。

だけど、誰も見つからないような静かな場所。

彼が最後に選んだ場所はそんな場所だった。

ここでかつての友二人が争う様をどのような気持ちで彼は見ていたのだろうか。

銀髪はかつて見たときと同じように輝き、海のような青さを抱いていた目は固くまぶたによって閉じられている。

彼を包むアッシュフォード学園の制服は彼が大事にしてきたものを象徴しているようだった。

 

「起こすぞ?」

 

C.C.は一言そう言うと彼の体に手を伸ばす。

しかし、彼の体にC.C.の手が触れる前にゼロがそれを静止する。

 

「一つ聞くが、また眠らせることはできるのか?」

 

「それは……」

 

「俺は何も言わず消えた友に一言文句を言いに来ただけだ」

 

今更、とC.C.は思った。

ゼロは決心が鈍ったわけではない。

ただ、彼の願いを叶えられなかった自分にもう一度願いをかけ、眠りについてもらうための確認。

C.C.はゼロの方を振り向かずに告げる。

 

「無理だな。私が眠らせたわけではない。お前の望んだ結果だ」

 

「まるで他人事のように……」

 

ゼロはフッと鼻で笑う。

C.C.はその言葉を了承と受け取り彼の体に触れた。

 

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はじめは痛みだった。

だが、それはすぐに僕を包むような優しい手だと分かる。

手?一体誰の?

声が聞こえる気がする

 

「おやすみ」

 

僕にかけられた言葉。

なんだ、この状態でも夢は見るのか。

だけど、夢ならもっと幸せな夢でも見させてくれないだろうか。

 

「おやすみ」

 

繰り返し聞こえる言葉。

そんなに声をかけてもらわなくても寝れる。

一体、なにをそんなに気にしているんだ。

 

「おやす…」

 

「おや……」

 

「お………」

 

そうだ、未練はない。

静かに眠らせてくれ。

 

「おはよう」

 

次に見えた夢は色のついた世界の夢だった。

 

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「おはよう」

 

C.C.がそう声を掛ける。

銀髪の彼、ライはゆっくりを瞼を開く。

 

「おはよう」

 

かつて自分にかけられた言葉とは真逆の言葉。

それは目の前の魔女からかけられている言葉だと気づくまで間があった。

 

「おはよう」

 

何度目の呼びかけだろうか。

ライの肩を優しく掴み呼びかけるC.C.は開かれてはいるが何も見ていない彼の眼を真っ直ぐ見つめる。

ふっ、と彼の青い目が揺れる。

 

「気づいたか?」

 

「C.C.……?」

 

「すまない」

 

ライがC.C.の名を呼び、彼女は謝罪の言葉を口にする。

だが、彼はそんな彼女に優しく微笑む。

 

「いや、いい。事情はわからないけど、君が僕を起こした。それだけが分かればいい」

 

「昔のままだな」

 

ライが生来持っている気質通りの優しい言葉を聞き、C.C.も彼の微笑みに答えるように微笑む。

 

「ライ!」

 

ライがしっかりと受け答えができるとわかるとゼロは彼に近づき名を呼ぶ。

 

「ゼロ?」

 

「久しぶりだな。何も言わずに消えるとは感心しないな」

 

ライの視線がC.C.からゼロへと移る。

そして、自分の記憶と寸分違わない仮面の王の姿を捉える。

 

「言う必要もないと思ったから」

 

C.C.の時とは違い、警戒した声色になる。

二人は一年前、確かに戦友だった。

リーダーと戦闘隊長という立場の違いはあったものの、ゼロはライを信頼し、ライはそれに結果を持って応えた。

だが、戦友以上の関係ではなかった。

黒の騎士団にライが入団するきっかけはカレンの紹介だった。

当時の前評判は目視操縦で敵ナイトメア二機を翻弄する凄腕の男。

そんな彼をカレンが黒の騎士団に招き入れようとした。

しかし、彼は一度は断った。

銃を突きつけ拒否すれば、の選択肢のない選択を迫ったゼロ。

ライの腕前を見込んだカレンとギアスの力を知るC.C.の取り成しがなければ彼の命はそこで終わっていただろう。

今となって考えてみれば、ライは日本人を戦いに駆り立てるゼロの姿を昔の自分の姿と無意識に重ねていた。

その当時は気づいていなかったが、ライはゼロを同族嫌悪していたのだ。

そして、ライは本来戦いを好む性格ではなかった。

彼が黒の騎士団として活動しながらも、学園での生活を楽しんでいたのは彼自身がその生活をなによりも大事にしていたからだった。

そんな彼が自分を目覚めた時、目の前にゼロがいる。

ならば、ゼロの目的は一つしかないと考える。

 

「そうか。君もギアスを使うんだったね。効かなかったのはそのせいか?」

 

ライはふらふら立ち上がりゼロを見据える。

 

「違うな。俺もお前のギアスにかかっていた。一年もお前のことを忘れていたよ」

 

「一年……まさかギアスに有効期間が?」

 

C.C.のほうを見るライ。

彼女は申し訳無さそうな顔をして答える。

 

「いや、他の者達にはかかったままだ。ちょっとした手違いでな」

 

「ゼロ。僕になんの用事があるのかは知らない。ただ、何も言わずに去ったことは謝ろう、すまなかった」

 

ゼロに頭を下げるライ。

だが、しばらく頭を下げたあと、くるりとゼロに背を向けた。

 

「私の方こそ眠りを妨げてすまなか……」

 

「ただ、君の駒になるつもりはもうない」

 

ゼロからライへの謝罪の言葉を聞く前にライがはっきりとした拒絶の意思を表す。

ライはゼロが自分を再び黒の騎士団の入れようとしているのではないかと思っている。

 

「違う!私はただお前に!」

 

ゼロはライの言葉を否定する。

ルルーシュとして会う訳にはいかない、それならばとゼロの姿で臨んだ。

ライから投げかけられる言葉も予想していた。

それでも彼に会わずにはいられなかった。

たった一つ、彼の口から別れを言葉を引き出すために。

謝罪などではなく、ゼロの、ルルーシュ自身の気持ちの整理のために。

 

「あの時はよく分からなかったから使わなかった。だけど今回は違う。きれたのならかけ直せばいい」

 

「待て!ライ!」

 

C.C.がライに止めようとするが、彼の口は彼女の腕よりも早く動いた。

 

「ライが命ずる!ゼロは私に関わるな!」

 

ライの言葉が響き渡る。

ライのギアス。

それはルルーシュと同じ絶対遵守の力。

ただ一つ彼と違う点はライは聴覚に作用する。

ゼロに向けた背はライがとれる最も簡単な彼への対抗策。

 

「わかった」

 

ゼロはライに背を向ける。

 

「すまない、C.C.」

 

ライはC.C.に謝るが、C.C.から返事はない。

どうしてこんな結果にしかならないのだと思っていた。

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