コードギアス R2 Blinded by love   作:ヒナトマト

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第四話『ゼロ』

神根島を出たライはC.C.の待つ中華連邦領事館にも、ルルーシュの待つアッシュフォード学園にも足を運ばなかった。

彼がはじめに向かったのはショッピングモールにある家電量販店だった。

この世界に彼のことを知る人間はほとんどいない。

頼れる人間が少ない彼が彼らを訪ねずにここに来た理由はまずは彼個人で現状を理解するためだった。

神根島でルルーシュからライが眠ってからの出来事を聞いてはいたが、あくまでそれはルルーシュの立場から見た一年であり、ライは客観性に欠けていると思ったため、自分で情報を集めに来た。

家電量販店に設置されたデモ用のテレビは様々なテレビ曲の番組を垂れ流している。

そのうちの大半はテレビの映りを考えいるためかスポーツ番組などが映っていたが、数台はニュース番組が流れていた。

 

(当然だけど、ゼロの事か……。合衆国日本建国なんてものは大きなニュースだ。いや、日本建国よりもゼロの復活のほうか……)

 

ライはニュース番組を映しているテレビを眺める。

ブリタニアは当然の如く、ゼロをテロリストとして報道している。

だが、エリア11ではどうだろうか。

一年前にブリタニアへと真っ向から対立する姿勢を見せ、一時は行政特区日本という譲歩の道を引き出した黒の騎士団とゼロはいまや矯正エリアへと格下げされたエリア11にとってどのように捉えられているのだろう。

 

(わからないな……)

 

ライは一度失敗した革命家のゼロを冷静に分析する。

ライにはブリタニアとイレブンの血が流れているが、この地で生まれ育ったわけではないため日本の奪還というワードにそこまで感じ入るものはない。

だからこそ、今のゼロの立ち位置をライは予想できる。

 

(信頼は得られないだろうな)

 

今のゼロの立場はトウキョウ決戦に敗北し、一年間地下に潜伏していただけのテロリストだ。

コネクションを使い、自分だけ中華連邦に渡りをつけ逃げ延びた総帥。

いまだゼロを信奉するものは少なくないだろうが、それ以上に一年前の結果が後を引く。

 

(キミの口癖だったね、結果はすべてにおいて優先する……)

 

ライはルルーシュに心の内を慮る。

予定外のこともあったのだろう。

そもそもがブリタニア皇帝の前に連れ出されたのにも関わらず、今またゼロとして立ち上がったのだ。

そういう意味では今の結果は最良なのかもしれない。

だが、それは最善ではない。

 

(もう少し情報が必要だな、今の黒の騎士団の状況と中華連邦の動向。それから、確か現総督だったカラレスという男もゼロ復活の際に亡くなったはずだ。次のブリタニアの動きは……)

 

「番組の途中ですが、臨時ニュースをお伝えします。先程、前カラレス総督を死亡を受けて、総督代行の立場にあるギルフォード卿が一年前のテロ行為を引き起こした黒の騎士団のメンバーを処刑することを発表いたしました。」

 

ライは急に切り替わったアナウンサーの真面目な口調とその内容に耳を奪われる。

テレビはどうやら中継してあるらしいギルフォード総督代行の発表に画面へと移り変わる。

 

「聞こえるか!ゼロよ」

 

画面の向こうではコーネリアの専属騎士であるギルフォード卿が一年前に拘束した黒の騎士団の残党二百数名を処刑することを発表していた。

そして、ゼロへ正々堂々の勝負を望むという騎士道精神を語った挑発をしていた。

テレビにはライにとって懐かしい顔が映し出されていた。

黒の騎士団の軍事総責任者藤堂鏡志朗、四聖剣仙波、朝比奈、千葉。

副司令扇要、そしてほかにも玉城の姿などが見える。

 

(卜部さんは確かルルーシュの話では……。カレンは無事だという話で、ラクシャータさんとディートハルトは行方知らずか)

 

黒の騎士団の主要メンバーがほとんどゼロの元にいないことにライは不安を覚える。

そして、中華連邦に身を寄せたことにも合点がいく。

それしか方法がなかったということを。

 

(処刑か。ルルーシュにとっては阻止したいところだな。だがどうするつもりだ……?)

 

ライはこれ以上リアルタイムの情報を仕入れる必要はないと考え、家電量販店を後にする。

そこでライはかつての友の姿を見る。

大きなバイクの前にしゃがみ込み、なにやらいじくっている。

その姿は一心不乱で彼がバイク好きであることは誰から見ても明らかだった。

 

「リヴァル」

 

ライは不意に口に出していた。

青い髪の友はライのことを覚えてはいないため、きっと怪訝な顔をされるだろうと思った。

 

「え?誰か呼んだ?」

 

幸運なことにライはアッシュフォード学園の制服を着ていた。

そのため、リヴァルはライが想像したよりも警戒心を持たずに話しかけてきた。

 

「あれ?学園の子?ごめん、俺、キミのこと知らないんだよね……。それとももしかしてバイクとか興味あるの?」

 

バイクを弄る手を止めてこちらを振り返る話しかけてくるリヴァル。

ルルーシュやスザクとは違う、最も日常に近かったライの友人。

 

「いや、その、バイクの調子が悪いのかなって気になったんだ」

 

「あー、もう直るよ。これでよし!」

 

リヴァルはライの姿をひと目見た後、またバイクに向き合うと、なれた手付きで作業を終える。

 

「ところでなんか用事?」

 

「あー……」

 

眼の前のことを片付けたリヴァルはもう一つのことに対応するため、言葉を投げかけるがライは返答に困る。

用があったわけではない、ただ懐かしさのあまり声をかけてしまっただけだった。

 

「もしかしてやっぱりバイクに興味あるんだろ!乗ってみろよ!サイドカーだけど」

 

返答もままならない怪しげなライに対して、フランクに接するリヴァル。

リヴァルには警戒心というものがないのだろうか。

だが、ライはそんなリヴァルの様子をとてもありがたく思っていた。

 

「いいね、気持ちよさそうだ」

 

「よっしゃ、じゃあ学園まで戻る予定だけどそれでいいか?」

 

「構わない」

 

リヴァルはライに予備のヘルメットを投げ渡す。

ライはそれをかぶるとサイドカーへと乗り込んだ。

リヴァルはバイクのエンジンをかけ、走り出す。

 

「やっぱりいいね、バイクは」

 

「やっぱりって、乗ったことあるのか?」

 

「前に帰宅部の友達のバイクに乗せてもらったことがある」

 

風を切って走るバイク。

ライは以前もこうしてリヴァルの横に乗って走ったことを思い出していた。

二人は言葉数も少なく、ほどなくしてアッシュフォード学園へと到着する。

 

「ありがとう、リヴァル」

 

「いいって、いいって。また乗りたくなったら声かけてくれよな」

 

そう言ってリヴァルは校舎の中へと消えていった。

思わぬ出会いにライは感謝し、ルルーシュの部屋へと足を向けた。

ルルーシュの部屋にたどり着き、扉をノックしたが誰の反応もない。

二度、三度と繰り返すが、相変わらずだった。

 

「どちらさまですか」

 

不意に後ろから声をかけられる。

ライが振り向くと、そこには茶髪の小柄な少年が立っていた。

 

「ルルーシュに用事があってね。どこにいるか知っているかい?」

 

ライは努めて冷静に受け答えをしたが、頭の中では警鐘が鳴り響いていた。

危険だ。

この少年は危険だ。

この少年には見覚えがある。

かつて神根島でライを殺そうとした男……。

それがなぜかアッシュフォード学園に、ルルーシュの部屋の前にいる。

 

「さぁ?兄さんの居場所は知らないですね。生徒会だと思いますよ」

 

「そうか。ありがとう。それと良ければリヴァルも呼んでくれないかい?キミが暇だったらでいい」

 

ルルーシュのことを兄と呼ぶその少年を遠ざけるために、先程別れたリヴァルの名前を使う。

それは、ルルーシュだけでなくリヴァルとも知り合いであるというライのアピールだった。

 

「わかりました。でも、見つからなくても責めないでくださいね」

 

そういって少年は足早に去っていった。

ライは混乱する頭を抱えてその足で生徒会室へ向かった。

 

「やぁ、ルルーシュ」

 

「ライっ!?」

 

生徒会室を訪ねたライはルルーシュに声をかける。

ルルーシュは驚いた声を上げたが、自分の隣の椅子をすすめる。

明かりのついているTVからは先程見た拘束された騎士団の処刑について流れていた。

ライはTVを指差す。

 

「これについて話をしたいけど時間がない。キミの弟を名乗る謎の少年が来るかもしれない」

 

「ロロか。知っているのか?」

 

「昔、殺されかけたからね。ギアスの能力者だと思う」

 

「俺の監視役だ。ロロにも難儀している」

 

苦々しい顔をするルルーシュ。

 

「片方ならどうにかなるのかい?」

 

ライはルルーシュに問う。

 

「それはロロのほうをどうにかできるかと聞いているのか?」

 

「僕なりに色々調べさせてもらった。まだ、ゼロは日本人に奇跡を見せていない」

 

ゼロが、黒の騎士団が、合衆国日本が再び立つためにはかつてゼロが見せた奇跡を再び日本人に見せなければならないとライは考えた。

なにも持たない日本人が寄って立つ大きな木が必要だった。

 

「ライ、お前に手を貸してもらう必要はない。ロロをどうにかし、藤堂たちも助け出す」

 

「僕は手伝わない。だが、ゼロは立たなければならない。キミは言っただろう。ゼロは記号だと。予備の仮面とマントはあるだろう?」

 

ルルーシュの眉が動く。

 

「だが、お前は黒の騎士団には……」

 

「ちょっとした心情の変化だよ。答えは聞かない」

 

そういってライは立ち上がる。

 

「そうそう。リヴァルにお礼を言っておいてほしい。バイク楽しかったって」

 

「待て、ライ!」

 

ルルーシュの静止も聞かずにライは生徒会室を立ち去った。

リヴァルを連れたロロが生徒会室に顔を出したのはライが立ち去ってしばらくたった後だった。

 

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