コードギアス R2 Blinded by love   作:ヒナトマト

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第七話『太平洋 奇襲 作戦』

「スザクはどうだった?」

 

「どうもこうもあるか。アイツは敵だ……俺をブリタニア皇帝に売り、ナイトオブセブンの地位を得た男だぞ」

 

黒の騎士団の司令室。

そこでライはルルーシュにアッシュフォード学園に枢木スザクが復学してきた話を聞いていた。

 

「ルルーシュ、後悔しているのかい?」

 

スザクのことを苦々しく語るルルーシュに対してライは問いかける。

立場の違いのよって同じ道を歩むことがなくなった二人はかつて親友、だった。

だが、ルルーシュは答えない。

 

「人生は選択の連続だ。スザクが君を皇帝に引き渡さなければ、君がユーフェミア・リ・ブリタニアにギアスをかけなければ、君がC.C.に出会わなければ、スザクが軍人にならなければ……君がスザクの手を取らなければ」

 

今とは違った未来があったのかもしれない。

二人がずっと親友であった未来、二人が出会わなかった未来。

今より幸せであった可能性だってありえた。

 

「ライ、お前は何故自ら眠りにつこうと思ったんだ?」

 

不意にルルーシュがライに尋ねる。

かつてライが取った選択の理由を問う。

 

「俺の目から見てお前にとってあの時の世界は優しくないわけではなかったと思う……記憶を失ったお前を生徒会のみんなは受け入れ、黒の騎士団でもそれなりに上手くやっていただろう」

 

「黒の騎士団で上手くやっていた?冗談はよしてくれ」

 

ルルーシュの言葉をライが笑いながら反論する。

 

「キミやカレンはちょくちょく生徒会を抜け出すし、スザクは軍の仕事。僕とリヴァルにしわ寄せが来ていたのを知っていたのか?黒の騎士団の僕は割とイライラしていたと思うけど?」

 

「それは、その、すまない」

 

ルルーシュがバツの悪そうな顔をする。

 

「ナナリーに折り紙を教える約束をしていたのに急に呼び出されたこともあったね。あの時はナナリーが拗ねてしまって大変だった」

 

ライはルルーシュの妹である少女のことを思い出す。

車椅子の乗った小さな少女。

色がない世界だと思っていたライに最初に色をつけてくれた彼女は今、どこにいるのだろうか。

そんなことをふとライは思ってしまう。

 

「なぁ、ライ。ナナリーのこと……」

 

ルルーシュがライに何かを聞こうとした時、部屋にC.C.とカレンが入ってきた。

 

「邪魔するぞ」

 

C.C.はライのことを一瞬見たが、すぐに顔をそらしライの隣に腰を下ろした。

一方、カレンは所在なさげに立ったままでいる。

それはこの部屋にライがいるだろうか。

ライはカレンにも座るように促したが、カレンはその言葉を無視した。

 

「嫌われたものだな」

 

C.C.がライにだけ聞こえるように小さく呟く。

いつもの調子でからかうような様子なのだろうとライはC.C.を一瞥したが、何故かC.C.の表情は浮かないように見えた。

 

「あなた、一体何者なの?」

 

カレンはライに問うが、ルルーシュに咎められる。

 

「カレン、その話はいいだろう」

 

「納得がいかないっていうのは理由にならない?」

 

カレンの矛先がルルーシュに向く。

ライは内心助かったと思う。

今のライにはカレンにかける言葉を持ち合わせていない。

 

「キミと私の関係もオープンにしていないはずだが?」

 

ルルーシュが笑みを浮かべながら言う。

こういう手の言葉の巧みさはルルーシュらしさがよく出ていた。

 

「そういう変な言い方はやめてよ!私はただこの人の」

 

「カレン」

 

カレンの言葉を遮ったのは何時になく真顔なC.C.だった。

 

「察しの悪い女だな。私付きの護衛だぞ?私とは将来を誓いあった仲だ。許嫁?というやつだ」

 

まるでそのC.C.の顔から「ふふん」といったどこか勝ち誇ったかのような、自信たっぷりの言葉が聞こえるようだった。

そして、隣りに座っているライの腕をとり自分の両腕を絡ませ、ライの肩に自分の顔を寄せる。

 

「私は私の所有物を坊やに貸しているだけだ。だが、許嫁などという立場を公にする訳にはいかないからな。千葉あたりが焦る」

 

ライとルルーシュは目を丸くしている。

突然のC.C.の発言に対応ができない様子だった。

いや、二人だけでなくカレンまでもが目を白黒させている。

 

「なんだ、信じていないのか?」

 

なんの反応も返さない三人に対してC.C.が不満そうな顔で言う。

 

「いや、C.C.。そういうことはあまり言うものじゃない」

 

その言葉を受けて、かろうじてライが反応を返す。

面倒な話の流れになったと思い、C.C.の言葉を肯定とも否定とも取れない言葉、だが十分肯定かのように受け取れてしまう言葉を返す。

カレンはどこか羨ましそうな、嬉しそうな、不満そうな色々な感情が混ざりあった表情をしている。

 

「だが、カレン。これだけは覚えておいてほしい。この男はお前のことも好きだぞ」

 

「はぁ!?」

 

やっとカレンが我に返ったのか反応を返すが、その声はまるで天地がひっくり返ったかのような素っ頓狂な声だった。

 

「俺からも保証しよう」

 

そこにルルーシュが言葉を重ねる。

ライはルルーシュを恨みがかかった目で見る。

 

「あーもう!失礼します!」

 

当のカレンは混乱したのかこの場にいることに気まずくなったのかなにも言い返すことはなく逃げるように部屋から出ていった。

 

「なんとかなったな」

 

カレンが部屋から出ていくのを見届けたC.C.はライの腕から離れる。

 

「C.C.もルルーシュも一体なにを言ってるんだ……」

 

特に表情に変化の見えないC.C.とルルーシュとは対称的にライはげっそりと疲れた顔をしている。

 

「いいじゃないか。俺と謎の関係があるよりかはずっとまともな理由だ。それにお前がカレンのことを気にかけているのは本当だろう」

 

「でも僕は……」

 

ライはふと先程まで頭に浮かんでいた少女の顔を思い出す。

だが、この場で彼女の名前を出しても兄であるルルーシュが何と言うか分からないため、口ごもってしまう。

 

「私よりナナリーのほうが良かったか?」

 

しかし、ライのそんな判断もC.C.によって簡単に壊されしまう。

 

「「なっ」」

 

ライとルルーシュが同時に驚きの声をあげる。

ルルーシュはライのほうを見る。

 

「ナナリーの名前が何故ここで出てくる!」

 

「いや、そんなの僕にだってわからない!C.C.に聞いてくれ!」

 

「ん?いたいけな少女と部屋で二人きりで指を取り合って折り紙をしたり、中庭でランチデートして恋人同士がするようなあーんなどということをしたりしていたじゃないか。それともその気がなかったのにそんなことをしていたのか?」

 

C.C.が口を開くたびにルルーシュの顔が怒りに染まっていくのをライは感じていた。

 

「ライ、お前というやつは俺の許しもなく……」

 

「違う!僕は!」

 

「……まぁいい」

 

だが意外にもルルーシュの火は容易く鎮火した。

 

「ナナリーとお前の件に関しては俺も色々思うところがある。ナナリーの現状がわからない以上今は不問にしておこう」

 

ルルーシュは背も立てに体を預ける。

その様子を見たライはこれ以上C.C.が変なことを言う前に、今が好機とそそくさと部屋を出ようとする。

 

「待て、ライ。俺の問いにまだ答えていないだろう」

 

「あの時の僕はここに居てはいけないと思った。それだけだよ」

 

そう言ってライは部屋から出ていった。

今のライにとってこの黒の騎士団は居てもいいと思える場所なのだろうか。

ライを起こしたルルーシュ、黒の騎士団にいることを決めたライ。

その選択は本当に正しかったのだろうか。

ルルーシュはそんなことを思っていた。

だが、そのルルーシュも選択を迫られることになる。

実の妹ナナリーがカラレス総督の後任としてエリア11に赴任してくるということを聞いたのは、翌日に行われたスザクの歓迎会の夜の出来事だった。

 

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ライはログレス級浮遊航空艦をその視界に捉える。

 

「作戦目的は新総督を捕虜にすることにある。いかなることがあろうと絶対に傷をつけるな。いいな、絶対にだ!」

 

ゼロから全軍に指示が飛ぶ。

陸戦用であるナイトメアフレームを空に飛ばすという予想もできない方法でブリタニアの旗艦に取り付き、直接新総督であるナナリーを手中に手に入れる作戦。

旗艦となっているログレス級浮遊航空艦はブレイズルミナスによる強固な防御力を誇るが、取り付いてしまえばただの大きな的になる。

敵からの射撃によりあろうことか玉城が操縦するヘリを落とされるというアクシデントが発生したが、予定通りサーフェイス・フレアを散布し、敵機のレーダを一時的に無効化する。

その隙に藤堂の月下を始め、多数のナイトメアが旗艦や護衛艦に取り付く。

その中には一際目立つ紅と青のナイトメアもいた。

 

(ルルーシュは中に入ったか……?)

 

ライは旗艦についている砲台を潰しながらルルーシュの身を案じる。

だが、刻々と状況は変化していく。

月下のレーダーに黒の騎士団のものではないナイトメア六機の反応がある。

 

「フロートユニットか!」

 

空を飛び重アヴァロンに近づいてくる。

フロートユニットを持たない紅蓮や月下、無頼は重アヴァロンの上のみを戦場に出来るということに対して、空を含め全てを戦場に出来るフロートユニット付のナイトメアは圧倒的な優位性を築ける。

ライは月下を増援の前に立つように移動させる。

 

「そのナイトメア……そうか、そういうことか」

 

「その声、ギルフォード卿か!」

 

グロースター五機の戦闘を翔けるナイトメア、ヴィンセントからオープンチャンネルで月下に通信が入る。

 

「はじめまして、ではないな。あの時の借りを返させてもらう!」

 

あの時とは違い、機体性能によるライの優位性は失われている。

むしろ、フロートユニットの分、月下が劣っている。

狭い足場でギルフォードと五人のグラストンナイツを相手にするのは不可能であった。

MVSを構え、月下に迫ってくるヴィンセント。

だが、月下の前に紅蓮が立ちはだかる。

 

「カレン!なんの真似だ!」

 

「あなた一人じゃ無理でしょ!」

 

ライは懐かしい気持ちを覚える。

かつて黒の騎士団の双璧と呼ばれた紅と青の機体が一年ぶりに戦場に並び立つ。

だが、一年前に無敵を誇った双璧も機体性能差を埋めるほどではなかった。

互いに背中を守るように戦う二機も空を含め三次元的に高速機動を行うヴィンセントを捉えられずにおり、その間に仲間の無頼がグラストンナイツによって撃墜されていく。

ヴィンセントの隙を突き、藤堂のサポートによって互いに一機ずつグロースターを撃墜したライとカレンだったが、戦場は黒の騎士団に不利の想定を様していく。

 

(ルルーシュ……いつまでかかっっている!)

 

ライは重アヴァロン内にいるルルーシュを待つ。

この戦局を覆すにはルルーシュがナナリーを手に入れるしかない。

それまでこの戦場を維持しなければならないが、このままでは時間の問題だとライは感じていた。

そして、さらに戦況は悪化していく。

 

(さらに一機のナイトメアだと……あと二つは航空戦力……?)

 

月下のレーダーを見るライ。

 

「カレン、ここは頼む!僕はゼロのところへ」

 

「っ!勝手なことを!早くいけ!」

 

カレンがライを促す。

突撃してきた戦闘機を朝比奈に任せ、艦内探索を開始する。

レーダーを見てもゼロの居所を知ることは出来ない。

味方機は残り五機。

藤堂、仙波、千葉、朝比奈、カレン、ライのみ。

そして、どの機体もこの戦況を覆せるほどの力は持っていない。

折しも、アプソン将軍の暴走により重アヴァロンのエンジンが破損し機体が傾き、戦闘機かと思われた可変ナイトメアフレームにより、朝比奈は戦場を離脱する。

 

(残り四機。時間をかければこの重アヴァロンは沈む)

 

いざとなればゼロに任せるのではなく、自分自身でナナリーを捕虜にすることも視野に入れる。

ライは既に艦内対策を開始していた藤堂と仙波に合流する。

 

「藤堂さん!ゼロは!」

 

「ECCMの影響か連絡が取れん。後方の千葉、紅月と合流して艦内探索をかけたいが……」

 

ライは藤堂の言葉を聞き終える前に、外に向け飛燕爪牙を発射する。

だが、それはトリスタンのMVSにそって切り払われる。

 

「いい勘をしている」

 

トリスタンのパイロット、ジノ・ヴァインベルクはライを褒めるが、ライにそれに答える余裕は一切ない。

ナイトオブラウンズ専用KMFを相手できるほどの性能は月下にはなく、空からの攻撃に対して月下は防戦一方になる。

 

「ライ殿、ここは某が!」

 

仙波がトリスタンに仕掛けるも、軽くあしらえるほどの余裕がトリスタンにはあった。

 

「弱い者いじめは好きじゃないけどさ、そうも言っていられる状況じゃないからな」

 

トリスタンは二本のMVSの柄尻を連結させる。

華麗に舞踏かのようにも錯覚するそれ動きに完全仙波はついていけていなかった。

鶴嘴を思わせるようなMVSが仙波の月下を襲い、深々とそれは突き刺さった。

 

「仙波さん!」

 

ライはハンドガンをトリスタンに向けて放つが、ブレイズルミナスによって防がれる。

藤堂も仙波の援護に入ろうとするが、割って入ってきたギルフォード卿のヴィンセントによって片腕を失う。

 

「藤堂、陸戦兵器での奇襲とはお前らしからぬ戦だな」

 

ライは廻転刃刀をトリスタンに向けて投げ捨てる。

 

「流石にそれは防げそうにないな」

 

トリスタンは悠々とそれを交わすが、同時に仙波を襲っていたMVSも離れていく。

その隙に仙波は自身の廻転刃刀をライへと渡し、脱出レバーを作動させる。

 

「すまない、後は頼む」

 

仙波の檄を受け、ライは月下の機動性を活かしヴィンセントに向かう素振りを見せるが、ヴィンセントがそれに応対しようとした際にその場を離れる。

 

「藤堂さん、今のうちに!」

 

ライは藤堂にも逃げるように促すが、すでに藤堂の月下もコントロールを失っており、そのまま離脱していく。

 

「ライ、ナイトメアの相手はカレンに任せろ。お前はゼロを頼む」

 

C.C.からの通信を受ける。

レーダに目を向けると、千葉の反応は消え、カレンは海の上にいた。

さらには枢木スザクが駆るあのランスロットまでが戦場に現れていた。

 

「落ちているのか、カレンは?」

 

「違うわ、こっちにも空を飛べる準備はしておいたのよ」

 

C.C.の代わりに黒の騎士団の技術を担うラクシャータが答える。

 

「あなたがあの月下のパイロットね。興味あるからちゃんとゼロを連れて帰ってくるのよ」

 

戦場はカレンの操る紅蓮可翔式によって、ギルフォードと残りグラストンナイツを撃墜、撤退させるまでは好転していく。

紅蓮可翔式の勢いは止まらず、ジノのトリスタン、アーニャのモルドレッドまでもを機体ダメージを与え、ランスロットとも互角の勝負を繰り広げていく。

だが、カレンを止められるはずの力をもつ枢木スザクのランスロット・コンクエスターは紅蓮可翔式から離れていく。

 

(あのスザクが逃げる?)

 

ライは自分の直感を信じてスザクの後を追う。

敵が目の前にいるにも関わらずスザクが引く理由は一つしか考えられない。

ランスロットがコアルミナス・コーンを展開し、旗艦へと突入していく。

ライは間髪入れずにその穴に飛び込む。

 

「スザク?」

 

ゼロは突然侵入してきたランスロットに驚きの声をあげる。

 

「ゼロ!ナナリー!」

 

すぐさまライの月下も突入するが、ランスロットの後追いだったこともあり既にランスロットによりナナリーをおさえられた後だった。

ライは威嚇のため、ランスロットに廻転刃刀を向ける。

だが、その刃を振り下ろすことはしない。

スザクがこちらに対応する動きを見せれば、その隙に即座にナナリーの保護するつもりだった。

 

「月下のパイロット、こちらにはナナリー総督を保護している。また君たちは総督殺しをするつもりか」

 

スザクがライに向け尋ねが、押し問答する予定はライにはない

 

「ナナリー総督をこちらに渡してもらおう」

 

未だにゼロと供にいなかったということはゼロはナナリーを説得することはできなかったのだろう。

ナナリーの意思を無視することは心苦しいが、結果を出さなければ今回の作戦で犠牲になった団員に申し訳が立たない。

だが、スザクは月下を無視してそのまま飛び去ろうとする。

 

「スザク!」

 

「ギルフォード卿との決闘は見せてもらった。君は無抵抗の人間を討つような人じゃない」

 

ライが声をあげるがスザクは冷静に言う。

スザクが自分のことを信じたことにどこか懐かしさを覚えたライは静かにMVSを構える腕をおろす。

そしてそのままランスロットは月下の横を通り過ぎていく。

 

「ナナリー!……カレンはゼロを保護しろ!僕はナナリーを!」

 

ライは声を上げる。

ランスロットが生み出した風圧によりゼロも吹き飛ばれるが、カレンの紅蓮可翔式により事なきを得る。

遠くでゼロがナナリーを呼ぶ声がする。

ライは来た穴に向け大きく跳躍し甲板へと出る。

ランスロットを追おうとするが、その動きは二機のナイトメアフレームによって阻止される。

 

「ちょっと待った。その機体はスザクから鹵獲するように頼まれていてな」

 

「逃さない」

 

ジノとアーニャという二人のナイトオブラウンズに取り囲まれる。

機先を制そうと廻転刃刀でモルドレッドに斬りかかるが、他のどのナイトメアよりも強固なブレイズルミナスを持つモルドレッドには通用しなかった。

 

「抵抗する気?」

 

モルドレッドがシュタルケハドロンを構える。

たが、目の前の月下はそんな緩慢な動きを待つほど鈍くはない。

一瞬にしてモルドレッドの目の前から月下は消える、はずだった。

 

「故障?」

 

バランスを崩し情けないほど盛大に転倒する月下。

正式なメカニックが居ない中、急ごしらえで整備したものの以前の決闘で破損した箇所を完全に修復できるはずもなく、出力バランスもそのままであったため、ここまでヴィンセントやトリスタンを相手にしてきた月下はここが限界だった。

 

「一応保険だ」

 

トリスタンはMVSで月下の両腕を切り落とし、さらに脱出機構が作動しないようにコクピット近くに振り下ろす。

 

「じゃあ、運んでくれアーニャ」

 

「私が?」

 

モルドレッドに抱えられる月下。

為す術がなくなったライは何も言わず成り行きを見守るしかなかった。

 

「すまない……ゼロ、C.C.、みんな」

 

ライは全軍に通信を入れる。

だが、ゼロはしっかりとカレンに保護され、自分一人で済んだことにほっと胸を撫で下ろしていた。

 

「ラクシャータ!飛翔滑走翼の予備は!このままではライが!」

 

C.C.が声を荒げるのが聞こえる。

 

「ないわよ。それにあの距離じゃ誘導も効かないわ。それにゼロの指示が……」

 

「ゼロ!ライが!」

 

焦るようにゼロの指示を仰ぐC.C.だったが、ゼロの声は冷酷だった。

 

「あの月下に構う必要はない。全軍撤退だ」

 

(それでいい。君は優しすぎるから……。我ながらいいギアスをかけたものだ)

 

静かに目を閉じるライ。

敵に捕らえられたにも関わらず、あのスザクなら悪いようにはならないだろうと思う。

 

「スザク、月下を鹵獲したぞ、でも鹵獲する必要なんてあったのか?」

 

ジノは不可解なスザクの指示の意味を尋ねる。

 

「そのパイロットは総督の名を知っていた。ゼロに近い者かもしれない」

 

スザクは一人思う。

このパイロットはゼロの身代わりをするほどゼロに信頼されている。

そして、ゼロがルルーシュならばその側近がナナリーの名を知っていてもおかしくない。

だが、月下がMVSを構えた時、ゼロは止めなかった。

ルルーシュならば真っ先に止めたはず。

それに加え、ゼロは月下の奪還を諦め、早々に切り捨てた。

相反する二つの状況にスザクも混乱し、ライの鹵獲命令を出した。

だが、その状況故に生き延びることが出来たことにライは気づいていない。

空を飛ぶことが不可能な月下は重アヴァロンと共に海の底に沈んでもおかしくなかった。

ゼロが奪還に動けば、ナイトオブラウンズ三人をカレン一人で相手しなければならない。

そうなれば、カレンもただでは済まず、もしかしたらゼロもこの場で命を落としていたかもしれない。

黒の騎士団が引いていく様子に安堵の表情を浮かべたライはモルドレッドに抱えられたまま眠ることにした。

そして、彼はあの車椅子の少女に再び出会うことになる。




お気に入り、感想などありがとうございます。
励みになっています、ヒナトマトです。

私事ですが、数週間海外に行ってきます。
しばらく更新がない(もしくは遅くなる)と思いますがご理解いただければと思います。

感想や批評、誤字脱字等ございましたらお気軽に連絡ください。
(誤字脱字についてはなるべく早く修正しようと思います)
よろしくお願いたします。

ナナリーかわいいよナナリー
(ヒロインはナナリーだということを皆さん忘れているのかもしれないのでアピールしておきます。C.C.じゃないよ)

記 7月16日
帰国後、この後書きは消去いたします。
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