魔術師が英雄を目指すのは間違っているがろうか   作:ユキシア

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静観

「娯楽に餓えて下界に降りた神々…………亜人(デミ・ヒューマン)…………ダンジョン…………神の恩恵…………迷宮都市オラリオ…………これがあんたらにとっての常識なのか?」

「そうすっよ。本当にリブロさん何者なんすっか?」

「少なくとも俺の知っている常識ではねえな…………」

50階層で繰り広げた戦闘の後、リブロは【ロキ・ファミリア】と共に行動し、地上を目指していた。

その間、リブロは【ロキ・ファミリア】の団員にこう尋ねた。

『あんたらの常識を教えてくれ』

どうも話がかみ合わないリブロはまずは相手の知る常識から情報を得ていた。

その結果がとんでもないことに気付いてしまった。

(ここって異世界…………なのか?)

常識も何もかも異なるその結果からそう推測を立てたリブロは正直に自分でもなんでこんな結論になったのか疑念を抱いているも、それだと状況の説明がつく。

問題を上げるとしたらどうやって異世界にやってきたのかだ。

異世界。それは自分のいる世界とは別にある異なる世界のこと。別世界を渡る方法など少なくともリブロは知らない。

一応リブロの知る魔術師の世界には時空間転移魔術という説があるもそれは魔術理論的に不可能とされている。

魔術の二大法則の一つ『零点収束の法則』―――あらゆる世界法則は、常に最も自然で安定した形へと収束し、世界は矛盾を許さない―――この法則に阻まれるのである。

少なくとも異世界に移動するにはこの時空間転移魔術を上回る方法でなければ不可能だ。

しかし、リブロはここにいる。

ジャティスに殺されてこの世界、ダンジョンと呼ばれる洞窟で目を覚ました。

ジャティスに負わされた傷も癒え、道具な魔導器なども万全の状態でだ。

戦闘で道具も魔導器も使い果たしてマナ欠乏症に陥っていた自分がどういう方法を持ってこの世界に移動することができたのか。

謎が多すぎる。

「……………………まぁ、それは一旦置いといて。ラウルよ、さっきから睨んできているあのエルフの女の子についてだけど、俺、何かしたっけ?」

現状が追いつけない今の段階では結論どころか仮説も立てれないと知り、思考を切り換えるリブロは先ほどから睨み付けてくる山吹色の髪をしたエルフの女の子を指す。

「レフィーヤのことっすか? レフィーヤにとってアイズさんは憧れの存在すっからね。50階層でアイズさんをお姫様抱っこしたのを根に持っていると思うっすよ」

「つまり嫉妬か」

「……………………そうすっね」

身も蓋もなくずっぱりと言い切るリブロにラウルは溜息を吐く。

戦闘後、アイズをお姫様抱っこしながら『疾風脚(シュトロム)』を連続起動させて【ロキ・ファミリア】のいる場所まで到着した際に多くの団員達が驚いていたが、レフィーヤはまだその事に根に持っているようだ。

「アイズってアイドルみたいなもんか? まぁ、確かに可愛いが」

「他の派閥関係なく人気っすよ。剣の腕もオラリオでトップクラスっすから」

「あーそりゃ見たらわかった。リィエルと違って速度重視の剣士だな」

力で強引に真正面から斬るリィエルとは違う剣技。

一度手合わせしてみたいと思うほどだ。

やがて、一行は広いルームに辿り着いて休息を取る。

その時間を利用してリブロは己の愛銃の手入れと弾丸の数を把握しておく。

「……………………」

「……………どうした?」

愛銃の手入れをしている最中にアイズが無言でリブロの拳銃を見つめてくる。

「…………それって魔道具(マジックアイテム)?」

「いや、弾丸は魔術弾だがこの銃自体は…………もしかして銃の概念もないのか?」

「…………うん、私は見たことない」

「マジか…………どうやって調達しよう」

銃という概念がない以上は薬莢もないだろう。どうやって弾丸を補充すればいいのか頭を悩ませる。

「凄かった…………」

興味深そうに銃を見るアイズに苦笑して少しぐらいなら撃たせてやろうと思ったら――

「そんな得体のしれねえ奴に構ってんじゃねえよ、アイズ」

不意に放たれた第三者の声、狼人(ウェアウルフ)のベートがいた。

「いきなり失礼だな。ええっとベロだっけ?」

「ベートだ! ベート・ローガ! それが俺の名前だ!! たくっ、どうしててめえみたいな奴と行動しなきゃならねえんだ」

「それはお前の団長に言ってくれ。ええっとペド」

「てめえ喧嘩売ってんのか!? ああ!?」

気軽に声をかけるリブロに、ベートは物凄い怒りの形相で詰め寄った。

『ヴヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!』

その時に岩窟を震撼させる咆哮が響く。

筋肉質な巨体な体に、赤銅色の体皮。

モンスターの代表格にも数えられる牛頭人体のモンスター、『ミノタウロス』だ。

それも大量。

「ほら、ペストが大声をあげるからモンスターが来たじゃねえか」

「てめえ…………後で覚えとけよ」

暢気に会話をするリブロの両手には愛銃が握りしめられ、ベートやアイズ達も得物を手にする。

リブロも参戦したミノタウロスとの戦闘で予期せぬ方向へと転がった。

モンスターであるミノタウロスが冒険者に恐れをなして逃げ出したのである。

「ええっ!?」

「お、おいっ!? てめえ等、化物(モンスター)だろ!?」

どうやら【ロキ・ファミリア】でもこの逃走には驚きを隠せれないでいた。

「追え、お前達!」

動揺を押さえ込んだリヴェリアの号令が飛ぶ。

一瞬動き気を止めていたアイズ達は、弾かれたようにミノタウロスの群れを追い出した。

「《おいおい》」

白魔【フィジカル・ブースト】を起動させてリブロも追いかけようとするが―――

「待て。貴様は私といろ」

「…………………了解」

リヴェリアに制止の言葉を投げられて解除する。

(まぁ、信用してねえから監視下に置くのは当然か…………)

リヴェリアからしてみたらリブロは正体不明の存在。何をするかわからない以上は目の届くところで監視しておく必要があり、リブロも聞かなくてもそれを承知している。

下手に動いて信用そのものを失くしたら余計に現状を混乱させることになる。

少なくとも今は大人しくするに限る。

 

 

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