魔術師が英雄を目指すのは間違っているがろうか   作:ユキシア

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恩恵

迷宮都市オラリオ。

広大な面積を誇る円形状の都市は、堅牢な市壁に取り囲まれている。

外界と隔てる市壁の内側は大小様々な建物が立ち並び、そして都市中央には、天を衝く白亜の巨塔がそびえていた。

地中に開く大穴、ダンジョンの入り口を塞ぐ『蓋』として建設された摩天楼施設『バベル』。

このバベル、つまりダンジョンを中心にしてオラリオは今もなお栄え続けている。

「うわぁ~ここがな………………」

そのオラリオの都市北部にある長大な館。

高層の塔がいくつも重なってできている邸宅は槍衾のようでもあり、赤銅色の外観もあって燃え上がる赤に見える。塔の中でも最も高い中央塔には道化師(トリックスター)の旗が立ち、今は茜色に染め上げられている。

それを見て驚きの声を上げるリブロは【ロキ・ファミリア】の本拠(ホーム)である『黄昏の館』へと訪れたのであった。

「宮廷とはまた違う趣があるな…………」

女王陛下が在宅している宮廷を思い出しながら呟く。

「今帰った。門を開けてくれ」

フィンの言葉を受け開門され、敷地内に足を踏み入れた。

「――――――――おっかえりぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!」

と、いきなり。

アイズ達の入門を見計らったかのように、館の方から走り寄ってくる影があった。

朱色の髪を揺らす彼女は男性陣には目もくれず、アイズ達女性陣のもとへまっしぐらに突き進んでくる。

「みんな無事やったかーっ!? うおーっ! 寂しかったー!」

両手を突き出して飛び付いてくる彼女を、ひょい、ひょい、ひょい、ひょい、とアイズ、ティオナ、ティオネはすんなり回避して、最後尾にいたレフィーヤが押し倒された。

「ラウル、あれ誰だ?」

「……………………えっと、俺達の主神のロキっす」

レフィーヤの身体、特に胸部をこれでもかというぐらいに堪能する彼女を指しながら近くにいたラウルに問いかけると口ごもりながら答えた。

「………………つまりあれが神か」

娯楽に飢えて天界から下界に降りた神々の一柱。リブロの世界では想像もつかないことだ。

「ん? 誰や自分?」

レフィーヤから離れてようやくリブロの存在に気付いたロキは訝しむように声をかけた。

「初めまして、神ロキ。俺の名はリブロ=リーベラ。貴女に尋ねたいことがあってフィン達の同行の許可を貰った身だ」

「フィン、どういうことやねん?」

「それについては追々話すよ。それよりもただいま、ロキ」

「了解や。おかえり、フィン」

それから【ロキ・ファミリア】は遠征から持ち帰った荷物を受け取り運搬していくなかでリブロはフィン達とロキと共に誰もいない一室に案内された。

「さて、そんなら自分が何者か洗いざらい吐いてもらうで?」

「ああ、俺もこちらの質問にも答えてくれるのなら全てを話す。まずは―――」

リブロは語った。

自分のいた世界のことからどうしてダンジョンにいたのかを全てを隠すことなく話すとロキは難しい顔を作って唸る。

「異世界からダンジョン、それも深層域にやってきたってなんやねん。普通死ぬで? なんで自分生きとん?」

「その辺の基準がまだイマイチだからな…………まぁ、それなりの修羅場は潜ってきたし魔術も使えるからな」

ロキからしてみてもリブロが単独で深層域にいたのはおかしい話のようだ。

だが、リブロからしてみたらそうでもなく、普通にモンスターを倒せた。

リブロがいた世界とこの世界とでは個々の強さに違いがあるのかもしれない。

「その魔術も興味はあるんやけど。それより質問に答えるとしたら、うちは異世界のことなど知らんで? 天界でも興味なかったさかい」

「……………そうか。異世界のことについて他に詳しい神はいるか?」

「どうやろうな~、おったとしてもそいつが下界に降りてきとるかわからへんで? うちを含めて大抵は娯楽に飢えとる奴ばかりやからな~」

当てが外れて他に詳しい神々がいるか尋ねるもロキには思い当たる神々はいなかった。

「マジか…………どうすっかな…………」

ここまで来て元の世界に帰る為の方法が見つからず、収穫はゼロ。

いや、銃がないこの世界で50階層で撃ちまくったおかげでマイナスかもしれない。

(最悪この世界で骨を埋めることになるかもな…………)

この世界に来られたのだから逆に帰る方法もあるはずだが、リブロ以外に魔術師が存在しない以上は全てリブロ一人で帰る方法を見つけなくてはならない。

仮にそれが見つかったとしてもそれまでの生活をどうするかが現状で一番の悩み種だ。

「自分、他に行くアテがないんやらうちの眷属になるか?」

苦悩しているリブロに鶴の一声をかけたのはロキだった。

「いいのかい? ロキ。そんなあっさりと決めて」

「なに言うとんや。こんな面白い子をうちが放っておくわけないやろ? 異世界人やで? それもうちら神々も知らん力を持った、な。うちは歓迎するで。フィン達はどや?」

「僕は賛成かな。地上に戻るまで彼を見て見たけど実力も人柄も信用できる。未知数の力にはまだ不安は残るけどね」

「私も拒否する理由はない。二人がそう言うのであれば従おう」

「儂も賛成じゃ。中々に面白そうじゃしのぉ」

ロキに続いてフィン達も賛成してくれた。

「それじゃ厄介になる」

右も左もわからないこの世界で生活できる場所が確保できるだけでもリブロにはありがたい話だ。断る理由もないリブロは素直に首を縦に振った。

「ほい決定! 知っとると思うけどうちがこの【ファミリア】の主神ロキや!」

「僕がこの【ファミリア】の団長を務めているフィン・ディムナだ。改めてこれからよろしく頼む」

「私が副団長を務めているリヴェリア・リヨス・アールヴだ。よろしく頼む」

「儂がガレス・ランドロックじゃ。よろしく頼む」

「帝国…………いや」

ここが別世界である以上は今は帝国宮廷魔導師団のリブロ=リーベラと名乗るのはおかしい。下手なことを言ってフィン達に迷惑をかけるのもよろしくない。

「リブロ=リーベラだ。こちらこそよろしく頼む」

今はただのリブロ=リーベラ。それだけでいい。

「そんじゃ早速『恩恵(ファルナ)』を刻むさかいフィン達は出てってなー」

「ああ、また後で会おう」

神々の恩恵――――【ステイタス】は眷属となった者の能力を表す生命線でもあるので【ファミリア】の主神その情報を秘匿に余念がない。

フィン達が出て行った後でロキはリブロの背中に神血(イコル)を媒介にして刻むことで対象の能力を引き上げる、神々のみに許された力。

神の恩恵を背中に刻まれたことでリブロはロキの眷属となった。

「なぁ、神ロキ。【ステイタス】ってどうやったら上がるんだ?」

「【経験値(エクセリア)】を積んでいくことやな~。まぁ、初めは誰もがLv.1からやけ…………ど!?」

「どうした? 恩恵が刻まれなかったのか?」

急に声を荒げたロキに怪訝するリブロは尋ねた。

「……………………ちゃう、うちの恩恵はしっかり刻むことはできたんや」

「ならどうした?」

「……………………これ、見てみ」

驚きを隠せれないロキから渡された羊皮紙、【ステイタス】の写しを見る。

 

 

リブロ=リーベラ

Lv.5

力:B732

耐久:D532

器用:A876

敏捷:A802

魔力:S990

魔術:E

神秘:G

銃撃:F

逃走:G

 

 

 

「「………………………………」」

二人揃って無言になる。

誰もは初めはLv.1から始まるはずが、Lv.5と記されている写しを見て間違いではないかとロキを見るも首を横に振った。

どうやら間違いというわけでもないようだ。

「……………………ロキ、【ステイタス】いや、恩恵のことについて詳しく教えてくれ」

「……………そ、そやな」

原因不明のLv.5からのスタートに何かしらの原因があると思ったリブロはロキに恩恵の詳細を訊いて一つの仮説を立てた。

「既にそれだけの『器』になっていたってことか………………?」

『器』の昇華。それが【ランクアップ】。

なら既にこのLv.に似合う『器』を既にリブロが持っていてそれが神の恩恵を刻まれた今、それが確認できるようになっていたとしたら辻褄が合う。

帝国宮廷魔導師団として数多くの死戦を潜り抜けてきたリブロの『器』はそれを糧に成長、この世界では【ステイタス】として刻まれて【ランクアップ】。『器』を昇華させていたのなら既にLv.5だったということにも納得できる。

それとも別の要因が働いた可能性も捨てきれないが、これはこれで好都合だった。

「既にLv.5なら深層で戦えたのも不思議やないんやけど、本当になんやねん、これ?」

「さあな? 俺が知りてえよ」

仮説はあくまで仮設。リブロの仮説が正しいということは誰にも証明することは出来ない。なら、今の自分の結果を受け入れて活かすまで。

「……………………」

ロキはその【ステイタス】にも驚かされるがそれより下に記された魔法とスキルに目を移す。

 

《魔法》

【ナーダ】

付与魔法(エンチャント)

・虚無属性。

・詠唱式【無に廻れ(ゼロ)

・解除式【有に進め(ワン)

 

《スキル》

神秘探求(ミィスティリオ)

・発展アビリティ『魔術』の補正。

・補正効果はLv.に依存。

忠誠一心(リスペクト)

・忠誠心が高い程に全アビリティ能力強化。

死神氷心(グリム・ハート)

・対人に対して広域強化。

・精神攻撃・精神汚染の無力化。

・氷属性に対する耐久強化。

 

異常な【ステイタス】と身震いする魔法とスキルを見てロキは深いため息を吐いた。

 

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