魔術師が英雄を目指すのは間違っているがろうか   作:ユキシア

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魔法

「《雷槍よ》―――――《穿て(ツヴァイ)》、《穿て(ドライ)》」

三条の雷閃が宙に漂る蜻蛉型のモンスター『ガン・リベルラ』を貫き、続けて黒魔【フレア・バースト】で大型級のモンスター、『バグベアー』を丸焼きにする。

ダンジョン20階層。

そこでリブロはアイズと共に赴いてモンスターと戦闘を繰り広げている。

アイズも振り下ろされるバグベアーの巨椀、眼前に迫る大爪をあえて避けず――剣で迎撃。敵の攻撃を置き去りにする速度でレイピアを閃かし、銀の斜線を走らせたかと思うと、バグベアーの腕は斬り飛ばされた。

片腕を失い硬直するモンスターにアイズはすかさず剣尖を見舞う。

「《雷槍よ》」

最後の一体を黒魔【ライトニング・ピアス】でモンスターの眉間を貫いた。

「さて、と。資金資金」

早速倒したモンスターから魔石を取り出すリブロは資金調達の為にダンジョンに来ていた。

それにつられてアイズも代剣の試し斬り。

二人一緒でダンジョンに行くことになって現在帰路の途中だ。

(…………使いにくい)

モンスターの一団との戦闘を終えたアイズは、代剣として借り受けたレイピアを見下ろす。

武器の性能は確かに高い。だが使い慣れた愛剣(デスペレート)と比べ射程(リーチ)と重さ、何より強度が違う。

長く細い剣身は繊細な扱いをアイズに強要しているようで、使いづらかった。

「よし、ドロップアイテムも出たし、鉱石も手に入った。これでしばらくは持つな」

回収を終えたリブロにアイズは尋ねる。

「……………何かに使うの?」

「ああ、銃弾を作らなきゃならねえから鉱石と後は地上で火山花(オビアフレア)を買う金がいるんだよ。材料さえあれば錬金術でなんとか作れるし、発展アビリティで『神秘』もあったからその試作(テスト)も兼ねてな」

「錬金術…………?」

聞き覚えのない単語に首を傾げるアイズにリブロは微笑しながら教える。

「錬金術ってのは元素と物質を扱う魔術の一種だ。同僚に高速錬成を得意とする超突猪娘は石畳を一瞬で大剣に作り変えることができる」

「凄い…………リブロもできるの?」

「無理だ。あの猪娘の頭がおかしいだけだ。一歩間違えれば脳内演算処理がオーバーフローして廃人確定だぞ」

「……………………」

「剣の腕は凄いが、あいつとの任務は苦労が多かった…………」

思い出すだけでも疲れが出てくるリィエルとの任務。作戦も何もかも駄目にして正面から敵を斬って斬って斬りまくる戦法で任務を成功させてきたリィエルとは極力一緒の任務にはなりたくないと切に願い程に。

「あ、試作(テスト)で思い出したけど、この世界の魔術――魔法をまだ試してなかったな」

「魔法、発現してたんだ…………」

「ああ、付与魔法(エンチャント)だった」

「私と同じ」

アイズも風の付与魔法(エンチャント)を持つ剣士だ。

リブロも自分と同じ魔法を持っている事に少し共感を覚える。

「折角だ。少し試すか――――【無に廻れ(ゼロ)】」

超短文詠唱を歌い、魔法を発動させるリブロの右手に薄黒い光膜が覆う。

「楽でいいな。詠唱を唱えるだけで発動する点は魔術とまた違う」

魔法名―――【ナーダ】。

その属性は虚無。

右手に覆われる光膜で取りあえずは物質に触れてみるも何も変化はなかった。

襲いかかってくるモンスターに試してもモンスターに異常は見られない。

魔術でモンスターを葬りながら実験を続けるリブロは物は試しでアイズに魔法を行使してもらう。

「アイズ、ちょっと魔法を使ってくれ」

「うん、【目覚めよ(テンペスト)】」

アイズは魔法を発動させて風を纏うとリブロは光膜で覆われている右手で風に触れる。

すると、風が消えた。

「風が…………」

魔法が強制的に解除されたわけではない。

ただ、リブロに触れた瞬間風が打ち消された。

「なるほど、『魔力』を虚無化させて打ち消す魔法か。対抗呪文(カウンター・スペル)の魔法バージョンってところか。モンスター相手には使えないな」

明らかに対人用の魔法。

どこまで通用するか、効果があるのかは後ほど試すとしてリブロは魔法を解除する。

「ん? なぁ、アイズ。あれはなんだ?」

リブロの視線の先には巨大なカーゴを引きずっている冒険者の一団。

その冒険者のエンブレムを見てアイズは口を開く。

「【ガネーシャ・ファミリア】。私達と同じ冒険者で街の憲兵もしている」

「へぇ~、つーかあの中身ってモンスターが入ってるよな? モンスターを捕まえて解剖でもするのか?」

その問いにアイズは首を横に振った。

「もうすぐ怪物祭(モンスターフィリア)だから」

念一度のフィリア祭りは闘技場で開かれ、調教師(テイマー)がモンスターを倒すのではなくて手懐けるまでの一連の流れ―――調教(テイム)を観客達に披露する。

怪物祭(モンスターフィリア)か…………行ってみるか。アイズはどうする?」

「私は別にいいかな…………」

「そうか。んじゃ邪魔にならないように別ルートから行くか」

「うん」

二人は進路を変えて別ルートから上階へ向かった。

 

 

 

 

地上に帰還し、ホームに帰り着く頃には、すっかり夜になっていた。

「ただいまー」

堂々と館に入るリブロの後ろでこそこそと意識を周囲に張り巡らしながら入るアイズは廊下を進み、自室にそれぞれ向かおうとする。

「アイズ、リブロ」

「お、ただいま。リヴェリア」

「…………………ただいま」

平然と挨拶を交わすリブロの後ろで身を隠しながら挨拶を返すアイズにリヴェリアは溜息をはく。

「アイズ…………そんなにも私が怖いか?」

ぶんぶんと勢いよく首を横に振りつつもリブロの前に姿を現すことはない。

そんな二人を見て一発で力関係がわかった。

母親と子供のような関係みたいだな、とリブロは思った。

「そう怒るなって、リヴェリア。あんまり怒ると皺が増えるぞ?」

「余計なお世話だ。二人共もう少し自分の身体を労われと言っている」

母親(ママ)か…………」

「誰が母親(ママ)だ」

リヴェリアは否定するもそれ以外に他に例えようがなかった。

「それよりべべーは?」

「…………………まだ部屋の中だ。まったく、第一発見者が私だったからいいものを。よくあんなことができるものだ。流石の私でもベートに憐みを抱いたぞ」

「それなら腹に『アイラブリヴェリア』と書いておくべきだったか。よし、ちょっとペーストを慰めに行ってやるとしよう」

「止せ。トドメをさしに行くな」

引き籠もり中のベートの部屋に向かおうとするリブロに制止の声を投げる。

「ううっぷ…………あれぇ、アイズたんとリヴェリア、それにリブロも何しとるん…………おえっぷっ」

「二日酔いかよ、ロキ」

足もとはおぼつかず、顔色は果てしなく悪い。何より凄まじく酒臭いロキが水を飲みにやってきた。

「リブロ…………魔術とやらどうにしてえな…………」

「悪いが二日酔いに効く魔術なんかねえよ」

「マジか…………うっぷ」

リブロの魔術を当てに来るもその当てが外れたロキは今にも口から吐瀉物が出現しそうだった。

「で、何やっとるん?」

「二人がダンジョンにもぐっていた。この時間までな」

「あー、そういうことなぁ…………」

リヴェリアの話に相槌を打つロキは、ちらりと横目でアイズとリブロを窺う。

「よぉし、お転婆アイズたんは明日うちとデートや。拒否権はなしやからな」

酒気を漂わせながら笑みを作って言うロキにアイズは瞬きを繰り返した。

「そんで使えんリブロは明日はダンジョン禁止や。主神命令やで~」

「……………そうかロキ、そんなに二日酔いを悪化させたいか。二日酔いを治す魔術はないが、状態異常を引き起こす魔術はあるからそれを今からお前にかけてやる」

「ちょっ!? うそや、うそ!? これ以上悪化しとうない!!」

表情は笑っているも目は笑っていないリブロは左手をロキに向けて軽く脅すとロキは慌てふためいてリブロから逃げる。

 

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