一般的に、一芸に秀でている方が、世の中に受け入れられやすい。
欠陥があった方が親しみを持ちやすいと言うのもあるが、その大きな理由の一つに
『あれっと思ったらその人に頼ればいい。』と言うのがある
そこにあの人は知っているだろうかと気をもむ必要はない。
彼の専門分野で、知っているはずだからである。
その思考を放棄した分だけ時間は短縮され、物事が早く進む。
サクヤは全方位であった。
「(にしたって…プロフェッサーも驚きのカバー範囲だよな…)」
三代目がプロフェッサーと呼ばれていたのは記憶に新しい。
木の葉の中で、発動できない忍術は無いと言われた。
今は亡い。
だからこそサクヤは上忍になってから、その埋め合わせの様に色々な場所で呼ばれていた。
中忍の時から、その傾向はあった。
しかし、何かとしょっちゅう呼ばれている中忍は、何もサクヤだけでは無い。
イルカもそうであったし、イズモとコテツも、理由はどうであれ何かと呼ばれていた。
三代目が亡くなってすぐ
その穴を埋められるだけの知識を持った忍びは当時、サクヤしかいなかった。
『あの真の目が大人しく会議に出席するならば。』の話である。
シカマルが中忍になって初めての大仕事、砂との合同の中忍試験開催に当たって、木の葉は砂に独自のパイプがある真の目一族の手を少し借りていた。
砂の真の目一族は快く手を貸してくれ、第2次試験の準備は滞りなく進んでいた。
真の目の手を借りる、と言う事は『真の目』で、『木の葉の忍』であるサクヤに、『つなぎ役』が回ってくると言う事である。
砂側の貧乏くじを引いた真の目はいないらしく「よろしくお願いします」と挨拶してきた者は真の目では無かった。
よって、真の目と里との仲介は、サクヤに殆どを押し付けられることとなる。
サクヤを仲介して開催された砂での進行報告会議は、滞りなく進んでいる。
全く問題なく。
そして、いっそすがすがしいほどに、館内放送がせわしなく鳴り響いていた。
「…前から思ってたんだが、なんで会議に行かねぇんだ?
さっさと行った方が、後でめんどくせー事になんないんじゃないか?」
サクヤとは同じ件だが、ある意味別件で砂に来ていたシカマルは
隣に佇み、館内放送の呼び出しに全く答える気のないサクヤを見上げる。
鳴り響く館内放送に気付いてはいたが、サクヤを無理に会議室に入れるつもりはなかった。
貴重な勝負相手を失うわけにはいかない。
シカマルは、サクヤを相変わらず白いなとひそかに眺めるが、
その視線は、すぐバチッと合わさり、また手元の本に戻される。
何の本かはわからない、表紙の『私はマジックだ』と言う謳い文句に見覚えは無かった。どうせ砂の国の本屋で適当に買って来たものだとあたりを付ける。
「…たとえば、私が今死んだとして、里はどうなると思う?」
「……急に何だよ…。ふつーに葬式上げんじゃねえの?」
暗すぎる質問に、シカマルは引いたが、サクヤはそのまま話を続ける。
「まあ、そうなるよな。その後私の後釜が出てきて、私の穴は埋まる。」
「…。」
答えようのない沈黙が通る。
しかし話は妙な方向へ進んだ。
「今は、それぐらいの穴で済む。だが、私が会議に出ると、それじゃ済まない事が一つある。」
「…?」
「それぐらいのものを私は一つ持ってる、今はそれだけ知ってればいい。」
サクヤが何かを隠している。
それは木の葉の上層部にとって自明の理なのかもしれない。
忍びとして、その行為は正常で、むしろ推奨すべきこととはアカデミーでも習う。
シカマルはこの時
『サクヤはもしかしたら、消える気なのでは?』
ホンの少し、頭の片隅で考えてしまった。
それを打ち消す様に、シカマルは生意気な言葉を連ねる。
「…サクヤぐらいの穴ならすぐ埋まりそうだけどな。」
生意気な返事に、サクヤはムッとするどころか、ハハハッと軽快に笑って答える。
シカマルには何故かそれが、口に出さなかった考えを、肯定しているように感じた。
「じゃあそれは、シカマルに埋めてもらおうかな。」
―――
――
シカマルの作戦は大方上手くいった。
下忍の司令塔は機能したし、下忍に相対すると必ず現れる、二人の中忍に敵の目は欺かれた。
ペインの目は繋がっている。
自来也の残した情報に在ったそれは、シカマルのブラフに良く役立ってくれた。
ペインが、視界に度々現れる2人の中忍に目が行くのは必然だった。
ペインはこの忍びの多くを束ねているのはこの中忍だと勘違いする。
シカマルの狙いはココにあった。
まさか自分が囮に使われているとは思わないイズモとコテツは
呑気に『何故か、姿をあらわすだけで視線がずれるから楽だ』などと考えていた。
リスクの分担は、チームや組織の利点である。
責任や、職務を細分化する事で
一人一人が仕事に集中でき、その範囲のみの責任だけを負うだけでいいので、リスクを少なく挑戦が出来る。
シカマルは一つの班に負傷者の発見、連絡、敵索をやらせるのではなく、一つの班に一つの仕事を負わせることでリスクと、職務の細分化を図り
中忍二人を、ペインの視線を一瞬でもズラすことに注視させることで負担を減らし
更にその効果を、相手をする中上忍にもかかるようにした。
しかし、それも機能したのはペインが引くまでだった。
「敵が一斉に引いた?」
真の目の棟梁から借り受けた、管狐の情報を聞いてシカマルは、『来る』と思った。
「全員退避!!近くのシェルター又は里外に向かって逃げろ!!大きい攻撃が来るぞ!!」
シカマルは、この戦闘が始まってから感じて居た、もやもやが消えていなかった。
これで良かっただろうか…?
サクヤの様に上手くできているだろうか?
取りあえず一般人をシェルターに避難させることは出来たから被害は少ないはず
後は機を見て、里の外側に少しずつ移動させるだけだと思った矢先
それは起きた。
ゴゴゴゴ
と響く音にシカマルは振り返るがそこは壁のはず。
しかし、気付いた時には、青い空が広がっていた。
次回、100話
ヒロイン☆シカマル