また来て三角   作:参号館

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父親より先にサクヤショックから持ち直したシカマルだったが、何か手があるわけでは無かった。

取りあえず情報だと、下忍各位に付けた管狐から情報を集めようとし、真の目の棟梁から借りた管狐を探すが、管狐は先程の衝撃で全て消えていた。

 

「カツユ様!!待ったぁっ!!」

 

一応5代目の口寄せはまだ残っていたが、倒れた5代目のチャクラを消費し続けるのはまずいと考え、消えてもらうつもりであった為、慌てて止める破目になった。

 

 

 

何とかカツユから情報を集めたが、全カツユから集約された情報は、情報部が真相に迫っていたと言う情報以外、ヒントになる事実は無かった。

 

「くそっ情報部って…アカデミー消し飛んだはずだぞ…

残ってんのか…」

 

この里の惨状を見て、殆ど里が機能してない事は明白であった。

シカマルも、中心付近からこの里端まで飛ばされてきたのである。真相に迫った情報部が生きてるかどうかも分からなかった。

何か他に方法は無いのか、と頭を抱えるシカマル。

 

だが、神はまだ死んではいなかった。

 

 

「シカマル!!」

 

「イノ!!無事だったのか?!」

 

幼馴染みの生存にシカマルは光明を見た気がする

しかし、続くイノの言葉に宛てがひとつ消えたことを知る。

 

 

 

「うん…でも…シズネさんが…」

 

「おい…それって…」

 

 

 

 

―――

――

 

イノや、いのいち、そして護衛の暗部によって補足されて行く情報は決して良いものだけでは無かった。

シズネに起こった事の全容に、シカマルは舌打ちを打ちたかったが、何とか押し込める。

 

「そうか…そんなことが…」

 

「私たちがもっとしっかりしてたら…こんな事には…」

 

シカマルは自分を責めるイノに声をかける

今イノにつぶれてもらっては困るのだ。

しかし、シカマルは苛立ちを押しとどめる努力はしたが、とどめきれてはいなかった。

 

「シズネ先輩の死を無駄にはできねェ…

先輩が解こうとした、ペインの謎を解き明かして、その本体って言うのを見つけるまでは泣き言は無しだ!」

 

 

「…シカマル、もう少しやんわりとだな…」

 

その様子を見ていたシカクは摩擦が起きないかと、冷や冷やしながら止めるが

いのいちの方が今は冷静であった。

 

 

「いや、シカマルの言う通りだ。シカク。

我々の出来ることは、すぐにでもペインの本体の居場所を探し出す事だ。」

 

しかし、シカクが幼馴染みの意見を聞ける心境にあるかと言われたら、そうでもないので

特段長くもない導火線が一気に短くなり、

 

「いのいち…

お前ほどの術者なら、敵のチャクラを拾って逆探できるはずだろ?!」

 

逆切れを起こすことになる。

が、いのいちは出来た人間で、シカクが冷静でない事にとっくに気づいていた。

 

「…すでにやってみた。

が、敵は常にチャクラの周波を変えていやがる。

逆探は無理だ。

かなりのやり手だよ」

 

いのいちが出来た人でなければ、抗論が起きるのだが

シカクはここでいのいちが引く事を解かって、こういう甘えを見せるのであって、シカクの短気と頭脳には呆れ返る。

サクヤがこの場にいたなら、シカクとイノイチを交互に見た後、『成る程…そう言う事か。』と訳知り顔で納得するところであった。

 

シカマルは続きそうにない議題に終止符を打つ。

 

「ペインと接触した人達からカツユを通して、なるべく詳しい情報を集めたが、どうやら真相に一番迫っていたのはシズネさんだけだったみたいだ。

だが、オレらの知らない所で真相に迫っていた可能性もある。

ココからは人海戦術だが

トップが動けない今、情報を一人一人確認して集めるしかねェ。

たとえ死体を運び出してでも、徹底的にやるぞ!」

 

「待てよ…

そうか、分かってきたぞ!ペインの本体の居場所が!」

 

 

 

 

 

 

いのいちによって、解き明かされたペインの秘密はさっそくカツユの情報網によって里の動ける忍びへと繋がれた。

しかし、ここでナルトの中に封印してあった九尾の暴走が始まる。

 

 

―――

――

 

 

大きな音を立てて、里中心から起きた爆発は顔岩から向かって右にズレて、すり鉢の面積を増やした。

 

「今度は何だ?」

 

多少の爆発ではもう驚かないと思ってはいたが、まさかすり鉢の面積が増えるとは…

シカマル達は爆発の方向に顔を向けるが、やはり状況は分からない。

 

「ぶっちゃけもう、木の葉の原型がなくなちゃってます!」

 

シホの言う事はごもっともだが、最初の大きい攻撃により、すり鉢になった時点で、原型も何もなかった。

カツユが触角を動かし、声を上げる。

 

「急いでここからなるべく遠くへ、避難してください。」

 

この規模の攻撃に距離も何もないだろうと、冷静にシカマルは考えるが、あの爆発が誰によって起こったモノなのかを聞いて、思考が停止した。

 

「これはナルト君の九尾の力です。

私の分身がナルト君にくっついているので分かります。」

 

 

「九尾化か…」

 

頭痛にうつむくシカクに対し

いのいちはすぐさま封印の有無を確認する。

 

「ヤマトとカカシで封印術をナルトに施していたはずだぞ?!どういう事だ?」

 

「ヒナタさんです…ヒナタさんがナルト君を庇って目の前で倒されました。

其れでナルト君が…」

 

「それが引き金か…」

 

「ハイ…おそらく」

 

シカマルは眉間に親指を押し付け、シカクはあちゃーとばかりに空を仰ぐが、状況は変わらない。

この中でも一番冷静だったいのいちが口を開く。

 

「ヤマトはどうなった?こんな時にどこにいるんだ?

それにサクヤが居れば、何とか九尾の力を封印まで行かなくても、何かしら手を打ち、止めることが出来るだろ?

サクヤはどこだ?!」

 

 

サクヤは来ない

里抜け同然に忍びを辞し、秘匿であるが現状一般人の枠に入るサクヤを、無理に招集は出来ない。そしてその手立ても見立てもない。

シカクはこれ以上隠すのは無理か…と口を開こうとした。

が、しかし

 

「ヤマト隊長とサクヤは別の任務で今は居ない。

封印した本人であるヤマト隊長は、ナルトと物理的距離は取らないだろうから、今頃異変に気付いて駆けつけて来るかもしれない。可能性はあるが、間に合うかどうかは分からない。綱手様の意識があればその判断も付くんだが…。」

 

口を開いたのはシカマルだった。

しかし、ヤマトの状態は分かれど、サクヤの説明は無かった。

眉間に親指を当て何かを耐える様子に気付いてはいたが、言及する時間が惜しかったいのいちは、それを取りあえずそのまま受け入れた。

 

「ヤマトを待つか…木の葉壊滅を待つか…

どちらにせよ、俺たちに今できる事は、敵の本拠地を探る位だな…。」

 

シカクはシカマルの言葉を補足する様に、ごまかす様に、視線を逸らす様に言葉を重ねる。

 

「出来ることは少ないが、これはナルトのおかげで出来た大事な隙だ。

この時間は有効活用しないと意味が無い。

まだ動ける奴らで怪我人を里の外に移して、敵の捜索はなるべく少数隠密で行おう。」

 

 

 

 

 

いのいち達がカツユを通して集めた忍び達に指示を与えている横でシカクはシカマルに声をかけた。

 

「シカマル…どうするんだ。」

 

その言葉は牽制だった。

これ以上先延ばしにしてもどうにもならないと言う意味と、ナルトはどうするんだと言う意味の。

サクヤがナルトの精神的支柱であったかどうかは、シカクには分からない。

しかし、ナルトがサクヤを親の様に慕っていたのは、里の誰から見ても、明らかだった。

三代目の命であっても、親の仇であっても、たとえ見かけ上であったとしても

サクヤがナルトを大切に思っているのも、明らかだった。

里全体への一報はなるべく早い方が良いと、シカクは考えた。

そして、これからどう勝負がつくか分からないペインとの戦い

どう転んでも、里がナルトに構う余裕がある内に、()()()()()()だとも。

 

しかしシカマルは現状、シカクより冷静で、シカクより、里の者が見えていた。

 

「この情報は今の木の葉には必要のない情報だ。これ以上里に混乱は広げるべきじゃねェ。

そして、ナルトへは俺が話す。

ペインの事がある程度終息してからだ。

たとえ、今回の事でナルトにヘイトが集まっていようとも、ナルトに里への疑心が生まれようとも、まず最初に話す。

それから里に公表するのがスジってものだろ?」

 

 

 

 

眉間から親指を外し、鋭くシカクを見上げる姿に、白い影が揺蕩う。

 


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