また来て三角   作:参号館

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うちの大名は、カッコ良くないし、イケメンでもない。
クールは死んだ。
もういない。


105

トビ、またの名をマダラ、は焦っていた。

サスケを幻術に落とし込めないから、ではなく

懐柔しきったと思っていた長門が裏切って、木の葉の連中を生き返らせたから、でもなく

小南が輪廻眼を持って蒸発したから、でもなく

 

真の目サクヤの行方が全くつかめないから。である。

 

 

「まだ掴めないのか?」

 

「僕らのチャクラ探知にも全然引っかからないんだよ。」

 

「何カ、術ヲ使ッテイルカ

地上ニハ イナイカ…

オレ達ノ索敵範囲ヲ 何処マデ知ッテイルノカ 分カラナイガ

ソウトウ警戒シテイルノハ確カダ」

 

少ない松明に照らされ、派手な仮面と、派手な形相と、派手な剣を持った3人は浮いていた。

薄暗い洞窟の壁には、外道魔像が指を構えている姿が影になって不気味に映る。

派手な形相、トゲトゲアロエヤロー事ゼツは、幾度も探して結局チャクラの欠片も見つからなかった白い忍びを思い出す。

あれだけイタチのそばをうろうろとしていたチャクラなので、一発で分かると考えていたが

何故かサクヤが里を抜ける前にあった『大蛇丸のアジトを虱潰しにしている』噂もぱたりと止んでいた。

 

「流石に死んでたり…なんてことは無いですよね?」

 

まさか…と言いたげな上ずった声が、派手な刀を持った影、鬼鮫から発せられる。

対して、派手な仮面を付けたマダラはふんっと鼻を鳴らした。

 

「仮にも、お前の相棒と手を組んでいた奴だぞ?早々死ぬとは思えん。」

 

だから、ここまで警戒しているのだと、マダラの言葉の裏に、鬼鮫はうなずく。

マダラは、サクヤが(里の命令か否は判断が付かないが)大蛇丸のアジトを潰して回っていたと聞いていた。

 

暁から個人的に恨みを買って尚、逃げ遂せている、()()大蛇丸のアジトである。

アジトを突き止めるだけでも手こずる代物なのは確かだ。

 

「まあ、確かに。

どういう関係だったのかは終ぞ聞けませんでしたけど、イタチさんの駒なら相当お強いんでしょうね…。」

 

鬼鮫の言葉にゼツは、『一応』と、撮って置いたサクヤのいくつかの戦闘を思い浮かべる。

体術:並

幻術:まあまあ

忍術:そこそこ

知識:結構ある

悪知恵:ご察し

 

「…強いとは聞かないけど、知恵は回るようだね。僕程じゃないけど。」

 

「オ前ハ、知恵トイウヨリ、クチダロ。」

 

 

しょうもない掛け合いが始まる横で、マダラは考えをめぐらす。

人間生きてても、死んでいても、どこかしらで噂や消息は流れるものであり

チャクラや、気配、噂、消息も消えるのは不自然極まりない。

意識して隠れている証拠であり

あるいはそのミスリードを使った罠の可能性も…

と一通り損害を計算したが、里を抜けた今、仲間のいないサクヤ一人では大した損害も出るわけもなく。

マダラは、サクヤが何処までの情報を得ているかは分からなかったが

接触を図って来ない所から見ると、やはり、今のところ邪魔をするつもりもないらしい。

と、結論を出した。

 

「(ならば、何かされる前に、手を出せない所まで駒を進めてしまうのが楽か…。)」

 

 

マダラの様子に気付いた鬼鮫はちらりと視線を向けた。

それにこたえるようにマダラは結論を口に出す。

 

「鬼鮫……お前は八尾を探せ。

ゼツはこのまま奴の探知を続けつつ

俺と共に来い。」

 

「おや。貴方はどこに向かうんです?」

 

 

 

 

「俺は家出少年を、正しく非行させねばならん。」

 

 

 

―――

――

 

 

 

火の国、大名屋敷

装飾が少なく、しかし他国に劣らない壮観な建物に、火の国の大名は居た。

目の前には、茶も菓子も無く、水だけ置かれたテーブル

この装飾の少ない会議室で会議をする事に多少の文句は有れど、緊急とのことだったので言葉は、大名の目の前に置かれた水と共に飲み込んだ。

 

 

「まず、襲撃を受けた里の状態についてだが…」

 

 

木の葉の忍びから上げられる報告を聞きつつ、流しつつ、大名の部下である大臣が被害の大きさを測る。

里側は、少しでも多く支援金を出してもらおうと、色を付けて話すのが通例であり、

国側は、少しでも予算を削ろうと、その色をなるべく少なくすべく被害の大きさを正確に、出来れば小さく測りたがるのが、通例である。

 

よってこの話が長くなるのは必然なのだが

今回は被害が、明らかに害で終わらない内容だったので、事実を淡々と確認する短いものとなった。

大名が飽きる前に終わった一連のやり取りは、襲撃をしてきた“暁”のこれからの対処で締められる。

 

 

「暁の対処は、我々と同盟国とで、これからも続けていくつもりだ。」

 

「…里がああなってはな」

 

 

国は里が無ければ成り立たないし、里は国が無ければ、やっていけない。

里というシステムが出来てからというもの、火の国には、持ちつ持たれつ付き合ってきた歴史がある。

 

もし今、木の葉を諦めて、他里に頼ればその分予算は浮くだろう。

しかし現在雇っている火の国の護衛は、ほぼ木の葉の忍びで賄われている。

 

単純に、新しく護衛を雇うのにお金がいる。

一応この世界の『兵』と言う物は存在するが、傭兵集団の暁然り、忍びがほとんどである。

よって忍びを雇う事と大体変わらない。

ただ、もし他国の忍びを使ったとして、木の葉の忍びより人件費は確実に安いのは確かである。

しかしその雇った分のお金は、火の国と契約し、火の国に所属している木の葉とは違い、他国にいずれ流れる。

 

他国と戦争になった場合

火の国が他国の忍びを雇う為に払った金が、敵国の軍備()に行き付くことは、自明の理であった。

どうせ戦争に使われるのならば、自国の里につぎ込んで、大きくして、自分達を護ってもらうよう取引する方が賢い。

そうなれば、予算を多少多く取られたとして、

 

 

「……我々火の国としても、里の復興を全力で支援する。」

 

 

全面支援に舵を切るのは、火の国の財政的に、決してプラスになりはしないが、マイナスに傾く事は無かった。

そしてなにより、『国民』である里へのパフォーマンスになり

延いては他国への豊かさのアピールになり

それは隙を突かれる形で起こる戦争を、柔くも回避することになり

戦争の被害と、見積もりを考えれば

総合的にマイナスにはならない。

 

 

 

家臣がそんなこまごまとした事を考えている横で大名は、やっと話が終ると息をついて、あくびを誤魔化した。

しかしそれさえも、鋭く睨めつける家臣に気付き、慌てて口元を扇子で覆う。

 

「(全く…おちおち息もつけぬとは…)」

 

大名は、家臣から目をそらす様に、なんとなしに木の葉の忍び達を眺める。

そして、何時もこういう会議に遅れて登場する、二代目そっくりの顔が見当たらない事に気付く。

 

「(なんじゃ、サクヤがおらぬと話が長く感じるのぉ…)」

 

毎回、五代目火影が直々に、首根っこを摑まえて、引きずってやってくる姿を笑いながら見ていたのだが

今回は火影が居ないから捕まらなかったのかと、楽しみにしていた恒例行事が無くなったことに少し落胆する。

不謹慎だが、火の国大名にとって、五代目火影の意識が戻らない事は、それぐらいの価値であった。

 

そんな不謹慎な事を考えているとはつゆ知らず、大臣たちは話を終わりに持っていく。

 

「まずは予算を組んで…それから他国との緊張を…」

 

しかし、通例通りこれで予算の見積もりを付けるため、いったん持ち帰りで終わりかと思った会議は、ダンゾウの声により、大名のあずかり知らぬ所へ向かう。

 

 

「それより先にやることがある

新たな火影を誰にするかだ。」

 

 

話しの趣旨がいまいち掴めない大名は、家臣たちの「(無駄な事を言うな)」という目線を無視して、疑問を口に出す。

 

「綱手の体調が戻るまで、待てばよいではないかえ?」

 

その言葉に対して、木の葉の御意見番であるコハルは思わず口を吐く。

 

「大名様…

綱手は昏睡状態が続いております。

里がこの状態で、何時目が覚めるやも分からぬのでは、里の方針も上手く決めかねますのでな…

それに木の葉を壊滅させた責任もある。」

 

ご意見番であるコハルの説明に、そういう物か…と納得をする。

 

「今度こそ、自来也だと思ったがのう。

余はあ奴が好きじゃったが、今はもうおらん。」

 

あの恒例行事もこれで終わりか…と考え、次の火影が誰になるのかと問いかける。

大名としては、『あの二代目孫を引きずって来れる忍びが、面白くていいんじゃないか』と、考えるが、それを見つけてくるのは大名ではないので、取りあえず候補を上げてもらう事にする。

 

 

「…で、他に誰がおるのかえ?」

 

「それならば、この……」

 

しかし、それは愚策であった。

 

 

「はたけカカシを、推薦する!」

 

ご意見番の一人であるダンゾウの言葉をさえぎるように

突然話し出した、上忍班長であるシカクの言葉に大名は頷く

 

 

「ほほう、あの“白い牙”の息子かえ。」

 

 

白い牙の息子なら大名もよく知る人物である。

あの写輪眼も持っているし、分かりやすい。

同意を求めるように家臣に大名は問う。

 

 

「うむ!ええじゃないかえ。

皆はどうじゃ?」

 

 

大名の、話をさっさと終わらせてしまいたい欲が出ていた事に気付いた家臣が、居ない事も無かったが、おおむね賛成の様で

 

「はたけカカシは、誰の弟子だったかの?」

 

「四代目火影の弟子だ。」

 

という質問の答えに満足した。

 

大名は

これは早々に会議を終える事が出来そうだ。と言葉を畳み込む。

大名は、自分が『何でもない関連ごとを理由付ける』ことが得意なのを自負していた。

 

「四代目は自来也の弟子で

自来也は三代目の弟子であったの!

問題ないではないかえ。

よし、では――」

 

 

しかし意気揚々と出た言葉は、ダンゾウの凄みに負ける。

 

「三代目のその教えが――

里を壊滅させたも同然なのですぞ!!」

 

 

大きい声ではないが、低く響く声は大名を怖気づかせるには十分だった。

 

 

「里を潰した“暁”のリーダーは、かつて自来也の弟子だった男だ。

他国に同情し、戦力を与えた結果がこれだ!

甘いのだ!何もかもが!!

 

代々続くその甘さが、同盟国の砂の裏切り…そして大蛇丸の木の葉崩しを許し

“暁”の台頭

うちはの残党サスケがぬけ忍として暗躍し

更には大名様もよく知る、真の目サクヤの里抜けを許すことになった!!」

 

「なんと…」

「まあ……」

 

突然出てきた良く知る名前に、大名一同は感嘆符しか出ない

まさか、あの真の目が、里を抜けるだなんて大それたことをするとは…と各々家臣たち同士で小さく情報を取り合う。

サクヤの穴の大きさが、ダンゾウの言葉の重みを作る。

その様子を一通り眺めたダンゾウはさらに言葉を畳み掛けた。

 

「今こそ必要な火影とは?!

この最悪の事態の後始末をし

忍びの世界に変革を成し

忍びの掟を徹底させる

 

稀代の火影

このワシだ!!」

 

 

 

 

選択を迫る空気が、大名の周りに漂う。

大名は自分が、木の葉の政権争いに巻き込まれた事を、やっと、今、理解した。

 

 

「この際ダンゾウに任せてみてはどうでしょう?大名様。」

 

「………」

 

 

家臣の声が聞こえる。

この家臣はダンゾウの仕込みで間違いないだろう。

 

 

「合理的に、凝り固まった一方的なやり方では―――」

 

思考をめぐらすのが遅かった、と反省をして

大名は議論が続きそうな言葉を遮った。

 

 

「うむ、決めた」

 

何故なら

 

「ダンゾウお前を、六代目火影に任命する!」

 

 

これ以上は、大名の膀胱が持ちそうになかったからである。

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