最近時間が取れないのかコマさんに会えない。
時々あったと思えば急に空を見て、黙ったと思うと解散
すこし、寂しい
母さんが弟が出来ると話してくれたのは嬉しかったけど
母さんも父さんも弟ができるからかそっちに一生懸命で僕には構ってくれない
やっぱり、寂しい
あまりコマさんを困らせるのは良くないからあんまりやらないけど
ごねてみたこともあった
「コマさん、僕もつれてってよ」
「んーちょっと困るな…また、今度な。」
そう言って僕はおでこをビシッと突かれ、やっぱり逃げられた
コマさんは、アカデミーに行っているらしく色々な術に精通している
あと、賢い。
優秀とか、エリートと言われるうちはの大人に聞いても出てこない答えが返ってくる。
そして、僕の意見を否定しない。
上手く言えないけれど、それってすごい。
大抵の大人や、同年代の人は反論にまず否定から入る。
自分の意見が正しいと言うのもあるのだろう。
でも、どんなに僕が頓珍漢な事を言っても、コマさんは僕がどうしてそう思ったか、何故そう考えたか、そこから話が始まる。
なんとなくなんて説明じゃコマさんは納得しない。
コマさんは僕の言葉を、僕の意見として聞く。
僕を真っ直ぐ見てくれる。
母さんは、よく僕の名前を付けてくれた人の話をする。
賢くて、優しくて、柔い人
そうなってほしいと思って僕の名前を付けたらしい。
でも、優しくとか、賢くとか…
…僕にはやっぱ、出来ないよ母さん
だって弟が生まれるのが少し怖いし、コマさんみたいに賢くもない。
今日だって、コマさんに逃げられた。
『幻術を掛ける時、何を使うか10個以上考えておけ』と言って去って行く背中を追いかけるのは諦めた。
足が速すぎる。全然追いつけないし、すぐ見失う。
うちは何だから幻術とかどうよ?
と言って最近は幻術を主に教えてくれる。
暗号とかは基本だけ教えてあとは解くのみ!!と遺跡の位置をいっぱい教えてくれ、一緒に色んな所に行った。
もう、ほとんど僕に構う必要なんかないのに次は幻術を教えてくれるらしい
人生何があるか分からないしな
と言って教えてくれるが僕は少し…幻術が苦手だ。
「嘘は本当の中に少し混ぜるのが味噌なんだよ。」
と良く騙される僕にアドバイスをくれるが全然コマさんは引っかかってくれない
いくら僕がコマさんを術中に落としても指一本、視線1つで解いちゃうんだ
やる気が無くなる
「お前は幻術が苦手だな~」と頭をポンポンなでられた日にはもう
「コマさんがうますぎるんだよ。」
と憎まれ口をたたいてしまう
でも、そうやって卑屈になっているときに限って
コマさんは嬉しい事を言ってくれるんだ
少し困った顔をして
僕のおでことコマさんのおでこをくっつけて
「大丈夫、テンはテンだ。テンの速さで歩きなさい。」
って励ましてくれる
僕はそれが大好き
1年早いけれどアカデミーから入学の案内が来ている
父さんは嬉しそうに「流石俺の子だ」って褒めてくれるけど、僕は少し怖い…
アカデミーに行ったらコマさんみたいな賢い人がいっぱいいると思うと授業に付いて行けるか心配…
それにアカデミー生になったら、コマさんにはこうして会えなくなってしまう。
凄く嫌だけど…
コマさんの本当の名前と、アカデミーで会えることを考えると少し良いかもなんて思ってしまう僕は現金だ