「さっ、サクヤはん早う!!
はよう取りにいきなはれ!!」
「沈む!!作間の蔵ガ!!禁術の森ガ!!」
あわあわと叫ぶ二匹の管狐にせかされるが、私は今空腹と、チャクラ切れで死んでいる所である。
「ままって…うえっチャクラが…」
「「今、
まさかのピンポンのダブルサウンドでノックアウトされた私は、白狐の背中から、そのまま蒼い深淵に落ちた。
―――
――
鈍い音を立てて、私の周りの気泡は上へ上へと進んでいき
体は鉛の様に重く、関節が錆びているように動きが鈍い
私より先に沈んでいた巻物は、はらりとでも言いたげにその内を晒し、更に深く沈んでいった。
一応、と手を伸ばすものの、全然届く距離では無い。
「(こんな事なら、鉄芯じゃなくて木芯にすりゃ良かった…)」
などと今更しても遅い反省をし、海水が沁みる目を閉じる。
チャクラが尽きている私は現在、写輪眼を使い過ぎたカカシパイセン並みに使えない人間であり、泳げもしないので、自分の浮力で浮かぶ事しかできない。
海面に、死体の様に浮かんできた、白地に赤の紋。
白狐は器用にも、それに爪を引っ掛け、上に打ち上げ背中で受け止める。
べしゃりと、大凡綺麗な音とは言い難い着地音を立てて、私は空気がある世界へ帰って来た。
三半規管がやられている上の、更なる振動に私は、白く輝く毛皮の上で
吐しゃ物をばらまく事になる。
「いやぁっ―――――!!」
―――
――
「ワシの背中で吐いた奴は、お前が初めてやわ…」
「そりゃどうも…うぷっ」
再びげろりんちょした私は、白狐の情けない叫び声と共に、再び海に落とされ
産業廃棄物の様に浮かんだところを、ピンポン拾われ、大人しく干されている。
ピンとポンは、わざとでは無いながらもダブルサウンドにさらしてしまい、この参事を起こしたことを反省し、死んでいるサクヤを気遣って声をかけてくれるが、
「蔵は…諦めまひょ…
作間はんの形見なんて結構あるやないか、そんな気にせんでも………全部蔵に入れたわ。」
「蔵は…しかたないことだっタ…それも運命…
ワシらなんだかんだ身一つで生きてきたやないカ…ねぐらさえあれバ…………全部蔵ダ…。」
事態の深刻さが明白になるだけだった。
未だダメージが残る三半規管を、如何にか鎮め
しっとり絶望しているピンポンに説明するべく、私は口を開いた。
「蔵は口寄せできる。」
しかしピンポン達は、その突飛な言葉に、先程まで極わずかながら存在していた優しさを捨てた。
「いや何ゆうてますのん?!」
「馬鹿なのカ?!」
「「そもそも!!」」
「口寄せする巻物無いから!!わてら焦ってんのやで?!」
「あの巻物ガ無いト!!蔵を口寄せ出来ないだロ!!」
「アホちゃいます?! この馬鹿!!考え無し!!」
「笑おうに笑えんワ!!このド阿呆!!」
「もう一度海に落ちて、頭冷やした方がええんとちゃいます?!」
「今なら間に合ウ!!飛び込メ!!そして拾って来イ!!逝ケ!!」
キレている。
左右に、交互に、ぐわんぐわんと襲ってくるサウンド
もう一度吐かれてはこまると、白狐の低い声がまあまあと止めた。
「ワシはお主ら、『忍び』が使う口寄せがどんなもんか分からんが、あれはワシらで言う契約書みたいなものちゃうんか?」
ブチ切れの二匹にどん引きしながらも、白狐が議論をしようとしているのがよく解かる…
優しさに私は思わず涙が出そうだ…
しかし、私にも考えがある。
何も考えなしにはこんな事は言わない。
そも口寄せと言う物は時空間忍術である。
「うぷっ…正しくは…
蔵を、術式で、時空間に縛っているだけで、あの巻物でなければならない理由にはならない…おえっふ…
んで、あの巻物は紙でできている。
濡れた時点で術式が崩れて使えはしない。
取りに行っても意味が無い。げふっ…」
現代でいうクラウドに近い
私の使っている口寄せの巻物は、USBのような、個々に巻物から出し入れする物では無く、
時空間というクラウドを使い、
「せやかて!!あの巻物無いと呼べもしないやないか!!
巻物の予備は、皆蔵の中やで!!」
「そこが問題で、解決の糸口でもある。」
私は胃酸ですっぱい口内を、真水ですすいで間を取り、産業廃棄物になっている途中思いついた方法を反芻し、自分の理論が間違っていないか確認する。
あの巻物は海に沈んでいる。
しかし蔵は時空間に固定されている。
蔵の中に予備の
そしてピンポンの寝床である竹筒も蔵の中である。
という事は、『避雷針の術式』も蔵の中にある。
そもそも、避雷針の術式は、各地に置いた
だから蔵の中にある、竹筒についている避雷針に飛んで
蔵から巻物を拝借して現在地にまた飛べばこの問題は解決する事が出来る。
しかし問題と言うか…
懸念が一つある。
基本的に、巻物を使った時空間忍術は、『物』専用であって
時空間に生き物を『生きたまま』出し入れする事は出来ない。
要は、生きたまま入れても、死体となって出てきてしまう。
「え?口寄せは?」とか「避雷針の術は??」と思うであろうが
この時空間忍術と種類が違うとだけ言っておく。
そも術式が違うし、生きたまま出し入れするとなると、チャクラコントロールがより繊細になり、難易度が格段に上がるのだ。
口寄せは、術で寄せる相手の許可が必要で、そのための『契約』である。
許可があるからチャクラを使えば安易に口寄せできる。
更にいうなら飛雷神の『マーキング』も『契約』に当たる。
あれはいわば「これから私が通す者の許可は、全部貰いましたよ~」という時空間側の認知を緩くさせるフリーパスに近い。
しかし、時空間側の認知が甘いかといったらそうでもなく、
行先のマーキングと
術者のチャクラに触れるか、空間を囲うかして、
だが、まあ便利なもので、接触するのが本人でなくとも、チャクラを対象に持たせたり、チャクラを介し間接的に接触出来れば、対象だけを送る事も可能でもある。
その場合残念ながら私は、飛雷神で『物』しか送れないが。(コントロールが繊細過ぎんだよっ!!)
更に4代目のように、戦闘中に飛雷神の術を使うには、相当な努力と、センスが無ければ無理である。
私が飛雷神の術を会得できたのは、似たような感覚で発動できる万華鏡写輪眼の能力『宇迦之御魂』があってこそ。
それでも飛雷神を戦闘に使えはしない。
だから飛雷神の術を、4代目の得意とする『速さ』より、『距離』に特化させた。
話しを戻そう。
飛雷神の術で蔵の中に入れたとして問題なのが
私と言う体が蔵に入ってから、もう一度飛雷神で飛ぶまで、持つか、否か。
物専用で、入れても中で何かしら命を落とすと言う事は
誰も原因である『何故、物しか出せないのか』を、正確に分かっていないと言う事だ。
一説には魂的な物を取られるとか、時空間に辿り着く前に圧縮がかかるから、とか言われているが
どれも論理的で、明瞭であるかと言われたら怪しい所である。
なので一か八かの賭けになるが
物理的に接触不可能となる宇迦之御魂を
遠い記憶過ぎて、お忘れであろうと思うが、私の万華鏡写輪眼の能力は
『自分と、自分のチャクラをスイッチする』事の出来る能力である。
そして、
術の発動中は物理的攻撃が効かない。
この術『宇迦之御魂』と『飛雷神』の違いはそこにある
時空間忍術として飛雷神と比べれば、不便ではあるが、飛雷神とは違う部分で役に立つ
その大部分を占めているのが『物理攻撃不可』という付加価値だ。
もし、飛雷神で視界の届かない場所に飛んだ場合。
もし、敵が目の前で刀構えて待ち構えていたら。
私だったら確実に死ぬ。やばい。
飛雷神と言う術は結構リスキーな術なのだ。
そのリスクを回避できるのが『宇迦之御魂』である
私の推測では、A地点からB地点に移動する場合
『A地点にいる自分をチャクラに変換させ、時空間忍術でB地点にチャクラを送り、B地点で実体を再構築する』と言うシステムなのではないのかと考えている。
そのため、術の途中段階であるチャクラの塊状態(白い炎)の私には物理攻撃が効かない。
さらに、おちゃめなイタチ君によって発動中、幻術がよく、良く、(大事な事なのでry)利く事は身を持って証明されている。
よって、蔵に入って幻術のような精神攻撃を、その場でかけられない限り私が死ぬことは無いと言う事だ。
やや強引な手段だが、蔵を時空間に入れたまま何処からも出せないよりは幾分良いだろう。
もしかしたら時空のゆがみによって、蔵が崩壊する可能性も無きにしも非ず…という部分もあるが、これが一番ましで、被害が少ないと考えた。
しかし、どうやら二匹はこの案が気に入らないらしい
二匹は頑なに反対をする。
「いや、サクヤはん…わて、これだけは言えますわ。
あんた馬鹿なんとちゃいます?
そんなややこしい事せんと、わてらの分裂体、飛雷神で飛ばせばええやないか。」
「流石ニ、危険すぎル。ワシは反対ダ。
サクヤが影分身したら十分だと、ワシは思うゾ。」
危険て…
カブトすっ飛ばしてマダラに取引持ちかけようと進言するくせに…危険て……
まあ、ピンポンの言いたいことが分からない訳ではない。
が、それでは意味が無いのだ。
「それも考えた。
確かに飛雷神は術者のチャクラを伴う事により、対象物だけを飛ばす事もできる。
だが、残念なことに私は、対象だけを移動させることが出来ない。
となると、どうしても私自身が同行することになる。
第一、 もしお前らだけで行けたとして、帰りはどうするんだ。
情報持って帰って来るだけならまだしも、巻物を持って帰ってこなきゃ意味が無い。
それにお前たち管狐の耐久は紙以下だし。やるだけ無駄。
影分身も同上。
影分身で、時空間の不思議が解明できるなら、プロフェッサーである3代目が発見していて可笑しくない。
しかしそう言う資料が里に一切ないとこから見れば、影分身でも無理だったことが分かる。
それに危険と言うが、私も命が惜しいからこの手段を考えた。
もし他に安全な案があるならそちらの方が良い。」
そう言って『何か思いつくのか?』とばかりにピンとポンを見つめたが、それ以上何か方法が出てくるわけではないらしく、二匹は口籠る。
「白狐は何か思いついたか?」
これ以上やんや言われると、せっかくの光明が消えそうなので、白狐に話を振る。
一応これでも何百年生きてきた妖怪である、何かしらヒントが得られる可能性はある。
「ん~…ワシはそう言うこまごましたんは得意やないからな…
影分身でその万華鏡…なんとかは、発動できひんのか?」
「出来ないな。
写輪眼は本物でなければ意味ない。
それに、最終的には半分私が向こうに行く事になるから、危険度は同じだし。
なら本体がやった方が早い。」
「ほなら、諦めるしか思いつかんな。
ゆうて、このまま放置すれば、誰かに取られる心配も消えるちゅーものやけど…
それやと意味ない…やろ?」
ニヤッと口の端を上げる白狐に、私も悪い笑みを返した。
あの蔵の中の物は、コレクションしても意味が無い物だらけだ。
『使ってこそ真価を得る。』
『在るだけでは何もならない。』
そう言う物が多い
価値は人によって変わるものだが
忍びにとっては、喉から手が出る位には貴重な資料庫である事は確かである。
だから、忍びが少ない真の目で腐らせるならば…と、3代目が蔵の中の物を欲しがったし、ダンゾウが目を光らせた。
「じゃーそう言う手筈で!!
取りあえず陸に帰ろう!!
それから飯!!米!!炭水化物だ!!」
胃に残った兵糧丸も効いてきたし。
チャクラも一回分の瞬身の術ぐらいは賄えそうだし。
さっさと帰ろう!!帰ったら飯だ!!昼寝だ!!と私はチャクラを錬った。
しかし、期待通りには事は運ばず
突然
ゴゴゴゴ…という音と、ボコボコと空気がぬけるような音が足下から響き
大きな水しぶき、爆発するような音と共に、海面から蔵が発現
白い蔵の外壁にある、朱い真の目の紋を晒した―――
と思ったら、沈んでいった。
「……は?」
8月まで投稿を停止します。
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