また来て三角   作:参号館

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おまた


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「………え…蔵?」

 

「…蔵、なんか……?」

 

「……蔵…で合ってるハズ…多分。」

 

 

 

 

「いや、

蔵としか言いようがないやろ?!

何しとるんや!!

さっきまで喧嘩しとったんは蔵の為やないのか?!

今直ぐ如何にかせんとほんま…蔵の中身もやばいんちゃうんか?!」

 

白狐が怒涛の如く突っ込む横で

目を点にしたまま、なすすべなく、泡立つ海面を眺める我々(私、ピン、ポン)は、じわじわと状況を理解してきた。

 

今、青海に沈んだのは蔵だった。

紛う事なき『作間の蔵』であった。

 

 

そもそも、何故蔵が召喚されたのか分かっていない私は、現実を受け止めるのに時間がかかり

白狐のツッコミから幾分か経った後

ピンポンの叫びをBGMに、事の重大さを理解し

先程錬ったチャクラを、蔵に飛雷神する方向に、やっとシフトさせた。

 

 

 

―――

――

 

 

急いで蔵の中に飛雷神したのだが、勢いを付け過ぎて、床に散らばった巻物に足を取られ

私は、無様にも本棚に突っ込んだ。

ちゃんと普段から整理整頓すればよかった…と、ドコドコと自分めがけて落ちてくる巻物、書物の雪崩を如何にか治め、あたりを確認する。

思ったより蔵の中は静かで、揺れも少なく、いつもと変わり映えしない薄暗さだ。

 

おかしい…

 

普通建物には隙間と言う物が存在する。

それは空気穴(換気口)と言う意味合いもあるし、建て付けの問題でもあったりする。

真の目製の蔵は漆喰が塗ってあるものの、基本木造の土蔵のはずである…。

更にはこの家にはカラクリまで仕掛けてある。

上下左右前後、六方を水に囲まれておきながら、建物の損傷、水漏れ、雨漏り、浸水が()()()()のはおかしすぎる

 

遠くの方からゴウゴウと音が聞こえるので、一応…沈んではいるのだろう…。

近くにあった行燈に火を点け、室内の様子を窺う。

 

「水気なし…」

 

ありえないとは思うが、オートで結界が仕掛けてあるとして…

普通の結界では、水圧に耐えきられなくなるラインなんかすぐそこだ。

ならばミシミシと結界の崩壊する音が鳴ってもいいはずだが…それらしき音は何も聞こえず…

蔵はゴウゴウと沈むだけ…。

 

「蔵って…結構気密性が高い…?」

 

なんて馬鹿な事を口にしながら、一応目を万華鏡写輪眼にして、蔵の出口である扉に手を掛けてみる。

もし開け放った扉の向こうが、本当に青海だった場合

飛雷神で、すぐさま蔵と共に、陸地へ移動しなければならない。

写輪眼はそれに失敗した場合の保険である。

しかし、そこで私はあることに気付く。

 

「赤…?」

 

 

写輪眼は、白眼の様に透視する能力は無いので、外の様子は窺えないのだが、扉が…

いや、良く見れば蔵全体が赤く淡く光っている。

何処からそこまで、まるで赤シートをかぶせた視界の様に…

 

写輪眼は透視することは出来ないが、チャクラを視認する事は出来る。

そして私は、この『赤』に見覚えがあった。

 

 

先程私がリバースしたために頓挫した『四赤陽陣』である

 

 

 

何故ここに四赤陽陣が張られているのか

いつ、誰が、何故、張ったのか

四赤陽陣が張れる程のチャクラはどこから調達しているのか…?

疑問は尽きないがそこでふと、ポンの言葉を思い出した。

 

 

『ガハハハハ!!蔵の方が四赤封陣より耐えたりしてナ!!』

 

 

 

 

「…ドン。」

 

「お呼びですか?」

 

にゅっと腰に据えてあった竹筒から白い影が上がる。

私は写輪眼を仕舞い、視界を元に戻して一考

方針を決めた。

 

「ピンポンと白狐に、自力で外からこちらに来れるか聞いてくれ。

無理だったら、潜って外からどう見えたかの報告と、蔵の沈む速さを測ってくれ。

そうだな…出来れば時速を出したいが、無理だったら分速で構わない。」

 

「それは…ええっと、白狐さんに付けてた分体で良いですか?」

 

「ああ、構わない。

保険に付けていただけだし。

白狐はお前の気配に気付いている。

どうせ、あのまま別れていたら消されていただろうから、問題ない。」

 

「わっ分かりました!」

 

白い影は分裂した後、一体が消えた。

 

 

―――

――

 

 

「――っと言う事で、外からの接触を試みることは、可能ですか?」

 

突然、白狐の毛皮から現れたドンに、三者は取り立てて何の反応も無く、サクヤの指示が可能かどうか協議する。

 

「んーわてら狐は泳ぐんは得意やけど…」

 

「潜るのハ初めてだナ…。」

 

「お前さんら管狐やから…人間より耐久度低そうやし、ワシが行こか?」

 

白狐の提案に二匹は頷く。

今なお、問題なく沈んでいる蔵は結構深い所まで来ていた。

流石にそこまで潜るのは管狐では少し難しい。

ドンも、3者の名前があがっていたので「えっと、外から確認したいことがあるようだったので、どなたでも構わないと思います…多分…。」と返す。

 

 

結論から言えば

白狐は、蔵に張られた結界を四赤陽陣と結論付けた。

 

 

白狐の目は、見えていない。

緑内障か、白内障かは分からないが、視界にもやもやしたものが映るだけで

ほぼ、見えていない。

しかし、白狐にはとんでもない感知能力がある。

 

千里を見晴らす感知、そして千里の内にいるチャクラを()()()()区別できる精度。

それにより、あの大きい体躯で、体に触れたサクヤ達の位置を正確に把握できたし

気配と言う物がほとんどない管狐を探知する事ができ

木の葉の追手を巻き、逃げ切った私を、捕捉する事が出来た。

 

こんなモノが備わっていたら、そりゃいくら隠れようとも見つかる訳である。

発見が遅れたのは、私が里抜けして飛雷神でホイホイ動いたせいであり

飛雷神のアンカーに、私のチャクラを吸ったドンが居たせいで、誤魔化されたからである。

それでも本物に行き付く精度のチャクラ感知能力である。

 

 

その感知能力を持ってして

 

「こりゃ…さっきの術やないか。」

 

と言わしめた。

完全に四赤陽陣である。

更には

 

「結界には触れてへんから、正確には分からんけど

二重に結界が張ってある…こんな厳重な蔵やったら、そら、九尾も壊せんわ…」

 

と呆れた視線も頂いた。

 

 

いいか、私が作ったんじゃない

父が、『作間』が作ったのであって、私じゃない。

その呆れた視線は父さんに向けてくれ。

 

 

残念ながら、白狐の探知を持ってしても

「なんや、知ってるチャクラとは思うんやけど…さっぱり分からん。」

と結論付けられて

結局四赤陽陣のチャクラが何処から賄われてるのかまでは突き止められなかったが

白狐を蔵に口寄せして確かめたところ

驚く事に、()()()()()二枚張りしてあるところまでは突き止めた。

 

 

 

その情報に私の頭の中は、只一つの事でいっぱいだった。

 

「よっしゃ!!

取りあえずどっかに引っかかるまでこのまま沈もうゼ!!」

 

 

四赤陽陣2枚張りと言う、多少の事では壊れない布陣

幸いにも白狐が居ることで、肉眼ではないが、外の様子がある程度は窺える。

たとえ海溝途中に引っかかっても

生物のチャクラ反応を見て未だ先があるかどうかは測れるので、ある程度まで落ちれるであろう。

 

と言う事で

 

私は蔵に、『レーダー(白狐)』と『インカム(ドン)』を搭載して、海底まで様子見する事にしたのだ。(私は、もし結界が崩壊した場合の脱出経路である)

 

 

御役目御免のピンポンは、分裂体が今ギリギリの数なので、海上から一旦消えてもらい

この情報と、これからの予定を陸地に置いてきた他のピンポンに受け継ぎ

陸地での情報操作、収集に、いそしんでもらう事となった。

 

 

 

―――

――

 

白狐レーダーのおかげで、蔵はスムーズに進んでいるのだが

サクヤには心残りが一つあった。

 

 

「外の様子が見れない…(泣)」

 

 

ぶえぶえと、顔中をぬっとり濡らしながら、現在の水深を計算しているサクヤを、白狐が引いた目で眺める。

白狐は、先程の海上で学んだ事を思い出していた。

 

常識(ドン)がいない空間は、総じてカオスになる。』

 

 

 

「窓がぼじい゛…(涙)」

 

「窓あったらあかんやろ…この蔵の機密情報一発で盗まれるやん…」

 

己の欲にまっしぐらなサクヤの言葉に、ここで自分が折れたらまた、あのカオスに突入する…と気を引き締め、極冷静に白狐は言葉を返すが、カオスの元凶は黙らない。

 

「そんなん…こんな結界掛けてあるならいけるも゛ん゛…

せめて…外の様子が窺えるようにしてほしかった…

頑張っても天井の通気口しかないよ…

あの通気口よく解かんない設計してて、外は見えないのに日差しだけ入ってくるんだよ?!

どこに力入れてんだよ…!!(唾)」

 

「ちょっ唾飛ばすなや…汚いな…

まあ…あれや、妙な方向にふざけた真の目の、粋を集めた蔵なんやし、

多少変態じみた技術が、ただの蔵に使われとってもワシは驚かん。」

 

白狐は、「一体どういう仕掛けになってるんや、それは…」とそわっとしたが、先程のカオスを思い出して、どうにか心を落ち着かせた。

序に飛んできた唾をサクヤの服で拭いた。

 

「つか!!

海中は日が差してないからその仕掛け機能してないし!!

そも!!

海中で空気の循環もないから通気口の意味ないし!!

こんなの…こんなの設計ミスだぁ!!(鼻水)」

 

「…いや

蔵が海に沈むとか、誰が予測できるっちゅうねん!!

設計ミスはお前の頭や!!」

 

 

ゴィンッという、狐と人の、頭がい骨どうしの衝突音とは思えない音が、蔵に響く。

サクヤは、白狐に辛辣な言葉(頭突き)を貰いくじけそうになるが

 

「でも゛、海溝に居ながら持って帰れる成果が

大まか過ぎる水深と!!

四赤陽陣の強度のみっ!!

大した成果も持って帰れないのぐや゛じい゛」

 

「ええっ…結構持って帰っとるやないか…それの何が不満なんや…」

 

 

わだじだっで(私だって)!!ぜいめいのじんびざぐり゛だい゛(生命の神秘探りたい)!!」

 

 

更にぬっとりと顔を濡らすサクヤに、白狐はドン引きしつつ慰めの言葉を吐く事にした。

いい加減ぬっとり顔にも飽きてきたからだ。

 

 

「まぁ、別の機会に人間誘って潜ればええやろ…

真の目の連中ならきっと喜んで投資するで。」

 

「生ぎで帰っだら…やる…

ぜっだい…や゛る゛…!!

いぎで、ぜいめいのじんびざぐる!!」

 

 

 

こんな所で、おちおち死ねない理由が出来た。

 

 




画像一覧のキャラカオノマトペで110話って書いたけど、ぶえぶえは109話だったわ。

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