また来て三角   作:参号館

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今回の投稿までの時間が空いたし、一瞬108話までのダイジェスト的な導入にしようか迷ったんですが、続きで読むと違和感しかない感じだったので諦めました。



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蔵が海に沈み始めて、結構な時間が経っていた。

 

空気の入れ替えの為に、空間を一時的に外につなげたり、食料補給やら、排泄やらの問題を如何にかする方法を探したり…と色々やった為

蔵と言う『貯蔵空間』は以前より確実に『住居空間』に特化し、

「今なら1年位、蔵から一歩も出ずに過ごせそう…」とか思うぐらい、快適になっていた。

 

蔵の水深は、目に見えて分かる物ではないが、時間の経過が深さを知らせてくれる。

摩擦やら、慣性の法則やら、なんやらがあって、最初に測った時より確実に速度は落ちているので正確ではないが、深さを時間で測る作業にも慣れてきた。

 

一通り落ち着いてくると、細かい事が気になって来るものである。

 

 

 

「そも、おんしなんでこの『かいこう』?を発見したたんや?」

 

白狐の言葉に、私は「そう言えば…」と、話していなかった概要を思い出す。

サクヤ達は、陸地から飛雷神のマーキングをいくつか経由して一番近いマーキング地点に飛び

そこから全力で走ってこの地点に立ったので

白狐は詳しい説明がゼロのまま、海上に立ったと言って過言では無い。

疑問に思う事は可笑しくない。

寧ろ今まで空気読んで黙ってくれていた方が私は驚きだ。

しかし、それ(無限月詠云々)を説明するのは少し…いや、結構かなり面倒くさい。

 

 

「あー…まあちょっと地球の裏側に御用がありまして…。」

 

「…御用とは。」

 

目的を誤魔化そうとほにゃほにゃするが、流石に途方もない時間を生きてきた妖怪相手に、これは悪手だった。

しかし、ここで全部話せるような信頼できる相手かと言われたら頷けないので、私はぼかした目的をさらにぼかす。

 

「…約半年後生命の危機に瀕するので、予防線その①『脱出路:地球の裏』…的な…。」

 

サクヤのもにょもにょとした要領を得ない言葉に、白狐は呆れた視線を向ける

が、しかし

白狐の思考は思わぬ方向に進んだらしい。

 

 

 

「…それ、ワシは咬んだらあかんやつなんか?」

 

「え…うーん……」

 

窺うような提案に、サクヤは算盤をはじくように損得を数える。

 

悪くはない。

悪くはないが、良くもない。

白狐と言う埒外(妖怪)の手を借りれるのは、悪くはない…

しかし白狐突撃の際、誤魔化せたあれこれを話さなくてはならなくなる点に置いては、良くはない…

 

 

「悪か無いけど…もしお前がコレに噛んでも、何もお前に利益は無い。

私が白狐にやれるものも無ければ、寧ろ私が貰う方になりそうだし、単純に命を狙われる。

今回(海溝)みたいに楽しいものでは無い。

第一、ツケても返せるか怪しい。ツケを払うべき私が死んでいる場合もあるからな。」

 

利益が無い事を前面に出して、マイナスアピールをするが、それは白狐には無駄であった。

 

「いや、ちきゅうの裏?ってだけでおもろそうやと思うんやけどな……ワシも行ってみたい。

世界一周したい。」

 

 

こいつ…

完全に興味関心知識欲に突き動かされている…

今度は私が白狐に呆れた視線を向けた。

 

「そういえば、あんたこれから旅する予定なんだっけ?」

 

「まあな…チャクラ節約しとったから、初代のチャクラがまだ残っとるし…時間だけはある。

それにワシは妖怪やから、初代のチャクラ尽きても、他のチャクラを集めて、時間は増やせるしな。

今まで約束を守るために動けんかった分、世界を見るのも悪ないな…とは思うとる。」

 

はーそれで…

手頃にまず私について行って、適当に技術とかそういうものを手に入れようとしてる感じか…

技術提供は別にかまわないが、こいつに付いて来られるのはウザそうだ…

 

 

「……ちゅうか、初代の魂もらえるから言いつけ守っとったけど…それが嘘て!!

約束がちゃうやろぉ!!

あのボケのせいで、その間に起こった、めっちゃおもろい事逃しまくったやないか!!

何してくれんねんドアホ!!!!

今迄の時間返せ!!」

 

老人の話(愚痴)は長い。

荒ぶる白狐が、天に向かって言い足りないとばかりにボロ糞言うので

私は時間稼ぎに聞き流しつつ、頭の算盤をはじく。

ようやっと算盤が止まった頃には、白狐の息は切れていた。

無理すんな…結構な年寄りなんだから…

 

 

「ちなみにピンポン換算でいくと、あとどの位チャクラ残ってんの?」

 

私の声に、怒りでトリップしていた思考をこちらに戻す事が出来た様で、冷静な言葉が帰ってくる。

 

「あー…あの結界でけっこう使ったし…ピンポンの2匹に流れとる、お前さんのチャクラよりは少ないな。

大体、ピンポン合わせて1.5倍ってとこやろか。」

 

「結構少ないんだな…。」

 

うちはと千手の血を引く、真の目初代のチャクラで今まで生きてきたと聞いていたので、結構あるだろうと予想していたが、思ったより少ない…四赤陽陣は当分の間できんな…と予測を立てる。

 

しかし、後に続いた白狐の言葉にサクヤは耳を疑う。

 

 

「いや此れなら、普通に過ごして、あと500年は余裕やで。」

 

 

 

「…いや、それ…計算間違えてない?」

 

 

ピンポン合わせて1.5倍と言う事は、火影のチャクラ3人分と言う事である。

更に言うなら火影一人のチャクラは、私のようなごく一般的な忍びのチャクラ量の5倍である。

よって忍び30人分…ん?この計算いるか?

管狐はチャクラの生成が出来ないので忍び30人分のチャクラで…500年?

んんんん?

 

サクヤが必要のない計算までしはじめたあたりで白狐はサクヤが管狐の生態に詳しくない事を察した。

 

「元々管狐は、術使わん限り低燃費やねん。

チャクラが少ない動物に憑いても、その(チャクラ)を枯らさない程度で生きていける。

ワシみたいに節約に節約して過ごせば、ピンポンのチャクラで……多分、世紀末まで生きれるんとちゃうんか?」

 

「え…管狐の燃費良すぎか…」

 

人間一人生きているだけで、どれだけチャクラを消費していると思っているんだ…

 

「せやから、ピンポンにお前さんのチャクラが半分以上流れとって余らんて、どんだけ無駄使いしてんねん。とか思っとった。」

 

「いや、我忍びぞ??

任務にチャクラは付き物ぞ??

私のチャクラ、ほぼピンポンに吸い取られてるぞ??

よって任務ではピンポン頼みぞ??

お??お??」

 

「いやそこ、威張るとこちゃうから!!

開き直んなや!!

たっく…妙な所であ奴に似おって……

あのアホに似とると思うだけでイラつくぅっ!!」

 

とばっちりが来そうだったので、私は話しを戻す事にした。

 

「ま、お前が本当に世界を旅したいなら、私も手助けするのは別にかまわん。

地球の裏側への行き方とか、ポインターの間隔とか目印になる物の共有も吝かじゃぁ…ない。

あんたが行った先で飛雷神ポインター増やしてくれれば、こっちとしても利が得られるしな。」

 

「ほならっ!!」

 

先程までの、白狐の荒んだ表情に、あっと言う間に光が差し込み、花が咲く。

 

「海底二万マイルに着くまで時間はかかるし、飛雷神とか、私のポインターのリンクとか、一つ一つ可能かどうか精査してこう。」

 

「流石サクヤ!! 太っ腹ぁ!!

よっ!!世界一!!

あのドアホとは大違いや!!

やっぱ持つべきものは家族やなくて、友やな!!

なんならワシの師匠になってもかめへんぞ!!

大妖怪白狐様の師匠として方々に噂広めたるで!!」

 

 

調子のいい白狐に、サクヤは優しい笑みを返した。

 

「私は弟子は取らん主義だ。

噂なんぞ広めてみろ

 

 

次に広がるのは貴様の生き血だ。」

 

 




火影一人分のチャクラ云々は私の妄想であって、正確なものではありません。
もし知っておられる方がいらっしゃったら、ご連絡ください。
ソースを確認次第、修正いたします。

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