また来て三角   作:参号館

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一通り白狐の近くにいる気配に関しての事を聞き落ち着いたので、ドンに竹筒に戻ってもらい

散らかした部屋を整理していたら、白狐が問う。

 

「んで、此れから何するんや?

一応行けるところまでは行ったし、ワシの目的、飛雷神は習得したし……サクヤの目的である、外の様子はお前さん自身がうかがえんし…」

 

これ以上、一体何をするんだ?

と、紙束を抱える私を見つめる白狐。

 

一応、() ()() ()() ()()

白狐は飛雷神の術をマスターできたので

さっさと長距離で試したいようで、ウズウズと落ち着きのない動きをしている。

「おニューのパンツを次の日に穿く小学生か。」と突っ込みを入れたかったが

白狐にパンツと言う概念は無いので黙って置いた。

 

「うーん…その事でちょっとご相談がございまして…。」

 

手元の紙束をトントンと床に突いて端を整え、まとめる。

白狐は私の周りをうろうろと、落ち着き無く動いて鬱陶しい…

 

 

「なんや、かしこまって…相談?

水臭いなー

もっと早う言わんかいなー。

ちゅうか、どんだけ時間あったと思ってんねん。

ほんま、はよ言えや、今迄何しとってん。」

 

「テメーに飛雷神教えてたんだろーが!!」

 

 

サクヤの拳が、普通の狐サイズの、白狐の頭にクリーンヒットし

鈍い音がゴングの様に、蔵に響く。

 

「いっっっ!!

何すんねんこのドアホ!!」

 

「アホはテメーだボケェ!!

てめーの理解度が!! あ ま り に も ド底辺なせいで!!

()()()()時間喰ったんだよ!!ド馬鹿!!」

 

そうなのである。

この狐、説明が下手なのはまだしも、人の説明を全く聞かない、理解していない事を放置する、話が延々と逸れる…等々生徒として最悪な狐だったのである。

おかげでこの潜っていたひと月弱の、大半を白狐に使う羽目になり、私は大いに時間をロスしていた。

他にもっとやりたいことがあったのに…

あったのに!!

 

「ばっ…

確かに結構時間費やしたけども!!

そやかて飯食いながらでも、…なんか時間あったやろ?!

ワシのせいにすなや!!

そもそもお前さんの教え方が悪いんとちゃうんか?!ああん?!

この…えーっと…あ…バカ!!アホ!!ドジ!!間抜け!!」

 

「罵り方小学三年生かよ!!

語彙力lv3かよ!!

私だってもう少し捻るわ!!

馬鹿かよ!!

こんなアホの為に…どれだけ時間を……!!

返せよ!!

飯食いながら!!お前の理解度に合わせて!!毎回修行のプラン立て直す羽目になった私の時間を!!

返せよぉ!!」

 

「うっ五月蠅いねん!!今、語彙力関係ないやろ!!

修行プランに関しては誠に申し訳ありませんでした!!

ちゅうか、お前さんがさっき殴った所為で、ワシの希少な脳細胞減ったわ!!

どう落とし前付けてくれんねん!!」

 

希少:少なくて珍しいこと。きわめてまれなこと。また、そのさま。

貴重:非常に大切なさま。得がたいものであるさま。

(デジタル大辞泉より)

 

「『希少』て…

自分の脳細胞の少なさ認めちゃダメだろ…

使うならせめて『貴重』にしてくれよ…

ばかだ馬鹿だとは思ってたけど…ここまで馬鹿だとは…

ハッ…いっその事殴って記憶喪失になった方が身のためじゃないのか…?」

 

白狐をちらりと見詰める。

良い毛皮をしている。

 

「ハッそんな暴論が、まかり通るとかおもっ…!!」

 

素早く降ろした拳を、寸のところで避けた白狐。

床に走った、チャクラも練っていない只の拳から続くヒビに、白い毛皮が、さらに白くなったように見える。

 

 

「おっおまっ

本当に殴るやつがいるか!!

ひっやめっ来るな!!馬鹿力!!

動物虐待反対!!

弁護士を!!

弁護士を呼んでくれ!!」

 

みたいなことを言いあってプロレスしていたら、肘が近くの机に当たり

机上に置いていた竹筒が倒れた。

机の上を転がり、床に落ちた竹筒からは、白い影が静かに出てきて

すっ…と私と白狐の耳元で低くささやく。

 

「いい加減にしてください。

また先程の様にカオスな空間にしたいんですか?」

 

 

私と白狐は静かに平伏した。

 

 

―――

――

 

 

「…話を戻すけど、相談があってな

私の痕跡をピンポンに消してもらっていて、その痕跡の源ともいえる

お前の感知を惑わせた、私のチャクラを吸って分裂し、各地の真の目に預けた『ドン』にも

実は、全て消えてもらうつもりでして…」

 

自分の気配を消すと言う事は、足がかりを消すと言う事であり、完全に消息を絶つと言う事である。

 

「そんなんしたらやばいやろ!!

お前さんが陸に帰ったら、感知で一発やん!!

居場所がモロバレやないんか?!

追手すぐに来よるで!!」

 

白狐がぎゃんぎゃんと反対意見を述べるが、サクヤは意にも介していなかった。

 

 

「居場所がモロバレっというか

最終的には、向こうにこちらの居場所を感知させるのが目的だ。」

 

「…ん?どういう事や?」

 

「まあ、もう少し待て、情報が来る。

話しはそれからだ。」

 

そう言っておもむろにサクヤは、背後のごちゃごちゃしたスペースから地図を取り出して、先程開けたスペース(床)に広げる。

丸まっていたからか、広げた先から端が曲がるので、そこら辺に放ってある裁断鋏やら、改造ネズミ取りやらを四隅に置いていると、竹筒に戻っていたピンから連絡が入る。

 

「指定分裂体の消滅、全て確認しました。

どうやら分裂体を見つけたのは木の葉の追い忍だけでは無いようです。

管狐の習性を知っているのか、その時点では、どの分裂体も消されていませんでした。」

 

「そうか。

場所を地図に書き込みたい。

発見された形跡のある分だけ教えてくれ。」

 

「了解しました。」

 

―――

――

 

ドンの声と共にサクヤは、広げた地図の上からプッシュピンを指していく。

 

ドンの竹筒は、任務序に世界各国に置いてきた。

更には真の目の伝手を使って、人の手から人の手に渡らせたので

()()()()()()()()()()()()()にあるはずである。

 

しかし、分布には偏りが無かった。

僅かに草の国周辺が多いが、特出してはいない。

 

 

白狐が地図上に刺された、おびただしい量のプッシュピンにどん引き。

「ドン…こいつが嫌になったら、いつでもワシん所きぃや?

絶対動物虐待で訴えたるからな…安心せえ…」

「えっ…ええっと…」

などと、ドンとサクヤの仲を裂こうと、画策している横でサクヤは

「矢張り…」と思考の渦に飛び込む。

 

 

 

基本的に、管狐の習性は周知では無い。

火を吹く、化ける位は忍びに知られてはいるが、広くは知られていない。

更に『増える』、はインカムの様な役割としか周知されていない。

と言う事は、管狐の『分体が消えると、親機に記憶が共有される』と言う特性はあまり知られていない事になる。

もっと言うなら、『管狐に()()()()()()()()があることは、ほぼ知られていない。』が正しいだろう。

 

 

例題

本体から分裂した分体が、時系列順にA、B、Cとあったとして

Cが消えれば

AとB 、本体に記憶が共有され

Bが消えれば

Aと本体に共有、分体Cには共有されない

とする

 

Q.

本体とABC分裂体を消さずにどう情報共有をすればいいでしょうか?

 

A.

情報共有の度に、本体とABC分裂体が、それぞれ新しい分裂体を作り出して消す。

 

 

棟梁の言う『本体を常に控えておく』というのは

『本体を常に控えておき、分裂体を増やしたり消したりして

時系列中の、()()()()()()()を繰り返す』と言う事

 

時系列による序列なので、A分体が、C分体より後に分裂した場合

序列は、本体→A→B→C→A’ になる。

よって『C』 より下となるので

A分体の記憶を持った『A’』が消えれば、A分体の情報が全体に行き渡ることになる。

 

棟梁の様にインカムに使う場合

共有したい情報が出て来る度に、管狐を分体させて消して、を繰り返すことにより

最初に分けられた分体のみが、等しく情報を持つ事が出来るようになるのだ。

 

 

ちなみに

ピンポンは写輪眼の封印に使われているからか、そのルールから外れ

何故かどれを消しても全体に共有されてしまう特性があるおかげで、分体一体いればいくらでも復活が出来るのだが

普通の管狐やドンの場合、本体が消えれば、分体での代替えが利かない。

よってドン本体が消えれば、今迄の記憶の引き継ぎが出来ない。

 

 

この、時系列の序列まで知っている人間は、ほぼいない。

其れこそ、棟梁や長などの、千単位で増える管狐を持つ人ぐらいだろう。

 

しかし、『分体が消えると、記憶が共有される』と言う特性を知る一般の人間は、結構多い。

それこそ真の目の大工たちはもちろん、忍びの内いくらかは聞き及んだことはあるだろう

人の口に戸を立てているわけでは無い。

かく言う私も、任務に何度か使った折り、シカマルや、カカシさんに軽くだが使い方を教えていた。

あの二人なら、もしかしたら時系列の序列に気付いる可能性の方が多い。

 

 

しかし、態々サクヤのチャクラを持つ管狐を探しだし

且つ、そのまま放置して、それを悟られたくないとする人間は限られる。

 

 

 

サクヤは、取りあえず思考の渦から脱出し

白狐に絡まれ、冷や汗をかくポンに声をかける。

 

「特徴は。」

 

ぶっきらぼうなサクヤの言葉に、ドンはホッと息をついて返事を返した。

 

「あまり詳細は分かりませんが、根の側近服を着た者が数人、紅い髪でメガネをした女性、オレンジの仮面を付けた人…多分男性です、あと

…白?

人間だとは思うのですが…なにか人とは言えない感じの白い皮膚の…

これが一番多いですね。

見つかった分体は殆ど白い人です。」

 

「あー大体わかった。」

 

サクヤはドンの説明に、思い当たる節を遠い記憶から呼び起こしてくる。

 

ダンゾウの側近(根)が動いていると言う事は、木の葉から正式に追い忍が出たわけではないだろう。

紅い髪にメガネは、多分サスケの所の…

草の国周辺は彼女のチャクラ探知に引っかかったやつだろう。

オレンジの仮面はオビトら辺…

そして、だいぶ記憶が薄れているが、白いのは多分あのオビトの助っ人的な…アロエっぽいの着た奴…ら辺だろう。

今生で遭遇を果たしてはいないが、まさか私のチャクラを知っているとは…

大凡サスケ、またはイタチに付けたピンポンから、私のチャクラを記憶したか…?

もう少し警戒をした方が良かったかな…

いや、アレは必要な過程だったし…

 

 

「そんで、何が相談なんや?」

 

「んーあー……」

 

白狐は、サクヤの迷走しそうな思考を本筋に戻した。

言いにくそうに、サクヤは一呼吸おいて声を出す。

 

 

 

「白狐、死んでくれ。」

 


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