巻物を見つけてから数日、ついに『その日』は来た。
滞りなく
予定通りに
カンペ通りに
暁の、木の葉襲撃は終わった。
色々思うところは有れど
最低ラインである『木の葉に残したドンの仕掛け』は、シカマルにより予想以上に動いてくれているようだし、
あとはドンの、五影会議の連絡を、待つだけである。
しかし、私はある問題にぶち当たっていた。
『~五影会談開催のお知らせ~』byドン が来ないのである。
何度でも言おう!!
木の葉襲撃の最後の一報『全員無事』からっ!!
木の葉のドンから連絡がっ!!
全く無いのだ………。(スンッ
元々、『五影会談開催』の連絡が来たら、
しかし、準備している間にもう2,3報来るかと思いきや、何の音沙汰もなし…
蛇足だが
木の葉のドンは、棟梁や他のチャクラを吸って増えてしまったのでドン本体とはリンクが切れている。
なので、今更こちらのドンを分裂させ、消そうとも、木の葉のドンには連絡が行かない。
流石に嫌な予感がした私は、五影会談開催の一報を大人しく蔵で待ってみたところ、これである…
「何故だ!!
何故連絡が来ない!!
どれだけ私を、この暗くて空気の悪い蔵に閉じ込める気だ!!」
髪を振り乱し、叫ぶ私。
ドンは、申し訳なさげに蔵の中央に佇んでいる。
いくら気持ちを叫んだって解決はしないし、喉が枯れるだけなのは分かってはいるが、叫ばずにはいられなかった。
しかし、ドンを委縮させるのは流石に良くないので、ため息とともに額に親指を当て、落ち着くために、考え得る損害をあげつらう事にする。
そこで私はある『可能性』に気付く。
『木の葉のドン』が全てダンゾウに捕まったか、情報が漏れたか…何かした可能性に。
……ドンは…大丈夫なのだろうか…。
なにもダンゾウだけが敵では無いのは分かっているが
私の頭は、ダンゾウに捕まって、涙目でこちらに助けを求めるドンしか想像できない……
取りあえず脳内のダンゾウをメッタメッタにして、思考をドンに戻す。
ドンが捕まったとして
海上にいるドンからは何も連絡が無い所を見ると、相手側に流す情報が無いので『消されていない』
又は、流す情報はあるが『消せない』状況に居ることは確か…。
一応まだ、取っといて損は無かろう。
それよか、うかつに動いて『こちら側』の情報が漏れる方が危険である…。
もし、何者かにドンが捕まっていた場合
急に予定と関係なくドンを消したり
事情を話したりなんかして海上のドンを消し、情報を木の葉に返せば
私が、ドンが捕まったと言う事に気付いたと、『向こう側』に気付かれてしまう。
私は額に押し当てていた親指を降ろし、ドンを見つめた。
「…………ドン…。」
「はい。」
「海上のドンには、何も知らないまま消えてもらおう。
木の葉勢には『予定通りそのまま待機』と伝えろ。
私のチャクラを持っているドンは、白狐のと、本体以外は全て消してくれ。」
「了解しました。」
そもそも、当初の予定としては『仮称マダラ』が、ダンゾウの持つシスイの写輪眼に気を取られている内に陸上して、ピンポンと合流。
ダンゾウとサスケの戦闘が始まったら、そのままサスケにつけているピンに宇迦之御魂して、ダンゾウの首を刈り取り、すべてを置き去りにして、蝦蟇の里に宇迦之御魂するつもりであった。
陸に置いてきたピンポンの主な任務は、その避難先の『妙技山』にアンカーを作る事であり
つい最近やっと正確な位置が割り出せたのだ。
迂闊に動いて今の所最大に警戒すべき敵である『ダンゾウ』に手の内が漏れるのだけは避けたい。
ちなみに何故、
木の葉と蝦蟇の里は、『エロ仙人』や『ナルト』のおかげで縁が深いが
口寄せ契約者が殺されると知って、木の葉に強制送還できる程には、『木の葉』と『蝦蟇の里』に縁は無いからだ。
エロ仙人や、ナルトと言う、口寄せ契約を結んだ相手がいるからこその、『木の葉』と『妙技山』であって
『木の葉』と『妙技山』の間には何の契約も結ばれてはいない所が味噌となる。
基本的に口寄せ契約は『個人』と結ばれるものであり、『里』同士では結ばれない。
よって5代目が何か、特別な契約を結んで無い限り、私の安全は、ある程度は確保できると言うわけだ。
まあ5代目程度であれば多少成れど漏れても…いや……拳が飛んできそうだから出来れば漏れて欲しくないけれど…
…口が堅いと信じてるぜ…5代目……
ちなみに
態々白狐に地球の裏側に行ってもらう大きな理由は、この『避難先』にあった。
流石に蝦蟇仙人の所に…白い悪鬼は連れてけないだろ…
『白い悪鬼』が狐であれ、なんであれ、其れにつながりそうな白狐を連れて行くのは、流石に申し訳ない…。
だから多少なりとも知り合いであるピンポンを、妙技山捜索に駆り出したのだ……。
まさか、ここ(暁襲撃)まで見つからないとは思わなかったが…。
木の葉付近に、いくつか口寄せポイントがあることに気付けなかったら、未だ蝦蟇の里を探し回っていただろう…
ありがとう、暁。
ありがとう、ナルト。
暁の侵攻があったからこその、ナルトが契約していたからこその現在である。
この成果は喜ぶべきではないのは分かってはいるが、感謝位は許してくれ。
私は一呼吸置いて眉間から親指を外し、ドンに視線を向けた。
「予定変更だ。
私達は仮称マダラと取引してから五影会議に行く。」
「はい。」
「五影会議開催の知らせが木の葉から着き次第、出るぞ。」
「はい!」
―――
――
「雷から、忍鷹にて『五影会談の知らせ』が出たとのことです。
現在木の葉に着く前で止めておりますが、そう時間は持たないでしょう。」
地下深くに落ち込んだ建物は、人の気配がない。
しかし閑散としている筈が、どこかおどろおどろしい空気が漂っていた。
唯一の飾り付けの様に天幕が垂れ下がる入り口には、気配無く二人の忍びが片膝をついて、頭を垂れている。
天幕の下に、厳重に保護された隻腕が浮かび上がった。
「…そうか。
他にその鷹に気付いた者はいたか?」
「いえ、白眼で確認いたしましたが、付近にそれらしいチャクラは有りませんでした。
何れも、数週間前の真の目サクヤの管狐
隻腕の影が、名前に反応して揺れた。
二人の忍びは、其れに気付いたが、何も言わず、只静かに口を噤む。
「……よい。
あ奴相手に、数日遅らせられれば十分だ。
これ以上遅れれば外交問題に発展しかねん。
5代目が倒れてくれた今、これ以上好機を逃したくはない。」
「御意。」
膝間付く二つの影は、音も無く消えた。
後に残った隻腕の影も、一つ息を吐くと、ゆらゆらと天幕の奥に下がって行く。
「いったい誰に似たんだか…」
呆れた声だけが、その場に残された。
―――
――
そして現在に戻る。
そう。
現在に戻るのだ。
「ああああああ!!
外に出せぇぇぇぇ!!
太陽の光を浴びさせろぉ!!
そして私に光合成をさせろぉおおおお!!」
あれからも蔵に閉じこもり、その時を待っていたのだが、あまりにも動けない日々が続きすぎて、日光が不足し、ビタミンBが体内で生成できないので、キューティクルは死滅し、お肌はボロボロの、躁鬱状態で最悪な事になってた。
はい、そこー
いつもと変わらないとか言わないー。
「しんどい…色々重くてしんどい…
なんでこんな所にアジトを作ろうとか考えたんだ私…
でも外に出た瞬間に、あの白いのに補足され、推定マダラに連絡が行き、私の命と木の葉が握り潰される…
THE ENDは見えてる…」
こうも暗い視界ばかりだと、誰でも暗い方向に思考が進む物で
「きっとドンはダンゾウに使い潰され…
ピンポンは私の死体を燃やしたせいで、残った目を付け狙う蛇に丸のみされ…木の葉は滅びっ…
分かってんだよおじさんと、クレイジーサイコホモに負けた世界は無限月詠に掛かってっ!
白いオバはんが復活して世界は破滅するんだあああああああああ!!」
半狂乱どころか、狂乱そのものなサクヤに、ドンは引いている。
どう声をかけようにも、最終的にマイナス方向に思考がぶっ飛ぶので、ドンはもう、サクヤを如何にかするのを諦めていた。
長い事サクヤと共にいた弊害か、唯一正気なドンさえも、若干この狂気に飲まれつつある状況で、幸いなことに一筋の光が差した。
「っ!!
続報です!!
木の葉に五影会談の知らせが届きました!!
そして…5代目は、まだ目が覚めていないそうです…。」
「ほ――ん…?」
5代目の回復力から言って、目覚めても可笑しくは無いはずだが…とサクヤは思考し、剣呑な気配を感じる。
しかし、ここでいくら思考しようとも答えは出ないと、サクヤはすっぱり諦める。
うだうだ考えるのに飽きたとも言う。
「ま、出てみれば分かるだろ。」
心配を返せと、ドンの冷たい視線がサクヤに刺さった。
大海編おわっっっったぁあああああああああああああああああ!!