また来て三角   作:参号館

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みんなー
五影会談編始まるよー(死


五影会談前哨編
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暁の木の葉襲撃から、何日か経ち、ヤマト隊長の奮闘もあり、建物もある程度復興されてきた木の葉は

 

木材と、大工と、忍にあふれていた。

 

里の復興に一般人はもちろん、里に常駐する忍びが全てつぎ込まれたため、里に忍が溢れることとなっているのだが…。

幸いにも溢れる忍のおかげで、木の葉の情報伝達はある程度は回復したので、一介の中忍であるシカマルやキバの元にも、情報が回ってくるようになった。

 

「―――っと言う事だ。

こちらの情報は、混乱を避けるために、公開はもう少し時間が経ってからになる。

扱いには気を付けるように。」

 

「「はっ!!」」

 

しかし、当の回ってきた情報が情報であった。

シカマルと並んで話を聞いていたキバは内心、とんでもねェことに顔突っ込んじまった…と冷や汗をかいていた。

 

取りあえず…と、キバは足早に人ごみを抜ける。

早く速くと足を動かすので、屋外で待っていた赤丸の下に来るころには全速力になっていた。

キバは逸る足のまま、その大きな背に飛び乗る。

主人の焦りを感じた赤丸は、攣られるように、早く速くと足を動かした。

 

―――

――

 

木材が大量に置いてある広場を抜けた先に、一人と一匹は、目的の3人を発見する。

 

「いた! いた! おい! 」

 

キバの声に気付いた御一行の一人、サクラは

忍犬の赤丸に乗って、駆けてくるキバに声をかける。

 

「キバ!

どうしたの?」

 

慌てた様子に、三人の頭に『?』が浮かぶ。

キバを吹き飛ばすかのように、赤丸が急停止して、土ぼこりが舞った。

慣性の法則から、勢いよく赤丸の背を飛び降りた(投げ出された)キバは、乱雑に着地して大きく声を張る。

 

「いいか!! 落ち着いて聞けよ!」

 

一番落ち着くべきなのはお前ではないのか?

と言いたいぐらい、汗を滴らせ、焦っている様子に7班3人は尋常じゃない事だと察する。

 

「綱手様が火影を解任された!」

 

「なっ」

「えっ」

 

三者三様に驚くが、この言葉で事の重大さを十分に理解したのはカカシ一人だった。

しかし、理解する前にキバは言葉を積み重ねていく。

 

「六代目はダンゾウって人に決まったみてーだ!

オレは良く知ねーんだけど、裏の人間らしい!」

 

「ダンゾウだって!」

「ダンゾウって…!」

「…いやな予感がするな…」

 

何故なら、もっと7班に知らせるべき重要な情報があるからだ。

 

「そう、驚くのはこれだけじゃねェ!

その六代目は、抜け忍として、『サスケを始末する』許可を出しやがった。」

 

 

「どういうことだってばよ!?」

 

 

ナルトがキバに吠えるが、実はその一報を聞いたキバも、よく解かってはいなかった。

この一報を聞き、シカマルを置き去りにして、すぐさま走ってきたからだ。

未だ混乱する頭を整理する為にキバは、頭の中の情報を洗いざらい声に出す。

 

 

「俺だってよく解かんねーよ!

伝説の三忍自来也様が亡くなって

サクヤさんが里を抜けて

5代目である綱手様も倒れたと思ったら

最悪な方向にどんどん転がっていきやがる!!」

 

 

「…えっ」

 

その場に、サクラの声が嫌に響く。

ナルトが恐る恐ると言ったように声をかけた。

 

「今…なんて言ったんだってばよ…キバ…」

 

「あ?

だから自来也様が亡くなって、()()()()()()()()…」

 

 

改めてサクヤの名を口に出したところで、キバは己の犯した失態に気付く。

サクヤの事に関しては、ナルトにはまだ口を開くべきでは無いと、重々言われていた。

一応、サクヤの里抜け後、唯一明確な足取りをつかんだ忍びであるキバは、火影の判断を下したあの場で事の概要を聞いてる。

そして、先程シカマルから、『シカマルからナルトに話す』という言伝も…

 

 

「ナルトッ!!」

 

サクラの声と共に、目の前に迫る黄色、締まる首元

キバは胸倉をつかまれた事を察する。

 

 

「どういうことだってばよ!!

サクヤねェちゃんは任務で里に居ねーんじゃねェのか?!」

 

「まてまてまて、俺を殴ってもサクヤさんの情報は出てこねぇから!!

俺が話せるのは、サクヤさんは今、木の葉に居ないって事だけだ!!

詳しい事はシカマルに聞け!!」

 

叫ぶように今更な弁解をするが、ナルトは更にキバに迫ろうと息を吸う。

それを止めたのは、ナルトの行動を見守っていたカカシだった。

 

 

「…うちはイタチと、サスケの戦いの場に、サクヤがいた形跡があった。

それに気付いたのがキバだった。

その時はまだ、サクヤが任務をやっている可能性もあったたから、混乱を避けるために俺は、内密に綱手様へ報告を上げたんだ。

キバは悪くない、俺の判断だ。」

 

ナルトはカカシの方へ視線を向けるものの、声に耳を傾けるだけで、逃さないとばかりに、キバの拘束は緩まない。

しかし

 

「里内でサクヤの足取りを追ったが

頼んだ任務がすべて終了している事と、真の目にあった『作間の蔵』が、こつ然と消えた以外の手掛かりはつかめず」

 

重なる言葉に、首元の拘束は緩んでいき、

 

「家は、玄関に辞表届と額当てだけ残されていて

家具、道具、その他、すべての痕跡と言う痕跡が消えていた…」

 

終いには力なく腕が降ろされる。

 

 

 

 

「……サクヤねぇちゃんは、どこにいるんだってばよ…?」

 

 

先程キバに迫った気迫は消え、ナルトの声は細く、弱弱しくなっていた。

 

怒りの矛先をどこに向けたら良いか分からず、戸惑い、落ち込み、どうすればいのかと、自分に助けを求める姿は、まるで迷子の子供だった。

 

カカシは暁襲撃後、サクヤの里抜けを知ったシカマルが、カカシにさした(言葉)を思い出す。

 

『ナルトには、様子を見て俺から話します。

ナルトにとってサクヤは、唯一の肉親みてーなもんなんです…

ゆっくり落ち着いた時に話す方が、…まだ、立ち直る余裕がある。』

 

もし、サクヤが敵対した場合

たとえ7班として絆を深めた(カカシ)であっても、ナルトの暴走を止められるかと聞かれたら頷けない。

カカシはそう確信した。

 

ならばせめて、誠実であろう。

誠実に、サクヤを()()()()()()()

 

 

カカシは、ナルトの助けを求める眼に言葉を返した。

 

 

「サクヤがどこにいるかは分からない。

綱手様は、辞職届を書いて、額当てまで置いていったサクヤを

『忍びを辞した』とした。んだが…

ダンゾウとサクヤには、大きな固執がある。

火影になったダンゾウは、確実にサクヤを『抜け忍』として扱うだろう。

俺の見立てなら今頃、これ幸いとダンゾウの追い忍が里を出てるはずだ…。」

 

サクラは、ナルトの視線が落ち、有り所を無くしたような、寂しい背中に、思わず手を添えようとするが、カカシの返答に我に返る。

 

 

「だが、皮肉なことに

ダンゾウの中でサスケは、サクヤよりは優先順位が落ちる。

サスケが大きな問題を起こさない限り、サスケへの追手は二の次になる。

サスケを、生きて連れ戻すなら、今しかない。」

 

 

サクラは、『事実』と言う名のオウンゴールを決めるカカシに、決意を固める。

今、ナルトに必要なのは寄り添う事では無い。

前を向く『力』だ。

 

サクヤの問題が、サスケより急を要する事態になっていることは、事情をよく知らないサクラにもわかる。

サクラはナルトに聞こえるように息を吸った。

 

「私…ダンゾウに会ってくる!!」

 

サクラの声に、ナルトは視線を上げる。

カカシの剣呑な視線が刺さるが、サクラは無視を決め込み、声を張り上げた。

 

「綱手様が目を覚ましてないのに…こんなのっ!!

サクヤさんもそうだし、何よりサスケ君のことだって!!

このまま黙っている訳には行かないでしょ!!」

 

サクラの強気な言葉に、ナルトは我に返る。

ギュッと掌を握りなおして、決意を言葉にした。

 

「…俺も!!

行くってばよっ!!」

 

 

 

しかし、そうは問屋が卸さない

 

「二人とも落着け!

こんな時こそ冷静にならなきゃ、上手く事は運ばん。」

 

カカシの言葉がナルトの決意をさえぎる。

が、ナルトには、『諦めないど根性』があった。

 

「冷静になんて、なれっかよ!!

サクヤねェちゃんが殺されるかもしれねーんだぞ!!

サスケだってあぶねェ!!」

 

カカシの声に、ナルトは果敢に反論するがしかし、カカシの方が上手であった。

 

「待てって言ってるでしょ!!

ダンゾウはお前たちが、そう行動に出ると予測済みだ。

そしてサクヤもそうなった時の為に、静かに痕跡を残さないように里を去った。

なるべく穏便になるよう、額当てまで置いて…

今、波風立てて、お前が捕まりでもしたら、

サクヤをおびき寄せる餌が、一つ増えるだけだ!!」

 

カカシの的確な指摘に、ナルトは一時言葉に詰まる。

しかし、見えた光明を逃したくは無かった。

 

「それでも!!

俺はじっとなんかしてらんねェ!!

サクヤねェちゃんが俺をどう思っていようとも!!

俺は、サクヤねェちゃんが好きなんだってばよ!

サスケだって諦められねェ!!

黙ってサクヤ姉ちゃんが殺されるのを待つなんて俺は嫌だってばよ!!

俺は行く!!

ダンゾウを説得する!!」

 

「私だってっ!!」

 

 

「お…おい…おまえら…」

 

仰々しく足を踏み出す二人にキバは、己が仕出かした事の罪悪感に溺れながら、せめてシカマルが来るまで止めようと声を掛けるが、あまり意味をなしてなかった。

 

 

 

 

「ナルト」

 

 

二人の足をまたもや止めたのはカカシだった。

低く落ち着いた声が二人の足を止める。

それは、二人の班の上忍だからと言うのもあるだろう。

しかし二人にはその声が、絞り出した声に聞こえた。

 

「お前はサクヤと縁が深い…

誰が見たってサクヤは、ナルトと、サスケを大事にしていた。

更にお前は、『木の葉』にいて、『九尾』のチャクラを持っている…

ダンゾウは他でもない()()を、この里に拘束しておきたいと思っているんだ。

お前らが何を言ったって、『政治の道具』にされたあげく、『サクヤの餌』にもされる。

相手の思うつぼだ。」

 

 

サクラにはその声が何故だか、自分達では無い所への怒りを含んでいるように感じる。

 

 

「お前やサクラが迂闊にもダンゾウと、何か不利な約束をして捕まったりしたら――――」

 

何時ものやる気のない目が、剣呑にナルト達を貫いた。

 

「―――お前らはサクヤを探す事も、サスケを木の葉に連れて帰る事も難しくなる。

それ程、厄介な相手なんだ。

今はあまりはしゃぐな。」

 

「……分かってるってばよ。」

 

 

ナルトは、一つ頷くと、また歩き出した。

サクラがナルトの後を追う。

 

「(カカシ先生の事も気になるけど、今はナルトを一人にはできない。

取りあえず、キバが初め言ってたシカマルに話を聞こう。

策を練るのはそれからの方が良い…。)」

 

何時も、何をしてても五月蠅いナルトが、静かに傷つき、怒る姿は

サクラにとって初めてだった。


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