「どーもおそろいで。」
まず、声が聞こえた。
それと同時に、派手な色の仮面を付けた男は、時空間忍術の気配を感じ取っていた。
気配のする方へ視線を向けるが姿は無い。
道行き、珍妙な格好をした2人は、計画を聞かれたかと警戒、一人は写輪眼を発動させる。
いつの間にか目と鼻の先
「お初にお目にかかります。
木遁の人と、うちは一族の誰かさん。」
相対する白は、戸惑いなく
―――
――
「ナルト!! ナルトっ!!」
何度も声をかけるが、どこに行くつもりなのか、ナルトは確かな足取りで先に進んでいく。
サクラは、事情をよく知ってそうなシカマルに声をかけようと提案したが、ナルトはただ、シカマルが居るはずの火影邸から離れて行くばかりだ。
そこに、最近馴染んだ顔が道の向こうから来ることに気付く。
サイだ。
「サイ!!」
サクラは、助かったとばかりに声をかけると、駆け寄る。
「綱手様の話は聞いた?」
「ああ、聞いたよ。」
落ち着いた様子でナルトとサクラの元に歩くサイ。
「そしてナルト、サクラ、君達が聞きたいことも、大体予想が出来る。
ダンゾウ様の情報が欲しいんだろう?」
「ああ。」
決意したかのように、ナルトは深く、重く、頷く。
しかし、その決意とは裏腹に、サイは無理だと返した。
「なんでだってばよ!!」
「あんたまさか、またあいつの側に!!」
また大蛇丸のアジト時のようなことがまた起こるのか
と、サクラは焦るが、サイは冷静にそれを否定する。
「イヤ…そう言う事じゃない。
僕はダンゾウ様の事を一切話せないようになってるんだ。
この呪印のせいで。」
そう言ってサイは口を大きく開き、舌をナルト達に見せた。
「なん、だってばよ……それ?」
全く持ってわかっていないナルトに対して
サクラは病院の診察で何人か、そういった人を見たことがあった。
「『呪印』と言う物だ。
かつて根にいた人で、ただ一人これを逃れた人がいるとは聞いてるけど
その人以外の根の者は、この呪印でダンゾウ様についての言葉を一切封じられている。」
「用心深い人なのね…」
サクラは、ダンゾウに対しての当てが外れたと知り、意気消沈する。
二人の様子に、サイは、まだ用件は終わってないと口を開く。
「けど、僕が話せることが一つある。」
「なんだってばよ…。」
封じられているのに、話せることがあると言うのはどういうことだと、ナルトとサクラは疑問符を浮かべる。
「『真の目サクヤ』の話だ。」
―――
――
木の葉を潰さんとするサスケを、止めに行く道中だった『うちはマダラ』は余りにも見事なまでのタイミングに、舌を巻く。
潜伏している状態で、ここまで早く情報を手に入れるには相応なパイプが必要だ。
マダラとゼツは、ターゲットが思ったより近くにいたと予測した。
「ほー…。
俺が『うちは』と予測した上で、その言葉を紡ぐか。」
マダラが、行けとばかりにゼツに手を振ると、ゼツは、地面に溶けるように消えて行った。
二人に相対していた白色は、ちらりと視線を向けただけで、そちらに用は無いようだった。
マダラは、その様子を見て一応、牽制に写輪眼で幻術を掛けるが、危なげなく跳ね返される。
突然の殺気と幻術に、何の惑いもなく、にこりと微笑んだ白は、トッと一歩引いて、そのままの流れで、もう二歩三歩と下がった。
まるで身軽なその仕草に誤魔化されそうになるが、その腰元には黒く重そうな双剣が据えられている。
木立を風が通り過ぎる。
殺気も何もなく、手を伸ばせば届くような距離に佇む白
方や、殺気を充満させ、隙あらば仕掛けようとしている黒
得物に添えられている手を見れば、警戒がゼロでは無いのは窺えた。
一旦距離を取れたことにより余裕が出来、相対する白の動向を探る余裕が出来てきた。
「(機を衒う事は上手いが、間を持たせるのは下手だな…。)」
マダラはここで
無闇に神威を発動しても、先程登場した時空間忍術で逃げられてしまう可能性に気付き、発動しかけた万華鏡写輪眼を戻す。
奇襲には自分のフィールドである、
この白が、マダラが想像する『真の目サクヤ』ならば、先程登場した時の時空間印術がなんであれ、飛雷神の術並みの速度を誇る術を会得していると言う事である。
寧ろ、あの
飛雷神でなければ何になる。
飛雷神を使える人間は限られる。
まず、時空間忍術のセンスが必要だ。
そして、時空間忍術を学べるだけの知識が必要で
最後に、時空間忍術を己の技に落とし込む『技術』が必要だ。
いくら守備範囲の広いゼツ情報でも、ここまでややこしい相手になるとは誰も予測できないだろう。
ここまで術をモノにしている相手に、同じ土俵で相対してはならないと経験則から答えを導き出す。
あの天才、4代目火影である『黄色い閃光』を相手にした自分だからこそ分かる、と言ってもいい。
これは長丁場になりそうだと、警戒心をめいいっぱい引き上げた。
しかし、そんな警戒をよそに、白色は呑気に口を開く。
「まずは…
お互い初対面な事だし、自己紹介といこうか。」
その言葉に、仮面の男は静かに構えを解き余裕を見せた。
それを了承と取った目の前の白色は、なるべく自然に胸元に手を持っていく。
「私の名は真の目サクヤ。
千手扉間とうちはニヒトの間に生まれた第三子、真の目作間の一人娘だ。
で、私の予想通りならば、あんたは『うちは』で間違いないんだな?」
「…ああ。
こちらも改めて自己紹介させてほしい。
なにせ貴様を探し、見つけるのに途方もない労力を喰ったからな。」
おかげで、サスケ達に八尾の居場所を伝えるのが遅くなってしまった程には、労力を使わせてもらったのだ…。
原作と違い、暁の予定が若干押しているのはこのせいであった。
怒気が立ち上る相手に、好きにしろとばかりに肩をすくめるサクヤ。
記憶にある、千手扉間のムカつく表情が重なり怒筋が浮かぶが、ここで取り乱しても何も得ることは出来ないと、仮面の男は心を落ち着かせる。
「俺は、第24代目うちは当主、うちはタジマの第一子
姓はうちは、そして名は『マダラ』だ。」
自称『うちはマダラ』は自分が発した『名』に慄くかと期待したが、サクヤの様子は依然変わらず
にっこりと笑みを返すだけだった。
千手扉間の名を知っていて、うちはマダラの名の大きさを知らないはずがない…
マダラは、その様子を訝しむ。
しかし、サクヤは自称マダラの疑問に答えず話を進める。
「じゃあ自己紹介も終わったところだし、本題に入りますか。」
そう言って真の目サクヤは印を結んだ。
お手本の様に綺麗な印が連なって行く。
印のスピードは一流と言ってもいい速さだ。
しかし、写輪眼に見切れない速さでは無い。
自称うちはマダラは『口寄せの印』を黙って見つめた。
多少の口寄せでは、自分に攻撃が当たらない事をよく知っていたからだ。
そして残念なことに、サクヤの口寄せは『多少』では無かった。
確実に、『自称うちはマダラ』に衝撃を与える代物だった。