また来て三角   作:参号館

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「サクヤさん、これからどこに行く予定なんですか?

先程から合流地点である蝦蟇の里から離れていくようですが…」

 

 

サクヤの腰元についた竹筒から出て、サクヤの肩口に留まるドンは、不安そうに、サクヤに問いかけるが、サクヤはやり忘れたことがあったとしか返さず、その姿は焦っているようだった。

 

なにか、重大な事を忘れてしまったのであろう。

ドンは自分をそう納得させ、その行く先に思いをはせた。

 

 

 

―――

――

 

よれよれの、しわしわの、ぼこぼこで、顔を腫らしたナルトが帰ってきた時、カカシは

意外性ナンバー1のナルトが、またやらかしたことを察知した。

 

しかし、話す気が全くないのは見て取れたので、サイに声をかけ外で事情を聞きだす。

 

 

「ナルトとサクラと、サクヤさんの事を話していた途中、サスケくんの名前を出したら、雲隠れの使いに絡まれまして

ナルトがサクラを庇って、雲隠れの使いに『サスケの情報を教える』と嘘をついて、報復に会いました。」

 

 

案の定である。

 

 

カカシはサクヤの何を話していたかを聞き出し、そう来たか…と思考をめぐらす。

サイと共にテントに戻り、手酷くやられたナルトに声をかけるが、その心は折れてはいないらしく、次は『雷影に会いたい』とのさばる。

 

その真意を聞こうと声をかけるが、その声はヤマトの声にかき消された。

が、その声も、ナルトの言葉に止まることとなる。

 

「4代目に会ったんだ。」

 

 

その言葉に純粋な驚きと、4代目の知恵の深さ、そして少しの羨ましさがあった。

そしてナルトの発した言葉に、カカシは何かがつながった音がした。

 

『四代目が教えてくれたんだ。

16年前の九尾事件は“暁”の面をしてる奴がやったって!!

それに四代目も手が出ないくらい強かったって!!』

 

 

 

 

「里に恨みを持ち、里を抜けたうちは一族で、九尾を口寄せできるのは“マダラ”位だ。」

 

一瞬過った白に、カカシは頭を振る。

サクヤの口寄せから出てきた九尾のチャクラ、話を聞いてサクヤが発した『うそーん』は素であった。

信じるには、いささか心許無いかもしれないが、必ずナルトに返すと約束している限り、サクヤならば返すとカカシは信じている。

 

それに九尾襲撃の当時サクヤは忍びにもなってない子供だ。

父である作間さんは死んでいたし、叔父のサザミさんは、あのバケモノと対峙しているのをこの目で見ている。

 

 

“マダラ”を知らないナルトに簡単な説明をしながらカカシはこれからの予定を立てる。

 

「サイ!

火影にはお前が連絡をしてくれ。

ナルト!

四代目はお前になんて言った?」

 

困惑するナルトに言葉を続けて、4代目の面影を感じる金色を見つめる。

 

「俺を信じてるって…言ってくれた!!」

 

良し!!と頷くと、カカシはヤマトに仕事を押し付け、ナルトの監視をくぐる方法にあたりを付ける。

 

ナルトが、『サクヤ』からいったん離れてくれてありがたい。

と4代目に感謝しながら。

 

―――

――

 

サクヤは焦っていた。

途轍もなく。

 

林の国で白狐に会う前、サクヤは有る計画を企てていた。

『ダンゾウに恨みを募らせている者たちを使った連続奇襲』という、えげつない計画を―――…

 

その為に態々各国に出向き、『般若衆』などのダンゾウに捨て駒に使われた小さい忍び集団や、ダンゾウに嵌められ、後に引けなくなり戦争を仕掛けるしかなくなった『小さい城』を煽ったのだ。

()()()()()()()()、ダンゾウの情報をたんまりと持って。

 

 

木の葉の里でのダンゾウの仕事と言えば、相談役と言う物もあるが、ダンゾウのお抱えの『根』の特性を利用しての怪しい国、組織、団体を発見し、火影に助言する事がほぼだった。

 

そして、その助言の真意を精査するのが、『コマ』の役目であった。

残念ながら、サクヤの鼻の効き具合は、暗部ではぴか一であった。

あのカカシをも下すほどにぴか一であった。

 

無駄にある知識、無駄にある情報、無駄にある体力。

すべてがサクヤの希望を打ち壊した。

特定の班に所属しておらず、無駄に班を転々としていたのは、ダンゾウの情報を、ほかならぬサクヤが全て精査していたからである。

 

悲しきかな……

こうしてサクヤはダンゾウのやり口も、思考も読めるようになってしまったのだ。

 

 

 

海に潜っていたひと月が有れば、サクヤのえげつない計画を知る、棟梁の懐に忍ばせたドンが、各地に辿り着いている筈である。

したれば、ダンゾウが木の葉を出発したと同時に、木の葉のドンが一匹消えれば、あとは各々が予定通り動くかどうかの問題である。

 

 

しかし、サクヤは焦っていた。

それも、途轍もなく。

 

何故なら

 

肝心要の林の国の『般若衆』に釘を刺すのを忘れていたから。

 

 

いや、そもそも、怨み、辛み、哀惜あれど

国も、里も、城も違う人が、サクヤの言う通りに動いてくれるとか全然考えていなかった。

だからそれも織り込んで、ロスや、巻きを計算していたが、

サクヤはまさか、己の奇襲ポイントを間違えてくれるとは思わなかった。

 

『林の国般若衆』が『地図を読めない衆』とサクヤの頭にインプットされたところで、事情を察していないドンが不安そうにサクヤを見ていることに気付く。

 

 

「大丈夫だ、修正は効く。

()が修正すれば問題ない。」

 

そう言って、微笑みサクヤは影分身をする。

 

 

 

サクヤは激怒した。

必ず、彼の邪知暴虐の『般若衆』を除かなければならぬと決意した。

サクヤには政治的取引が分からぬ。サクヤは只の忍びである。影を忍び、情報を集めて人を殺してきた。

けれども裏切りに対しては、人一番に敏感であった。

未明、サクヤは海溝を出発し、野を越え山を越え、いくらも離れたこの地面に帰って来た。

サクヤには父も、母も無い。生まれてこの方彼氏もいなければ、今は唯一の血縁者もいない。

ただ、馴染みのピンポンと、こちらを不安そうに見つめるドンがいた。

 

こんな事で計画をおじゃんにされ、死ぬつもりはない。

死ぬのはせめてすべてを成してからだと、サクヤは猛スピードで走りながら、ドンに現状を説明した。

そして、結論を話す。

 

「林の国『般若衆』の本拠地に仕掛ける。

ポン。」

 

「はい…。」

 

「これから片っ端から般若衆に付けたマークに転送させる。

“当たり”を引いたらこう言え」

 

 

 

『たしか今の本拠地、――でしたよね?

…襲われていますよ?』

 


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