また来て三角   作:参号館

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鉄の国をまたぐ渓谷にかかる橋の上で、その白は佇んでいた。

幽霊の様に、それでいてその白色は存在感を際立たせて。

 

側近であるフーとトルネの二人は考えた。

罠をいくつか仕掛けたし、それを潜り抜けたとて、追いつかれるような距離では無いはずだ。ましてや追い越すなんて……

ということは、何かしらカラクリがある。

五影会談へ乱入時の白い炎の様に……

 

 

間髪入れず攻撃のモーションに入った『根』の2人。

自分達ではきっと良い様に翻弄されるだけであろうが、上司であるダンゾウに繋ぐため、情報を少しでも残そうと動く。

しかし、フーとトルネは碌にダメージを与えず、サクヤの白い炎で焼かれる。

影も無く消えて行くのをダンゾウは静かに眺めた。

 

 

「ん?ああ……手塩にかけて育てた肉壁を、こうもアッサリと倒されちゃたまらないよな。」

 

2代目火影にそっくりの顔だが、その表情は作間そのものだとダンゾウは憎らしげに見つめた。

へらへらとした緊張感のない表情にイラつきながらもそれを押し込めて声を出す。

 

「何故ここで出しゃばった。

貴様にはワシを殺す目的以外ないであろう。」

 

わおっ、とわざとらしく驚くモーションをするサクヤに怒筋が浮かぶ。

サクヤにとっては、こんな『影』という最高戦力が集まる会合に、リスクを冒してまで顔を出す必要はないはずだ。

行く前に殺せばいいし、なんなら一番気が緩む会談終わりの帰路で襲えばいい。

狙いが志村ダンゾウ()()()()()

 

「そう、あんたを殺しに来た。

そんな面白い事にはオーディエンスは必要だろ?

五影の中の天秤が、あんたの命に傾く限り、誰かしら見にくるだろ。」

 

投げやりに言葉を発したサクヤに練り込まれるチャクラ。

ダンゾウはその姿にイラつきながら、己の腕に付けている枷を乱暴に外した。

しかし外した枷は、乱暴すぎて腕ごと外れてしまったらしい。

 

びゃっ

という水っぽい音と、ガンカラガンと転がって行く枷。

 

「なっ…!!」

 

そんな脆い癒着をするわけがない、と飛んで行った腕に眼をやった瞬間が、分かれ目だった。

 

 

 

 

「おや、大事な腕を落とすとは、あんた結構うっかりさんだね。」

 

気付いた時にはサクヤはダンゾウの後ろにいた。

 

ぬるりと擬音が付きそうな気配。

咄嗟にサクヤの攻撃を苦無で弾いたもの、片腕が無い為バランスが取れず、更にサクヤの双剣を使った連続的な攻撃に足はどんどんと橋の真ん中へ進んでいく。

 

このままサクヤの思う通りに動き、何かしらの罠にはまるの不味い……。

サクヤの事だ、連鎖的に発動する罠を仕掛けていても可笑しくない。

ダンゾウはそう考え、サクヤの攻撃の隙をついてなんとか―――爆発した

 

ダンゾウの右目が

 

ゴッという音を立てて、痛みさえ、違和感さえなく白い火を噴いた右目。

そしてダンゾウはやっと、これが幻術であると気付いた。

咄嗟にチャクラを乱して幻術を解いたが

もう、すべてが遅かった。

 

 

 

――――――

―――

 

目前の、根の精鋭たるフーとトルネの真っ黒な体。

ギリギリ生きているのか、浅い呼吸に合わせて背中が上下することが確かめられたが、動けない状態であることは確かだ。

一応腕は付いているので、ダンゾウ自身は未だ戦える。

 

「(押さえたかった消耗を、ここまで迫られるとは……。)」

 

燦々たる状況にダンゾウはやっとサクヤを、万華鏡写輪眼を開眼したサクヤを見た。

 

 

「お主……その眼は…――」

 

「ん?

ああ、目が覚めたのか。

おはようございます。ダンゾウ様(笑)

 

そんでもって、―――よく間に合ったな。

いや、分身かな? 自称マダラサン。」

 

 

亜空間のゆがみから飛び出た自称マダラは、ダンゾウを無視して、不機嫌そうにサクヤに取引の内容を確認する。

 

「……約束の物は何処だ。」

 

 

「まあ待てよ。

まだこいつを殺してない。」

 

不意を突いて、ダンゾウのチャクラが瞬間的に練り上げられたと思ったら、そのままダンゾウの首が()げた。

サクヤの焦点はマダラに合わせ微笑んだまま、獲物さえ見ずに一瞬の間に首が吹っ飛び、頭部と胴体から白い炎が立ち昇る。

 

それと同時にまるで幻覚の様にダンゾウが少し遠くで復活した。

が、幻覚かどうか確認する前に、サクヤは苦無を振り投げ、またも正確に首を飛ばす。

ダンゾウは何か印を組む前に絶命、また燃えあがった。

 

 

「残念ながら、五影の天秤は『志村ダンゾウ』に傾かなかったらしい。」

 

ダンゾウはイザナギで一瞬途切れる意識の中、何とか現状を好転させる策をめぐらす。

何故ならオーディエンスが誰であろうと、今の内にサクヤを殺さなければならないからだ。

サクヤの言葉の通り、五影の応援を見込めなければ、よしんば来たとて状況によりサクヤの協力なんてされたら堪らない。

況してや、今来たのはサクヤと何かしらの取引をした『うちはマダラ』を騙る人間だ。

サクヤの後に相手取る可能性も考えてチャクラに余裕を持たなければならない。

 

 

しかし、そうダンゾウの思うようにはいかない。

一瞬の間に首が吹っ飛び、炎で燃やされ絶命。

ダンゾウが何度目かの術を発動するも、瞬く間に命が刈り取られて行く。

 

 

 

「(これは……うちはの中でも禁術にされていた『イザナギ』……

イザナギ相手に何度殺そうとも術の発動中は死ぬことはない。

そしてダンゾウの腕を見るに、失明するはずの目は、十分あるらしいな……。)」

 

写輪眼を使って突然始まった戦闘を解析するマダラ

腕に埋め込まれた写輪眼を使い、イザナギを何度も発動するダンゾウ。

サクヤから距離が離れようとも、死角に移動しようとも、一瞬の間に正確無比に殺していくサクヤ。

 

逃げようと一歩出せば段差につまずき、腕が飛び、心臓に一突き。

避けようとすれば突然の爆風でバランスを崩し、火遁で絶命。

往なそうと構えれば飛んできた刀を目隠しに、鳩尾から心臓にかけて一薙ぎ。

堪えようと踏ん張れば足元が崩れ、背後の影分身に胴体と泣き別れさせられる。

起死回生を目標にいくら動いても、何もかもが上手くいかない。

 

余裕をもっての戦闘なぞ、出来るはずが無かった。

 

ダンゾウは、イザナギを発動し続けるしかない攻撃に『合理的だ』と師の言葉がよみがえる。

そして攻撃と攻撃の合間に続く、致命傷になりえない布石に、『効率的だ』と、弟子の言葉が過ぎた。

 

 

―――

――

 

サクヤの猛攻が続く中、発動しっぱなしのイザナギによるチャクラの減少に耐え切れなくなったのか、ダンゾウの体に埋め込まれた柱間細胞が、制御しきれずにただの木材に成り果て、サクヤはそれすらも全て燃やして跡もない。

術の根源である写輪眼はこれで無くなった。

残るは右目の写輪眼のみだが、先の政に使ってしまい、只の飾りと化している。(何なら水影の部下によって不発となった。)

最後のイザナギが解ける頃には、もう、相対するサクヤの目は写輪眼でさえなくなっていた。

 

 

 

完全に追い込み、血反吐を吐いている姿を一拍置いて眺めるサクヤ。

ただの老人と成り果てたダンゾウが、最後の頼みの綱と言わんばかりに、何かを呟いた後、封印術を発動しようとするが、

サクヤは術を冷静に分析したあと、発動一歩手前で再度首をはねとばして術の根源たる体を燃やし、発動途中の術までも殺した。

ごろりと転がる老人の頭。

 

今度こそ戦場に静寂が訪れた。

 

―――

――

 

 

血を吸った真の目の白い衣装が赤く染まり、飽和量を越えた血が滴る。

息切れもないサクヤの様子を眺めていたオビトが声をかけた。

 

「そこまでダンゾウを恨んでいるとは知らなかった……

やはり父の名は偉大か?」

 

取引時からのサクヤの並々ならぬダンゾウ暗殺への姿勢、そしてこの惨状を見れば誰もがその結論(仇討)に行き付くだろう。

橋の上は、おびただしい血液が滴り、サクヤもろとも赤く染まっていた。

死体こそ燃やされて跡形も無いが、そのすべてはダンゾウの血液で、

端に転がされている焼死体に成ろうとしている2対の体以外に、息をしているのはサクヤだけだった。

しかしマダラの言葉にサクヤは、何の話か思い当っていないようだった。

 

 

「父……? 何の話だ?」

 

 

マダラはサクヤの返答を鼻で笑った。

 

「お前、知らないのか?」

 

自称マダラは、この鬱陶しい女狐に知らない情報があるという事に優越感を隠しきれず

面で隠れたあごと思わしき場所に手を添え、くつくつと含み笑いをする。

その上機嫌な姿に、サクヤは気持ち悪いなと眉をひそめた。

 

「ダンゾウは、お前の父親を任務と偽り里外に呼び出し、自らの手で殺した。

その後、お目当ての写輪眼が手に入らないと分かると、実験材料を求めていた大蛇丸に流し、死してなお遺体を切り刻み、監獄で虫巣食う体にした後適当な山中に廃棄させた本人だ。」

 

サクヤは数秒眉に皺を寄せた後、血に濡れた手を顎に当て思案し、やっとマダラの言わんとしていることに思い当たったと、晴れやかな顔でポンと手を打った。

(ポンなんて可愛い音では無く、血を含んだ黒い手袋はビチャッと汚い音を鳴らし、更に赤をまき散らしただけだったが。)

 

 

「あっ、復讐的なあれか。」

 

 

 

あまりにも爽やかに、やっと答えに行き付いたとばかりに声を上げるサクヤ。

マダラの頭上には、はてなが複数浮かんだ。

 

「すまん、すまん。

いやぁ、何の話か分からんかった。」

 

こいつ頭おかしいのか?マダラは先の取引場面を思い出して正気を疑った。

そんな姿に、サクヤは更に言葉を重ねる。

 

 

「特に何って大きな理由はないよ。

そりゃ命狙われてるし、いろんなこと妨害されるしで、ダンゾウ死ねとか常日頃から思ってるけど……

残念ながら、一族復興とか、弟の為にとか、どっかのうちはさんみたいに何か大層な心意気なんて持って無いよ。

父親の情報も大体はもう知ってたし、母と同じ墓に入れたいとは思ってるけど、それは今殺した理由にはならないかな。」

 

 

ならば取引の際の殺気は?乗り込んだ時の大見得は?全てブラフだったのか?

一体、何に対しての?

マダラは疑問を感じつつも、思ったリアクションをサクヤから得られなかった溜息を吐いて思考をめぐらす。

 

(真の目サクヤは矢張り、ダンゾウと大蛇丸のパイプラインを知っていたか……。

大蛇丸の研究所を漁ってそこに行き付くほどには賢いと考えて警戒した方が良いな。)

 

「ならサスケに任せればよかった。

サスケの実力なら今殺せなくとも、何れ殺してる。

復讐でないならば、お前の出る幕では無かったはずだ。」

 

警戒を見せないように話の続きを促すマダラに、サクヤはこたえる。

 

「今殺したのは、言うなればタイミングが良かったに過ぎない。

これ以降、私が手を下せるタイミングが無かった。

別に生かしておいてもいいけど、とうに退場するべき演者が舞台で踊り続けていたら邪魔だろ。

だから殺した。

 

自分の手で殺すのは、生死の判断が一番自分に納得いくからだ。

全て能率的な問題だ。」

 

引っ掛かりを覚える言動の答えにはなっていないが、これ以上の問答は無駄だと考え自称マダラはチャクラを錬った。

 

 

「では俺は約束を果たした。

次はお前の番だ。

―――ああ、こいつは殺すなよ。」

 

真っ赤に染まり殺戮の限りを尽くしたサクヤの姿に、一応とばかりに嫌がらせのくぎを刺して、マダラは時空間忍術を発動させた。

 

 

 

 

―――

――

この場にて、死したダンゾウを語るのは少し憚られるが、もう少しお付き合いいただきたい。

 

実はダンゾウは、『真の目サクヤ』と相対するに当たって、チャクラと体力を消費する予定はなかった。

兵法を駆使してくる『真の目』に相対するならば

圧倒的物量から持久戦が出来る『真の目』と相対するならば

長期戦や体力勝負になることは必須だからだ。

 

 

だから、サクヤが里を抜けた際、初手からダンゾウが赴いて手を下した。

だから、火影の口から『抜け忍』という言葉を引き出そうとした。

だから、サクヤの()()を第一とし秘密裏に捜索隊を放った。

だから、火影になった時、ごたごたに紛れて真の目に内密で()()()()にサクヤの抜け忍を通達した。

だから、五影会談に向かう序盤でサクヤの打ってきた手(回転寿司)を己自身で即刻で潰した。

だから、自分の命を使う封印まで使って、すべてを闇に葬ろうとした。

だから、作間とサザミの死亡理由すべてを真の目には内密にしてきた。

 

全ては、この問題が一族間では無く当人同士の諍いであるとする為。

全ては、木の葉が真の目に敵認定されないために。

 

 

 

奇しくも、このダンゾウの思惑に、サクヤは全く気付いておらず。

ダンゾウの策略通り、今迄散々邪魔しやがってこの野郎、前に立つな邪魔、さっさと地獄に隠居しろクソじじい、という超個人的な観点からダンゾウは、生涯に幕を降ろす事となった。

 

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