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ある日、私は所謂前世と言う物を思い出した。
まあまあ平凡で、まあまあ非凡な日常が続く前世ダイジェストを、一瞬のうちに頭に叩き込まれた私は、白い扉の前で真理と取引して、右手と左足を犠牲に弟を取り返す
なんて事も無く
知恵熱で数日寝込んだ。
当時2歳だった私『サクヤ』は、自分の苗字が
そして意を決して窓の外を見た私は
そこから広がる緑多い街並み、そして
ナルトかよおおおおおおおおお!!
知恵熱で数日寝込んだ末、奇声を発して噎び泣き、吐くほど泣き、終いには脱水症状で入院した私は混雑する病院の中、見事、うちはミコトさんの隣のベットをゲットした。
いらねえええええええ
いや、ミコトさんが要らない訳ではないっ
決してそういう訳では決してない!!
なんたってあの綺麗な顔の集団、血液をぐつぐつ煮込んだ位ドロドロしてる愛でいっぱいなうちはの中、唯一の清涼剤ともいえる爽やか、癒し、美人
心なしか点滴に繋がれてげっそりしている自分のベッドまで爽やかフローラルが香ってくる、同じ病衣を着てるとは思えない
良い匂い…
って、ちがう
病院の小児科のベッドが今ノロだかインフルかでいっぱいらしく、そこに只の脱水の子供を入れると確実に感染するので、隔離の意味で産婦人科の空ベッドに押し込まれたのだ。
まさか、イタチ君の生まれたばっかりの御顔を、拝むこととなるとは思わなかった私は
呑気に、元気よく、思い切りよく、挨拶、自己紹介を済ませて顔を青くさせた。
急に顔色が悪くなった私にミコトさんが心底心配してくれたが大丈夫とおしきり、思いついたように赤ちゃんを見せてくれとたのんだら、普通にほいと渡され、めちゃくちゃ焦った。
あ、赤ちゃんをっ2歳児に、ほいと渡すなぁああああ!!と思いつつ
首が全然座って無い子供相手にドッキドキの私は
「かっかわいいですね~」
と裏返る声で何とか感想を絞り出した。
明日には退院だが私は生きて帰れるのだろうか?
でも、まあ、子供に罪はない。
可愛かった。
顔の頬齢線はまだなかった
そこそこ赤ちゃんを堪能したところで点滴を抜くため看護師さんがやってきて
2歳児に新生児を渡すな!!あんたも抱えるな!!
ミコトさん立ち上がらないで下さあああああ危ないいいい!!
と叫ばれたりと悶着あったが、何とかそこは抑え込み(またの名は土下座)点滴を抜いてもらい
翌日私は退院した
迎えに来た母に「あんた、また何かやらかしてないでしょうね」と疑いの目を向けられたが、そこは事前に口裏合わせしていたミコトさんと一芝居うち事なきを経た
―――――
――――
―――
「ねえ、あなた
私昨日小さな友達が出来たのよ」
私は、様子を見に来た夫にそう話しかけた。
昨日出来た小さな友人は、ハキハキと挨拶をし
まだピースが出来ないらしく2歳!!と元気よく指を3本立て、喋る姿はまさしく子供だった。
私の名前を聞いた瞬間、真っ青になったが、多分あれは『うちは』という名前に、少し怖い思いをしたのだろう、木の葉警備隊の顔はそろいもそろって怖い顔だから…ちょっと大きな声を出されただけで、大体の子供はひるんでしまう。
それでも、その名に恐れずにこにことお話をするその子は、きっと強いのだろう。
そして
未来を少し見た気がした
「そうか、受付の看護婦が色々言っていたがあれか」
昨日の騒動はもう病院中に広がってしまったらしい
あれは私も悪いと思うが、駆けつけて叫ぶ看護師もよくないだろう…
事のあらましを話すと、夫は呆れた顔をして文句が10個ぐらい出て来そうだったので
私は小さな友達の話を無理やりする。
こうすると、口下手な夫は黙って聞くしかなくなるのだ。
「その子、賢いのよ。お母さんに怒られるからって私と口裏合わせて、明日には噂が尾びれ背びれついて回ってるからって、大まかだけど穴が無いようシナリオ作って。ほんと、私唖然としちゃったわ。」
晩御飯のデザートで同室のもう一人のお母さんを懐柔して。
1ストーリー築く、その手腕はまるで先程の3本指を立てた2歳児とは思えなかった
「たどたどしい口でね、でも、はっきりしっかり、誰も傷つけない、やさしい方法でお母さん納得させちゃった。」
夫は静かに、私の話を聞いている。
どうせ私のお転婆でも思い出しているのだろう。
「その子、この赤ちゃん見てねイタチって呼んだの。」
「…」
「私、彼女のように、賢く、優しく、柔らかな人になってほしいわ。」
「そうか、イタチか、良い名だな」
そう言ってほほ笑んでくれる夫に私はこの人の妻であって良かったと思った。
(うろ覚えで)転生なるものを始めてみた
存分に容赦してくれ