また来て三角   作:参号館

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まあシリアスな感じで一応2代目孫だという事が確信判明したわけですが

詳しいほにゃほにゃは、またいずれ誰かの口から語られるだろう。

父がクローンであったとしても、穢土転生であったとしても。マジもんで孫であったとしても。

それが遅かれ早かれ、ナル誕で死ぬ私にゃ関係ねえか

と無理やり納得させた

 

そして、父が死んだ。

 

 

どうやら、父は忍びをしつつ大工をしていたらしい

やはりな、とは思った。

戦争中の今、一番忍びが活躍するときだろう

その時、あの顔(かんばせ)は役に立つ、たとえどんなに弱かろうとも、使え無かろうとも、囮には確実になる人材をミスミス逃すほど木の葉は容易くないという事だ

以前3代目にあったときはその話もあったのだろう。

任務内容は機密で、遺体は帰ってこなかった

 

父が死んだ話を聞いて私が最初に思った事が「うわーテンプレー」だったことは勘弁してほしい

今生の父親として慕ってはいたが、まだ3年と言う年月は前世を詰め込まれた私にはあまりに短く儚かった。

良く泣き、良く笑い、良く食べ、良く遊び

いい、父親であった。それだけは確かだ。

 

 

空の棺桶を前に真の目の者は誰一人泣かない

礼服は白

皆で笑い、歌い、踊り

お別れをした

 

 

 

真の目は孤児の集まりから始まった一族

誰もが真の目で、誰もが真の目の手を借りられる

そうやって増えた一族は養子や、孤児が多い

みんな拾って真の目にしちまえとは初代『真の目』の言だ

 

大工になる者もいれば忍者になる者も、商人になる者もいる

(シン)の目を持つものは『捨てる神』じゃない『拾う神』だ

戦乱の時代を生きてきた真の目は世界中に散らばって

今なお『真の目』を増やしている

そうやって増えた真の目はまた誰かの命を拾い

誰かに手を貸す

真の目に里も国も関係ない

 

私は父の死をもって、真の目の真意を受け継いだ

この姓を手放すときはないだろう

 

 

真の目の葬式はどんちゃん騒ぎのお祭り騒ぎだが、基本忍びになるやつは少ないので死亡率は少ない

孤児とはいえ、元は只の村人ACB、忍びの怖さと忍びの厳しさを知っている

なろうって奴はすくないが

まあいる。

 

今私の横でどんちゃん騒ぎから抜け出して、団子をもさもさ食べている叔父だ

 

 

叔父は母サキの弟で、名はサザミという

20代らしいが老け顔の髭面なので30代に見える

真の目で生まれたものは名前のどこかに『サ』をつけるらしい。

が、母たちは別に親が真の目だったわけではない。戦争孤児だったのを真の目の忍びに拾われたと以前言っていた。

それに、真の目にあやかってもし自分たちが死んでも真の目に拾われるようにと『さ行』の名前を付けるなんて習慣もあるところにゃあるので

兄妹でサキ、サザミと続くのは不思議ではないらしい。

 

 

で、この

私の横で団子をもさもさ食うだけ食って一口もくれない叔父は、真の目では珍しい忍びである

拾ってくれた真の目にあこがれて忍になったらしいが、ホント優しくない叔父で

私がミミズが張ったような文字を書いて悩んでいるのを見ては微妙な目で見て来るし

カメハメ派の構想を練っている時出来心で構えた部分を見られたし、からかわれるし

私がどんちゃんやってる真の目をしり目に縁側でこうしてお茶飲んで一人で和んでると

「ジジ臭いな」

と吹っかけてくる

 

「うるさいーさざみはあっちいって。だんごくれないさざみはあっちいってー」

 

ぐいぐいとサザミを圧すが流石忍、(いや、関係ないか)動かざること山の如し

2歳児そろそろ3歳の身では動かせない

 

「お前、解かってんのか?親父死んだんだぞ?」

 

すげー重い話を3歳児にぶっこんでくんな…と半ば感心しつつ

この人は私の泣き所を作ってくれているのだろう。と冷静に分析する自分がいた

 

「わかってる。もう会えないんでしょ?」

 

2歳児(前世持ち)ナメンナ

 

おませさんのように答える私はきっと生意気だろう

案の定デコピンされた

流石忍び、どちゃくそ痛い

 

「もーなに?さざみうざいよ。まるでだめなうざいおっさんだよ。」

 

そうやって文句ぶー垂れてると母が来て私にそろそろ寝る時間よと声をかける

いつもより早い時間だが大人の話し合いでもあるのだろう

二階から聞き耳たてるかとよいこらせっと立ちあがる。

 

「ジジくせぇ…」

 

サザミの言を無視して歯磨きをしに洗面所に向かえば真の目のおじ様たちが玄関でたばこを吸っているらしく赤い光がすりガラス越しに見えた。

 

 

「あーあ、あいつほんと良い奴だったな…」

「ああ、あの顔で笑われるとドッキリするけど、良い奴だったよな…」

 

どうやら父の話をしているらしい

洗面所からでも聞こえるのでそのまま玄関突っ切って洗面所に立つと窓の向こうから煙草の香りが漂ってくる

 

「そういや、あいつ長だったじゃん。次誰になんの?」

 

「順当に行きゃ、次はかっちゃん所だが、あそこは今年結婚したからな、荷が重いだろ。」

 

「真の目の長には一番弱い奴が付くってあるが、子供にゃ無理だしな…」

 

「ああ、あの書類量は無理じゃん…」

 

「時間がある、全部仕事を任せられる奴がなー、いたらいいが。」

 

「棟梁はまだ現役だし、バアさん達にゃ任せられねえしな…」

 

「中間層が今いないのがつれぇ…」

 

「また、作間んところに任せられればいいが。」

 

「奥さん子供いるしな…」

 

 

思ったよりディープ?な会話だった

どうやら真の目のおさ?ってのを父が担ってたらしいが

え?まって、父さん忍びやって大工やってその書類がやばいほどある長もやってたの?

ばけもんかよ…

まあ、家にいることがほとんどだったんで、この人の仕事はデスクワーク系なのかと思ってたがそういうことねと少し納得した

父親が過労で死んでいた場合、私は真の目を恨んだらいいのか、里を恨んだらいいのか分からんな。と遠く意識を飛ばしていたら母に呼ばれた

へいへいとやる気なく台所まで歩いて行く途中、先程までどんちゃんしていた輩がみんなかしこまって座っていた。

 

ああ、会議ね。

 

 

「これより…

第364回、真の目『長』押しつげふん、長決めこいこい大会を始める!!」

 

「おおおおおい!?」

 

思わず突っ込んでしまった。

「なんだ、サクヤ、起きてたのか。

サクヤも参加するか?流石にサクヤに長はさせられないけど一回だけならいいぞ?」

 

「ちっがああああああう!!」

 

近所に住んでるおっさんが何をいきなりと目をぱちくりさせている

誰も疑問に思ってないらしくこの長を花札のこいこいで決める大会は粛々と取り進められていた

「さー張った張った!!山さん今大穴ですよー!!」

 

賭けまではじめている

 

「何してんのサクヤ、歯磨き終ったの?」

 

「え、あ、うん。」

 

「じゃあこれ、明日の服ね、明日は長の就任式あるから、寝起きでぐずらないでよ?」

 

「うえ?えあ、うん」

 

母さんの落ち着き具合から言ってこれが通常なのだろう…

 

真の目一族の自堕落さと言うかズレと言うか、こいつら代表とか絶対なりたくない集まりなのかと納得した

 

 

その日こいこいの声は鳴りやまず

笑い声と、叫び声と、泣き声は朝まで続いた

 

 

「いやー白熱したわ―」

 

玄関から出ていくおじさん達の声は明るく、軽やかだ

昨日の様子を見るにあんなにしこたま酒を飲んで騒いでいたのは、飲ませて判断力を鈍らせる又は、これから起きる阿鼻叫喚を乗り切るブラフだったのだろう

 

朝食をとる叔父さんに最終的に誰がなったの?

と聞いたら「姉さん」と帰って来た

 

「母子家庭になるし、サザミの忍びの収入は有れどいつ死ぬか分からないし…心もとないでしょ?ってことで給金付けてくれたんだけど

私に勤まるかしらね~?」

 

と困った顔で母があらましを話す

 

「タダ働きよりましだろ。」

 

まあ確かに

とその場で母さんは一応納得したらしく今日の午後からの長就任式に参加して

そこでもまた、どんちゃんやってるおっさんたちに微妙な目を向けておいた

一応、父さんが死んでも金に困ることはなさそうだと

3歳の誕生日に、すこし安堵した。

 


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