また来て三角   作:参号館

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「仙術?なんやそれ?」

 

こういう展開かよ―――!!

 

現実は常に私を超えて斜め後ろから答えを突き付けてくる。

首を傾げる狐(山)は可愛くない。

 

取りあえず仙術というものがどういうモノか説明して

その摩訶不思議パワーを知っているか、使えるかどうか、の情報のすり合わせから始める。

この情報のすり合わせが一番大切な事で、ここで何かを見逃すと忍びの世界では直、死へつながる。

 

「はーそんな摩訶不思議チャクラがあるやなんてなー…

まあ、作間の奴も似たような話してた気がしなくもないが…

さっぱり忘れた。」

 

 

 

この狐…マジ使えねェ――!!

もしかして、父が何かしら方法を考えてくれて何か残してくれてくれてるかもと期待した私が馬鹿だった!!

 

もう何もかも嫌になって正座の状態から前へ崩れ、芋虫になった私は

 

「やめた。」

 

諦めることにした

 

いや、だってもうこれ無理でしょ

管狐の親ビンが知らねえんだから分かるはずないだろ。

 

相変わらず目の前のどでかい狐はその濁った眼をどこかしらに向け、私を眺め

霧は増え続け、その白い毛は霧の効果を助長させている。

白狐は口を開く

 

「なんや諦めるんか?」

 

解からぬと、忘れたと言った口で何を言う…

呆れた目を下から向けるが今の私は芋虫

狐の鼻先しか見えない。

 

「あんた知らないんだろ?じゃあ無理じゃないか。それにフサカクさん曰く父さんがこいつらと契約する前は普通に仙術修行できてたらしいし、契約破棄したらワンチャンあるからフサカクさんに相談する方が早い。」

 

まあ契約破棄の場合あの写輪眼二対を燃やすことになるのだが

これからの事を思うと心もとないが

ピンポンの契約が切れることにより私のチャクラが増え仙術もできるようになると思えばマイナスにはなるまい。

 

 

「なんじゃ詰まらん。もっと根性出しいや。」

 

呆れたような鼻息が私に当たる。

前髪が揺れてうっとおしい…里に帰ったら切ってしまおうか…

いや、しかしハナさんに髪を伸ばすとか言った手前前髪ぐらいしか切れんな…

…なんかめんどくさくなってきた

女子力はこんなうっとおしい上に成り立つものなのか…

世の女子は良く生きてられるな…私は邪魔なのに切れない事にイライラし始めてるぞ…

何だかよく分からないイライラに苛まれていると

 

「今代の長は腰抜けか…こんなへっぽこがまかり通るだなんて。」

 

そもそも、私はこういう性格なのだ

つか長になった覚えはねェっつの

根性、ずく、一生懸命、やる気、元気、勇気とは遠い位置にいるのが私だ

 

 

「無理だな。

それを求めたいのなら他を当たってくれ。

私は他真の目一族同様、欲望に忠実なんだ。興味ない事にはとことん食指が動かん。

仙術を知った切っ掛けも、ある術をマスターする過程だった。」

 

そう、元々蝦蟇油弾さえできればよかったんだ。

それがこんな雷の国(多分)のくんだりまで来て…

フサカク様にヨイショされたせいで欲と目的が入れ替わってしまったのもあるが、仙術を必死こいて覚える必要はなかった。

まあこれから現れる世界の敵(笑)とか初代頃の遺物とか色々不安要素は有れど、今現在あのなんちゃってカンペの通りに進んでいるので何ら問題ない。

多くの犠牲はあれど、世界は最終的に救われるだろう。

 

 

「そうか、そうか…ガッハッハッハ!!」

 

急にまた笑い始める山に私は呆れた視線を向ける

だがそんなのお構いなしに狐は言葉を発し空気を震わせ

 

「なんと的を射とる!!

流石真の目と言ったところか!!お前は初代にそっくりや!!

無理と思ったらすぐあきらめる!!

嫌だ嫌だと言いながら、グチグチ文句ゆったと思うたら、急に白ける!!

そして別の道をまた一から辿る!!

そこにいくら無駄な労力を使おうがお前さんはそれを一切無駄とは思っとらんやろ!!そうやろ!!

ガッハッハッハッハ!!ホンに!!ホンに!!あ奴そっくりじゃ!!

気に入った!!気に入ったぞ小娘!!

ワシは白き渓谷に住まう妖狐!!

名は白狐(ビャッコ)!!

初代真の目当主の管狐であり、相棒であり、家族であった!!

もう一度名を聞く!!おんし名前は何ちゅう!!」

 

テンション爆上げで名を聞かれた。

耄碌したか…ハタマタ痴呆か…

その問いは出会い頭に聞いた

二度言うのはタルイ…が、

まあ一応お山の大将である

名乗られもしたし、応えはしてやろう

 

「やあやあ我こそは!!

火の国木の葉隠の里、真の目が一人!!

真の目サクヤ――…」

 

しかし、白い山は唸るように、その馬鹿高いテンションのまま吠える

 

「違う!!」

 

「あ゛ん?」

 

いや、え?

名前全力で否定されても…

マジでこいつ耄碌してるんじゃね?

流石に妖怪で寿命が無いとか言ってても、脳みそはもう付いて行って無いんじゃね?

マジでこの白い狐の脳みそを疑っていたら

テンションをさらに爆上げして私に何の利もないのに要求を重ねてきやがった。

 

「それはおんしの今生の名前や!!

ワシが聞いたいんは前世の名!!

さあ言うて見ろ!!!忘れたとは言わせん!!

おんしはワシの待っとった人間や!!

わしゃこん時を待っとった!!

名を!!

わしにその名をよこせ!!

さあ!!さあ!!さあ!!」

 

私の前世の名前に何の価値があるのか

なんて事も無い、息をして、飯を食い

只、死ぬ時を待つだけに生きた前世の名を。

 

…良いだろう。

欲しいならくれてやる。

私はオタクだ。

こういう展開に熱くなってしまう典型的なオタクだ

ナルトは読んでなかったし、エヴァンゲリオンは理解できなかったし、聖書はジャンプじゃなくってガンガンだったし。

捻くれているせいで王道の漫画そんなに読んでなかったけど嫌いじゃない

何故前世の事を知っているとか色々聞きたいことは有れど、私はオタクの礼儀でもって返そう

 

「私の名前が欲しけりゃくれてやる。」

 

その言葉に、狐は白い毛を欹てて息を吐き出す。

興奮を押さえ切れないかのように前足の爪を立て、尻尾と耳が立ち上がる

 

 

ああ、その眼だ。

狐は思い出していた

あの男が自分に課した呪いを

妖怪成れどここまで生きてこれたのもその呪いの所為であり

死ねなかったのもその男とかわした約束の所為である

 

「だが、等価交換だ。お前は私に何を、もたらす。」

 

サクヤの言葉に白い山は答える。

轟々と響く興奮した心臓の音がサクヤの肌をビリビリと焦がした

 

「いいだろう、良いだろう!!

見返りは記憶だ!!

原初から始まる、最初の最初

お前にワシの記憶を、

お前の『弟』の記憶からお前に続くまでの一から十、すべてをもたらそう!!」

 

最初の昼行燈な雰囲気はどこへやら

辺りは剣呑な雰囲気に包まれ

サクヤは追い込まれていた

今のサクヤには遁走は出来ない

分水嶺に来てしまった。

ちょっとお使いの気分で来た先が、こんな結末になろうとは

 

 

とっくに色あせた記憶に、また色が付き始める。

察しの悪いサクヤでもここまでお膳立てされてしまえば自明の理である

 

 

『サクヤ』の血縁上に弟は存在しない。

だが”過去”に存在していた

過去、それはサクヤにとってでなく

あの日、2歳のあくる日

脳みそに刻み込まれた前世に存在していた。

 

 

「     」




…――らなかった。

修行編無理、長い、ややこしい。

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