また来て三角   作:参号館

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少年とイタチ編
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初めて会った時の事を、俺は覚えていない。

真の目の、薄金の髪の子供が、病室で俺を『イタチ』と呼んで、そう名付けられたことは母から良く聞いていた

前日の珍事の事も。

 

 

 

 

未だ生まれたばかりの新生児を二歳児にほいと渡してしまったミコトと、受け取ってしまったサクヤは看護婦にお灸を据えられた。

しかし二人は後悔はしていても、反省はしていなかった。

 

「おばさん、わたしはこのじかん このびょうしつに いなかった。

そういうことで どうでしょう?」

 

そう言ってプリンを差し出す姿は二歳ながら狡猾である

ミコトは騒ぎに集まってきた野次馬を、お得意の投擲技術で視線を誘導し、幻術を使って病室からホイホイと退けていた。

 

「おばさん…ねぇ…」

 

そう言ってにっこり微笑むは同じ病室になった犬塚さん

検査の為の入院らしく、初めての子供、それも新生児をおろおろと危なげにあやすミコトに色々アドバイスをくれた方である。

サクヤは『おばさん』の真意に気付いたのか子供らしい顔で悪い顔をする

 

「いやだな~ちっさなまちがいですよ~

ね、おねえさん?」

 

「ハッハッハ!そうだろうね!!まあ、そのプリンで手を打とうじゃないのよ!!」

 

「あねさんあざっす!!おんにきります!!」

 

たどたどしい口つきでのあねさんは良くない事をミコトは学んだ。

 

 

 

「サクヤちゃん、取りあえず野次馬は落ち着いてきたわ。あと何かできるかしら?」

 

「だいじょうぶです。

さいくはりゅうりゅう しかけはじょうじょう あとは ははがくれば もうかんぺきです!」

 

そう言って、ベットによじ登る姿は2歳児、

しかしこの2歳児、先程までおやつを持って出かけていたのを忘れてはならない。

ミコトは感知タイプでは無いので、この小さな子供がどこで何をしていたのかはわからなかったが、面白い匂いがすることは感じ取っていた。

ミコトとサクヤの様子を静かに眺めていた犬塚ツメはサクヤに鋭く突っ込む。

 

「病室の廊下に幻術を仕掛ける方が楽じゃないかい?」

 

「うーん…それも かんがえたんですが…

ろうかにかけると、おいしゃさんとか、かんごしさんがこまるし

もしかしたら、なにかあったと、きづかれるかも しれないので しません。

みことさんが たいりょくてきに つらいなら そっちでもいいけど

やじうまっていっても、びょういんだし、そんなにこないので、ほけんです。」

 

たどたどしいながら難しい言葉を使って説明する姿は少しあべこべだ

話しを促す犬塚さんにサクヤは、またゆっくりと話し出す。

ミコトは気付いたらその声に耳を澄ませていた。

 

「できれば こんらんをさけたいので、ひとをえらんで げんじゅつをかけたいんです。

ひとつのめやすとしては、おいしゃさん、かんごしさん、しのびだと わかるひとは ぜったいに かけない。

げんじゅつを かけるひとは、こども、おとなのだんせい、おとなのじょせいの じゅんばんです。」

 

「どうして男性と女性で分けるんだい?」

 

「このびょうしつは、いわゆるメンドクサイのぜんぶつめこんだ へやわりです。」

 

「言うじゃないのさ…。」

 

「ミコトさんはしんせいじ、いぬづかさんは1さいじの こどもがいて、わたしは2さいじ。

このかんじ、どこからどうみてもおかしいへやわりです。」

 

「まあ、たしかに言い得て妙だね。」

 

「わたしはきょう、あのあと へやをみてまわったんですが、

どうやら このびょうしつから、わたりろうかのさきまで、

ひとがはいっていませんでした。

 

わたりろうかのさきは、また、ちがうびょうとうのようなので、

おいしゃさんや かんごふさんが とおることはあっても、

こどもや だんせいが ここをとおることは ないでしょう。

 

いりぐちは なかにわに、 びょうとうごとに ありますから

そっちから はいったほうが はやいです。

だから おみまいは わたしたちの へやまでです。

そして、ふつうのじょせいも あまりとおることはない。

 

けれど、ひとつけねんすべきことは、

にんぷさんが さんぽがてら あるいている ばあいです。

なので じょせいと だんせいを わけました。」

 

「忍を幻術に掛けちゃいけない理由は?」

 

「りゆうは3つあります

ひとつは、げんじゅつのそんざいにきづかれるから。

ふたつめは、げんじゅつにきづいたひとが、てきしゅうと かんちがいする かのうせい、があるから。

3つめは、てきしゅうと かんちがいされて さわがれると、せっかくみことさんにかけてもらった、ひとよけのげんじゅつが、いみをなさないからです。」

 

ミコトは、こんなにものを考えている子供を見たことが無かった。

話を聞いた時はそこまで考えておらず、子供の遊びに付き合う気分で、安請け合いしただけだった。

サクヤが子供に変化した忍びだったとしても、ミコトは何も驚かないだろう。

良く考えている

大人でも、ここまで賢く、優しく、柔軟な人は中々いない

 

 

 

 

次の日、退院手続きを終わらせたサクヤの母、サキは、病室で病衣から服を着替えるサクヤに厳しい目を向けていた。

 

「あんた、また何かやらかしてないでしょうね」

 

「げっばれた…?」

 

ボタンを留める手をギクリと止めたサクヤ。

母に火が付く

 

「バレるわよ!!通る人皆にあいさつされたんだけど!?何やったのよあんた!!」

 

「いや、なんもやってないよ!!ちょっとびょういんたんけんしただけだよ!!ぬれぎぬもいいところだよおかーさん!!」

 

「ほんとに…?」

 

「ほんとほんと。」

 

 

 

サクヤは本当に何もやっておらず、ただあの騒ぎの後すぐ、病院を探検しただけであり

途中、休憩とばかりに様々な病室に顔を出しては、『自己紹介』をして回っただけである。

サクヤの様子に、入院、見舞いに来ていた忍各位は気付いていたが、ここでおやつが活躍する

 

「ボウズ、さっきの騒ぎの主犯だろ?」

 

「…さっき なんかあったとは きいてます。」

 

「そう言う『体』か…」

 

「なんのことでしょう?」

 

「あーあー小腹がすいたなぁ

腹が膨れたら、あることない事言いふらすのになー」

 

「クッキーならありますが…いっこだけですよ…。」

 

「…俺は甘いもんは好かねぇんだ。

この話は無かった。ってー事に…」

 

「おっと こんな ところに ぼんちあげが…」

 

「まいどー」

 

「ああっ!!ぜんぶはなしです!!ぜんぶは!!」

 

なんてやり取りが奈良シカクとカーテン越しに交わされたりなんかもしていたが、サクヤは誰か気付いていなかった。

 

その日、様々な場所でサクヤは目撃され、ミコトの幻術により野次馬は事の真相を誰も知らないまま帰ることになり、さらには買収された忍各位により話を補強された噂は勝手に一人歩きをしだし

通る病室で真の目の紋に挨拶をかけられたサクヤの母は事の真相を知ることなく

サクヤは事の真相を母に知られることなく

同室の犬塚さんはプリン一個分得をし

ミコトは噂が違うものにすり替わるのを夫から聞き

サクヤの仕掛けを知った。

 

 

 

「ばいばいイタチ」

 

帰りがけ母親に背中を押されながら、ベットの横に置いてある籠に向かって静かに口にした名前を、ミコトはもらおうと思った。

彼女の様に賢く、優しく、柔らかな人になることを願って。

 

 

 

 

 

 

余談だが

イタチは長い間サクヤを男だと思っていたので、この少女がサクヤだったことをずいぶん後に知ることとなる。




イタチ過去編始まるよ☆(ゝ´ω`)ゲソッ
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