その後特にさしたるエピソードも無く、可もなく不可もなく2年ほど過ぎるのだが、その2年後が問題であった。
「えー本日メデタク班員になりました真の目サクヤ通称コマです。ヨロシクオネガイイタシマスー」
ふざけたような自己紹介から始まったこれは、サクヤ曰く
「あー多分監視。お前が蝙蝠してんのが気に食わないのと、私の事情も含め、面倒くさいの全部まとめたいんだろ。」
誰、とは言わなかったがそれが誰かは明白であった。
胃が痛くなるような現状にイタチは顔を青くした。
面の向こう側の顔色が分からないのはお互い様であったが、二人して青い顔をしているとは誰も思わないだろう。
「それは…俺に話していい事なんですか…?」
「さぁな。ただ、これは私の予測だから里の掟には引っかからねえな。」
そうして始まったツーマンセルは、イタチが隊長なのにもかかわらず、サクヤが任務を請け負ってくるという、里のうちはへの警戒度が大きい事を如実に現す結果となっていた。
「俺はいったい何のために隊長を任されたんでしょうね…」
「知らんがな…。
強いて言うなら体裁だが、私の知る所でないし、私の考えるべきことでもない。」
「コマさん、あんたはいったい何を知っているんですか…?」
「私は私の知っている事だけだ。」
幼いころ、夏の日差しを逃れるように木陰でコマと遊んだ記憶がよみがえるが
現状とは似ても似つかない。
イタチは苦無についた血を腕を振って払うとサクヤに手信号で援護の指示を出す。
どうやら下手人(自分達)に気付かれたらしく、外が騒がしくなってきた。
このまま屋根裏にでも忍び込んで、とんずらしたいが生憎現場は洞窟、この死体を隠す場所も無ければ隠れる場所もない。
そうもしてるうちに扉の前に死体の仲間が来たらしく扉をドンドンと叩かれる。
「おい!!返事をしろ!!敵襲だ!!」
サクヤの返事を待たずに、イタチはターゲットの仲間と思われる人の、息の根を止めようと一歩出したときそれは横を通った。
轟っとイタチの横を通りすぎたのは白い、稲妻のような炎であった。
イタチの視線の先は扉も壁も無く
そして、新たな死体も無かった。
白い炎はやはり温度が高いらしく、すれすれを通り過ぎたはずの右腕は、溶けたのかなんなのか、手甲がごっそり消えていた。
手甲だけでは飽き足らなかったのか、皮膚は真っ赤に染まり、火傷を起こしている
もし手甲が無かったらこんな傷では済まなかっただろう。
イタチは確実に右手を持ってかれていた。
あの光景がフラッシュバックする
混みあがってくる何かに、口元を覆おうと手を動かすが筋肉が強張り動かない。
信用するのは早計だったか…
サクヤの裏切りを警戒して、最悪幻術を掛けようと写輪眼で振り返ると
「あふい。かへん、はひはえは。」
コマの面が吹き飛んでいた。
調節がうまく行って無いのか、口から白い火を噴きながら言葉を発するので前髪が燃えている。
以前見た威力を考えると、今回は不発だったらしい。
白い炎は扱うのが難しいと聞いていたが、この人もまだ、失敗をするのか…
急な人間らしさに、イタチは幻術も掛けることもできず、思わず瞬いた。
「…いえ、…。
…死体も、今の炎で片付いたようなので…早急にここから立ち去りましょう。」
「あい。」
帰り際、白い炎をぽつぽつと吐きながら
「おほっへう?おほっへう?」
と聞いて来るのでイタチは笑いを耐えるのに必死だった。
3代目が自分に『根の暗部』では無く、『狛犬』を付けた理由が少しわかった気がした。