また来て三角   作:参号館

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あれから特に何と言う何がある訳でもなく、イタチの監視兼マンセルは続いた。

ただ、イタチの体感だが、サクヤとの間にあった『明確なる何か』は少しは消えていたようだった。

 

「あれ?イタチ君?」

「あー!!お前!!」

 

木の葉のスーパーで鉢合わせたのはサクヤと、九尾の人柱力のナルトであった。

イタチはサスケのアカデミーの帰り、母に頼まれた買い物をしに寄っただけである。

サクヤが3代目の手配により、ナルトの保護者替わりをしているとは聞いていたが、手をつないでスーパーに表れるほど仲がいいとは知らなかった。

 

ナルトはサスケに見覚えがあるのか、初っ端からケンカを売っているが、サスケに相手にされていなかった。

憤慨するナルト

そしてナルトの手を引っ張り止めるサクヤの、長くない堪忍袋の緒は切れ、拳骨は叩き込まれた。

サスケはその様子を煽るので、すぐさまイタチの拳骨も披露する事になる。

 

 

「いやーイタチ君とここで会うとは…」

「今日はキャベツが安いらしいです。」

「あ、やっぱり?」

 

2人はお互い、狙うは同じターゲットだと確認した。

協定が今ここに結ばれた。

 

腐っても現役の忍び、向かうところ敵なしと思いきや、戦いは惨劇の景を呈した。

二人が、サスケとナルトの分までキャベツを手に入れる事が出来たのは、正に奇跡と言って憚らないであろう。

 

「やっぱり主婦は強いな…」

 

「私もうちょっと修行増やそうかな…」

 

何の修行だ。

 

 

 

おひとり様一つまでのキャベツは、無事一人一つずつ買えたが、ナルトとサスケは競うようにキャベツの大きさを自慢し合うので、仲よく二つずつキャベツを持ってもらう事にした。

 

「おぉれってば、まだまだ平気だもんねー!!」

 

「ふっ汗が垂れてるぞ…。」

 

「こっこれは涙だってばよ!!」

 

「泣くほど重いのか…」

 

後ろからの冷静なツッコミにナルトはうっと詰まる。

味方の援護は期待できそうになかった。

 

「サスケ!!お前だって汗ダラダラだってばよ!!」

 

「こっこれは、あれだ!!…冷や汗だ!!。」

 

「いったい何の冷や汗だ…」

 

「うぐっ」

 

兄の呆れた視線はサスケに良く突き刺さった。

未だ5歳の身にはキャベツ2つは重いらしく二人は店から出て数十mでばててしまい、その荷物は地に着く前、イタチとサクヤに持っていかれた。

 

「ナルトくん、今日はロールキャベツだ。手伝ってくれるよな?」

 

「サスケ、母さんが家で待ってる。帰ろう。」

 

ナルトとサスケは元気よく返事を返す。

 

 

 

 

―――

――

 

 

うちはのクーデターが計画されてからというもの、うちは敷地内はよそ者に厳しくなっていた。特にうちはを里の端に追いやったと、千手の者に対しては喧嘩を売るほどであった。

 

うちはの若い衆が真の目の者にケンカを売っていると聞いたイタチはすぐに家を飛び出した。

真の目でうちは用があると言えばサクヤぐらいしか思付かなかった。

事が大きくなる前に、なんとか納めなければ、命が危うい。

イタチは息も切れ切れで現場に付く。

そこには予想通りの元気にメンチを切るサクヤと、サクヤの殺気にやられたのか固まっているうちはの若い衆

 

そして母、ミコトがいた。

 

「あら!!ねえあなた!!もしかしてあの時の真の目の子!」

 

「あ!!ミコトさん!!

シャッス!!

お変わりないようで!!

イタチ君にはお世話になってます!!」

 

何があった。

 

取りあえず問題にはならなかったようなので先回りして家で待ってる事にしたのだが中々帰って来ない…玄関先がうるさくなったので様子を見に行くと、サスケが道をふさいでいた。

 

「兄さんは今いない!!」

 

 

 

大きなたんこぶを見て、サクヤのサスケを見る目が『生意気』から『可哀相』になっていた。

 

「あー悪いな…今日はこれでお暇するよ。じゃあイタチ君、また任務でな。

ミコトさんもまた機会があったら団子でも食べながら話しましょう。」

 

そう言って、母の持っているはずだった荷物を玄関先に置いて去って行く。

一体二人がどういう関係なのか分からなかったイタチは、サクヤの口をこれから割ろうと考えていた為、まさか帰るとは思っておらず、一歩出遅れる。

サスケは、サクヤが母の荷物持ちをしていてくれたことに、やっと気づき声を上げる。

 

「べっべつに、追い出そうとしたわけじゃない!!

違う時に来たら…飯でも食べて行けよ…!!」

 

「ふふふ、もう外にいるわよ?」

「あっこら!!勝手に帰るな!!じゃあなー!!」

 

イタチはサスケが玄関から飛び出すのを追い、左手を上げて頭をぺこりと下げるサクヤを見つめるしかできなかった。

 

 

 

 

 

「母さん!!何でサクヤと知り合いだって教えてくれなかったんだ!!」

 

「そんなの私だって、サクヤちゃんと貴方が知り合いだったなんて知らなかったわよ。」

 

その日のキッチンは、珍しくイタチがうるさかった。

珍しいイタチの様子にサスケが目を白黒させている。

サクヤが去った後、性急に母とサクヤの関係を聞かれたので『イタチ』の名前を付けた女の子だと説明したのである。

 

「それにしたって!!

ああ!!もっと早く知りたかった!!もうちょっと特徴覚えといてくれてもいいだろ!?」

 

「イタチ、貴方いい加減にしなさい。

過去を悔やんだって仕方ないでしょ!!」

 

家族の前では滅多に感情や表情を崩さないイタチが、こうまで崩すのは珍しかった。

特にサスケが生まれてきてからは顕著であった。

冷静を装っているが、フガクは読んでいる新聞の内容が頭に入って無かったし、そもそも、その文字は上下逆さまであった。

 

「それにしたって、何がそんなに悔しいのよ…」

 

ミコトの言い分はもっともで、イタチ以外の3人は何故ここまでイタチがサクヤに執着するのか全く分かっていなかった。

火影の狛犬がイタチと任務に当たっているとは聞いていたが、特に何かあったとは聞いてない。

家まで来たのも、今回が初めてだったし、街中で暇な時間を潰す姿はちらほらと見たが、そこまで会話が続くような二人ではなさそうであった。

 

「それは…」

 

「兄さんは、あいつが好きなの?」

 

サスケの疑問はストレートであった。

素直で率直で曇りが無く、それに応えるのにはとても勇気が必要であった。

苦い顔をして黙り込む兄に、質問しては良くない事だったかと、サスケはなかった事にしたかったが、それは両親も気になる所であった為、自ずと視線はイタチに集まる。

 

「…何でもない。」

 

中腰で母に文句を言っていた勢いは消え、すとんと正座に戻るイタチは、貝のように口を閉ざす。

大拗ねモード(大いに拗ねてるモード)に入ったイタチに、両親は視線を合わせ、これは聞きだすのは無理だな、と悟った。

 

 


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