また来て三角   作:参号館

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最初に話し出だした(腑を見せた)のはサクヤで、

サクヤの腑は『真の目作間』の持っていた目であった。

 

「『作間の目』の話になるんだが

いや、実際には叔父の目だから隙間の目なんだけど、父さんが封印したあと、あの人死んじゃったから誰も封印が解けてなくって、実を言うと目を移植した事は無いんだ

目の封印が中々解ける代物じゃなくってな、現在持ち主である叔父の目を盗んで、色々やっているんだが未だ研究段階で…」

 

朗々と語るサクヤの話に、イタチは

 

「まて、いったい何の話だ。」

 

待ったをかけた。

 

「……そうか。

そう言えばお前、知らないのか!!」

 

サクヤは何を驚いているのか目を瞬かせるが、イタチはサクヤの言うところの始まりの前、『作間の目』という根本的な所から知らなかった。

 

「まず、『作間の目』ってなんだ。

作間って言うのは…コマさんの父親で合っているんだよな?」

 

イタチが分からないと話している横でサクヤは

「そーかそーか、知らないのかー…そうだよな…知るわけないよな…」

とかなんとか言ってごそごそと背後の紙の山を漁っている。

 

「おい、話を聞け。」

 

どすの利いた声にサクヤは『今、後ろを振り向いたら確実に写輪眼にやられる』と身を固めた。

 

「ままままあ、おおおちつけけよ。」

 

サクヤの分かりやすい動揺に、イタチはため息を吐くと写輪眼を収める。

サクヤはチャクラの荒立ちが収まって行くのを感じ、安堵に力の入っていた肩を落とした。

と、探していたものを発見したのかサクヤが何か大きな布を広げる。

 

 

 

「これは…タペストリー…ですか?」

 

「さぁ?

棟梁に『家系図書きたいんだけど結構でかい紙無い?』って聞いたら、障子紙貰って

やまちゃんに『使いかけでいいから、なんかペンキない?』って聞いたら

『お前の字汚すぎて読めねェから俺が書いてやるよ』ってなって、草案書いて任せたら

何を聞きつけたか真の目の連中がワラワラ集まってきて

『はい』って渡された時には、もうこうなってた。」

 

その布は緑鮮やかで、真ん中には今にも飛び出さんとする白い狐がいた。

狐の面(おもて)には真の目の者の名前がまるで毛並みの様に字体を変えてずらりと並ぶ。

一見しただけで相当な物であると分かる代物だった。

イタチは、その末尾にサクヤの名前を見つける。

 

「監督って言うものは一番最後に名前を持ってくるものなんだと。」

 

イタチの視線を追ってか、サクヤは胡坐に肘をつくと、反対の手で尻尾の先、少し赤が入った灰色で書きこまれた文字を撫でた

真ん中に織り込まれた白い狐の後ろ、竹林の背景に濃い霧が、緑の線を消しては現して

良く見れば節と節の間、一つ一つに名前が刺繍されている

その文字を追っていくと、里の主要一族全ての名前がその竹に書きこまれていた。

 

「あ、あった。ここ、ここ。」

 

そう言ってサクヤが指差したところは『うちは』の竹と、『千手』の竹の間に新たな節が始まっていた。

そこには『狭間、隙間、作間』の名前が連なる。

更にたどると両側の竹には『ニヒト』『扉間』。

 

「話はココから始まる。

うちはニヒトと、千手扉間が結婚した後に生まれたのが第一子狭間、第二子隙間、そして第三子作間。

千手とうちはが結婚するまでも色々あるんだが今は省くな。

このころはまだ、小さい戦争があちらこちらであって、二人は晩婚に次ぎ、子供も生まれるのが遅かったんだ。

長男狭間と、五年挟んで次男隙間、あいだ3年あって三男作間。

作間が生まれるころには第1次忍界大戦がはじまっていた。

 

しかし、作間を生んでそう間をおかず産後の経過が悪かったのか母体であるニヒトは死んでしまう。

それで何を思ったか二男である隙間が5歳にして写輪眼を開眼してな。

更に戦中万華鏡写輪眼を開眼して、調子に乗って敵陣に突っ込んだら死んだ。

そうして隙間の写輪眼は兄である狭間に受け継がれる。

 

しかしその狭間も戦で亡くなる。本人から受け取ったのは父『扉間』、そしてあの雷の国でのクーデター、金銀兄弟の襲撃にて扉間も亡くなり、

目は最後の、『扉間』と『ニヒト』の血を継ぐ作間に渡されることになった。

その眼が紆余曲折あり、真の目のこの家で継がれている。

 

私の父はすでに亡くなっている。

第3次忍界大戦中、任務にて死亡したと里からは聞いた。

父は二代目が残した写輪眼を封印する研究をしていて

現状、目は封印されている状態だ。

この話をされたのは私が7歳の時、九尾襲撃で母が亡くなった時だ。

父の遺言では私に渡すことを頼んでいたらしいんだけど、サザミとしては私が一人前になるまで、又はサザミが死ぬまで契約を継がせることはしたくなかったらしい。

でも、この目を渡せる人間が私しか残ってないから話したんだと私は思っている。

でなければこんな何のとりえもない子供に契約は継がせない。」

 

知らない話だった。

おいそれとは知ってはいけない話でもあったのだろう。

父に聞いても、シスイに聞いても答えられない、サクヤの話しだ

何時だってサクヤはイタチに問いかけては、答えをイタチの中から引き出す話をする。

でも今は、鮮やかな布に鈍く影を落とすだけで、口を挟もうにも、挟めない。

白い狐に落ちる影はイタチの心を表しているかのように濁って見えた。

 

 

「け……い…やく…」

 

 

やっとの思いで出た言葉は、言語にはならず、途切れた単語だけだった。

イタチの様子に一瞥もくれないサクヤは言葉を繰り返す。

 

「契約。

ピンポンとの契約により、この目を受け取るものは、死亡と同時に塵も無く燃え尽きる事になっている

現在、作間の目の所有者である叔父、サザミの体が燃え尽きれば次は私だ。

あの目を狙うものは多い。

敵国、敵里、そして仲間からも…」

 

『仲間』そう言ってイタチにやっと目を向けるサクヤ、しかしそれはすぐそらされた。

 

「事実、分かっているだけで、伝説の三忍『大蛇丸』、根の『ダンゾウ』による襲撃はうけている。

お前も知っているだろう?伝書鳩が仲間を皆殺しにした話を。外向けには任務の伝達不具合により全滅だったが、あれは私とサザミを狙って襲撃して、返り討ちにあっただけにすぎん。

サザミはその時の怪我で忍びを引退した。

 

手負い一人にしがない中忍、今なら奪おうと思えばいつでも奪えられる。

ある意味、未だクーデターを目論む『うちはの者』に襲撃されてない事は奇跡だ。」

 

この人は、うちはの現状まで視野に入れていた。

写輪眼と聞いてうちはが黙っているはずない。

里の上層部も黙って見ているはずがない。

 

「でも、あいつらは『目』自体の場所を知らない。

父さんが封印したことは知っていても、どこに封印したのかは知らない。

サザミが情報を握っているのは確かだが、忍びでない今、無理に口を割らせることもできない。

しがない中忍が、親の七光りが、そんな情報を持っているはずがない。」

 

それを、黙って見ていられるようにこの人達は調整してきたんだ

無力だと嘯き、道化だと笑い、隙に付け入って扉間兄弟の形見を残してきた。

 

「サクヤさんは…未だ、目を…受け継いではいないんですよね、

その、もし…サクヤさんが継いだ場合は、眼をどうするつもりで…?」

 

「どうもしない。

私の父もどうもしなかった。そして叔父のサザミも。二人はただ、次へ続く命の為に残してくれただけであり、私、延いては真の目、里の為にそうした。

これはあるだけで抑止力が働くものだ、行使するべき力では無い。最終的には朽ち果てればいいと思っている。」

 

「さ、くやさんは…なんで俺にその話を…したんですか?

もしかしたら、俺は、うちはに、里に言われて、サクヤさんの優しさに付け込んで、情報を聞き出しているだけかもしれないんですよ?」

 

「そうなるなら、とっくにそうなっていた。私は、イタチ君の持つ情報と等価のモノを提示しただけにすぎん。」

 

 

仕方ないと言うように笑ったサクヤをイタチは何度も見てきた。

幼いころの共にいたいと言うイタチの我儘に、暗部でのイタチの覚悟に、そして

こんな時にも、この人はこの顔をするのだ。

そして、それに眉を寄せるイタチの額を付いて

 

「等価交換だ。」

 

 

あの言葉を口に出す。

 


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