また来て三角   作:参号館

89 / 135
86

ダンゾウはサクヤ里抜けの知らせを受け、真っ先に最近怪しい動きをしていた真の目の棟梁に話を聞きだし、金の流れから言ってもここら辺が妥当だろうと

木の葉の里の外、新しく建てられた建造物(蔵)にあたりを付ける

 

しかし、追手を向かわせたが、それはことごとく退けられた。

 

「ダンゾウ様、あの蔵はどうやら結界と封印はもちろん、その隙間を縫ってトラップが足の踏み場もなく張られているので足では到底入れません。

空からの侵入も試みましたが、どうやらあそこ一体に幻術がかかっているらしく、気付いたら蔵の位置と思われる場所を通り過ぎてしまい、近くでは侵入はもちろん視認も難しいかと。」

 

部下の『どうしようもないんですけど』という視線にダンゾウは封印と結界に詳しいはずの子飼いの人材が、こうも根を上げる事態に、内心舌打ちをこぼす。

流石腐っても2代目の孫であるとでも言うのか

写輪眼を巡っての、狸と狐の化かし合いで、力量を測ってはいたが、まだ力を隠していそうである。

第一幻術が得意などと言う情報はこちらに来ていない。

作間の写輪眼の恩恵かと思ったが、あの封印…どうせ戦闘に使える代物ではないだろう。

とダンゾウはあたりを付ける。

サクヤは、禁術開発ばかりで戦ではてんで役に立たなかった父親と似ている。

今、その戦闘に使えない代物に悩まされている身としては笑えもしないが

 

しかしこれだけ警戒された包囲網は

2代目の忘れ形見、作間一党が持っていたものに価値があると言う事。

 

「よい、おのが行こう。」

 

サスケ抹殺の件で、あれだけ煽られた上での敵前逃亡にダンゾウはイラついていた。

幻術には写輪眼。

昔からそう決まっている。

さっさとこのややこしい問題を終わらせたかったダンゾウは、人気のない里外からか、口寄せのバクを召喚、風により、空から蔵に向かって飛び。

以前より実験を繰り返していた柱間細胞にて活性化された写輪眼を発動させる。

 

 

が、しかし

 

それと同時に蔵が爆発炎上

突然の爆風にあおられたダンゾウは、体勢が崩れ落下、その黒煙の立つ火の海に沈んだ。

 

 

 

 

 

 

「やったか?」

 

スコープを覗いて確認する声

迷彩のマントに包まる姿は森に溶け込む

木々の間からのぞくその顔には丁寧にも木の虚と似たようなものがペイントされており視認性はとても悪い。

側には白い狐が3匹控えているがその姿は半透明で、後ろ足が無く、あるはずの場所からはチーズの様に長く伸びた線が迷彩マントの内側から伸びていた。

 

「あかん、まだ気配のこっとる…これ風遁で飛んだんちゃう?」

 

「ガハハ、やはり一筋縄ではいかねーナ。」

 

「あ、あの、今分体が消えて、その、ダンゾウ様の生存を確認しました。」

 

「了解。これで無理となると、あとはサスケとかそこら辺から横取りするっきゃねえな。」

 

いくつかぼそぼそと話すその影は、跡もなく一瞬で消えた。

 

 

 

 

―――

――

 

洞窟にその声は良く響いた。

ふざけたようなオレンジ色の『面の男』から発せられる声は落ち着き、乱れ無く淡々と語る。そのギャップがサスケをとてもイラつかせていた

 

「なぜなら、お前は、生きている!!」

 

池底に沈む藻をひっくり返すような言葉に、サスケの心は濁っていた

何を信じたら、どれが本当か

 

「お前の目は

イタチの事を何一つ見抜けていなっかった。

イタチの作りだした幻術(まぼろし)を、何一つ見抜けなかった。

 

イタチは

友を殺し…上司を殺し、恋人を殺し、父を殺し、母を殺した…。

だが殺せなかった…弟だけは。

血の涙を流しながら、感情の一切を殺して、里の為に同胞を殺しまくった男が…

どうしてもお前を殺せなかった。

その意味がお前に分かるか?」

 

サスケを縛る縄をクナイで切った仮面の男は、サスケを静かに見つめ、問いかける

 

「あいつにとって、お前の命は、

里よりも重かったのだ。」

 

最初に在った抵抗心は消えていた

 

「あいつは死ぬ間際まで

いや、死んでも尚お前の為に…

お前に新しい力を授けるために

お前に倒されることで

うちはの仇を討った

木の葉の英雄にお前を仕立てあげるために

病に蝕まれ、己に近付く死期を感じながら…薬で無理に延命してでも…最愛の弟の為に…お前と戦い

 

お前の前で死なねばならなかった。」

 

 

 

 

『イタチの全て』を聞き終えたサスケに感じられることは何もなかった。

未だ、何も。

 

「一つ、聞きたい。」

 

「…答えうるものなら答えよう。」

 

「あいつ…『真の目サクヤ』はこのことに関係しているのか?」

 

飛んで出てきた名前に『面の男』自称マダラは感心していた。

確かにあの真の目の小娘の話には手を付けていなかった。

マダラとしては、サスケの憎しみを、里にすべてをぶつけてもらうために、その方向を分散させてしまう真の目の話はあまりしたくなかったからだ。

精々イタチの金魚のフン程度の実力にサスケが注目するとは…

 

「ああ、まあ関係はしているな。」

 

その肯定の言葉に、サスケは一つも驚かなかった、おおよその見解はついたのだろう。

それがマダラの提唱する言葉の信憑性を上げる

 

「イタチは、全て一人で計画したわけではない。

元々の計画では、里との間に真の目を入れて、うちはの待遇を見直してもらう事にしていた。

そこで白羽の矢が立ったのがサクヤだ。

腐っても2代目の孫、3代目の狛犬だからな…顔も効く方だし、あいつの叔父は口も上手い。真の目を使うとなるとさらに棟梁も手を貸すだろう、そうなれば確実に里に意見は通る。

もし通らずとも、サクヤの、その立場は多少の事では揺るがないし丁度良い。

あの一族はどこにでもいるし、誰にでも手を貸す。

しかし、シスイが目を奪われ、死んだことでその計画もおじゃんになった。

シスイが穏健派だったおかげで、穏健派までもがクーデターに乗り出したんだ。

あとはお前に話した通りだ。」

 

「サクヤは、イタチの情報をどこまで知っていたんだ…」

 

サスケが

 

「当時のサクヤはイタチの行動範囲の監視が任務だった。

ダンゾウ達ご意見番各位から推薦、火影から承認され、その位置についたらしい。

あの立ち位置から言って、イタチの真実を知っているのは確実だ。

丁度家族ぐるみで仲よくしてたそうだしな…

あいつが『うちは』に出入りして、疑問に思われない口実を作るのに一役買ったろう」

 

サスケがサクヤをイタチの恋人だと思っていたのさえブラフだったのであろうか

洞窟の壁に、ろうそくの揺らぎに合わせて影が映し出され

オレンジ色の仮面の向こうから、サスケに視線が降り注ぐ。

その眼は黒い。

これは幻術では無い。幻聴でもない。

 

 

「真の目は管狐と口寄せ契約をしている。

竹藪があるところに真の目ありと言われるように、管狐と直に契約するおかげで、腰に竹筒を下げるだけでチャクラも必要なく管狐を呼べる。管狐の分体は多重影分身と大体システムは同じだ。

あまりむやみに管狐を消すなよ?

そいつが消えれば本体に情報が行くようになっている。

それに宿主のチャクラを喰らい生きて行く管狐は、宿主のチャクラに染まって行く、長い間共にいた管狐の分体は見つけるのは至難だ。

お前も覚えがあるだろう。

常にまとわりつく影に。」

 

確かに、サスケは写輪眼が三つ巴になってから自分に妙な気配が纏わり付いているのが分かっていた

それは大蛇丸に会った時一回消えて、その後いつの間にか付きまとっていた。

大蛇丸を倒した後うっとおしく、散り散りにしてやったが

今見ると、また自分に付きまとっている…

 

「俺たち写輪眼や、白眼でも、手練れでなければすぐに気付く事は出来ない。気付いた頃には根こそぎ情報を取られた後だったなんて事もある。今消せば本体に情報が行ってしまう。くれぐれも取扱いに気を付けろ。」

 

サスケにはある記憶があった

大蛇丸を倒してしばらく、重吾のいるアジトに向かう途中、声をかけられて人違いだと返した

あの時は害にも得にもならないと思い、ごまかされてくれたのを良い事にほおっておいたが、この気配はその時付けられたのだろう。

鬱陶しい。そして忌々しい。

誰の命(めい)だか知らないが、自分に監視が付いていることは良くあることだった。里にいても、里を出ても監視されていたとは…

思えばサクヤを紹介された時も火影の命で、自分の他にナルトの面倒を見ていると言っていた。

()()()にもどうせついているのだろう…

妙な確信があった

 

 

「イタチが里を出てからも、イタチの近くには常に管狐の気配があった。

もっとも、イタチは管狐の気配を大して警戒はしていなかったがな。

大体、あの中途半端な忍びに、イタチは倒せなかっただろう。

イタチの影には常に真の目があり、イタチは里を抜けてからも不定期だが木の葉の情報を得るため、サクヤを通してやり取りをしていた。

取引の内容は“暁”の情報と、お前の情報の交換だ。」

 

 

何を聞いてもマダラの言葉の信憑性が増すだけだった。

信じていたもの(現実)が全てひっくり返ったサスケは

この男の言葉だけが、本当に見えて

今までの、どれもこれもが嘘に見えて仕方がない。

 

しかし、一つだけサスケは引っかかっていた。

だが、それを口にするほど愚かでもない

サスケは黙ってそれを受け入れた。

 

聞くは本人だ。

あの嘘吐きの兄と似て、煙に巻くのが得意な世話係の顔を思い出す。

返答によっては殺すこともいとわない。

 

 

 

 

 

「我らは蛇を脱した。

これより我ら小隊は名を『鷹』と改め行動する。」

 

海原に煽られ鷹が空高く舞う

だがサスケには何も見えなかった。

きつく結んだ瞼が、サスケの視界を覆っている

 

「鷹の目的は只一つ、我々は…」

 

暁の空にサスケは誓う。

 

「木の葉を潰す。」

 

 

 

 

 

 

 

イタチは確かに、話しかけたのだ

チャクラが切れ弱った自分から出た、大蛇丸を封印した後

イタチの目に宿る管狐(チャクラ)に向かって『後は頼んだ』と

 

サクヤは確かに、言ったのだ

サクヤの背後に広がるうちはの家紋を白い炎であぶる中

イタチに

いや、サスケに向かって『真実は一つではない。』と

 

マダラの言葉が『真実』なら、事情は変わってくる

この違和感が払拭されることはないだろう。

 

イタチの瞼を閉じたサクヤは一つの答え(真実)だった。

 

おぼろげな視界、揺らいだ白い炎の中に、サクヤはいた。

炎があいつの髪を照らして、揺らしていた。

 

やはりあいつは害にも得にもならん。何色にもなれはしない奴だった。

だから白い炎何て微妙な色なのだ

 

フッとサスケが笑った。

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。