『サクヤの忍辞職』は混乱を避けるため上層部によって、秘匿とされた。
何故なら、三忍の一人である自来也が、雨隠れにて死亡した情報が木の葉に舞い込んできたからだ。
サクヤは、3代続いて同じ顔のおかげで顔が広い。
よってサクヤが行方不明となると取り込もうとする輩、口止めしようとする輩どちらもも多くなるだろう。
『木の葉の忍』に属していたおかげで歯止めがかかっていたそれは、当の本人が辞したおかげで、そこから小さな小競り合い、戦争になってもおかしくはない状態となっていた。
自来也が死亡した現在、これ以上火の国大名、里の者を混乱に陥れるわけにはいかず、サクヤの忍辞職の情報は、あの日火影室に集まった上忍、特上、中忍の内に秘められることとなった。
サクヤを使って2代目の名をそこかしこで使ってきた上層部は、結構な痛手であった。
一応、サクヤは今のところ任務に出ていると言う事で処理されているが、時期が来れば火影の名のもと、里に公開されることとなっている。
それが上層部と、火影の間で決めた約束だった。
「それで、本当にサクヤを逆口寄せする事が出来ないんですか?」
「ああ、ワシらもサクヤちゃんの里抜けを聞いてまず最初に試したんだがの…契約の名前自体がそこから消えておった。」
火影室にはカエルが4匹と、火影とその付き人がいる。
綱手は、自来也からサクヤを蝦蟇の里に招待した旨を聞いていたので、会う機会があれば蝦蟇の里に逆口寄せをしてもらうよう頼むつもりであった。
それがまさか自来也の訃報と重なるとは思わなかったが…
たとえ里の忍びを辞したとしても、サクヤは里の者であることには変わりが無かったし、サクヤに詰め込まれた、あれや、これや、それの、処分を決めなければならなかった。
しかし、やはりと言うべきか、サクヤはその対策はちゃんとしていたようで妙木山の二大仙蝦蟇の力を持ってしても呼び出せなかった。
契約の名前が消えることはまずない。契約の名前が消えるなんて事に成ればその契約自身無効となってしまい、信頼も何もないからだ。
口寄せ契約と言うのは、口約束から始まり、管狐の様に家に付くものもあれば、契約書を書いて呼び出したりと様々物があるが、基本血文字、拇印、それにチャクラまでつけるのが普通で、正式に契約を解きたいなら、破棄するのが常識である。
よってその文字が消えることはないはずで、死んでもその名前は残るはずなのだが、何故かサクヤの名はその巻物から消えていた。
「自来也ちゃんのごたごたの後だったで、そこまでまだ詳しくは調べてなかったけんの…帰ったらもう一度調べなおしてみるけ。」
「ええ、そうしていただけると助かります。」
フサカクの真摯な対応に5代目火影は憂い顔である。
なにせ、あの自来也が死んだのである。受け答えが上の空でもおかしくはない。
これから、どういう方針を木の葉が取って行くのかはわからないが、フサカクは少しでも下向きの心が回復すればと声をかける。
「まあ、あの作間ちゃんの倅で、サクヤちゃんだからのう…いずれ何か忘れ物でもしたと、帰ってくるだろう。
その時、たっぷり旅の話でも聞きだしたらええんじゃないか?」
「ええ、そうですね…
あのサクヤですからね…とんでもないお土産話に腰を抜かさないよう、今から警戒しておきます。」
綱手はフサカクの優しさに、シシッと笑って答えた。
―――
――
「ドウダ?」
「上手くいった…」
「ソレハ良カッタナ」
池のほとりで、会話をするオレンジの仮面の男と、形容しがたい恰好をした男(ナルト曰く『トゲトゲアロエヤロー』)は目立っていた。
しかし、その場を見ている人はおらず、ただ鯉だけが池を彷徨っている。
「イタチも死んだ――目の上の瘤はもういない
“木の葉に手を出さない”という条件もこれで白紙だ」
正確には、まだイタチと取引していたと思われるサクヤが残っていたが、サスケに手を出しても、何もしてこない所から見ると、イタチが死んでから後の事は取引に含まれ無いようであった。
「ずいぶん待ったね…」
「計画通りに進めるためだ…これでいい
イタチはやはりサスケに保険をかけていた“天照”だ。」
「イタチのヤツ、自分の真相を知られているとは思ってなかったんだろ…
何でそこまで…?」
「真相うんぬんは抜きにしても、オレがサスケを仲間に引き入れることも危惧していたんだろう」
天照による傷はもう癒えていたが、サスケに近づく度に『ああ』であっては困る。
イタチは何を警戒していたのか、サスケの眼は天照の自動連射機となっていた。
最後っ屁どころではない。
面をしていても発動するようで、他人の写輪眼に反応しているのか、マダラの写輪眼に反応しているのかはわからないが
うかつにサスケの前で目を発動すると天照が勝手に発動し、その度にサスケが無いチャクラを消耗するし、仮称マダラも柱間細胞で復活するが大きくチャクラを消耗するので、写輪眼を仕舞わざる終えなかった。
「じゃあ、あの真の目の人も、何かしてくるんじゃないの?」
「そう思ったが、どうやら違うらしい。サスケに近づいても管狐の気配は動かなかった。
それに真の目サクヤは木の葉の忍びを辞して、今行方不明だ。」
「え…それってやばくない?真の目の人今フリーって事じゃん。オビトが仕掛けなくても木の葉の機密情報巡って戦争起こっちゃうんじゃないの?」
「…金魚のフンであれ何であれ、あのイタチの影にいた奴だ、逃げ足だけは早い。
おそらく、やろうとしない限り、それは起こらん。
だが、警戒するに越したことは無い。どこにいるか位は掴んでおけ。」
はーいと緩く返事をする声と共に低くしゃがれた声が聞こえる。
「シカシ…ココマデ来ルノニ、コレホド“暁”ノ、メンバーガ、ヤラレルトハナ」
「どこかしらに問題はあったが、皆己の意思で“暁”に貢献してくれた。
デイダラ
サソリ
飛段
角都…
彼ら無くしてここまでの進展は無かった。
そのおかげでオレのシナリオ通りに事は進んでいる。」
仮面の下で発動させた写輪眼が、赤く鈍く瞬く。
サスケの前では写輪眼を発動できない故、久しぶりに見たその視界は、鮮やかであった。
「何より、サスケを手なずけた。」
―――
――
火影室に用があったシカマルは、5代目に体良く暗号班までの使いっパシリにされていた。
本来、こういう暗号系はサクヤの聞くのが一番手っ取り早いのだが、そのサクヤは里外に任務に出ていて当分は帰って来ないと言う。
確かに、最近サクヤを里内で見ることは無くなっていた。忙しいのだろう。
「だからって俺に持ってくるこたねぇだろ…もっとこう…誰かいるはずだろ…」
シカマルは、自分で言っていて、その『誰か』にサクヤの名前しか浮かんでこなかった。
しかしその場にいるサクラもそうであったらしく、『誰か』は二人の間でサクヤに確定していた。
「サクヤさんが居ないんだから、地道に聞くしかないじゃない。
それにこれはナルト、延いては里の危機に関する事よ?もうちょっとまじめに取り組みなさいよ…」
暗号と言ったら、まずサクヤにヒントを貰うのが、中忍の間では常識であった。
サクヤの暗号、封印、結界への理解は深い。たとえ分からずとも、サクヤには人脈がある。
暗号班の誰に聞けばいいとか、それだったらイビキさんの方が詳しいなど、振り分けが上手いのだ。
相手もサクヤの名前を出すとあからさまに態度を変える…なんて事は無かったが、初対面でも変な勘繰りが無く、受け答えがスムーズになる。
何処から拾ってくるのか分からない情報で、サクヤは木の葉の全体の人物をなんとなくではあったが把握しているようだった。
今考えると、この里はサクヤの情報察知能力によって物事が滞りなく進むことが多い。
ホント何処から拾ってくるのか…大方サクヤの腰にある竹筒に住まう狐なのは分かっていたが、その真相は明かされてはいなかった。
「あー…あの人早く帰って来ねーかな…」
「なに?あんた、まだ言うの?
もしかしてシカマル、サクヤさんの事好きなの?」
サクラの煽りの入ったその話に、シカマルは乗るわけにいかなかった。
あの人はそう言う人では無い。
ずぼらで、変人で、親父にさえ時々勝ってしまう頭脳を持つあの人は、シカマルのライバルで、一つの目標である。
「俺はあの人の事を、何時か、越えなきゃならんと思ってる。
…まだライバルに成れてるかも分からねえけどな。」
いつもの様に、めんどくせーとマイナスな言葉が帰って来るかと思っていたサクラは、ちゃんとした答えに面食らう。
「まあ取りあえず、暗号班に行ってヒント貰ってくるわ。」