昔々
六道仙人も死んで、まだ間もない頃
と言っても命の尽きが無い尾獣感覚での、間もない時間になるので、人間感覚的には途轍もなく時間が経った頃
九尾と言う9本の尾を持つ狐がおりました。
九尾は『パワーこそ力、尾獣は尾の数だけ強い』と思っていたので、同じ尾獣の仲間である、一尾をとても馬鹿にしてました。
ある日、九尾があまりにも馬鹿にするので、ついに一尾がキレ
どちらが強いか、取っ組み合いで勝負をすることにしました。
2匹が喧嘩をする事を聞き、他の尾獣は焦ります。
六道仙人に皆仲良くするよう言われていたからです。
こんな事をしたら空にいる六道仙人が黙ってない。今すぐやめるように二匹を説得しますが、二匹は聞く耳を持ちませんでした。
そうして
三日三晩が経ち、天から落っこちてきた落雷によって、引き分けに終わりました。
その時の落雷で、九尾の毛が一部灰になり、近くの竹やぶに潜んでいた死に掛けの子狐に降りかかり、それは白狐と呼ばれる妖怪になります。
最初はとても小さかった白狐は、竹藪に潜み、そこに隠れる小動物を食べて、生きていました。
小山程の大きさになった頃、白狐は、ある子供に会います。
その子供はとても
おいしそうでした。
美味しそうな匂いに、柔かそうな肉、軟骨はコリコリとおいしそうで、骨の髄まですすれそうでした。
しかし、一番おいしそうなのは、その魂でした。
面白い事に、この齢10もいかなそうな子供が、100年生きたような熟成した魂を持っている。
その魂は器と比べてあべこべで、其れがまた美味しそうな香りを引き立て
多少妙でも構わない、今すぐこいつを喰ろうてやりたい。そう、思わせます。
駄菓子菓子待て、
この生き物はいわば幼体、基本生き物は大きく成長する。
成長したら肉が増える。更に、魂ももっと熟成される…
そう考えた白狐は少年と共に、旅に出ることを決意します。
旅をして幾星霜
少年は様々な場所を巡っては、誰かを探しているようでした。
「のう、おんしは、誰を探しとるんや?」
あくる日、思い切って聞いてみた白狐ですがその答えは、要領を経ない答えでした。
「…俺は、仲間を探してるんだ。」
その仲間は誰でもいいわけではないようで、人間と話をしては、違ったと肩を落とす姿が続きます。
まだ少年を食べるには幼く、体積もそんなに増えていないので、白狐はその少年の探し人を暇つぶしに手伝う事にします。
「人手は増やすべきや。一人で探したってしゃあない。人海戦術は人間の十八番やろ?」
白狐の助言にそれもそうか、と納得した少年は仲間を増やします。
増やして、増えた仲間はまた仲間を呼び、何時しか『真の目』と呼ばれるようになります。
時も経ち、成長した少年は真の目の当主になっていました。
しかし、真の目を作ったものの、探し人には会えていませんでした。
もしかしたら、自分が生きている内に会えないのかもしれない。そう思った真の目当主は、妖怪であり、寿命が存在しない白狐に頼みごとをします。
自分の魂と体をあげるから、探し人を見つけてくれないか?
白狐はその話に飛びつきます。
何故なら、当初食べる予定だった少年は大きくなるにつれて、その命は洗練されて行き、白狐では到底かなわない相手になっていたからです。
真の目当主は自分の命を使って白狐と約束をします。
遙か先の未来、白狐を訪ねてきた者に名前を聞き、当主の真名と同じ姓を名乗った者に、本当を伝えよと。
しかし、白狐はその人生の中で一瞬だった日々に、常に付きまとう探し人が好きではありませんでした。
なので、同じ姓を名乗った者には、嘘を教えよう。
そう、考えたのですが、
その時が来て、白狐は大きなシッペ返しを喰らいます。
当主の真名が嘘だったのです。
魂を喰らうにはやらないといけない事が1つあります。
真名を知る事です。
真名を知って、食べることでその魂は白狐に食べられるのです。
もし真名が嘘となれば、ただ、その者のチャクラが残るだけ
それでは只、動物を喰らうのと変わりありません。
当主の魂はもう、輪廻の歯車に戻ってしまっていたのです。
偽名と知った白狐は、当主を恨みます。
自分は約束を果たしたと言うのに、あいつは嘘を吐いたと。
しかし、それと同時に、とても悲しく思いました。
当主にとって、自分は特別だと思っていたからです。
白狐は、当主を食べたいとは思ってはいましたが、嫌いなわけではありませんでした。
長い旅路の中で白狐は、当主を助け、助けられ、共に道を歩み、家族の様に大切に思うようになっていました。
寧ろ好きだからこそ、当主の魂とずっと共にいれる、食べると言う方法を望んでいて
だから真名で縛り、魂を喰らう大義名分が出来ることが嬉しかったのです。
それ程、信頼されていると思ったのです。
しかし、その真名が嘘となればその信頼は崩壊します。
白狐はただ、いたずらに、当主を喰らっただけだった。
信じていた魂も名も無く、あとにはその事実が残るだけでした。
狐から語られる真実は、多くは無かったが、短くもなかった。
殆どが前回のままの話だったのは確かで、サクヤの知らない、話されなかった事実もあった。
あの下手な説明はどこへやら、朗々と語られる物語に何時しかサクヤは引き込まれ
サクヤは頷きと、視線以外のコンタクトを取れず話は終わった。
初め在った狐への疑心は薄れていた。
腰に据えていた管狐がいつの間にか外に出てサクヤの後ろで『わかるわ~』『いい話でした…』『…ズズッ。』など言っていたがサクヤには気にはならなかった。
其れよりも大事なことを確認しないとならなかったからだ。
「じゃあ、お前は初代の前世は、偽名と、姉がいたことしか、知らないんだな?」
「ああ、ワシは前世の事はそれしか知らん。」
「初代とした約束は、これで終わりか?」
「ああ、終わりや。あとは初代の残した、残りのチャクラを消費して、死ぬ時を待つだけや。今まで、何時現れるか分からんかったから、当主のチャクラを節約して、寝て過ごしてきたが、それともおさらばや、いっその事旅にでも出るかの。ガハハハハ!!」
話し終えた白狐は、約束を果たしたからか、どこか、すっきりした顔であった。
が、しかし。サクヤの表情は晴れてはいなかった。
「ところで、当主はその探し人に何を求めてたんだ?」
そう、当主の『人を探していた目的』が未だ分かっていない。
当主の目的が何か、世界を救えだとか、凄い力を手に入れろとか、とんでもない事だった場合
サクヤはこんな忙しいときに、こんなくんだりまで来た、面倒臭い性格をした白狐を、御断りして追い返さなければならない。
それはとても疲れる事であろう…。
しかし、白狐から零れた言葉はサクヤの予想に反していた。
「いや、知らん。」
どうするよ…
藪をつついたら中身空っぽだったんだけど…
とんでもなく昔から探されてきた当主には悪いが
全然目的が見えてこないこの話に、サクヤは人選ミスじゃね?と思い始めていた。