また来て三角   作:参号館

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シカク相手にしのぎ切る実力がどれだけ凄いのか、知らなかったシカマルは

中忍試験、二次試験が終わり、家で激励の声をかける家族に、解かりやすく拗ねていた。

父、シカクのサクヤ話が長いのだ。

 

「サクヤはな~中忍試験で途中退場してな~…

当時木の葉の大名護衛小隊隊長をしてたんだが、第2の試験で敵前逃亡ばっかすっから、『お前ら…中忍試験に来たんだよな…?』ってめっちゃにらまれたんだよ…ホント、あいつ…

まあそれが逆に評価されてシードに入れたのは良かったが…」

 

酔っぱらった人間の話は大体要領を得ないが、シカマルはシカクが『サクヤが中忍試験で実力を隠すことは真(正解)であった』と言いたいのは分かった。

分かったが、それはシカマルの神経をとても逆立てる。

 

「(手の内もっと隠せばよかったってか?

もうやっちまったのは仕方ねぇろ…

んな説教より、次のアドバイス位よこせよ…)」

 

この糞おやじは、次がある息子にアドバイスするどころか、酔っ払いの説教で時間を潰そうとしてるのではないか

シカマルはそう思えて仕方が無かった。

 

「今日疲れたし、寝るわ。」

 

そう言って話しもほどほどに、ふて寝するのも仕方がない事だ。

この冷戦はシカクの大人げない拗ねによって思いの外長く引きずることになり、

後日、奈良家の森に現れた白色に、シカマルは気まずい思いをする。

 

 

 

聞こえていると分かっていても『めんどくせー』とつぶやいてしまうのは口癖だから仕方がない。

と、心の中で弁解するが、奈良家の森に、シカクに引きずられてきたサクヤは、全くそれを気にしてはいなかった。

他に注視すべき問題があったからだ。

 

「あの、シカクさん。私これから任務入ってるんですが。」

 

「気にすんな。外しといたから!」

 

あの二代目に似ているサクヤの顔で、眉間にしわをこれでもかと集めている姿は、迫力だけはあった。

上官であるシカクに異議を申し立てられるかと言ったら、そうでもないが。

 

 

 

将棋の様に、サクヤは忍びとしての戦い方も、迫力に欠けた。

それは、レクチャーもソコソコに始まった忍び組手で、さらに確信を持った。

サクヤの体術は基本避けの方向を取る。

決定的な一手も無く、ただ術を邪魔するだけの攻撃にシカマルは

 

なんだ。中忍ってこんなものか。

 

そう思わなかったと言ったら、嘘になる。

術の発動の邪魔は体術の基本で、アカデミーで比較的初めの方に習う事で

これぐらいできて当然で、なぜ父親であるシカクが、今更体術を教えろなんて言ったのか、シカマルには理解できてなかった。

またオヤジの暇つぶしに付き合わされているのか、とさえ思っていた。

 

簡単に言えば、シカマルはサクヤを侮っていた。

それはサクヤが女性であったと言うのもあったし、自分がサクヤより頭がいいと言う自負もあったからだ。

 

 

急に、組手を止めたサクヤに、シカクが声をかける

荒くなった息を整えるシカマル。

 

「(思ったより体力を使っちまった…。)」

 

シカマルは、これ以上は流石にやらないだろうと、どさっと座り込んだ。

その様子を見下ろしたサクヤはシカクに声をかけた。

 

「いや、無手タイマンやめましょう。現状でシカマル君に体術は何の意味もないですよ。」

 

 

その言葉にシカマルは肩を揺らす。

 

 

測られていた。

それもだいぶ甘く。

 

「中忍試験の相手は下忍です。大技2,3発でかかってくるのがセオリーです。中忍試験に受かりたいならそれをいなす必要がある。

が、私は君がこの1か月で、付け刃で、それをいなせるようレベルアップできるとは思わない。」

 

シカマルがサクヤの実力を測っているのと同時に、サクヤもシカマルの実力を測っていた。

深淵を覗く時、また深淵も覗いていた。

 

ただ、それだけ。

 

小手調べだったのだ。

策に、易々と引っかかってくれるわけである。

 

 

幼いころからサクヤと盤上で睨み合って来たシカマルは『サクヤが手の内を隠している』とは、全く考えていなかった

いや、全くって程ではないのかもしれない。

昔シカクに言われたとおり、頭の片隅にちゃんと存在していたのかもしれない。

しかし、視野に入っていなかった。

 

 

それは『二歩』程、初歩的なミスで

それを指摘しない優しさは、確実にシカマルの判断を鈍らせ、シカマルに『堕落した優しさ』を甘受させていた。

初歩的なミスと言うのは、致命的なミスだから初歩の段階で学ぶものである。

この初歩的なミスの、遅すぎる指摘は、シカマルに大きな衝撃を与えた。

 

『そうさせられた。』そう言ってもいい位、見事な手際だった。

 

 

 

 

「シカマル君、シカクさんにちゃんと頭を下げなさい。」

 

さらに、あの日の事で、親父が地味に拗ねているのも、喧嘩みたいになっている事もばれている。

シカマルは気まずそうにサクヤを見上げると、『はぁ』っとサクヤから大きい溜息が出た。

落胆を含んだそれに、シカマルの視線はゆるゆると下がって行き

 

 

「そしたら私と修行しましょう。」

 

 

サクヤの、『しょうがない』と言う顔が浮かぶ声に、視線を上げる。

苦笑の奥に、シカクの苦い顔が見えた。

 

 

 

この時シカマルは、サクヤの実力がすぐそこに在るものだと、信じて疑がっていなかった。

いつか倒せる、倒す位置にいると思っていた。

シカマルは、『サクヤをいつか倒すべき目標、追い抜くもの』と位置付けてはいたが、それがいつであるかは明確には決めていなかった。

だから、サクヤの堕落した優しさに、何時までも浸っていられたのである。

 

 

―――

――

 

火影室に駆け込んだシズネは御意見番の二人が火影室にいることを不審に思いながらも5代目に声をかける。

 

「綱手様!」

 

「シズネか!

何か分かったのか?」

 

綱手は数秒前の怒りを抑え、シズネに歩み寄る。

 

「コレです!

チャクラの信号を受け取る受信機の様なものが、ペインの検死体のあちこちに刺さっていました。」

 

そう言って差し出した黒い杭は、今もまだ受信しているのか熱を持っている。

 

「フサカク様のお話からすると、ペイン六人全員、体や顔にこれと同じものが刺さっていたことになります。」

 

綱手は、シズネの言葉を補足するように、初歩的な質問をいくつか訪ね、推測のすり合わせをする。

 

「つまり六人とも何かしらのチャクラ信号を、全身で受け取り、行動していると言う事か?」

 

「…受信機か…それとも互いにチャクラを送信し合う無線の様なものか…

そしてこれが今まさに反応していて…

これがペインの強さの秘密につながっている筈です。

尋問班からの情報と合せて、解明します!」

 

 

「情報部からの連絡によると、敵はナルトを探している…

この里に侵入してきた敵はまず間違いなくペインだ。」

 

シズネから得た情報に、綱手は結論を付け、

デスクに振りかえり、指示を飛ばす。

 

「全てを、フサカク様にも連絡しておいた方がいいな。

連絡蛙よ、ナルトを呼ぶついでに、このことも伝えてくれ!」

 

「分かった!」

 

「シズネは検死の情報を持って尋問班と接触し、ペインが何者か解明しろ!」

 

「はい!」

 

「暗部『炉』班はシズネの護衛!

そのついでに尋問班のガードに回れ!

奴らを近づけるな!」

 

「ハッ!」

 

「私は屋上で情報を待ちつつ、カツユを通して全けが人の治療を行う!

里を全力で守る!」

 

 

「行くぞ!」

 

 

 

 

木の葉火影邸の庭に巨大なナメクジが煙とともに姿を現す

建物の屋上から見るとそれはちょうど顔の位置らしき部分が見える。

そこに向かって綱手は、声を張り上げた。

 

「これから木の葉にいる忍びや、一般の者も含めて全員に付け!

私のチャクラを受け取り、全員の怪我を治癒しろ!」

 

ナメクジはその風貌に似あわず澄んだ声を出して状況を把握する。

 

「里のピンチみたいですね…」

 

その一言の時間も惜しいとばかりに綱手はさっさとしろとせかすと、そのナメクジはバラバラと崩れ、分裂

里中に張って進む。

 

 

景気よく声を上げたが、綱手は奥底に何かが(わだかま)っていた。

それが何かわからないが、今は里だとすぐさま思考を立て直す。

とにかく、情報を集めなければ。

 

口寄せナメクジ、カツユから集められる情報に、その蟠った何かが、明確に形になって行くのを感じた。

 




サクヤが何故無手だったのか、シカマルは知る由もないが
読者ならば大体ヒント3つほどで答えに行き付くだろう。
1サクヤは当時暗部だった
2任務に行く前だった
3そんな装備で(奈良家御曹司相手にして)大丈夫か…?

サクヤ「(うっ…勝利に貪欲なおっさんから殺気が…!!)」 
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