仮想世界の探偵『助手』   作:潤々

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挑戦~もしくは心強い応援~

『いまだ天の高みを知らぬものよ、王の城へ至らんと欲するk『さればそなたが背の双翼の、天翔に足ることを示すがよい』

 キリトが素早くスクリーンを操作しーー早すぎてシステムボイスが食い気味になっていたーー門を開くと、全員が素早く突撃し戦闘態勢に入る。中は大きな円筒上で、真ん中くらいから鏡か硝子のようなものがはめ込まれている。どうやら世界樹の内部がほとんどがこの円筒でできているようだった

 

「上だ!!」突入と同じにジライヤから声が飛ぶ。上を仰ぎ見ると、はるか遠くの天井に大きな円形のトビラがありその周囲とそこから延びる様にはめられた鏡から、鎧を着込んだ何者かが現れた。

 

「三人とも、援護を!」スクナの号令の直後、リーファ・レコン・ジライヤの詠唱を後ろに聞きながらキリトと共に突撃する。

 

 行く手を阻む妖精騎士を、両手に握るハルバードで薙ぎ払う。開いた空間にキリトが飛び込み、妖精騎士の壁に傷跡を刻む。

 

 傷跡に飛び込みハルバードを振るい傷跡を広げる。

 

 遠くから形無き弓を引く騎士は、スクナのボウガンに撃ち落され、それでも放たれるわずかな矢は簡単に切り払われる。

 

 後ろから聞こえる怒号を聴く限り、殿を務めるミカヅチもその力をふるっているようだ。

 

 少しの作戦会議とわずかな戦闘時間の中で作られた連携は意外にも順調に機能し、七人は着実に騎士の壁を進軍していく。

 

しかし、その進軍は、着実であったが低速だった。

 

「まずい・・・」思わず声が漏れる「撃破が追いつかない、時間が立てば立つほど壁が強固になっていってる。」

「・・・直線状に敵が集まっています」スクナが戦闘を俯瞰するように言った「こちらが扉まで最短距離で進むとそうなるようになっているのでしょうか・・・。」

「それじゃあ後ろは?」言いながら首を回して後ろを見る「前に回してるなら後ろが手薄になっていたりとかは・・・」

 そこには懸命に詠唱を行う三人と、その後ろで大剣をふるうミカヅチ、そして周囲を取り囲む妖精騎士の群れがあった

「・・・そう上手くは行きませんか」呟くように言う「どうします?これ以上は無理・・・とは言いませんがきついですよ?」

「・・・キリトくん!」スクナが叫ぶ。それに合わせてキリトの前に行き得物で敵を薙ぎ払う。「作戦を練り直します!一度引きましょう!」

「・・・クソッ!」キリトは悪態をつく「こうしている間にもアスナが・・・

「アスナさんを助けるために!」スクナが叫ぶ「今ここでやられるわけにはいきません!」

キリトはその叫びに目をさまよわせる。数瞬の葛藤の後、彼は首を縦に振った。

 

姿勢を反転させ撤退しようとしたその時、後方で待機していたジライヤに謎の光が当たった。

 

「うおっ・・・!!?」当てられた本人も想定外だったのか、驚く「今の・・・

 

【スポットライト】か!?」

 

【スポットライト】。プーカの得意とする【呪歌】スキルで手に入る高ランクの補助魔法。

その能力は『味方一体へのヘイト最大化(・・・)』。その効果を付与されたジライヤに、全ての敵の目線が集まった。

 

「・・・まじかよ」ジライヤが素早く回避運動を始めると、見えない飛行機雲を居抜くかの如く光の矢が降り注ぐ「うおあっぶね!ってか誰だよ使ったの!?」

 

「やぁっと、追いついた・・・」

 

息を切らせながら飛んできたのは、槍を持ったプーカ、ヒミコである。どうやら先ほどの【スポットライト】は彼女の物のようだ。

「ヒミコさん!?」スクナが驚いた「今日は仕事があるのでは!?」

「そんなのちゃっちゃと終わらせてきたよ。」ヒミコが言う

 

「それに、来たのは私だけじゃないよ!」

言いながら後ろを振り向いた彼女の目線の先にいたのは。

 

後ろにいた妖精騎士を蹴散らす大量のドラグーンの群れとシルフの軍団だった。

 

「間に合ったようだな」シルフの軍団を引き連れていたサクヤが言った「レプラコーンの職人衆に大急ぎで作ってもらったが、それでも時間がかかってしまった」

 

「お金もネ」ドラグーンの群れーーケットシーの精鋭部隊である『ドラグーン隊』ーーを引き連れてきたアリシャが苦笑交じりに続ける「キリトクンがくれたのも合わせてすっからかん。これで死んだら大破産だヨ。ALOの歴史にのっちゃうネ」どうやら今現在隣を飛んでいる黒い剣士は、二人に資金援助をしていたようだ。

 

「不名誉極まりないな」サクヤが苦笑する「さて、指揮官は君かな、スクナ。そのまま任せよう」

 

「分かりました」

 言いながら黒猫は目を閉じ考える。わずかな時間のあと見開かれた目には、勝算が映っていた。

 

「範囲攻撃で一掃した後、一点突破で到達します!」スクナが指示を飛ばす。

 

「アリシャさん、サクヤさん、範囲攻撃の準備をお願いします!」

「オッケ!ドラグーン隊、ブレス用意!」

「了解した。シルフ隊、エクストラアタック用意!」

 

「リーファさん、レコンさん、ヒミコさんはありったけの援護を!攻撃力と飛行速度を優先的に!」

「分かった!」

「う、うん!」

「よっし、プレリュード行くよ!」

 

「キリトくん、スクナくん、ミカヅチくんはこちらへ!突撃の準備をお願いします!」

「分かった!」

「はい」

「おう!」

 

「ジライヤ先輩・・・

 

飛び回って敵を引き付けてください!」

「俺だけ重労働すぎねぇ!?」

 

スクナの号令によって移動する。

 ヒミコがスピアを掲げて歌いだすと、たちまち周囲に五線譜のエフェクトが現れた。

 【呪歌】、周囲の味方PCを等しく強化するプーカの得意技だ。

 ジライヤは大きく飛行して妖精兵士を引き付けた。

 時に矢をよけ、時に剣を避け、

 

 あっという間に敵が一つの場所に集まりきった。

 

「今です!」スクナが叫ぶ「範囲攻撃!」

「ちょま「フェンリルストーム放て!」「ドラグーンブレスぅ撃ぇ!!」っぶねぇ!」

二人の領主の号砲に合わせ、暴風と灼熱が兵士とジライヤに襲い掛かる。ジライヤは緊急回避しわずかに掠った程度で済んだが、ルーチンで動く天使の群れはそうはいかない、全ての天使が炎と竜巻で一掃された。

 

「総員突撃!」

「行くぞ!」

スクナとキリト、どちらが速かったか。号令と共に攻撃力上昇の呪歌【序曲~プレリュード~】を受けた八人が宙を飛ぶ。

「キリトくん!」支援魔法の詠唱をあらかた終えたリーファが、腰の剣を抜いて投げ飛ばす「使って!」

「サンキュ!」キリトは投げ飛ばされた剣を左手に掴むと、右手に持った自分の大剣と共に振り回す。新たに生み出される妖精騎士はその二刀流が切り伏せる。

「ちっ・・・うぜぇ!」なおも現れる騎士に、ミカヅチは悪態をつき、突撃した。「邪魔すんなオラぁ!」怒声と共に両手剣が振るわれ、さらにその数が減る。

 

「ツクモくん、右は任せます!」スクナは言いながらキリトの左側に飛ぶ、それに合わせて右側へ飛び、そこに飛ぶ騎士をハルバードで吹き飛ばす。

 

時間にして数十秒、先ほどまでとは段違いの進軍速度で天蓋の頂点、そこに在る扉にたどり着いた。

 

 

「キリトくん!」スクナは叫ぶ「扉を開けてください!!」

「あぁ!」キリトは扉に手を当てた、がそれだけだった「な・・・開かない!」

「うっそだろ!?」ジライヤが叫ぶ「何かたんねぇってことかよ!」

「ちょっと待ってください!」キリトの懐からユイが飛びだすと、その両手を扉に当てて目を閉じ、すぐさま見開かれた。「この扉・・・

 

クエストフラグによるロックじゃありません!単なるシステム管理者権限によるもの(・・・・・・・・・・・・・・・・・)です!」

 

「システム管理者権限・・・?」ミカヅチは質問した「どういうことだ?」

「運営にしか開けられない扉ということです。

 

言い換えれば、このクエストはプレイヤーには絶対にクリア不可能(・・・・・・・・・・・・・・・・)ということになります。」

 

「クリア不可能って・・・」ジライヤは呆れたような、絶望したような声を上げる「んだよそれ・・・ゲーム崩壊してんじゃねえか!」

「何それ!?」ヒミコが叫ぶ「クソゲーって奴でしょ!どうにかできないの!?」

 

「システムにアクセスできればどうにか・・・」ユイは叫びに答える

 

「・・・ここまでくると」スクナは完全に呆れた声で言う「露骨を通り越して呆れてしまいますね・・・システムに干渉する方法があればいいのですが・・・キリトくん、カードキーです!」

 

「・・・そうか!」キリトは懐に手を入れると、世界観に似つかわしくないカード、つまりシステムに干渉するためのアクセスコードを取り出すとユイに差し出した「ユイ!これを使え!」

 

「コードを転写します!」

差し出されたカードにユイが手を触れると、そこから浮かび上がった光る文字列がその体に吸収され、もう片方の手の先にある扉へと伝わっていく。一秒も立たずに扉がその手に触れている所から光り出す。

「転写完了!転送されます、皆さん手を!」

 

ユイの伸ばした手にキリトが触れ、そのキリトに全員が振れると、新たに増えた妖精騎士の大剣を振るうよりも早く、全員がその姿を消した。

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