仮想世界の探偵『助手』   作:潤々

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病院前にて~もしくは、最後の戦い~

「・・・何してるんです直斗さん」

病院の前で車を留める場所を探しているとーーー病院はすでに受付時間を終えていて、正面の門が閉じられていたーーー隣からガサゴソと音が聞こえ始めたのを感じ、手持ちカバンから鳴らしているであろう白鐘探偵に声をかける。

「急に引っ張り出したので荷物の整理が・・・っと、あったあった。」

探偵がそういいながら手持ちカバンの中からカメラを取り出したを横目で見て、街灯の下で交差点の有無を確認してから車を止めた。

「カメラですか、それでいったい何を?」

「もちろん、彼の証拠を手に入れるんです。」

言いながら探偵が車を降りる。俺もそれについていくように車を降りて、探偵が病院の門へと歩いていくのを追いかけた。

 

どうやら職員用の通用口らしい開いていた門を抜けると、そのまま駐車場に身を潜めた。わずかに残る車を遮蔽に通用口と玄関を警戒していると、白鐘探偵は今回の計画を確認始めた。

「目的は須郷信之の身柄を確保し、明日奈さんを保護することです。ただし、僕たちは令状を持っていません」

「そもそも警察じゃないですしね、どうすんですか。」

「現行犯逮捕してもらいます。」

現行犯逮捕、と俺が聞き返すと白鐘探偵は頷いた。

「簡単に言えば傷害罪を適用させます。

 この病院の規模なら警備員が常駐しているでしょう。そこで私たちを須郷信之に襲わせて、警備員に止めてもらいます。」

何というマッチポンプ・・・いや、違うか。

そんなことを考えながら警戒を続けていると通用口から入ってくる自転車を見つけた。

「!直斗さん、通用口、自転車・・・和人君ですね」

「桐ケ谷君?」

俺の箇条書きな言葉を聞いて白鐘探偵が目線を向けると、そこにいた黒装束の青年、桐ケ谷君を見て言った。

「どうやら向こうも成功したのは本当のようですね。明日奈さんに会いたくていてもたってもいられなかったんでしょう。」

「直斗さんもそういうことあるんです?」

「・・・」

「いたいたい、脇腹殴らないでください。」

そんなことを言い合いながらーー一方的に殴られながらーーー和人君が玄関に向けて走っていくのを見送っていると、車の影から人影が現れ・・・

 

 

持っていた“何か”で和人君を切りつけた。

 

 

「・・・!!彩君!」

「了解!」

白鐘探偵の号令に合わせて突撃する。その人影を吹き飛ばすようにタックルを当てて体制を崩し、和人君との間に入る。

「大丈夫ですか!?」

「あ、ああ・・・あんたは、探偵の・・・?」

和人君と彼に駆け寄った白鐘探偵の会話を後ろに聞きながら、目の前の男に警戒する。その顔は数日前、ダークグレーのスーツに身を包んでいたのを見かけた顔だった。眼鏡の奥にあった人好きのする笑顔は面影もなく、その目は狂気に見開かれている、その右手には大振りのナイフがネクタイで括りつけられていた。どうやらそのまま和人君を切りつけた様だ、握力が失われているらしい。

「何だいキミ・・・邪魔なんだけど。」

「邪魔しに来たんだからねぇ・・・直斗さん、この人俺たちよりも早く隠れてたみたいです。」

「そのようですね。」

須郷の言葉に返しながら、白鐘探偵に声をかける。探偵の返しを聞いて、桐ケ谷君の目が見開かれた。

「隠れてた・・・?」

「キリトくん、先に行ってください。ここは僕たちが引き受けます」

「あんだけの人数集めて手に入れた勝利だ。ここで落とすなんてしたくないでしょ?」

「・・・アンタらもしかして・・・!わかった。」

和人君に先を進むよう促すと、彼は何かを察してから玄関に向かう。和人君が須郷を避けるように遠回りに動くと、須郷がそれに照準を合わせるように顔を向けた。

「逃がさないy「のはこっちの方なんだよね」・・邪魔だ!」

そのまま彼を襲おうとする須郷の前に入り込むと、振り払うようにナイフが振られる。

それを左腕で受けながら後ろに下がると、腕から大きく血が噴き出した。

「あっぶな、下がってなかったら動かなくなるとこだった。」

左手を握ったり開いたりして調子を確認しながら須郷の間合を再確認する。

「ぼくの邪魔をするなよクズが、お前らみたいな全てにおいて劣ったクズが、この僕の足を引っ張りやがって「全てにおいて劣ったクズを」・・・あ゛っ?」

「全てにおいて劣ったクズをたったひと振りで殺せないんだ。」

「なにいって「それってさぁ」人の話を・・・」

 

「お前の方が俺より劣ってるってことだよな?俺はお前のこと、一発で殺せるぜ?」

 

「・・・お前、何言ってんだ?お前みたいなもやしが出来るわけないじゃんそんなこと。」

「人を見かけで判断しない方がいいと思うよ?」

「お前みたいなクズが何言ったてさァ。結局!ぼくの邪魔していることにかわりはないんだよ!ぼくの邪魔する奴はさァ・・・」

 

度重なる挑発で完全に頭に血が上った須郷が突撃する、その瞬間に体を前に倒して少し駆け出す。

「死ねぇ!」

「やだ」

ナイフを突き出した須郷の足の間に足を滑らせる。体を大きくそらして後ろに倒し、両足をついてブレーキを掛けると、須郷が足を引っかけてこちらに倒れこんだ。

そのまま俺の体に跨った須郷は、好機を得たといわんばかりに右手のナイフを俺の右目につきこんでくる。俺がその右手首を右手で掴んで、そのまま力の比べ合いに持ち込む。

「なんだいなんだい、大口叩いておいてこの体たらくかい、こんなんじゃぼくを倒すなん出来やしないよ」

圧倒的に自分優位の立ち位置を得て上機嫌な須郷が嘲るようにいう。確かにこの状況は向こう有利だ、右手がまともじゃないにしろ、向こうが両手が使えて、しかも重力の補助がある。こっちは右手しか使えないが、さっきの左腕の傷が痛んで動きづらい。この状態では数分もしないうちに俺の右目はくり抜かれるだろう。

 

・・・だからこそ。

 

「そこで何をしている!」

警備員に言い逃れはできない(・・・・・・・・・・・・・)

ちょうど巡回していたのだろう、思ったよりも早い到着の警備員が懐中電灯で照らしたのは

『左腕を怪我した男がナイフを持った男にマウントを取られて右目を刺されそうになっている』

姿だ。

 

「はい、即死っと。」

誰にも聞こえないような声で、呟く。

 

俺はたった一度のスライディングで、須郷信之を社会的に殺すことに成功した。

 

「てめぇぇぇぇぇぇぇ!!」

須郷が叫びながら力を込めるが、目に刺さる前に警備員に取り押さえられる。

 

「この左腕のやつ、この男にやられました。」

起き上がりながら警備員に申告すれば、警備員は須郷を取り押さえた腕の力を強めて言った。

「キミ、危ないところだったね。この男のことは俺に任せてもらっていいよ。今、怪我をした少年がいるらしいから一緒に処置してもらうといい。」

「そうします。ありがとうございました。」

俺がそう言って頭を下げると、警備員は須郷を抑えたままその場を離れていった。警察に引き渡すのだろう。

 

「彩君」

「なんですか?」

後ろからかけられた声に振り向くと、腹部に強い衝撃が走った。何事かとそこを見ると、白鐘探偵が俺の左腕を触っていた。

「・・・どうやら大事にはなっていませんね。よかった・・・。」

どうやら触診していたらしいそれを終えると、その状態のまま安心したように言った後、こちらをにらみつけた。

「な、直斗さん?」

「彩君、向こうで言いましたよね。僕の相棒はあなたしかいないと。僕に相棒を失わせる気ですか?」

あ、やばい普通に怒ってる。とりあえず何かで話をそらそう

「直斗さん、いいんですか?」

「何がですか?」

「さっきから俺の体に抱き着いてますけど」

「・・・?・・・!!」

不意に直斗さんの顔が赤くなり離れたと思えば、

 

俺の視界が左に大きく吹っ飛ばされた。

 

どうやら左腕のほかに、右頬の紅葉も治療してもらう必要があるようだ。

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