仮想世界の探偵『助手』   作:潤々

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幸せな終わり~もしくは新たな始まり~1

 その後を書くに当たって、無意味に最初に立ち返ろう。

 

さて、

 

 あの後、事務所に戻ってからお互いに帰宅。次の日、結城彰三さんと連絡を取り、彼と病院前で待ち合わせて明日奈さんの病室へと向かった。

 病室に入り、彰三さんに紹介されると、ベットに体を横たえていた明日奈さんはこちらを見てはにかみながら、まだ声を出しづらいであろう喉で言った。

「ありがとう、ございます。」

「いっいえ、依頼ですから。無事で何よりです。」

「人の好意は素直に受け取った方がいいですよ~。そんなんだから“あの人”に思いを伝えられ中指がねじれるように痛い!?」

「余計な事を言わないでください!」

 赤面する女子高生に中指をひねられるという新感覚の痛みを味わっていると、病室のドアーーちょうど真後ろで、のけぞった際に見えたーーが不意に動いた。

 

「アスナーきたぞ・・・って、あんた達は・・・。」

 入ってきたのは、改めて見舞いに来た和人君だった。彼に気付いた彰三さんが声をかけた。

「和人君、見舞いに来てくれたんだね。」

「えっええ。」

 実際には昨日も来たんだが・・・とは言えるわけもなくただ応答を返す和人君を見て、彼は安心したように続ける

「ははっありがとう。それじゃあ私はそろそろ行くよ、いろいろ残してきてしまったんでね。」

 彰三さんはそういって、もう一度明日奈さんにゆっくり治すことを言ってから、病室を出ていった。

 

「三日ぶり、いえ昨日ぶりですねキリト君」

 彰三さんを見送った後、直斗さんが言うと、二人がそれぞれの反応を示した

 

「・・・!」と急に声が出せずに、驚いた顔をする明日奈さんと

「やっぱり、知ってたんだな。」と納得した顔の和人君だ。

「あの名前を聞いた時に分かりました」直斗さんが続ける「ALOの中で堂々と名乗ってましたよね。」

「あぁ、あのときか」

「お二人さーん、当事者が置いてけぼりですよ~」

 俺の声に二人が、横で寝ている明日奈さんが固まっていることに気付き、事情を説明。それを聞いた明日奈さんは、もう一度、お礼を言った

「ありがとう、ございます。キリト君を、助けてくれて・・・!」

 ・・・その後、二人で何を話していたのかは知らない。あとは二人の方がいいだろうと、直斗さんと共にその場を去ったからだ。

 

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 皐月の休日、俺と直斗さんは徒歩でとあるところに向かっていた。

 あの後、逮捕された須郷信之は、事件におけるあらゆることに対して黙秘、否認を繰り返していたが、直斗さんが保護をーー用意をーー頼んでいた“重要参考人”がそのすべてを証言、信頼できる筋からーーつまりは菊岡さんからーー証拠として挙げられた『研究資料』がレクトプログレス内のサーバーと一致し、言い逃れが出来なくなった。そこから人が変わったかのように自供、自責の念に押しつぶされるように法廷で泣き崩れたと聞いている。

 

 実験場所となったALO、およびその運営会社、レクトプログレスは壊滅的な打撃を受けた。否、打撃を受けたのはVRMMOと呼ばれるジャンル全てだ。元々SAO事件で作り上げられてた不安感が、『今度こそ安全!』と銘打たれたゲームでの非人道的実験によって爆発する形だった。

 結果、ALOはサービスを終了し、レクトプログレスは解散、レクトの本社は経営陣の刷新によって危機を逃れる形となったようだ。

 

 また、昏睡状態を回復した300人を含むSAO帰還者のうち、当時中学、高校生であった人物には、廃校を利用して作った臨時学校ーー帰還者のメンタルヘルス施設、兼近未来のモデルスクール。らしいーーに通って、かつての学生生活に戻ろうとしているらしい。こまめに病院に様子を見に行っていた直斗さんと交流が深まった明日奈さん、和人君両名からの情報だ。

 

「しっかし、300人に後遺症が無くてよかったですね。あったらどうなってたいたか。」

「全くです。覚醒状態での実験だったようですから、どうなってもおかしくなかった。記憶が消えていて助かった。」

「・・・なんで実験の内容知ってますん?」

「ある程度目を通しましたからね・・・おや?」

 道すがらそんなことを話していると、前の方に上下、髪まで真っ黒の青年と、青年と同じ色を短く切りそろえた少女、栗色の髪が腰まで伸びている少女が並んで歩いているのを見つけた。

「和人君と桐ケ谷さん、それに結城さんですね。恋人は仲が良くていいですね直斗さん」

「なんでそれを僕に言うんですか・・・」

「なんだあんた達か・・・」

 どうやら俺らの会話に気付いたらしい和人君が後ろを振り向くと、他の二人も足を止めて振り向いた。どうせ目的地は一緒だろうしこれ幸いと合流させてもらう

「こんにちは桐ケ谷君、明日奈さん。それと・・・」

「始めまして、兄がいつもお世話になってます。妹の桐ケ谷直葉です。」

「探偵の白鐘直斗です。こちらは助手の灰原彩君」

「どうも、“灰色の原っぱを彩る”と書いて灰原彩。結城さんが起きないのを心配していた男です。」

「ん~っと・・・あぁ、あの時の。」

「彩君、知ってたんですか?」

「直斗さんがお見舞いに行かせた時にちょっと」

と黒髪の少女ーー桐ケ谷さんーーと既知の自己紹介というちょっとよくわからない状態になっていると、和人君が桐ケ谷さんの肩をポンと叩きながら言った。

「スグには、“スクナ”と“ツクモ”っていった方が分かりやすいかもな、白鐘さん、コイツが“リーファ”です。」

「“スクナ”と“ツクモ”ってえぇ!?あの時の!?」

「あぁ、あなたがリーファさんだったんですね。はい、ALOでスクナと名乗っていました。」

「“ツクモ”は俺です・・・まあアカウント消えちゃったんですけど」

「え、アカウントが消えた・・・?何をしたんですか・・・」

「事故みたいなもんですかねぇ・・・」

 返答しながら頭をかく。事故は事故でも故意の事故であったため、口に出しづらい。

 アカウントが消えた・・・つまりはアカウント抹消処理(BAN)を食らった理由は、間違いなくあのハッキング用ゲームカードである。

とあるハッカー組織の重鎮(それ以上のことを直斗さんが教えてくれなかった。)のバックドア(ハッキング用アクセス経路)として機能させるプログラムが仕込まれたゲームカードを突っ込んでプレイしたあの日を境に、俺のアミュスフィアはALOを受け付けなくなった。どうやらアカウントBANのペナルティとして、三か月はALOに参加できないようになったようだ。もちろんアカウントに紐づけされたキャラクター“ツクモ”も抹消され、もし次があるならまた1から始めなければならない。

「まあたいして気になりません、いろいろ吹っ切れましたし。」

「そ、そうなんだ・・・」

「ほ、本日は!お招きいただいてありがとうございます。」

「あ、あぁ、いやそんなかしこまらなくてもいいぞ。身内の集まりみたいなもんだし」

「そうですよ、ホームパーティでかしこまる必要もないでしょう?時間もありますしさっさと行きましょう。」

 少々しゃべりすぎたかと感じつつ直斗さんのムリヤリな軌道修正に乗って話題を変え、足を進める。三人が前も向いたあたりで静かにふくらはぎを蹴られた。だから痛いんですよあなたの蹴り。言い過ぎかけたのは俺なんで甘んじて受けますけど。

 

 そのあと、高校生たちの華やかな会話(直斗さんは今年で高校3年生だそして俺は、留年して大学二年をやり直している)を聞きながら歩いていると、目的地の〈ダイシー・カフェ〉までたどり着いた。アンドリューさんの経営するカフェのドアには〈CLOSE〉の看板に

 

『本日貸し切り!』

 

と書かれた紙が張り付けられていた。その貸切られたカフェの扉を開けようとすると、不意に探偵に手を引き戻される。

「んおっと・・・直斗さん?」

「どうしたんだ白鐘さん?」

「いえ、ちょっと気になることが」

思わずといった感じで声をかけた俺と和人君に答えながら、俺の手を掴んだまま店の外観を見るように離れ、俺にだけ分かるように何か指さした。さされた方法に目を向けると、

 

カフェの中にいる人全員がクラッカーを構えてドアの前で待機しているのが見えた。

 

「あぁ、なるほど・・・。三人とも、先に入ってて大丈夫ですよ!」

「そうなのか?じゃあ遠慮なく・・・」

 向こうが何をやりたいのかを察した俺は三人に、正確には和人君と結城さんに先に行ってドアを開けてもらうようにいう。

それを受け取ってドアを開けた和人君を

 

「「キリト、SAOクリアおめでとう!!」」

 

大量の紙吹雪と祝福の声が覆った

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