仮想世界の探偵『助手』   作:潤々

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領主対談~もしくは襲撃~

ッそこ!ツクモ君、お願いします!」

スクナさんが直剣でのけぞらせた敵に向かって、手に持ったソレを振り上げる。

「say・・・ラァ!」

 

ソレとは斧。

 

敵を倒すために作られ、突くことさえ想定された戦斧槍。

 

掛け声とともに振り下ろされたハルバードは、蝶の谷を飛ぶ怪鳥の体を両断し、ポリゴンのかけらへと変換させた。

 

「いやァ、すごいネ・・・二人トモ。」周囲に護衛を連れたケットシーが呆れたようにいう「キミ、ホントにニュービー?」

「少なくとも、この手のゲームはやったことはありませんよ。今回が初めてです。」直斗・・・否、スクナさんは剣を鞘に収めながら続けた「まぁ、この武器に関しては、近くに上手い人がいたことがありますからね。」

「あぁ先輩かー」ヒミコは納得がいったといわんばかりに頷いた「先輩は剣強かったからね。」

「・・・剣道家の人?」アリシャは逆にあまり納得がいっていないように首をかしげた「にしてハ、動きが荒々しいとイウカ・・・時々首狙ってたヨネ?」

「アリシャさん。」彼女たちの前に出て壁になりながら言う「リアルの詮索はルール違反・・・だよな?」

「アー・・・それもそうだネ!」苦笑した猫姫はスクナさんたちの前に躍り出ながらーーー置いてかれた一団を慌てさせながらーーー言った「そろそろ対談の場所に着くヨ?レッツゴー!」

 

「・・・ありがとうございます。」アリシャの後をーー正確には追いかけた護衛の後をーー追いながらスクナさんが言った。俺もそれに追従しながら答える。

「いえいえ・・・あの猫姫、結構強いですね。スクナさん結構スピードが出てたのに目で追ってましたよ。」

「そうなんですか?」スクナさんは意外だったのか俺に問いかける。

「そうじゃなきゃ時々首狙ってたなんて言わないでしょう」俺の答えに対し、スクナさんは少し黙ってから再び話し出した。

「あぁ・・・いえ、そこではなく・・・僕がスピードを出していた、というところです。」

「あぁ、そっちか・・・」

 スクナさんの本当の問いかけーーー彼女のスピードについてーーーについて、後ろのヒミコも交えて話し出す。

「少なくとも俺には出せないスピードでしたよ。」

「VRMMOって本人のイメージで動くから、あれくらいのスピードが出せるって思ってるってことだよね。」

「・・・まぁ、ステップや歩法を駆使すれば出せるスピードでしたからね。」

なるほど。

 確かにこの人はリアルでも結構速い。いや、素早いといったほうが言いか。探偵として培われた観察力で機先を制し先制するのが得意・・・とはここにいるヒミコの言である。まぁ、探偵には荒事がつきものとか言ってカバンに護身武器を入れて片田舎に向かう人なのでリアルで戦えても別に疑問も持たないのだが。

 

「イメージで動く、ということは。現実で動かせないような動きもできるのですか?」

「そうですね、風にだってなれますよ。」

「VRMMMOでの運動速度は、本人の反射神経と、アミュスフィアでの総プレイ時間の長さで決まるって話もあるね・・・っとそろそろ見たい!」

 話し込んでいるうちに対談予定の場所に着いたようだ。ケットシー勢の後方で二人と共にゆっくりと着地し、後ろから合流する。こうすればフードをかぶっている限り初見ではーーその手のスキルを持っていない限りーーケットシーではないと見破られることはないだろ。

 

 対談場所にはすでに緑色を中心にする一団・・・シルフの外交団がいた。正面に立つのは、ダークグリーンの長い髪を背中に垂らし、紙のように白い肌を持つ美形のシルフ、シルフ領主のサクヤだ。緑色の和装に身を包むその姿は大和撫子の言葉を思い出させるが、大太刀を手に敵を切り裂く様は烈火のごときと呼び声高い。

「待っていたぞ、アリシャ。」

「ゴメンネー!用事が終わんなくてサ!」

簡単な挨拶ーーーずいぶんとフランクだったがーーーを終えて、領主達は簡易的に作られた席に座り同盟について会話を始めた。シルフ内、サクヤを含む七人が座り、三人が立っている。おそらく立っている三人が、急遽連絡された護衛なのだろう。彼らに倣ってこちらも立ったまま周囲を警戒する。ごまかしは領主ドノに任せよう。

 同盟の内容は、グランドクエスト【世界樹】の共同クリアについてのもの。詳しい話は興味がなかったので警戒しながら聞き流していると、隣に来たスクナさんが話しかけてきた。

「ツクモ君、この後の予定を確認しておきましょう。アルンに移動したあと、世界樹について聞き込みと確認を行います。」

「グランドクエストについてはいいんですか?」

「大丈夫、そのあたりはすでに確認済みです。実際にここにいる人たちから話を聞いておきたいんです。あらかた聞き終わったら、例の写真が撮れた位置を確認します。見えないようになっているとの話ですが、念のため。」

「聞き込みのあとに、調査ですね。わかりました。」

「そこまでいったら、今日は終わりです。一度現実に戻って、情報の洗い出しを行います。」

「二人とも、何の話してるの?」

会話にヒミコさんが入ったことで、そちらに説明を始めたスクナさんから距離を取り二人のカバーをしていると。二人の領主が握手を交わしているのを横目に見た、どうやら対談は成功したらしい。

 

 そのまま警戒を続けていると、ヒミコが急に声を荒げた。

「みんな!編隊を組んだプレイヤーがやってきてる!」

 注目した全員の視線が驚愕に染まる。すぐに行動したのはサクヤだった。

「【索敵】スキルか!方角は!?」言いながらストレージから自身の獲物である大太刀を装備する。

【索敵】スキルは、ALO内で技能を表す〈スキル〉の一つ。周囲のキャラクターの位置を把握できる技能である。ヒミコはこれを常時発動しておくことで敵の接近に気づけるようにしていたのである。

「南東方向!アルン高原を直進してきてる!」ヒミコも槍を取り出し、スクナさんもそれに続く。

 ストレージからハルバードを取り出し、二人の近くによると、茶色のケットシーーアリシャさんーーが尋ねた。

「南東方向・・・てことはサラマンダー?」アリシャさんも得物のクローを装備し、お付きもそれぞれ武器を持つ。

「・・・可能性は高いな。」サクヤが苦虫をかみつぶしたような顔で答えた。「この対談で一番被害を被るのは、自分の有利を崩されるサラマンダーだ。」

「この対談を知っている人物は?」スクナさんが尋ねた。「サラマンダーにコレが漏れるようなことはあるんですか?」

「スクナちょっとタイム!」ヒミコが声を荒げる!「調査の前に構えて!すぐに来るよ!」

いうが早いか、空に赤い点の集団ーー間違いなく『赤』を基調とする戦闘妖精、サラマンダーの一団ーーが現れる。

と、同時にキラキラと光る点・・・火の玉が大量に飛んできた。

「魔法攻撃!」誰かがそう言う前に、羽を震わせて急上昇する。

(この距離で届くなら十中八九遠距離魔法。)急上昇の間にやるべきことを思考する。

(対談場所に向けて放たれた地点攻撃、当たればいいから誘導なし、威力重視の直線、着弾時に広範囲にダメージを飛ばすもの。火属性の魔法でそれに該当するのは、爆撃弾魔法一種類のみ。被害を抑えるには・・・

 

 

     空中で着弾させる)

 

 

 

空中で大きく羽を広げて急停止すると、飛んでくる火の玉ーー爆撃弾ーーを受け止めた。

近くのものは身に着けた鎧で、遠くに飛ぶものは両手に持ったハルバードで、一個づつーー誘爆により想定より多くの魔法弾を捌いていたそうだがーー着弾させて防いでいく。

受けるダメージは【自動回復】スキルで回復する。魔法防御はそれなりにあるはずだから問題ない。

鎧の大体が吹き飛び、ハルバードの耐久値が一桁になったころ、続いていた爆発が止み、サラマンダーの軍団が突撃態勢に入る。持っていた武器を投げ捨て、新しいものをストレージから取り出した時、

空から黒い何かが落ち、

 

「総員、剣を引け!」

 

大きな声ーーなんてものじゃ終わらない強烈な叫びーーをあげた。

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