仮想世界の探偵『助手』   作:潤々

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聞き込み~もしくはお見舞い次いでの容体確認~

「ほいっとうちゃーく。」

「それじゃあ私落ちるね、お疲れ様!」

アルンに到着するや否やヒミコさんはその身をひるがえし雑踏へ消えていった。特に何かあるわけでもなく、このゲームからログアウトしに移動しただけである。

 

「さて」ヒミコのログアウトを確認した探偵は話し出す「はn・・・ジライヤ先輩は行かないんですか?」

 どうやら仕事の話らしい。名前を言い直しながらもジライヤに離席を促すと。

「ん?あぁ、そうだな」と言いながらジライヤは背を向ける「そんじゃま、あいつと一緒にグランドクエストでも行ってきますか。」とひとりごとを言いながら歩き出した。

 ジライヤが十分離れたのを確認して、探偵も歩きながら話し始めた。「ツクモ君、必要な情報は何かわかりますか?」

 「あの写真についてですかね?」

 「それもあります。」探偵は続ける「それに加え、木の上に到達する手段が存在するかどうかも確認しましょう。」

 「・・・仮に、あれが“閃光”だとして、ゲームの中からあそこに行ける方法があるもんなんですかね。」

 「グランドクエストの内容を調べたのですか」スクナは続けた「達成方法は、『クエスト達成後、到達できる専用エリアで妖精王オベイロンに謁見すること』何です。つまり、普段プレイヤーの立ち入ることのできないエリアが存在するんです。そこから行くことができる可能性があります。」

 「なるほど」この探偵は一つの行動に対し二つ、三つの結果を想定して動く。今回のこれも、その一つであるらしい。

 「まぁ、とりあえず話を聞いていきましょう。」言いながら、スクナは一人で花壇ーー正確には花壇縁にある椅子ーーに座っていた男性に声をかけた。ガタイがよく、リアルなら何かスポーツをやっていそうな感じの人物だ。種族は、色黒の肌から見てノームだろうか。

 「すいません、少々お話いいですか?」

 「あん?・・・っ!あぁ、なんだよ・・・」探偵が、腰を曲げるような姿勢で顔を合わせ男に質問すると、男は探偵の方を見て、膝に手を当てることで強調された小さくはないソレに顔を赤らめ、そらしつつも返答した。

 「少し前に話題になった、五段ロケット式飛翔についてお聞きしたいのですが。・・・あの、世界樹の枝にギリギリ届かなかったという・・・」

 「あぁ、アレか。オレも知らねえっス。話でしか聞いたことねえし」

 「そうですか・・・もう一つ、世界樹の上に行くような技術について聞いたことがありますか?僕は最近始めたのでよく分からないんですが、そのような技術があると風の噂で聞いたんですけど?」

 「ぼ、僕ぅ?・・・あ、わりぃ。変な反応しちまった・・・」

 「いえ、大丈夫です。気にしてませんよ。」

 「そうか、わりぃ。・・・世界樹の上に行くってなると、やっぱグランドクエスト・・・だっけか、あれっスかね。だけどありゃ無理っス」

 「無理、とは?」

 「ああいうのなんつうんだっけ・・・数の暴力?」

 「数の暴力?」

 

 「なんか、たくさん出てくんスよ。最初四体ぐれぇなんスけど、倒すのにちょっと目ぇ離した隙に十体ぐれぇになってて、最後数え切れねぇくらいの数になってたっス。」

 

 「なるほど。ありがとうございました。」探偵は深く頭を下げた。どうやらほしい情報は手に入ったらしい

 「いいっスよこんなんでいいんなら」男は突然頭を下げたスクナにブンブンと手を振ると、不意に立ち上がった。「やっべ・・・そろそろ時間なんで失礼するっス」

 「いえ、お引止めしてすいませんでした。」

 「べつにいいって・・・じゃあこれで」言いながら男はその場を立ち去った。

 

 その後、複数の人物に聞き込みを掛けても、最初の男が言ったことと同じようなことしか知ることが出来なかった。

 

 「・・・ツクモ君。クリア不可能なほどの人海戦術を用いるクエストは、あり得るのでしょうか。」

 「あり得ません。正直、『空を飛べる』ってことと『他のクエストは絶妙なバランスが設定されている』ってのが無ければ、十分クソゲー認定されててもおかしくないです。大不評云々より前の話です。」

 

 数の優位が戦場の優位となりかねないこのシステムにおいて。プレイヤーを超える人海戦術は、クリアさせる気など一切ないと言っているのと同じようなものである。

 

 「あり得ない手段を取ってまでクリアしてほしくないクエスト。いえ、到達してほしくない空間ですか・・・何かあるとみて間違いありませんね。」

 「どうします、そろそろ1時過ぎますよ。今日午前4時からサーバーメンテなんで、そんなに人こないと思いますよ。」

 「今日はここまでです。続きは明日行いましょう」

 「分かりました、とりあえず宿探しますか。自分の種族の領地以外でログアウトすると。待機状態っていう無防備状態になるんで。やられちゃわないように部屋に鍵かけてログアウトした方がいいんです。」

 「なるほど」探偵は頷きながら、足を進めた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 「彩君、結城明日奈さんの容体を確認してもらっていいでしょうか。」

 

 ALOを終了し、睡眠を取ってから事務所に行くと、直斗さんが言った。コーヒーの入ったコップを探偵の前に置くと、ありがとうございますといいながら続けた。「僕は他に気になる部分を調べて来ます、何か異常があったらメールをください。」

「分かりました、それじゃあ行ってきます」言いながら事務所を出ると、車で明日奈さんの居る病院に向かった。

 

 明日奈さんのいる病室へと入ると、そこには昨日も見た黒い髪の少年と、少年同じ髪色を持つ少女がいた。

「失礼しまー・・・あっと、和人君だっけ。」

「えっ!?」少年が驚いて振り向くと、すぐに肩の力を抜いた「えっと・・・灰原さん?」

 「お兄ちゃん、知ってるの」となりにいた少女が和人君に聞く、どうやら彼の妹らしい。

 「昨日会ったんだ。」少年が紹介しようとしたところで、少々強引かつ失礼だが、自己紹介させてもらう。

 「灰原彩と言います。明日奈さんの・・・関係者ですかね。」

 「明日奈さんの・・・」少女は、ぎりぎり納得したような顔で話し出した「桐ケ谷直葉です、兄がお世話になってます。」

 「お前は俺の母さんか」・・・妹の自己紹介にお兄さんが呆れた顔をした。「別に変な人じゃない、明日奈が起きないのを心配してくれてるだけだ。」

 「お兄ちゃんの『変な人じゃない』はあんまり信用できないんだよね~」

 「なんでだよ!」

 「仲いいんですね」唐突に始まった漫才にそんな返答をしながら。明日奈さんの方を見る。見た限りでは、特に変化はないようだ。・・・それを良いということは、とてもじゃないが出来はしない。

 「とくにお変わりなしですか・・・素直に喜べませんが。」

 「あぁ・・・」

 漫才を切り上げた和人君も回りこむようにベット横の椅子に座って、目覚めない彼女に目を向けた。

 

 不意に、となりから息を飲むような声が聞こえた、見ると。直葉さんが、驚いてしまったような、泣きそうな顔でベットを、正確にはベット向かいの和人を見ていた。

 

 ここにいてはいけない、何故かそう感じてしまい、病室を後にした。

 

 車に戻ると、不意に携帯が鳴り出した。ポケットから取り出して確認したすると、直斗さんからの電話だった。

 「もしもし」運転に入る前に電話にでる「どうしました、直斗さん。」

 『彩君、今どこにいますか?』

 「明日奈さんの病院の駐車場です。ちょうど車乗ったとこでした。」

 『ちょうどよかった。今、その近くの喫茶店に来ています、迎えに来てくれますか?』

 「近くの喫茶店ですか、わかりました。」

 どうやら彼女も調査でこの近くに来ていたらしい。詳しい場所を教えてもらい行くと、探偵は着いた矢先に助手席にもぐりこんだ。

 

 「すぐに出してください」彼女の珍しい早口に押されるように車を発進させる。「近くにいていて助かりました」

 「何かあったんですか、そんなに慌てるなんて珍しい。」

 「先ほど、須郷さんの所属するレクトをよく知る方に話を聞いてきました。」

 「なるほど、何かわかったんですか。」

 「いえ、重要な部分は聞き取れませんでした。しかし、」と探偵は続ける「挙動がおかしかった。あれでは何かあるのがバレバレです。」

 「何かあることが分かった。って感じですか」

 「そういうことですかね。」

 探偵は言うと、急に前を指さしながら言った「見えました、あの車です。追いかけてください。」

 直斗さんが指さす車を見る。白い乗用車だった。

 「わかりました。ナンバープレートは?」

 「今、全て書き止めました、後程調べてみましょう。今は追ってください!」

 「分かりました、とりあえず間に一台入れさせますよ。」

 言いながら速度を落とし、車を一台向こうとの間に入れてレンタカーのあとを追う。しばらく追うと不意にレンタカーが店の地下駐車場に入っていった。

 「どうします、追いますか。」

 「いえ、このまま通り過ぎてください」

言いながら探偵はカバンからカメラとレコーダーを取り出した「そして、僕を途中で下ろして、そのまま待機です。」

 「分かりました。」

 車を道の脇に停めると、探偵は努めて普通にドアから出て、先ほどの駐車場へ向かった。

 

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