幻徳は咄嗟に目を逸らした。動揺を悟られまいとする、無意識の行動だ。
「胸元くらい隠せ! 目のやり場に困ってんじゃないの!!」
紳士的なエチケットと捉えられ、千代は勘違いをする。
幻徳の隣をズカズカ通り、黒湖の目の前に到来。開いた胸元を隠してやるのかと思いきや、鼻先と鼻先がくっつかんばかりまで顔を近づけ、凄い剣幕で問い詰める。
「一体、何度電話したと思ってんのよ……! 聞いたら何よ? え? 面倒だとか言ってたパーティー行ったらしいじゃない?」
「ぱ、パーティーくらい、あたしだって行くよぉ〜?」
「あんたがパーティーって、どうせ女の子でしょ……!」
「あー……いやまぁ、そうなんですけどぉ……」
幻徳は一転して、再び目線を黒湖に向ける。
千代の追求を前にタジタジとなる表情の向こうに、あの夜に見せた残虐性が潜んでいると知っている。
だからこそ幻徳は恐れた。目の前の人間は、平気で人を殺せる怪物なのだから。
「………………」
「えー……それより千代ちゃん。その人誰?」
話題を晒すべく、幻徳に注目させる。
「むぅ……ひな子ちゃん達が連れて来たの。何でも、財布を届けてくれた方らしいわ」
「……氷室、幻徳だ」
自己紹介をしたと同時に、自室からひな子がヒョコリと顔を覗かせた。
「あ! くーちゃんおかえりー!」
「お邪魔してます、黒湖さん」
後ろに八葉が続く。
場に異性ばかりとあって、幻徳は何処となく居辛さを感じる。
「ただいま〜ひな子ぉ。あと八葉ちゃんも来てたんだ。宿題のお手伝い?」
「殆ど私がやっているんだけど……」
「折角ご足労願ったんだし、ご馳走するよ?」
「では、お言葉に甘えて」
そう言えばこの二人、強盗のせいで料理にありつけていなかったなと幻徳は思い出す。
ハ葉も空腹が限界のようで、黒湖の誘いを受ける。
「それでひな子、この人は?」
黒湖は幻徳を指差す。内心、失礼だと遺憾に思ったが、そんな厳格な事を言える立場ではないと打ち消した。
「良いおじさん!」
「いや、そうじゃなくて。どう言う経緯で連れて来たの?」
「お仕事とお家がないんだって!」
何の隠し立てもしないひな子の物言い。ハ葉が代弁しようとしたが、遅かった。
それを聞いた途端に千代の表情が固まった様を見て、幻徳は心が痛くなった。
「へぇ〜……つまりホームレスを連れ込んだ訳?」
対して黒湖は、おもちゃを見つけたかのような笑みで彼を舐めるように見やる。その視線に寒気さえ覚えた。
「……以前は公務員をしていた。職を探していた所、お嬢さん方に貴女の助けを勧められ……」
どうしてこんな、殺人鬼に助けを乞わねばならないのか。
幻徳はふと考え、馬鹿馬鹿しくなって来た。やはり断ってやろうかとも決意したが、それより先に千代が言葉を被せる。
「確かにホームレスにしては身なりが綺麗……って、公務員だったんですか」
「へぇ〜ほぉ〜? それはそれは何か後ろめたい事で失敗したんでしょうねぇ?」
驚く千代と、何故か面白がる黒湖。全く別の反応をそれぞれ受け、幻徳は少したじろいだ。
そのたじろぎが、断る言葉を飲み込んでしまった要因だが。
「とりあえず、晩御飯にしよっか。半日食べてないのよ千代ちゃあん」
気持ち悪い猫撫で声で千代を宥める。
「話は済んでいないわよ!」
「ご飯の後で聞くからね。ひな子もお腹ぺこぺこみたいだからさ……ね?」
「くーちゃん早くぅ」
リビングに向かうひな子が誘う。
「……ご飯の後よ。あと、私にも振る舞いなさい。あんたの電話待ちで何も食べてないの」
「……あは♡ 愛情込めてあげるからねぇ」
「食器の準備はしてあげるわ」
煮え切らない気分ではあるが、分別のある女性のようだ。彼女は八葉とひな子に続き、リビングへ向かった。
つまり、廊下にて黒湖と幻徳は二人きり。
やけに空気が淀んでいると感じながらも、この殺人鬼に一瞬の油断は欠かさないでいた。彼女は今、靴からスリッパに履き替えていた頃だ。
「しっかし、あたしに助ける義理はないしなぁ〜。おじさんが可愛い巨乳JKだったら何でも言う事聞いてあげてたけどねぇ?」
鼻からあまり期待はしていない。それ以上に、彼女に借りを作る事は願い下げでもあった。
「……迷惑ならば構わない……」
「それに今日はクタクタだし、とっても機嫌悪いから可愛い娘以外と関わりたくないし……境遇はとても面白いけどねぇ? ホームレスおじさん?」
ニタリと笑う。あの夜に見せられた笑みと同じだ、気味が悪い。
「……無理ならば他を当たる」
「他なんてあるんですかぁ?」
「…………どうにかすれば」
黒湖が一歩一歩と、幻徳に歩み寄る。
「見ない顔だけど、この町の人?」
「まぁ、そうだ」
「氷室幻徳さんだっけ? ゲントクって、どう言う字になる?」
「幻と言う字と、道徳などの徳」
「公務員らしいけど、何処のお勤めで?」
突然の質問責めに、意図が読めない幻徳は訝しむ。
「……市役所のしがない会計補佐だった」
元の世界の肩書きを言っても仕方ない。
会計補佐と言っておけば、失脚の理由は金関係だと思わせる事が出来るだろう。
「『しがない会計補佐』……ねぇ?」
彼女の目が、鈍く光った気がした。
「所で氷室さん」
幻徳の眼前にまで顔を寄せる。思わず呻き声を上げてしまった。
「……聞き覚えがあるんですよねぇ、そのお声」
そして同時に、迂闊であったと気付かされる。
彼は二日前、ローグの姿ではあったが、黒湖と話した。
「どっかでお会いした事、ありましたっけ?」
八葉でさえも、声で彼だと断定出来ていた。
幻徳にとって幸運だったのは、二日と言うスパンがあったお陰だろう。記憶が曖昧になっている。
黒湖はまだ、断定しかねている。
「……市役所ではないか? 税務課にもいたから、何かしらで会っている可能性もある」
動揺を押し殺し、当たり障りのない考察をする。
「ただ俺自身、恐らく初対面だろうと思うが」
「ふーん、そっか。まぁ、ありえるっちゃありえるか」
案外、すぐに納得してくれた。
顔を離し、眼鏡を外す。伊達メガネのようだ。
下駄箱の上、百合の花の側にある据置型の時計を眺めた。もうすぐ六時になりそうだ。
コチッ、コチッ、コチッ、コチッ。
「あ、話戻すけど。最初のお仕事の話」
コチッ、コチッ、コチッ、コチッ。
「まぁ、考えてあげても良いけど?」
「……? いきなりどうした?」
チッチッチッチッチッチッチッチッ……。
「別に明確に断ってないじゃん? どんな仕事でも文句ないなら、アテが一つあるよぉ。ひな子達がお世話になったみたいだし」
チッチッチッチッチッチッチッ。
「ただし、あたしの『仕事』を一回、手伝ってくれたらの話だけど?」
カチッ。
『マシーンは急に止まらない/Budy a body』
六時に差し掛かる。
待ちきれなくなったひな子が、リビングから「くーちゃん早く」と急かし始めた。
「はいはい、今行きますよぉ」
外した眼鏡を胸の谷間に押し込み、フラフラとリビングの方へ。
彼女からの条件を聞いた幻徳は『仕事』について質問をする。
「……その、『仕事』ってのはなんだ? 非合法ではないよな?」
『殺し』の仕事ならば、今ここで殴りかかるつもりでもある。
「まさかぁ」
幻徳の方へ振り返る。あの、不気味な三白眼だ。
「合法よりも合法な仕事だよ。政府公認、警察特権、社会貢献!」
そう言えば警察関係者らしい。千代は『エージェントに近い』と言ってはいたが。
しかしこんな殺人鬼が警察と関係があるとはどう言う事か。国内で戦争をしている訳ではあるまいのに。
「容疑者の張り込みでもさせるのか? 一般市民に……」
「なに『一般』ぶってんのさぁ。現状、『一般以下』じゃないの? ホームレスおじさん?」
「……ぐうの音も出ないな」
「まぁまぁ、簡単なお仕事お仕事。所謂、『パパ活』?」
「パパ活……?」
パッとしない幻徳をよそに、彼女は手をブラブラ振って催促する。
「やるかやらないかは自由だから。やるなら来週の正午にウチの前に来てよ」
「…………」
「大丈夫大丈夫! ほら、前金あげるからさ」
折りたたんだお札をポケットより出し、幻徳に投げ渡す。
かなり久々に見た『日本円』の為、単価の算出に手間取ったが、六万円がある。
「今日は女の子たちとお食事したいからさぁ。夜餉はご参加出来ませんぜ?」
「……適当にその辺で買うさ。野宿にも慣れた」
「本当に元公務員? 逞し過ぎない?」
「……慣れは恐ろしい物だ」
六万円をポケットに突っ込み、踵を返す。
「……彼女らによろしく伝えておいてくれ」
「是非、『来週も来るよ』って言っておくねぇ」
食えない女だ。
幻徳はドアを開け、出て行く。黒湖の視界より、外れたかった。
退出をひな子らに悟られやしないかと思った。だが流石は高等マンション、ドアの開閉音さえ静かだ。幻徳は煌びやかなマンションより、闇の世界へ還って行く。
何故、幻徳は彼女から金を受け取ったのか。
黒湖と話した時、彼女の異形の片鱗を感じたからだ。
「……あの女は、底知れない事は確かだ。そしてどうやら、この世界の日本も『平和』とは言えないようだ」
思い出せば二日前。現場にやって来た警官らは、ローグは警戒せど、黒湖には一切関わっていなかった。警察と関係がある事は本当だろう。
「ならば間違っている……もう、『力で抑えつける平和』はこりごりだ……」
父親の顔が過った。目の前で崩れ落ち、幻徳の腕の中で息を引き取った父親の死に際だ。
同時に、もう一人の『青年』の顔が過った。身を呈し、巨悪に立ち向かう勇者。『ラブ&ピース』を愚直なまでに掲げる、一人の戦士だ。
「……あの女の懐に潜り込む。元の世界に戻れるまで……奴を止めてやる」
幻徳はあの『狂気』に立ち向かう為、敢えて借りを作ってやると決意した。
そして清算は、『全てを変える事』。腐り切ったこの町を変えてやるつもりだ。
「……最も、この世界で生きる為。俺は元の世界に……必ずや『償い』を果たす……!」
気付けば黒湖の住むマンションは、遥か後方。もう一度睨み付け、決意を強固な物とする。
その念を込め、手元のボトルを強く握りつつ前を向く。
暗く、汚く、それでも確かな希望の闇へと。
時間は少し遡る。幻徳が家を出た、すぐ後。
黒湖は窮屈かつ、『微かな血の匂い』の漂うスーツから着替えようと自室に向かう。
「くふふふふ……」
思わず、笑みが零れる。
「元公務員? 市役所勤め? 会計補佐?」
口角は釣り上がり、邪悪な笑顔を見せた。彼女の本性が剥き出しとなる。
「そんな訳ない! あたしには分かるよぉ」
幻徳に顔を近付けた時、彼女は確信した。
彼の目の奥に宿る『狂気』を。
皮膚の下に隠れる『呪い』を。
手の毛穴の奥から漂う『血の匂い』を。
隠したって隠しきれない、寧ろ隠すには重過ぎる『罪』を。
「あれは何人殺したかな? 一人? 二人 もっともっと……十? 百? いやいや、もっともっと……」
羽織っていたスーツを脱いだ。
「……あっはぁ♡ とんでもない『怪物』見つけちゃったぁ」
新しいオモチャを、見つけてしまったようだ。
「くーちゃんまだぁ?」
「黒湖〜! 早くしなさいよ!」
「幻徳さんも準備出来ましたよ」
リビングから一斉に呼び声がかかる。
部屋着に変え、フラフラ自室から出て来た。
「ごめんねぇみんな。着替えていたから」
彼女はみんなの待つ、明るいリビングへ入って行く。
何処までも幸せで、何処までも単純な、普通の生活。
【NOW LOADING】
あっという間の一週間。日曜日である。
最初の幻徳はネットカフェで寝泊まりした。この世界でやっと、屋内で腰を落ち着かせられた。
シャワーを浴び、行きしなに買った消毒液と包帯で傷に手当てを施す。
アイスクリームバーでひたすらアイスを食べ、アイマスクを購入して眠りについた。
太陽が出る頃にはかなり精気を取り戻せた気がする。
ただネットカフェのリクライニングチェアでは寝辛く感じたので、その翌日からはビジネスホテルに泊まった。
今日の彼はコンビニ前にいる。買った新聞を読んでいた。陰鬱な事件だ。
すっかり傷は癒えていた。
『男性殺害、帰宅を狙う。』
刺殺事件のようだ。一つの家族の、一人の父親が殺されている。
幻徳も似た境遇にある為、義憤に駆られていた。新聞によれば怨恨か通り魔かも判断しかねている状況らしい。
「……胸糞の悪い事件だ」
一緒に買ったイチゴミルクを飲みつつ、新聞を捲る。
『謎のヒーロー!? 正体は誰だ!』
自分のニュースだ。ここの所、マスコミはこの話題で盛り上がっていた。写真には収められていない為、目撃者から得たイメージ画が添えられている。
なかなか近く描かれている。ただ目が釣り上がっていたり、ワニの部分がやけに顔を挟んでいたりと、実際との齟齬はあるが。
「……目立ち過ぎたか」
イチゴミルクを最後の一滴までズコズコとストローで吸う。
飲み切ったと同時に、新聞とパックは『燃えるゴミ』へ。ストローは『燃えないゴミ』にキチンと分別して捨てた。
「……新聞はそのまま捨てて良かったのだろうか……?」
そんな心配をしながら、コンビニ前からコインランドリーに戻る。
着ていた服を洗濯していた。今の服装は、古着屋で適当に買ったパーカーとTシャツとステテコ。下着も変えた。移動のし易さを考え、サンダルにも履き替えた。
洗濯完了まで二十分。乾燥もしてくれるので、終わればすぐ着れる。
「どんな仕事をさせられるのやら。あの女が何かしでかすのなら、止めなければ」
スポーツ用品店で買ったボストンバックの中に、『スクラッシュドライバー』を入れている。肌身離さず持っていた。
何だかんだ六万円で色々出来た。残り残高は九千円。
「………………」
黒湖を思い出していた。
あんな残虐な殺人鬼を、慕う人間がいた事に改めて驚かされる。巧妙に本性を隠しているのか、周知なのか。
どちらにせよ危険人物には変わりない。これから注意しておく限りだろう。
ベルが鳴り、洗濯完了を知らせる。
洗い立ての服はボストンバックに押し込んだ。
腕時計を見る。本屋で買った、安い品だ。
時刻は十一時半を過ぎていた。
「そろそろか」
何が始まるのか。杞憂に済めば良いと思ってはいるが、嫌な予感がして止まない。
だが何が起きても止めてみせる。『スクラッシュドライバー』と『ボトル』があれば、彼は最強だ。
ぴったり十二時。黒湖の家の前にいた。
その五分後にマンションのエントランスから出て来たのは、五人。
黒湖とひな子、八葉と、後は知らない二人。片方はひな子らと同年代の少女で、もう一人は小学生と思わしき童女。
「あ! 優しいおじさん! 久し振りー!」
「幻徳さん……?」
彼を確認するなり、ひな子は明るく駆け寄り、八葉は当惑する。
当惑も無理はない。先週まで着の身着のままであった彼が、清潔な服を着ている上、パーカーとサンダルにステテコと言ったやけにスポーティーな服装に様変わりしているのだから。顔色も良くなっている。
「前は挨拶もなしにすまなかった」
「一緒に食べるつもりだったのに、いなくなっちゃうんだから!」
「会ったばかりの人間がいても、気不味いと思ってな」
次に八葉が話しかける。
「幻徳さん、お金無かったんじゃ……?」
「まぁ……日給の仕事を紹介されて……な」
嘘は言っていない。
ここで黒湖から貰ったと言えば『ヒモおじさん』なんて揶揄されそうだからだ。
「へぇ。六万少しで生活出来たんだぁ。会計ってのは嘘じゃなかった?」
「……それで? その、お二人さんは?」
黒湖からの話を躱し、顔の知らない二人の少女を見やる。
お団子で結んだ髪型の子と、やけに緊張している子。
「こちら、『浮菜ちゃん』と『凛子ちゃん』でーす。ほらほら、ご挨拶してして?」
黒湖に流されるまま、浮菜と凛子がおずおずと頭を下げる。
「ど、ども。み、『水沢浮菜』と申します……」
お団子の子が浮菜のようだ。何だか後ろめたい事でもあるのか、挙動不審だ。
「……『浅葱凛子』です」
童女の方はやけに声が暗い。この歳の子は人見知りでもするのだろうと、幻徳は合点した。
「氷室幻徳だが……一つ聞きたいが、何処か出掛けるのか?」
仕事と言われたのに、現状はレジャーランドに向かう一行その物。
黒湖に説明を求めたのだが、説明をしたのはひな子だった。
「もしかしておじさんも行くの!?」
「……何処に?」
「『テケラン』!!」
「テケラン……?」
新型の武器かと思った。
略称で話すひな子の代わりに、八葉が注釈する。
「『テケリリランド』に行くんですよ」
「遊園地か?」
「そうですよ。アレ? 幻徳さん、テケリリランド知らないんですか?」
「娯楽に疎く……」
会話に黒湖が割って入る。
「今回は、氷室さんが『保護者』として、遊園地に行って貰いまーす」
唖然とする幻徳。
「……『仕事』って、コレか?」
「あたしが用事でさ。ね?」
「……政府公認とか何とか言ってなかったか?」
「一種の誇張表現よん」
拍子抜けだ。一週間抱いた緊張が落ちる。
「三人は中学生だし、凛子ちゃんに至っては小学生だし。やっぱ大人が一人でもいないと不安でしょ?」
「確かにそうだが……だが」
「ハイハイ、行った行った。あ、氷室さんのチケットないから、当日で買ってね。お金残ってるでしょ?」
ひな子らの背中を押し、幻徳に寄せる。
何かを企んでいる事は明白だが、全く読めない。
幻徳の耳元で、黒湖が喋る。
「今日はみんなに、『お父さん』のように振舞ってねぇ」
気付かない内に、四万円を彼のポケットに突っ込んだ。
「なんでお父さんに……」
「じゃっ。頑張って」
それだけ言うと、黒湖はパッと離れてガレージに向かう。
この時に幻徳は、自身のポケットに四万円があると気付いた。
「…………何を考えてやがる」
意図が読めない。不気味に思いながら、ガレージから走り去って行く彼女の車を眺めた。
「ではいざ、テケラン!!」
ひな子の声をキッカケに、一同は駅へと向かい出す。
幻徳は嫌な予感と不気味さを抱きながら、彼女らの後ろを付いて行く。
この時の彼は気付く由も無かった。
黒湖は幻徳を保護者とする為に向かわせたのではない。『生贄』に捧げた。
彼女なりの、『お手並み拝見』だ。
「……………………』
一行の中に、『狂気』が潜んでいる。
明日はジオウです。