地面を踏みしめる音が嫌いだった。
僕よりいくつか下の子供たちが、わずかな休憩時間さえも体を動かすことに使っているのを、僕は見ていた。
頬杖をつきただぼうっとしていたので、傍目からはさぞかし退屈そうに見えていただろう。
「センセ、せーんせ!」
「……」
「ジークのセンセ!」
呼ばれていることに気付き振り向くと、そっくりな少女と少年の二人が手を繋いでこちらを見ている。
服はところどころ汚れていて、二人とも楽しそうな顔なのに、随分と息を切らしていた。
「……ああ、どうしたの」
「ジークのアニキもそんな退屈そうなお顔してるなら混ざればいいじゃあありやせんか、鬼ごっこ!」
「しましょーぜ、センセー!」
「まあ?混ざったところで?超絶絶好調な俺様を捕まえるとかアニキにはまず無理ッスけどね!」
「なに言ってるんすか!せんせはすごいんすよ!」
「あぁ!?俺様のほうが100万倍スゴイもんねぇ!!そんでダヴィードセンセのほうがさらに100万倍スゴイんだぜ!」
少年のほうは、ところどころ黒の混じった白髪をしている。昔から口が悪く、イタズラも多い。
少女のほうは、まだほとんど黒髪。少年と顔は瓜二つだが、素直で優しい子だった。口の悪い兄の真似をすぐしようとするので、その点は問題だったけれど。
「……僕はいいさ。それより遊ぶ時間がなくなるよ、いいのかい?」
「んーんー、人生チョー損してますなあ。人間、遊んで遊んで遊びまくって好きなことやってナンボって言いますでしょ?言わない?」
「言わない」
「言わないですってー」
「ええー?」
よくわからないという風に顔を見合わせる二人。それがなんだか可笑しくて、つい笑みをこぼす。
「早く行っておいで」
「ちぇー」
「ちっ」
「こらそこ残念がると見せかけて舌打ちしない」
5分ほどすれば、また地獄のような訓練が始まる。先程まで笑っていた兄妹も、吐くような思いをしながら大人に叩き潰される時間がやってくる。
もちろん僕も例外ではない。しかし、それを当たり前に過ごしている小さな子供たちが僕は心底恐ろしく、真実を言い出す勇気も出なかった。
「……キミたちは、どうするのかな。これから……」
広い訓練場を駆け回る子供たちを見ながら、呟く。
訓練で大量の擦り傷や切り傷を作りながらもなお彼らは笑っている。
地面を踏みしめる音が嫌いだった。
教会に縛られたまま前に進まなければならない気がして、足が、肩が、重くなる。
もう元には戻らない白い髪を、風が撫でた。