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小さい頃、年下の少女を殴ったことがある。
些細な意見の食い違いから喧嘩になり、左のこめかみを勢いよく拳で殴りつけた。
怪我は大したことはなく、まだ自分も幼かったため、子供ゆえの過ちとしてその時は大事にならずに済んだ。
……形として謝りはしたものの、そのとき殴ったことでどこかスッキリした自分がいた。
それがあまり良いことでないのはわかっていたが、相手を傷付けることは、間違っていたとしても不快なことではないのだと知った。
しめた、と思ったこと。
それと、自分が殴った少女が泣きもせず怒りもせずこちらを見ていたこと。その二つをよく覚えている。
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ぽっと出のたいして力のないシスターが、自分のすることを否定するのが腹立たしい。
正しいことと楽しいこと、そのどちらもするなと言うのならば、他に何をしろというのだろうか。
それなら、どうせ何をやっても同じなのなら、他人の言葉を無視して楽しいことさえしていればいいじゃないか──というのがフリードの考え方だった。
「堕天使の姐さんからは殺さないように念を押されてるんですけどねぇ。ちょっと今ムカつきマックスざんすよ。ちょーっとこれはお仕置きしないといけませんなぁ……」
昨日に見たDVDの内容をふと思い出す。
光剣でアーシアの洋服を下着ごと裂き蹴り飛ばすと、その映像に出てきた女性と同じような反応をしたので、フリードはにやりと笑って倒れたアーシアの首を絞める。
「どうやら殺さなきゃいいみたいなんで、やれるとこまでヤッてみましょうかね?汚れなきシスターが神父に思いっきり汚されるって、ちょっとよくね~?」
実際したことはないからまあどうなるかやってみないとわかんないんですけど……と健全な青少年並の感想を脳内でぼやきながら。
それを見ていたイッセーは、痛みに唇を噛みながらふらふらと立ち上がった。
「……庇ってくれた女の子を前にして、逃げらんねえよな」
フリードは振り向いて、その様子を素直に驚いた。無茶な勇気を見ることはさほど嫌いではなかった。
「え?え?マジ?俺と戦うの?苦しんで死んじゃうよ?楽に殺すつもりなんて俺様にはないからね?さてさて、先にどこまで肉を細切れにできるか世界記録に挑戦しましょうか!」
フリードが再び光の剣を握り、イッセーは撃たれた膝を抑えながらそれを睨む。
互いに構えたそのとき、床に赤い魔法陣が光った。
その中から現れたうちの剣を持つ男子が、フリードの持つ光剣を弾きとばす。
「兵藤くん、助けに来たよ」
全員で四人。間違いなくイッセーという悪魔の仲間だ。フリードはすかさず代えの光剣を取り出して斬りかかるが、それも剣士が受け止めた。
「あらあら。これは大変ですわね」
「……神父」
残りの女性悪魔は冷たい視線を送ってくる。
「悪いけど、彼は僕らの仲間なんだ。こんなところでやられてもらうわけにはいかなくてね」
ベタな台詞だな、と思った。
「んー!悪魔のくせに仲間意識バリバリバリューですか?悪魔戦隊デビルレンジャー結成ですか!いいねぇ熱いねえ!燃えちゃうね、萌えちゃうね!ヒヒヒッ!何かい?キミが攻めで彼が受けとか?そういう感じなのかしらぁ?」
「……神父とは思えない、下品な口だ」
「あいあいサーセン!だってはぐれちゃったもんね!追い出されちゃったもんね!ヴァチカンなんてくそくらえ……って気分だぜ!
俺だって今日を精一杯一生懸命に生きてるのにさ。ま、悪魔狩りさえ気が向いたときにできればOKなんスけど!」
フリードと剣士の悪魔が話しながら剣を交えている間に、紅髪の女悪魔がイッセーに歩み寄り、声をかけていた。
「イッセー、ごめんなさいね。この依頼主のもとにはぐれ悪魔祓いが現れるのは、計算外だったの。……ケガをしたのね」
「はっ、はい……撃たれちゃって」
「……下僕を傷つけた輩は、絶対に許さないことにしているのだけど……増援の堕天使が近付いているようね。このままでは不利になる」
「転移の用意はできていますわ」
「ありがとう、朱乃。小猫はイッセーをお願い」
「わかりました」
どうやらこのまま逃げるつもりらしい。
魔法陣が再び光るとき、イッセーは体を抱えられながら必死に外へ手を伸ばしていた。
「あ、アーシア……!アーシア!部長、あの子も一緒に!」
イッセーを抱えた悪魔が投げたソファに、一撃を加えることを防がれ、魔法陣は悪魔と共に消えていく。
「イッセーさん。……また、また会いましょう」
「アーシア─────」
光が完全に消え、部屋にはロウソクの灯りだけとなる。
残ったのはフリードと倒れこむアーシアの二人だ。
「チッ、クソが」
フリードはアーシアの前に立ち、背中の上にかかとを浮かせた。
「…………」
「──結界張れっつっただろうが!」
「きゃ……!」
アーシアの背中に強烈な痛みが走る。
「なんでお前みたいな奴のお守りしなくちゃなんねえんだよ!クソ!クソが!今更お前みたいな奴と関わる気なんてねぇんだよ!しかも余計なこと言いやがって!」
「うっ、ぐ、ぅ……!!」
「お前が誰をどう思おうがどうでもいいんだよ!説教たれてんじゃねえこのクソビッチ!悪魔と、仲良しごっこしたいなら、勝手に、してろよッッ!」
フリードは怒りに任せて床に伏したアーシアの背中を踏みつける。蹴るたびにすすり泣く声がした。
それをしばらく続けるうちに、頭の中がスッとしてきて、一つ息を吐く。ようやく戦闘が終わったような気がしてきた。
「……俺はちょっくら報告に行ってくるので、立てるようになったら勝手に合流してこい、クソシスター」
「……………………」
アーシアからの返事はない。
フリードはもう一度舌打ちをすると、部屋を後にした。
このへん最低ですね。本気で仲間にできるんですか?無理じゃない?