あの後、アインズ・ウール・ゴウンなる人物達は見事に事件を解決した。
村を襲っていたのは、帝国という国の紋章が入った鎧を来ていたらしいがそれはスレイン法国と国の偽装工作だったらしい。そしてそこまでの手間をかけて行うのは、村に後から訪れた騎士達の隊長、ガゼフ・ストロノーフの暗殺が目的だ。
なんでも、このガゼフ・ストロノーフという男は、リ・エスティーゼ王国での最高戦力らしい。いや、人間の中でのトップクラスの男らしい。
そして、ガゼフ・ストロノーフのピンチに転移で現れたのがアインズ・ウール・ゴウン。
敵の攻撃は全て効かず、自身の攻撃は全て一撃。正に無双状態だった。
そして今現在、俺こといろはすは、自身のNPC達と共に、アインズの拠点へと招かれていた。
「さて、それでは先の話を詳しく聞かせてもらおうか」
アインズは玉座からそう告げる。あ、アインズ・ウール・ゴウンの正体は骨でした。
そしてアインズの横には絶世の美女が立っている。この美女は村で俺と対峙した女騎士らしい。名は、アルベドと言うそうだ。
「りょうかい。んーでも何処から話したらいいのかな……とりあえず異世界転移しました!」
俺は元気にそう言った。
アインズは微塵も動かない。
少し、巫山戯すぎたか。そう思った時、アインズは勢いよく玉座から立ち上がる。横ではアルベドの顔に驚愕と書いてある。
「それはほんとか!?」
凄い声量で問われ、思わず吃る。
「え、いや、はい」
「まさかこんな直ぐに会えるとは……」
アインズが何か言った気がしたが、あまりに小声で聞き取ることが出来なかった。
アインズはまた玉座へと腰を下ろすと、深いため息をつく。
骨の癖に、どうやってるんだろう。
「やっぱ信じられない?」
思わず苦笑いがこぼれる。
普通、ただでさえおかしな事を言ってる奴が、実は異世界から来ましたー。なんて言っても信じられる訳がない。アインズの中では俺の馬鹿ポイントが更には上がった気がした。
しかし、アインズの返答は俺の予想とは外れていた。
「いや、神からのお告げとか、ゲートとかよりは信じられる」
「普通信じられないと思うけど?漫画やラノベじゃないんだから」
アインズは軽く頷くと、口を開く。口ないけど。
「いや、今の発言で確信した。どうやら日本からの転生者らしいな」
その言葉に、今度はいろはすが驚愕する。
「え!?日本知ってんの!」
俺が驚いて聞くと、アインズは手を翻した。
そして横のアルベドへと顔を向ける。
「アルベド。少しこの者と2人で話がしたい。この者に危険はないと私は判断した。それに、私達が言うリアルという世界の話もしないといけない。この話お前達には聞かせる訳にはいかない。いいな?」
有無を言わせぬ物言いに、アルベドは眉を寄せながらも了承した。
「いろはす、着いてこい」
「あ、ちょっと待って。こいつらはどうしたらいい?」
そう言い、親指で背中越しに後ろを指す。
「む、そうだな……第六階層に行ってもらうか。アルベド、この者達を六階層へと連れていけ」
「はっ!」
アインズがそう告げると、アルベドはすぐ様行動に移している。
それをボーっと眺めていると、視線を感じた。
その視線のする方へと目を向けると、不安そうな目をしたNPC達と目が合う。
俺、思わず苦笑い。
「あのアルベドってやつについて行ってくれ。俺はこの骨と少し話したらすぐに迎えにいくから」
「分かりましたよ。船長」
やれやれと首を振りながらノブナガが言う。
その仕草にも思わず苦笑いが零れる。
ノブナガ達からしたら、この展開にはついていけないだろう。
しかもここは、敵陣営の中。周りには敵しかいないのだ。
不安がるのは当たり前だ。
「あ、敵対行動は控えてね。こっちから、コウゲキ、ゼッタイ、ダメ」
「はいはい。大人しく待ってますよ」
ノブナガは苦笑いだ。そして俺も自分の行動に苦笑いだ。
横ではアインズとアルベドも何やら話している。多分、俺達のような会話内容だろう。
「よし、今度こそ行くぞいろはす」
「了解です」
アインズは自身が羽織っているローブを翻して、玉座の間の扉へと歩を進める。その後には頭の後ろで手を組んだいろはす。そんな2人を、未だにNPC達は心配そうに、眺めていた。
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アインズからとても立派な部屋へと案内された。
途中転移をしたが、転移をしなければならないほど、この墳墓?は広いらしい。
そして、ここはアインズの自室らしい。
部屋を見渡して見ても、豪華な家具しかない。というか俺では凄さが理解出来てない。高そー。くらいな気持ちだ。
「さて、話の続きをしようか」
いろはすは黙って頷く。
「先の、異世界転移の話だが、信じられたのにはちゃんと理由がある」
頷き、続きを促す。
「実は私達、このナザリック地下大墳墓に住んでいた元全て、というよりこのギルド所属のもの全てが異世界転移者なんだよ」
いろはすは驚愕する。
まさか自分達以外にも異世界転移者がいたとは。
単純にこの世界のめちゃくちゃな強者だと思ってた。
「それはそれは……いつ頃の転移?」
ここも問題だ。
もし仮に、アインズ達がこの世界へ来て、それなりの時間が立っているのなら、それだけ情報があるからだ。
とりあえず聞いてみたものの、実は全く期待していない。
これはアインズ達の力を疑っているとかそういうことではなく、村でのアインズ達の行動が、実験?みたいなことをしながらだったからだ。
攻撃をわざと受けたり、みたいな?
「つい先日だ。この世界の情報をについては、あの村で得たものしかない」
アインズは肩を竦め、告げた。
多分俺の考えている事も理解しての発言だろう。
「それで?いろはすはいつ頃転移したのだ?」
「俺もこの前来たばっか。ゲームのサービス終了と同時に来た感じだと思う」
そう言うと、アインズ指を鳴らし、そのままいろはすに指を向ける。半分ほど腰が浮いているが、驚愕からだろうか?
「それだ!それで、そのゲームとはユグドラシルか?」
首を振り、答える。
「残念。ユグドラシルでは無いよ。その口ぶりからすると、アインズさんはユグドラシルからの転移って事?」
「まぁ私はそうなる。ユグドラシルではないゲームでこの世界へと転移したか……因みにゲーム名は?」
「ユグドラシルプレイヤーに言うのは嫌だけど、FINAL FANTASY World、通称FFWだよ」
苦笑いを浮かべながらそう告げた。
アインズも何度か頷いている。
「なるほどなるほど。あのユグドラシルのパクリと言われていたゲームだな」
「そうそれ。広大なマップとかユグドラシルのを改良しただけらしいし。中枢のプログラムが殆どユグドラシル依存のゲームっす」
「となると、やはりこの世界への転移者はユグドラシル関連の者が来るということか?いや、情報が少なすぎる。最悪私達が初めての転移者、いやそれならこの世界での魔法やアイテムがユグドラシルと同じなのはどう説明する?」
ブツブツと言ってるアインズを無視して、いろはすお茶を飲む。
ただのお茶である筈なのに、あまりの美味しさに感激してしまう。
「そういえば、魔法はどうなっている?それにあの配下の者たちはNPCか・後はゲートについても詳しく聞きたい」
アインズは早口にそう言う。
先ほども思ったが、口がないにも関わらずどうやって喋っているのだろう。
いろはすはアインズの問いに一つずつ答える。
「まぁ魔法に関しては問題ないみたいだ。アインズさんのあのアンデット倒したときに白魔法使えたし。後、あいつらはアインズさんの言う通りNPCだよ。なんかこの世界に来たときに自我を持ったみたい?いや、自我は前からあったみたいだけど、コミュニケーションが取れるようになった感じだね、自分の意思で」
「ふむ。こちらのNPCたちも似たようなものだ。魔法に関しては、この世界ではユグドラシルの魔法が使われていたよ」
ふむ、といろはすは頷く。
どうやらこちらの状況とアインズの状況は似たようなものらしい。
違いがあるとしたら、自分達FFWの住人は、この世界では同じ転移者であるアインズ達よりも余程異端なものだということか。
「それで?ゲートについては教えてくれないのか?」
アインズは顎で続きを促してきた。
このような行動や仕草はこの人の素なのだろうか?
だとしたらかなり傲慢な感じがするんだけど……
「ちゃんと説明しますよ」
肩を竦めながらいろはすは言う。
自身が聞いた神の声に関する情報を話す。
といってもそれ程多いものではないので、時間はそれ程かからない。
更にはFFWのゲートがどういうものなのかも説明した。
「そのような事がありえるのか?神の声など信じられないが……」
「正直俺も半信半疑さ。それでもゲートは塞がないと。じゃないとこの世界には存在しなかったモンスター達がこの世界を蹂躙してしまう」
今まで軽い調子で話していたいろはすが、初めて真面目な顔をし言った。
その表情から、アインズはいろはすの話が重要だと読み取ったようだ。
「なるほど分かった。ではいろはすは今後、この世界のゲートを閉じる旅
に出るという事で間違いないな?」
「まぁそうなるよね。どうやらゲートを防ぐ救世主として、俺はこの世界に選ばれたらしいから」
いろはすは笑いながら言う。
ところで、と続け
「アインズさんは素の状態でそんな感じなの?凄い失礼な事聞いてるとは思うけど気になってさ」
小首を傾げながらいろはす聞いた。
その問いに帰ってきたのは短いため息と、先程聞いていた声とはまた違った声だった。
「はぁ。そんな訳ないでしょう?これは所謂ロールプレイってやつですよ……」
その声は、とても疲れているような、草臥れた声だった。
いろはすはその答えに疑問を抱いた。
これがゲームだったら、その在り方は1つの遊びなのだろう。しかし、現実とかしたこの世界でその行為は、とても痛い人に感じる。失礼な話だが。
いろはすはその事を思い切って聞いてみる事にした。
「なんでそんな事してんの?そういう縛り?」
「縛りと言えば縛りなんですかね?自我を持ったNPC達に支配者として望まれているみたいなんで、こういう感じになるんです」
「なるほど。それは仕方ないですね。頑張ってください」
いろはすの言葉にアインズは怪訝そうに口を開く。
「いろはすさんのNPC達はこんな感じじゃないんですか?」
「俺ん所のNPC達は作る時に家族みたいな設定で作ったから、確かに少しは尊敬とかなんかそんな感じの感情を向けられているけど、支配者でいてーみたいな感じはないよ。多分設定通り、家族みたいな感じかな?」
またしてもため息をこぼし、アインズは一言言う。しかも項垂れている。
「はぁ。羨ましい」
実に感情の篭った言葉だった。
「まぁとりあえず、俺達は俺達の船で旅に出るけど、アインズさん達はどうするの?」
「私達の力が、この世界では強者に位置するのか、それとも弱者に位置するのか。あの村での出来事だけでは判断できません。それに、他のギルドメンバーがもしかしたらこの世界に来ているかもしれませんし、私達はこの世界の情報を集めつつ、ギルドメンバーを探します。それに、このアインズ・ウール・ゴウンという名前は、ギルドの名前なんです。この名前で世界に名を轟かす事が出来れば、ユグドラシルプレイヤーなら一発でわかると思うのでこの名前を名乗ってます。因みに本当のプレイヤーネームはモモンガです」
なるほどと思った。
モモンガとかいう名前は見た目に似合わず可愛い名前だと思い、心の中で少し笑ったが、ギルド名を名乗る事の有能性は実に納得のいく考えだ。
この世界の情報を集まるなら俺達の旅で得た情報を役に立つかもしれない。
「アインズさん、モモンガさんでいいのかな?良かったら俺達と協力関係になろうよ。俺達はこれから色々な地を巡ると思うんだけど、そしたら必然的に情報が集まると思うんだ。俺達はその情報を。モモンガさん達からは知識を。どうだろう?悪くない提案だと思うんだけど」
アインズ、いや、モモンガは顎に手をやり、考えているようだ。
先の会話からも滲み出ているモモンガの知性。恐らく
考えが纏まったのか、モモンガが声を発した。
「分かりました。色々な場所情報を得られるのはとても大きいです。知識に関してですが、幸い私達のNPCには知力が優れている存在がいるので安心してください」
そう言い、モモンガは手を指し伸ばしてきた。
黙ってその手を見つめる。人間のような骨格だが、若干違う。先端は尖り、関節も人間のものより多くあるようにも思う。
手を伸ばしたままモモンガは言葉を紡ぐ。
「これから、お互いに頑張りましょう。いろはす達は世界を旅するので、危険が多いので気をつけてくださいね」
その声音からは温かみを感じた。
いかにも怪しい出会いから、ここまでのあいだ実に短い時間だったが、この人はとても優しい人物のようだ。人間をポンポン殺してたけど。それに関して何も思わないのは俺自身異端である証拠なのかもしれない。
ひとつ頷き、モモンガの手を握る。想像したとおり、ひんやりとしていて硬かった。
「モモンガさんこそ、NPC達の期待に潰されないように頑張ってね。これからよろしく」
にやりと笑いながらモモンガと握手を交わした。
その後は実に早い展開だった。
玉座の間でいろはす率いるクリア戦艦と、モモンガ率いるアインズ・ウール・ゴウンとの強者関係が発表され、ナザリックでの歓迎会が行われた。
歓迎会ではよりモモンガといろはすの仲は深まり、実に楽しげだった。ここまでスムーズに事が進んだのは、お互いに自覚していないだけで、1人転移したこの状況と同じ境遇の人物を発見したからだ。更にはNPC達の仲も、思ったより悪くないようだ。クリア戦艦のNPC達は人間種の味方ではあるが、皆人間達に特別な思いも無いため、というよりどちらかと言えば闇堕ちした天使である、いろはすの影響を受け、皆悪よりの存在だったが甲を制したようだ。
モモンガ達はリ・エスティーゼ王国周辺の調査。
いろはす達はバハルス帝国周辺の調査。
ナザリック陣営のNPC達は支配者であるモモンガの為に、クリア戦艦のNPC達は家族のために、モモンガはいるかもしれないギルドメンバーの為に、いろはすこの世界のために、それぞれの思いを誓い、歩を進めるのである。
歓迎会の最中、艦内に置いていた聖石が淡く光っていた事には、当然誰も気付くことは無かった。その輝きが、ゲートが作動した事による反応にも関わらず、誰もその事実に気付かずに物語は進んでいく。
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「この石があれば押し返せるぞ!」
1人の幼い少女は、突然自分の国に出現した四角い石版と、淡い青色に輝く石を手に入れていた。
その石を手にした時の気持ちは言葉では表わせれないほどの感激だった。
その石と石版には、この国の危機、敗戦を、覆すことが出来るのだから。
少女は卑しく笑う。己の勝利を確信し。
外では今までは恐怖を煽るような獣の声が、実に気分よく聞くことができた。
少女にはその声が、獣達の悲痛の叫びに聞こえた為だ。
この石1つで、あるひとつの国は戦線を押し返すことが出来たのであった。